夜夜夜

紅石

夜夜夜(脚本)

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紅石

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〇崩壊した道
「畜生・・・! テメェ、俺に何しやがった・・・!!」
「この私にこのような仕打ち・・・! ただですむと思わないことです」
「おい!ふざけんな!元に戻せよッ!」
「クソッ!逃げるな・・・! 畜生、畜生!」
「絶対テメェを見つけ出してやるからな!」

〇入り組んだ路地裏
あやね「はぁ、はぁ・・・!」
あやね(追いつかれちゃう!逃げなきゃ!)
あやね「わっ!」
スイ「おっと、これは失礼 大丈夫ですか、お嬢さん?」
あやね「あ、あの・・・ 助けてください!!」
スイ「助ける?」
あやね「怪人に追われてるんですっ! 青い怪人が、赤い武器を振り回して・・・」
スイ「なるほど でしたらこちらへ」
スイ「お気をつけて。入り組んだ道ですが、 撒くにはちょうど良いかと」

〇荒れた倉庫
あやね「ここは・・・?」
スイ「安心してください ここには私達以外誰もいません」
スイ「怪人が追って来ている様子もないですし ひとまずは大丈夫でしょう」
あやね「あ、ありがとうございます!」
スイ「お気になさらず」
スイ「私はスイと申します お嬢さんのお名前は?」
あやね「あ、えと、あやねです」
スイ「では、あやね 貴女を追っていた怪人ですが──」
?「おい、スイ。うるせぇぞ 誰と話してんだ?」
スイ「ああ、ラギ、只今戻りました」
スイ「そんなに驚かなくても大丈夫ですよ 私の相棒です」
ラギ「誰が相棒だ。誰が」
あやね「あの、スイさんに助けていただきました あやねで・・・」
あやね「かっ、怪人ー!!」

〇荒廃した街
  怪人は突然現れた
  目的も、出現場所も、出現方法も
  何もかも不明のまま、
  怪人は日本中に現れてその力を奮った
  数多の学者が怪人のことを調べたが、
  2年経った今も、
  怪人の生態や目的はよく分かっていない

〇荒れた倉庫
スイ「あっはっはっ 大丈夫ですよ、あやね」
スイ「ラギはちょっと変わった怪人ですので 少なくとも今ここで、 貴女を襲ったりはしませんよ」
ラギ「おいスイ!何なんだよこのガキは!」
スイ「おや貴方、 私達の話を聞いていなかったのですか?」
ラギ「寝てた」
スイ「まったく・・・ 1人のときは用心しろと何度も 貴方に死なれては困るのですから」
ラギ「こんなとこで死ぬかよ で、そのガキは?」
スイ「怪人に追われていたところを、 私が助けてここまで連れてきたのです」
ラギ「ハッ!お前が人間を助けた? そりゃあ明日は雪が降るかもなぁ」
スイ「どうぞお好きに言ってください」
スイ「あやね、貴女を襲った怪人ですが どのような特徴でしたか?」
あやね「えっと、青い体の怪人で」
スイ「他には?」
あやね「赤色の武器みたいな、 鋭いものを持ってたような」
ラギ「あの野郎か?」
スイ「それは直接会ってみないことには何とも」
ラギ「今度こそ絶対に逃がしはしねぇ・・・ きっちり落とし前つけさせてやる」
あやね「怪人が怪人を追ってる・・・?」
ラギ「こんなクソみたいな世の中、色々あんだよ」
スイ「私たちはその怪人を探して、 ずっと旅をしているんですよ この街にも昨日来たばかりです」
ラギ「どこの街も変わらねぇな 怪人に荒らされて酷い有様だ」
ラギ「まぁおかげで、 俺たちがここで寝泊まりしてても 誰にも見つからねぇけどな」
あやね「ここで? ホテルとかには泊まらないの?」
ラギ「この見た目でホテルに行けると思うか?」
あやね「あ!そ、そっか・・・ えっと、ごめんなさい」
ラギ「別にお前が謝ることじゃねぇよ」
スイ「あやねを襲った怪人は 私たちが引き受けましょう 貴女は陽が沈まないうちに家へ帰りなさい」
あやね「え!?でも、危ないよ!」
スイ「大丈夫ですよ こっちだって怪人ですし、 それにこういった武器も」
スイ「ちゃんと持っていますから」
ラギ「ここの裏路地を出るまでは俺たちが ついててやるから、早く──」
あやね「きゃぁああっ!!」
ラギ「怪人か!? スイ、テメェつけられたな!」
スイ「文句はあとでいくらでも聞きます!」
スイ「あやねはここに隠れていなさい」
ラギ「絶対に出てくんじゃねぇぞ!」

