第三話 化け猫の恩返し 後編(脚本)
〇墓石
ユウ「スダマさんの探してる人って・・・ もしかして、もう──」
村雨 庵「・・・・・・」
スダマ「気が早い奴らめ」
スダマ「これは、生きている人間の匂いだ」
ユウ「なんだ、びっくりしたー」
村雨 庵「・・・ちょっと気ぃつかったじゃねーか」
???「・・・フクちゃん?」
年老いた女性「────」
年老いた女性「そんなわけ、ないわよね」
村雨 庵「フクちゃん?」
年老いた女性「──あ、いえ・・・ ごめんなさいね、いきなり」
年老いた女性「子供の頃、飼っていた猫によく似ていたものだから」
年老いた女性「・・・フクちゃんのはず、ないのにね」
スダマ「・・・・・・」
村雨 庵「あ、おい!どこ行くんだよ!」
年老いた女性「元気な猫ちゃんねぇ、あなたのお家の子?」
村雨 庵「あーー・・・はい」
村雨 庵「逃げたのを追いかけたら、こんな所まで迷い込んじゃいまして」
年老いた女性「あらあら。それは大変ねぇ」
ユウ「スダマさんどうしたんですかね? 探してる人ってこのおばあさんじゃ・・・」
村雨 庵「あぁ、多分な」
村雨 庵「そんなに似てたんですか?その、昔飼ってた猫に」
年老いた女性「そうねぇ、フクちゃんも三毛猫だったから」
年老いた女性「お墓参りに来たら、フクちゃんに似ている子が居て驚いちゃったわぁ」
???「──おい、婆さん」
???「わたしが──」
???「いや、俺が」
???「墓の掃除を手伝ってや・・・」
???「・・・手伝おうか」
年老いた女性「ええっと、あなたは・・・」
村雨 庵「──そうだ!逃げた猫追いかけなきゃいけないんだった・・・」
村雨 庵「それじゃあ、私はこれで失礼します!」
ユウ「あっ 庵さん待ってください!」
???「・・・・・・」
???「そこの墓で眠っている人間に、昔世話になったことがある」
〇黒背景
???「・・・何か恩返しでも、と思ったまでだ」
〇霊園の入口
ユウ「庵さん、さっきの男の人って──」
村雨 庵「あぁ、あの化け猫だろうな」
ユウ「何で逃げてきたんですか?」
村雨 庵「・・・俺らがあの場に居る必要もないだろ」
ユウ(2人きりにしてあげたってことか・・・ こういう時、素直じゃないよなぁ)
村雨 庵「つーか、あいつ・・・人間に化けれるなら何で俺に運ばせたんだよ?」
〇墓石
年老いた女性「ふぅ・・・ずいぶん綺麗になったわね」
年老いた女性「助かったわ。お手伝いありがとう」
スダマ「・・・俺が言うのも何だが」
スダマ「俺が金でも騙し盗ろうとしている輩だったら、どうするのだ」
年老いた女性「そうねぇ、あなた嘘をついているようには見えなかったし・・・」
年老いた女性「それに、私の知っている人に似ていたのよ」
年老いた女性「だからお話してみたくって」
スダマ「似ている・・・?」
年老いた女性「えぇ。あなた、私の初恋の人になんだか似ているのよ。その人──」
スダマ「・・・・・・」
年老いた女性「こんなお婆ちゃんの初恋相手に似ているだなんて、嫌だったわよね」
年老いた女性「ごめんなさいね、忘れてちょうだい」
スダマ「・・・・・・」
スダマ「暇つぶしには丁度良い。構わず続けてくれ」
年老いた女性「あらそう?それじゃあ、お言葉に甘えて聞いてもらおうかしら」
年老いた女性「あれは、私が7つか8つくらいの時だったかしら・・・」
〇実家の居間
──物心がついた時から、私は父と猫との3人家族でね
幼い頃も、家でひとり留守番することが多かったのよ
幼い少女「フクちゃーん!」
幼い少女「あ!また大福みたいにまん丸で寝てるー!」
幼い少女「・・・あのね、フクちゃん」
幼い少女「お父さん、今日もお仕事で帰って来られないんだって」
幼い少女「お仕事が忙しいんだって。お父さん平気かなぁ」
幼い少女「・・・・・・」
幼い少女「──私にはフクちゃんが居るもんね!」
幼い少女「だから、寂しくなんて・・・」
幼い少女「・・・・・・」
フクちゃん「・・・・・・」
〇実家の居間
幼い少女「・・・うぅ・・・ぐすっ」
???「──おい、美代子」
不思議な少年「わたしが遊んでやるから、さっさと泣き止め!」
幼い少女「あ、あなた誰!?どうしてうちの庭に居るの!?」
幼い少女「何で私の名前を知ってるの!?」
不思議な少年「あー・・・そこの竹垣を飛び越えて来たのだ!」
不思議な少年「名前は・・・まぁ何だって良いだろう!」
不思議な少年「それより、どうする。遊ばぬのなら、わたしは帰るぞ」
幼い少女「え!?えぇっと・・・」
幼い少女「──あそぶ!」
不思議な少年「よし。では、わたしにお前らの遊びを教えろ!」
〇墓石
年老いた女性「不思議な子だったわ・・・」
年老いた女性「私と同い年くらいの男の子なのに妙に大人びた話し方で、遊びも知らないのよ」
年老いた女性「そのまま何度も一緒に遊ぶようになったのだけれど」
年老いた女性「叱られるのが嫌で、父には内緒にしていたの」
年老いた女性「だから、そんなドキドキ感が余計に楽しかったのよね」
スダマ「・・・・・・」
年老いた女性「だけどある時、飼っていた猫が突然姿を消してしまって──」
〇山の中
幼い少女「フクちゃん! フクちゃん!どこ行ったの!?」
『美代子が生まれる前から家に居たから、きっともう寿命を迎えたんだろう』
猫は死ぬ姿を見せないから──
と父は言っていたのだけれど
幼い少女(フクちゃんが死んじゃったなんて嘘・・・きっとどこかで迷子になってるんだ)
幼い少女(だけどもう、こんなに暗くなっちゃった・・・)
幼い少女(私、どっちから来たんだっけ・・・?)
