"怪人オトメン" 爆誕す (脚本)
〇渋谷駅前
怪人マージン「ぐははははッ 子どもを人質に取られては 手も足も出ないだろう”メイシア”!」
少年「うわぁあん たすけて”メイシア”~~!」
メイシア「くっ・・・卑怯な・・・!」
メイシア「こどもを離せ、怪人マージン! 正々堂々私と戦え!!」
怪人マージン「卑怯? 正々堂々?」
怪人マージン「ハッ!!」
怪人マージン「そんなものは弱者のたわごと! 勝つために策を弄する、それこそ真の強者よ!!!!」
怪人マージン「死ね、メイシア! 必殺!! メタモル・モルモルビー・・・」
怪人マージン「あいたァッ!!」
怪人マージン「なんだ? なにか後ろから飛んで──」
怪人マージン「なんだ貴様──」
怪人”???”「・・・いい加減にしなさいよ」
怪人”???”「なに卑怯な手使ってメイシアさまのキラメキ邪魔してんのよ噛ませ犬のくせに・・・」
怪人マージン「は?」
メイシア「・・・っ、今だっ!」
怪人マージン「ぬぁッ!? しまった、人質がッ・・・」
怪人マージン「ええいこうなったら子供ごと! 必殺!! メタモル・モルモ・・・」
怪人”???”「ラブリーハートブロック!!!!!!!」
怪人マージン「ぐぉッ! 奴の体のトゲトゲが!」
怪人マージン「ぐぬぬ動けん・・・!! 壁にハリツケとはなんたる屈辱!!」
怪人”???”「メイシアさま、いまです!!」
メイシア「は、はいっ」
メイシア「怪人マージン! 在るべき場所へ還れ!」
メイシア「ブリング・プライム!!!!」
怪人マージン「ぐわぁああああああッ!!!!」
男性「おお、メイシアが勝ったぞ!」
女性「さすがメイシアね!」
女性「きゃ~~ メイシアさま~~~~ッ!」
男性「それにしても あの怪人はいったい・・・?」
怪人”???”「あの、メイシアさま! よかったら、これ・・・」
男性「なにか渡してるぞ ・・・冷えペタ・・・?」
怪人”???”「今日、猛暑日だから・・・ 熱中症に気をつけて・・・」
怪人”???”「それじゃ──!」
はにかんで走り去る
奇妙な怪人──
その姿を収めた動画が
ネット上で拡散され、
彼は
怪人オトメンと名付けられた──。
〇ボロい山小屋
とある山小屋──
怪人オトメン「オトメンじゃなくて ほんとに”乙女”なんだけどなぁ」
???「・・・」
???「おい、キサマ」
怪人オトメン「ん?」
???「『ん』じゃねぇよ!」
???「なんだそのウチマタは! なんだそのスマホの持ち方は!! なんだそのピンクのリボンは!!!!」
???「怪人なら怪人らしくあれといつも言ってるだろーが!!」
怪人オトメン「だって私怪人じゃないもん」
???「どこからどう見たって怪人だろ!!」
怪人オトメン「見た目は怪人だけど心は女子のまんまだもん」
怪人オトメン「できるだけ可愛くありたいじゃん」
怪人オトメン「怪人にだってカワイイはつくれるんだよ♡」
???「・・・」
???「・・・ハア」
???「オレさまは本当に見る目がない こんなのを相棒に選んでしまうとは・・・」
怪人オトメン「は?」
怪人オトメン「こんなのとはなによ、こんなのとは」
???「いや・・・」
怪人オトメン「だいたい見る目もなにも、あんた超テキトーだったじゃん」
怪人オトメン「私今でも覚えてるからね、あんたのあの時の言葉」
???「・・・・・・」
〇神社の本殿
さかのぼること一か月前
とある神社の境内にて──
ネオレオ「オレさまはネオレオ!」
ネオレオ「喜べニンゲン ちょうど居合わせたキサマの願い、なんでもひとつ叶えてやるぜ!」
美知「・・・・・・」
怪人オトメンこと
春野美知(はるの みち)と
しゃべる小鳥
ネオレオが──
出会った。
ネオレオ「願いを言え」
美知「・・・え・・・」
ネオレオ「願いを言え!」
美知「・・・お、推しに会いたい・・・?」
ネオレオ「よしわかった、叶えてやるぜ!」
美知「ちょっと待って!?」
ネオレオ「なんだ」
美知「なんだじゃないよ! 待って待ってどういうこと?」
美知「これ、夢──!?」
──ぎゅむッ。
ネオレオ「ぐぇッ なにすんだ小娘ッ!」
美知「夢なら痛くないかなって思って・・・」
ネオレオ「オレさまで試すんじゃねぇ!! 離せ離せ、にぎにぎすんなっ」
美知(あったかい・・・ちゃんと感触もある)