〇入り組んだ路地裏
ラギ「チッ、どこいきやがった」
スイ「私たちがここにいると知って狙ったのなら 間違いなく近くにいるはずです」
ラギ「おい!出てこいクソ野郎!」
?「なんだ貴様ら オレはあのガキを狙ったんだが」
?「まぁいい、貴様らを殺して あとでゆっくりあのガキも殺してやろう」
怪人「覚悟することだ!」

〇崩壊した道
ラギ「なっ、なんだテメェ!」
スイ「不躾な怪人ですね」
?「お前たちには何の恨みもないが 私の実験台になってもらう」
?「好きなだけ私を恨み、復讐するといい」
?「再び会えれば、の話だが」

〇入り組んだ路地裏
「・・・・・・」
ラギ「おい誰だよコイツ!ハズレじゃねぇか!」
スイ「青い身体に赤い武器・・・ なるほど見た目はその通りですが」
ラギ「全然ちげぇだろーが! あの野郎はこんな小物感溢れるヤツ じゃなかったぞ!」
スイ「それは確かに このような粗雑な怪人では ありませんでしたね」
怪人「さっきから何なんだ貴様らは!!」
スイ「おや、まだいたのですか? もう貴方に用はないので、 お帰りいただいてけっこうですよ」
ラギ「人間を襲うんじゃねぇぞ」
怪人「き、貴様ら・・・ このオレをこけにしたこと、 後悔するがいい!」
スイ「おっと」
ラギ「危ねぇな」
怪人「死ねぇ!」
ラギ「おい!銃持ってんだろ! 反撃しろよ!」
スイ「そう言われましても・・・」
怪人「はっはっはっ!どこを狙っている! 第一、こんなものオレには効かぬ!」
スイ「やはりこういった武器は苦手でして」
スイ「貴方こそ戦ってきたらどうです? 怪人なのですから」
ラギ「あ!?喧嘩売ってんのかテメェ!」
スイ「事実でしょう。今は、ね」
怪人「デカい口を叩いていた割に 反撃の一つもしてこないとはな!」
怪人「それとも、あのガキが逃げるまでの 時間稼ぎでもしているのか?」
怪人「ふん、無駄なことを すぐに仲良くあの世に送ってやるから さっさと諦めることだ!」
スイ「時間稼ぎ、ですか ある意味当たってはいますが」
スイ「それは、あの子の為ではありませんよ」
ラギ「テメェこそ、ぐだぐだ喋ってる暇はねぇぞ」
ラギ「ほら、いいのか? 陽が沈むぜ」

〇入り組んだ路地裏
怪人「陽が沈む、だと? ふん、その程度で何ができる!」
怪人「暗ければ隠れられるとでも思ったか 無意味なことを!」
スイ「では、明るく照らしてあげましょう」
怪人「ギャァァアアッ!」
怪人「な、なんだ・・・!?」
怪人「!」
怪人「き、貴様ら・・・ それはいったい、どういうことだ!!」
ラギ「どういうことも何も、 これが俺たちの本当の姿だよ」
ラギ「おらスイ!銃よこせ!」
スイ「そんなに叫ばずとも渡しますよ 私には無用の長物ですから」
ラギ「それじゃ、俺たちが口だけじゃねぇって とこを見せてやるか!」
怪人「ぐぁ!」
怪人「ただの銃弾が、 このオレに傷をつけるだと!?」
ラギ「はっ。日本に来るからには もうちっと勉強しとくんだったな」
ラギ「テメェら怪人が現れてからの2年間 人間が何の対処法も見出せてねぇと 思ったのか」
怪人「このオレが人間如きに・・・!」
怪人「ぎゃ!」
スイ「怪人にやられるほうがお好みで?」
怪人「怪人がなんで・・・人間の味方なんか」
スイ「このような世の中、色々あるのですよ」
スイ「それに、私は人間の味方ではありません 私は私のために動いているだけです」
怪人「ひ、た、助けてくれ・・・」
ラギ「なら質問に答えろ この街にテメェ以外の怪人で、 青い身体に赤い剣みてぇな武器を持った 怪人はいるか?」
怪人「し、知らねぇ! そもそも、オレ以外の怪人は この辺りじゃ見たことねぇよ!」
スイ「この街もハズレでしたか」
ラギ「クソッ、どこにいるんだあの野郎」
怪人「正直に話したんだ 命だけは助けてくれるよな!?」
ラギ「もう二度と人間を襲うんじゃねぇぞ」
怪人「へへ・・・ありがとよ」
怪人「甘ちゃんでいてくれて、ありがとよ!」
怪人「何!?どこに──」
怪人「がぁあああッ!!」
ラギ「見え見えなんだよ」
スイ「見苦しいですね」
怪人「あ、ちが、今のは・・・」
スイ「残念でしたね」
スイ「二度目の命乞いを信じるほど、 甘ちゃんではないのですよ。私たちは」