幼い少女「こわいよ・・・どうしよう・・・」
???「──おい、美代子」
幼い少女「・・・・・・」
幼い少女「────!」
不思議な少年「帰り道はこっちだ」
幼い少女「なんで!?どうしてここに居るの!?」
不思議な少年「・・・清史が心配している。さっさと帰るぞ」
幼い少女「清史って・・・お父さんのこと!?」
不思議な少年「良いから早く来い──ほら」
幼い少女「えっ ちょっとまって!」
そのまま私の手を引いて歩く、その子の後姿を見て
あぁ私、この人が好きなんだって気が付いたの
不思議な少年「・・・それと、猫はもう探すな」
それから私は無事に帰れたけれど
結局フクちゃんは見つからないまま
その子もそれっきり、姿を現さなくなってしまって──
〇墓石
年老いた女性「だから私・・・笑わないで欲しいのだけれど」
年老いた女性「あの男の子が、フクちゃんだったんじゃないかと思うのよ」
スダマ「・・・・・・」
スダマ「そんな御伽噺のようなことが、あるはず無いだろう」
年老いた女性「ふふふ、そうよねぇ」
年老いた女性「お話にまで付き合ってくれてありがとう、お兄さん」
年老いた女性「久々に素敵な思い出を語れて、とっても嬉しかったわ」
スダマ「・・・そうか」
年老いた女性「・・・さて。あとはお線香をあげれば終わりね」
年老いた女性「────」
スダマ「・・・・・・」
〇実家の居間
〇墓石
スダマ「────」
スダマ「──ふっ」
スダマ「確かになかなか悪くないものだったな・・・美代子」
年老いた女性「・・・え?」
年老いた女性「・・・あら」
〇空
年老いた女性「あのお兄さん、いつの間に居なくなってしまったのかしら・・・」
〇霊園の入口
スダマ「なんだお前達。とっくに帰ったと思ったぞ」
村雨 庵「依頼料ばっくれられても困るからな。待っててやったんだよ」
ユウ「さっきのお婆さんとはちゃんと話せましたか?」
スダマ「・・・ふん、まあな」
スダマ「それよりも、お前が居るなら丁度良い」
スダマ「──庵!わたしを運んで帰れ!」
村雨 庵「はぁ!?お前自分の足で──」
スダマ「くあぁ・・・」
スダマ「人間に、化けるのは・・・疲れるのだ・・・」
スダマ「後は・・・頼んだ・・・ぞ・・・」
ユウ「・・・寝ちゃいましたね」
村雨 庵「だからこいつ、俺に運ばせてたのか・・・」
〇線路沿いの道
村雨 庵「あーもう相変わらず重てぇ!日が暮れてても猫毛があつい!」
ユウ「人気の少ない道ですし、腕まくりくらいしても良いんじゃないですか?」
ユウ「誰か来てもさっと隠せますし」
村雨 庵「それもそうだな・・・」
村雨 庵「──よいしょっと」
村雨 庵「・・・・・・」
村雨 庵(・・・やっぱり、気のせいじゃない)
〇モヤモヤ
村雨 庵(──腕の龍が、薄くなってる)
毎回切なくて綺麗なお話😭
庵の腕の刺青?アザ?の秘密も気になります🤔
人と人外の切ない交流の物語が大好きです! スダマ先生、人間に化けられたんですね! 好き!
スダマー! 私が抱っこして運んであげたいです!