ネオレオ「・・・ったく、握り潰されるかと思ったぜ どういう神経してんだキサマ」
ネオレオ「──だがいいぜ、オレさま好みだ」
美知「あ、ごめんなさい 鳥類との恋愛はちょっと」
ネオレオ「そういう意味じゃねぇよ!」
ネオレオ「──いいか、小娘」
ネオレオ「このネオレオさまが力を与えてやろうってんだ」
ネオレオ「つつしんで言うとおりにしろ」
美知(なんでこんなエラそーなの? この鳥類・・・)
ネオレオ「・・・そうだな」
ネオレオ「願いを叶えたけりゃこう唱えろ」
ネオレオ「ふるふるふるりん ふるりんりん」
美知「・・・え、ダサ」
美知「痛ッた!?」
美知「なにすんのよ鳥類! 乙女のほっぺにキックとかありえない!!」
ネオレオ「鳥類っていうな オレさまはネオレオさまだ!」
ネオレオ「オレさまの優しさにより、キュートさをプラスしてやった呪文だ」
ネオレオ「ありがたく頂戴してさっさと唱えろ ほら早く」
美知「えー・・・」
美知「ふるふるふるりん ふるりんりん」
美知「──・・・」
美知「・・・え?」
美知「ええええ!?」
美知「なにこの腕、なにこの体ッ!?」
美知「か、顔もなんかゴツゴツしてる!?」
美知「きゃぁあああああッ!!! いやぁなにこれぇええええええ!?」
ネオレオ「はっはっは なかなかいい感じじゃねぇか」
ネオレオ「あぁ~~~~~~・・・」
ネオレオ「~~~~ぁあああキサマぁッ! なにしやがる、このオレさまに!?」
美知「こっちの台詞よ! あんた私になにしてくれてんの!?」
美知「・・・この鳥類・・・!!」
ネオレオ「ま、待て待て落ち着け」
ネオレオ「オレさまの力でキサマは生まれ変わり、新たな力を手にしたのだ」
ネオレオ「すべてがキサマの思うまま──」
ネオレオ「さぁ思う存分暴れてやれ! 好き放題に生きるのだ!!」
ネオレオ「・・・ ところでキサマの願いってなんだっけ?」
怪人オトメン「・・・」
怪人オトメン「宇宙まで吹っ飛んで太陽にこんがり焼かれてしまえチキン!!!!」
ネオレオ「あぁあ~~~~~~・・・」
〇公衆トイレ
美知「えーん つらぁーい」
ネオレオ「・・・」
ネオレオ「まあ・・・そう悲観するな」
ネオレオ「推しに会いたい、だっけか?」
ネオレオ「簡単な話だろ 拉致して監禁しちまえばいい」
美知「・・・豆鉄砲くらって顔キュッてなって表情筋つって悶え苦しめばいいのに」
ネオレオ「どこからツッコむべきなんだそれは」
美知「・・・はあ あのねえ、私の推しは”メイシア”なの」
ネオレオ「メイシアぁ?」
美知「そうよ」
美知「高校生のときに助けてもらったことがあるの」
美知「優しい微笑み、紫色の深い瞳、力強くてあたたかい腕──」
美知「恩返しなんてできないし、近づくなんて夢のまた夢。だからせめて一生応援していこうって・・・」
美知「心に決めたのにこの仕打ちはあんまりっていうかマジであんたを焼き鳥にして丸かじりしてやりたくなるっていうか」
ネオレオ「お、落ち着け。 キサマの気持ちはよくわかった」
ネオレオ「──だが小娘よ」
ネオレオ「ピンチのときこそチャンスだぜ! ・・・ぐぇッ」
美知「どのクチバシが言ってんの?」
ネオレオ「ま、待て待て、よく考えてみろ」
ネオレオ「メイシアが現れるのはどんな時だ?」
美知「そりゃ──」
美知「・・・怪人が出たとき」
ネオレオ「キサマ自身が怪人になったんだぜ 奴に会えるじゃねぇか」
ネオレオ「このチャンスを逃す手はねぇと思うが?」
美知「・・・」
〇渋谷駅前
一時間後──
美知「~~♪」
ネオレオ「・・・・・・」
ネオレオ「いや・・・ キサマなにやってんの?」
美知「なにってメイシアさまを待ってんの♡」
ネオレオ「あほか! 突っ立ってるだけで奴が来るか!」
ネオレオ「見ろ、周りの目を 誰も怖がってな──」
通行人1「・・・」
「・・・」
ネオレオ「不気味には思われてる、か・・・?」
ネオレオ「いや、しかしそれだけじゃ意味がねぇ 悪さをはたらけ、悪さを!」
美知「えー、そんなことしたらメイシアさまに嫌われちゃうじゃん」
ネオレオ「・・・会いたくねぇのか?」
美知「そりゃ会いたいけど・・・」
美知「会って握手してもらったりサインもらったり一緒に写真撮ってもらいたいけど」
ネオレオ「ならば悪さをはたらくのだ はたらかざるもの推しにも会えずだ」
美知(そんなこと言ったって、なにすればいいの・・・!?)