〇入り組んだ路地裏
スイ「・・・見ていたんでしょう 出てきなさい」
ラギ「あ?」
あやね「あの、えっと」
ラギ「お前!隠れてろっつっただろ!」
あやね「ごめんなさいっ! 2人が心配で」
あやね「・・・あの、その スイさんとラギさんの・・・姿は・・・」
ラギ「俺たち、怪人を探してるって言ったよな」
あやね「うん」
ラギ「その理由が、俺たちにかけられた 呪いを解くためなんだよ」
あやね「呪い?」
スイ「あくまで私たちがそう呼んでいるだけで どういった類の術なのかは、 怪人の私にも分かりませんが」
ラギ「俺は元々人間で、こいつは怪人 けど呪いのせいで、俺は昼に怪人に コイツは人間になっちまう」
スイ「しかもこの呪い、 どちらかが死ねば一生解けない というおまけつきです」
スイ「私たちはまさに 一心同体というわけですね」
あやね「そんな・・・」
あやね「でも、警察とか、怪人の研究してる人たち に助けてもらえば!」
ラギ「人間に変化できる怪人だ、つって 捕まるのがオチだろうな」
あやね「あ、そっか・・・ごめんなさい」
ラギ「だから、お前が謝ることじゃねぇって」
ラギ「ま、そういうわけで 俺たちのことは黙っといてくれ」
あやね「うん」
スイ「さぁ、もう帰りなさい 怪人はいなくなりましたが、 陽は沈んでいるのでお気をつけて」
あやね「うん。ありがとう! スイさん、ラギさん」
あやね「・・・あのね」
ラギ「あ?どうした?」
あやね「あたしね、夜は暗くて怖かったの でも2人にとって大事な時間 なんだなって思うと、 夜もちょっとだけ好きになれたよ」
あやね「助けてくれてありがとう! 元に戻れるように応援してるね!」
ラギ「おう。気ぃつけて帰れよ」
あやね「ばいばい!」
スイ「それでは、私たちも行きますか もうこの街に用もないでしょう」
ラギ「いや、ちょっと待ってくれ やり残したことがある」

〇ラーメン屋
スイ「喧嘩売っているんですか貴方!」
ラギ「仕方ねぇだろ! 俺は夜しか店にいけねぇんだから!」
ラギ「ラーメンぐらい好きに食わせろ」
スイ「・・・はぁ 食べたらさっさと街を出ますよ」
ラギ「あ、銭湯にも行くから」
スイ「・・・元の姿に戻ったら、 一番に貴方を殺してあげるので 覚悟しておきなさい」
ラギ「はっ、そのセリフ そのままそっくりお返しするぜ」
ラギ「俺のこの顔の傷 誰がつけたか忘れたわけじゃねぇだろ?」
スイ「私たちは一心同体 その時が来るまでは仲良くいたしましょう」
ラギ「一つ日本語を教えてやるよ、スイ そういう時は、呉越同舟って言うんだぜ」

コメント

  • 「夜夜夜」がずっと気になっていたら、まさかそういうことだったなんて。粋なタイトルですね。スイとラギは呉越同舟の時期は過ぎて今や一蓮托生の間柄になっているような気がします。

  • 人間と怪人が入れ替わる事で二人三脚の生活ですね。善と悪の心が一緒に行動するからには戦いが生まれるところ、何だかいい関係ではないですか。

  • もし自分も彼らのように昼と夜とで姿を変えられる状況に追い込まれたら、それだけで絶望してしまいそうなのに、悪の怪人を倒すために少女の身柄も保護したり、このコンビには頭が下がります。ラーメンと銭湯、やはり日本人には必要不可欠ですね!

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