いつか薔薇色の走馬灯

さくらだ

第11話「君のため」(脚本)

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〇城の廊下
  第11話
  「君のため」
叔父様「屋敷の中は自由にしていいが 決して外には出ないように」
ローズ(ど、どうして!? また閉じ込められなきゃいけないの!?)
ローズ(これじゃ本当にハロウズ家にいた頃と同じじゃない・・・!)

〇城の会議室
  その夜 夕食の席
ローズ「あの、叔父様 先ほどの外出禁止の件ですが・・・」
叔父様「ああ、そうだったね まずは順番に話そうか」
叔父様「ローズ、ハロウズ家のやつらに拉致されてからのことを聞かせてくれるかい?」
ローズ「え? ええ、わかりました」

〇英国風の部屋
ローズ「ハロウズ家の屋敷に連れ去れた私は しばらく軟禁生活を強いられたあと──」

〇貴族の部屋
ローズ「ハロウズ家の子息、サイラス・ハロウズと無理やり結婚させられました」
ローズ「しかしその夜・・・」
少年「・・・」
ローズ「サイラスによく似た顔の男性がサイラスを殺し、屋敷は混乱に陥りました」
ローズ「私はその隙に屋敷から逃げ、都を抜け出し──」

〇城の会議室
ローズ「あとは、叔父様たちも知っての通りです」
ローズ「森で盗賊に捕まり、ここに連れてこられました」
叔母様「まあ、なんて恐ろしい!」
叔父様「その殺人犯というのが今、ハロウズ家のやつらが探しているという次男のヴィクター・ハロウズか・・・」
ローズ(叔父様たちもハロウズ家の動向は耳にしてるのね)
ローズ「はい、おそらく・・・」
ローズ(嘘を吐くのは心苦しいけど、ヴィクターも「不利な発言はするな」って言ってたし、今は仕方ないわよね・・・)
叔父様「しかし、とんでもないやつらだな ハロウズ家の人間は!」
叔父様「一方的な結婚に、兄弟での殺し合いか」
叔母様「本当にどうかしてますわ! 気でも触れているとしか思えません」
叔父様「しかし今の話によると、やはり君は間違いなく寡婦ということなんだね、ローズ?」
ローズ「え? ええ、そうですが・・・」
叔父様「となると、やはり私たちの考えは間違っていなかったようだね、妻よ」
叔母様「そうですわね」
ローズ「え? ど、どういうことですか?」
叔父様「君を外出禁止にした件だよ」
ローズ「それが何の関係があるんです・・・?」
叔母様「夫が死んでしまったら、あなたは再婚できるでしょう?」
叔母様「だから、あなたを尼僧院に入れたことにしたいのよ」
ローズ「・・・あ!」
ローズ(やっとわかったわ! そういうことね!)
  未婚の娘を尼僧院に入れることは、貴族の間では珍しいことではない。
  「尼僧院で清らかな生活を送ってきた娘」という経歴は、結婚相手を探すときのいいアピールになるからだ。
ローズ(つまり・・・)
  この人たちは
  私を再婚させる気なんだ!
叔父様「君は過去、不本意とはいえ両親を殺した一族と婚姻を結んだ」
叔父様「おまけに、この街にやってくるときに盗賊たちと一緒に現れた」
叔父様「その醜聞は近い将来、きっと君の足枷になるだろう」
ローズ(そのせいで悪い噂が立つって言いたいのね・・・)
叔父様「それを防ぐために、君は自らの過去を悔い改めるため、僧院に入ったことにしたいんだ」
ローズ「で、でも叔父様 私は・・・!」
叔母様「そうは言ってもね? ローズ、本当に入る必要はないのよ」
叔母様「こんなにひどい目に遭ったんだから、あなたもしばらくは心穏やかに過ごしたいでしょう?」
叔母様「それは理解してるわ だから気が済むまでこの家でゆっくりしてちょうだい」
叔母様「でも、過去のことは重く受け止めている だから尼僧院に入り、身を清めた・・・」
叔母様「そういうポーズはあった方がいいと思うの」
叔母様「ね? わかるでしょう?」
ローズ(だから家の中に隠れて、その間、尼僧院で暮らしてるフリをして)
ローズ(世間を欺きましょうって・・・?)
ローズ(私の、再婚相手を探すために?)
  二人が私のために言ってくれているのはわかる。
ローズ(わかるけど・・・)
ローズ「あの・・・叔父様、叔母様 私、再婚なんてしたくありません」
  再婚するなら
  ヴィクターじゃなきゃ嫌だわ!
叔父様「もちろん今すぐにというわけじゃないよ」
叔父様「でも、いずれは誰かと結婚するだろう? そのときのために今から手を打っておきたいんだ」
叔父様「君のために、ね」
ローズ「っ・・・」
  二人は穏やかな微笑で私を見つめる。
ローズ(二人の中ではもう決まったことみたいね・・・)
  この空気。
  私が何か言ったところで二人の考えが変わるようにも思えない。
ローズ「・・・わかりました」
  ・・・とりあえず、この場はそう答えるしかなかった。

〇城の客室
  その夜
ローズ「あ!」

〇大樹の下
  ヴィクターが、再び屋敷に現れた。
  私は自室の窓から彼の姿を見つけ、
  彼の元に駆け降りる。
ローズ「ヴィクター!」
ヴィクター「ローズ」
ヴィクター「一日中待ってたけど、今日はこなかったね 何かあったの?」
ローズ「ご、ごめんなさい 実はちょっと困ったことになって・・・」

〇空
  私はヴィクターに、外出禁止になったことを伝える。

〇大樹の下
ヴィクター「──なるほど 再婚相手を探すために尼僧院にいることに、ね」
ローズ「ええ・・・」
ローズ「でも私、あなた以外の人と再婚する気はないのよ!」
ローズ「それは信じてくれる?」
ヴィクター「うん・・・でも・・・」
ヴィクター「叔父上の言う通り、君は誰かちゃんとした人と再婚したほうがいいかもしれないね」
ローズ「・・・え?」
ローズ「ど、どうして急にそんなこと言うの?」
ヴィクター「だって、僕では君を守れないから・・・」
ローズ「どうして? 今まで立派に守ってきてくれたじゃない!」
ヴィクター「そうかな・・・ 僕はそう思わないよ」
ヴィクター「君と離れている間に考えたんだ」
ヴィクター「僕は本当は、君をあの囚われの部屋から連れ出すべきじゃなかったのかもしれないって・・・」
ローズ「な、なんで・・・?」
ヴィクター「それだけじゃない」
ヴィクター「本当は、君と結婚の約束なんかするべきじゃなかったのかもって・・・」
ローズ「ど、どうしたのよ本当に!? なんでそんなこと言うの!?」
ローズ「まさか・・・ 他に好きな人でもできた?」
ヴィクター「違うよ そんなことあるはずない!」
ヴィクター「でも・・・ 僕には、最初から君との結婚なんて望むべくもなかったんだ」
ヴィクター「それなのに無責任な約束をしてしまって・・・」
ヴィクター「・・・いつか、君にはちゃんと話さなくちゃと思ってた」
ヴィクター「ローズ」
ヴィクター「──僕はね、サイラスの身代わりとして育てられたんだ」
ローズ「・・・え? 身代わり?」
ローズ(どういうこと──?)
  第11話「君のため」終
  
  第12話に続く

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