美知「・・・」
美知「うおぉおおおおっ!!」
美知「一歩でも近づいてみろおおおお 殺してやるう殺してやるぞおおおおお!!!!」
美知「・・・ど、どうかな?」
ネオレオ「そのナリでテレんな、気色の悪い!!」
???「ちょっと君」
警察官「そんな格好してなにしてるの? 紛らわしいコスプレはやめなさい」
美知「コスプレじゃないんですけど・・・」
警察官「とにかく迷惑になるから ──ちょっと来てくれるかな」
美知「ちょっ・・・やだ、離してよ!」
警察官「少し話を聞くだけだから」
美知「イヤだってば! 私メイシアさま待ってるんだから!」
警察官「いいから来な──」
警察官「!?」
美知「きゃあッ! 肩のトゲトゲが・・・あッ ごめんなさい、帽子吹っ飛ばしちゃった!」
警察官「・・・・・・」
通行人1「か、怪人だぁ~~~~!!!!」
通行人2「本物の怪人よ────ッ!!」
ネオレオ「フハハハハっ ナイス攻撃だぜ小娘!!」
美知「ち、ちがっ・・・ 今のは不可抗力っていうか──!」
美知「っっ・・・」
ネオレオ「あっ!コラ待て逃げるな! もっとやれ!!!!」
美知「やだ! こんなところメイシアさまに見られたくないもんっ」
ネオレオ「奴に会うんだろ! 会って握手してもらうんだろ!? サインもらうんだろ!?」
美知「そうだけど、この状況じゃ怪人認定されちゃうじゃん!」
ネオレオ「怪人じゃねぇかキサマすでに!」
美知「でも心は女のコだもん!!!!!!」
ネオレオ「・・・・・・」
ネオレオ「はッ!! 見た目とセリフのギャップについ・・・!」
ネオレオ「待てコラァアアアッ!」
走る怪人
追いかける小鳥
逃げ惑う人々──・・・
そんな奇妙な光景を止めたのは、
空を衝く
涼やかな声だった。
???「そこまでだ!!」
男性の声「メイシアだ・・・!」
男性の声「メイシアが来たぞ!!」
女性の声「きゃ~~~っ! メイシアさま~~~~っ!!!!」
美知「きゃ~~~~っ メイシアさま~~~~っ!」
ネオレオ「バカなに手振ってんだ! ウチマタやめろ!!」
メイシア「・・・?」
ネオレオ「なんだあの怪人・・・って目だな」
ネオレオ「しかしコレはチャンスだぜ!」
ネオレオ「おい小娘、奴にタック・・・もとい 奴の胸に思いッッッきり飛びこんで来い!」
美知「で、でもそんなことしたら、ハシタナイ子って思われないかな」
ネオレオ「大丈夫だ、愛は伝わる!! ついでに背骨バッキバキにするくらいの 想いをこめて抱きしめてこい!!!!!」
ネオレオ「感情表現は大事だぜ!!!!!」
美知「そ、そっか! うん、わかった!!!!!」
美知「メイシアさまぁ~~っ」
美知「ぐふぅッ!?」
メイシアの愛(の拳)に
ハート(心臓)を貫かれて
あえなく美知は昇天した──
〇黒背景
──かに思えたが
〇ボロい山小屋
美知「あれ? ここは・・・?」
美知「私、たしかメイシアさまに──」
美知「え、なに!? だれ!?」
ネオレオ「オレさまだ」
美知「えッ・・・鳥類!?」
ネオレオ「ネオレオさまだ!!」
ネオレオ「気絶したキサマを わざわざここまで運んでやったんだ」
ネオレオ「感謝しろよ」
美知「・・・」
ネオレオ「・・・なぜオレさまが鳥の姿をしているかって?」
美知「そんなことよりどうして私無事なの?」
ネオレオ「え」
美知「メイシアさまに倒された怪人はみんな消えてなくなるのに」
美知「まさか、メイシアさまになにかあったの?」
ネオレオ「キサマ、メイシアのこと以外本当にどうでもいいんだな・・・」
ネオレオ「まあいい キサマは適合者だ」
美知「適合者?」
ネオレオ「オレさまの力と相性が良すぎたんだよ」
ネオレオ「オレさまが死なねぇかぎりキサマも死なない」
ネオレオ「もちろん元の姿に戻ることもない」
ネオレオ「だから!」
ネオレオ「これからもオレさまの手となり足となり 他の怪人に負けないように ガンガン悪さをはたらくんだぞ!!」
美知「嫌です」
ネオレオ「えっ・・・」
美知「私は推し活を続けたいの」
美知「だから悪いことはしない。その代わり──」
美知「今までとは違うやり方でメイシアさまを応援するわ!」
美知「この肩のトゲトゲも武器になるみたいだし」
ネオレオ「いや・・・キサマ ちょっと待て・・・」
美知「怪人になっちゃったのはつらいけど」
美知「恩返しができるって考えればね!」
ネオレオ「・・・」
ネオレオ(なんか・・・ 思ってたのと違うぞ・・・!?)
かくしてオトメな怪人と
喋る小鳥の
奇妙なバディが誕生したのだった──。
鳥くんに一言。
人選はちゃんとしよう!
私にも推しがいますが、こんなにポジティブになれない(笑)
鳥類がイケメンなので、こちらに満足しそうです。
美和ちゃん応援したくなります。
オトメンさん、前向き過ぎますよ(笑)
鳥類との掛け合いも良いですね。