それいけ!地球侵略ラジオ!(脚本)
〇ラジオの収録ブース
フレイミー「みっなさーん!こんにちは!今日も元気に燃えるDJ、炎の怪人ことフレイミーだぜ!みんな、今日も元気に地球侵略してるかい!?」
軽快な音楽と共に、俺はマイクの前で喋りはじめた。地球侵略ラジオ、略してちきゅラジ。
これは、地球を侵略するべく宇宙からやってきて、日々地球侵略のために頑張っている宇宙人たちを紹介するというラジオである。
そう、地球人たちは知らない。この惑星には、既に大量の宇宙人がやってきていることを。
彼等の多くが、この資源豊かな惑星を狙い、日々牙を研いで侵略の日を待っていることを。
怪人によっては、派手な争いなど起こさず、水面下で着々と侵略の準備を進めていたりもする。俺もまたその一人ってなわけだ。
ふふふ、人気ラジオDJとして不動の地位を築き、このカリスマ性で地球人どもを虜にしてくれよう!
そしていつか、俺だけのユートピアを地球に築いてやるのだ、楽しみで仕方ないぜ!
地球人どもはこんなラジオなんて、宇宙人設定のDJがおふざけで流してるだけだと思ってるんだろうが。
このラジオの存在は、各地に散らばっている多くの宇宙人たちに広まっていることを俺は知っている。
いつか、みんなで同盟を組んで地球人たちをあっと言わせてやるのも面白いかもしれないな!
フレイミー「では、今日も早速ですがお便り行ってみましょー!さあ、ここにどどーんと用意された封筒をですね、一枚引いてみましょうか!」
メールでもお便りは来るが、どうにも宇宙人たちはこのお手紙ってやつが好きな奴らが多い。
透明なプラスチックのボックスの中から、俺はぺろっと一枚を引いてみた。
さて、今日も悩める宇宙人たちの相談に、バンバン答えちゃおーかな!
フレイミー「それでは一枚目!えーっと、ハンドルネームは“サムライってマジかっこいいのに何で滅んだの?”さんから!」
フレイミー「・・・・・・長いんでとりあえずサムライさんって呼ばせていただきますね」
なんでハンドルネームって長いのが好きな奴多いんだ。心の中でツッコミつつ、俺はお便りを読む。
〇渋谷のスクランブル交差点
ソードダンス星人「初めまして、フレイミーさん。私は最近に日本にやってきたばっかりの、新人の宇宙人です」
ソードダンス星人「この惑星を侵略するため、ソードダンス星から偵察兵として送り込まれたのですが、既に苦戦しています」
ソードダンス星人「私達、ソードダンス星は生まれつき背中と腰に剣がぶっささっているのですが、」
ソードダンス星人「そのせいでこの国の警察に見つかるたび追いかけまわされるんです。銃刀法違反ってなんであるんですか」
ソードダンス星人「昔はこの国も普通に刀持って歩いてたって話でしょ!?あー、あと数百年くらい早く来ればよかったと後悔しっぱなしです・・・」
ソードダンス星人「体中の剣ぜんぶひっこぬいて外を歩かないとだめですか」
ソードダンス星人「俺にとっては服脱いで歩くも同然なんですが。全裸で歩いてるようなもんなんですが。お願いします、対策を教えてください」
〇ラジオの収録ブース
この地球侵略ラジオのお約束。基本的に、送ってくれた宇宙人は自分の姿を写真に収めて送ってもらうことになっている。
ソードダンス星人のサムライという人物は、見事に背中に剣をぶっさし、腰にもぶっさし、
左手にも剣を握るという超カッコつけポーズで映っていた。
かっこいいものはかっこいい。でも。
フレイミー「いや、普通に危険人物だってこれ。郷に入れば郷に従え、頑張って全裸で歩け」
俺はにべもなく言い放った。
フレイミー「治安良いことがウリの日本でこの格好はあかん。普通にあかん」
フレイミー「本当に逮捕されたら上官泣いちゃうぞ?剣はおうちに置いていきなさい、な?」
冷たいと言われるかもしれないが、どうしようもない。俺はさくっと次の一枚を引いた。
フレイミー「はいはい次。ハンドルネーム“悪役になりたい”さん。えーっとなになに?」
フレイミー「“私は何年か前から、地球に恐怖を与えるべくやってきた惑星国家デスデビル出身の宇宙人です”?」
〇広い公園
デスデビル星人「こんにちはフレイミーさん。私の悩みを聞いてください」
デスデビル星人「私は、この地球を暗黒の恐怖の渦に叩きこむため、銀河の彼方にあるデスデビル星からやってきた宇宙人です」
デスデビル星人「三年前からこの地球に来ているのですが、全然侵略計画が実行できません」
デスデビル星人「降り立って早々、ガンつけてきた男どもをぶちのめしたら“襲われてたのありがとう!”と地球の女の子に感謝されてしまいました」
デスデビル星人「さらに、公園で計画を練っていると、子供達が恐れるどころか次々と群がってきて遊んで遊んでとねだってきます」
デスデビル星人「ちょっとびびらせてやろうとブランコをぐるんぐるん回してやったらめっちゃ喜ばれます」
デスデビル星人「なんでも、たまたま現在放映中の特撮ドラマのヒーローと私がそっくりだとか」
デスデビル星人「勝手に人の姿をヒーローとして使うなんて酷いじゃないですか!テレビ局を訴えれば勝てるでしょうか」
〇ラジオの収録ブース
フレイミー「・・・・・・あ、確かに似てるわ」
写真を見て、俺は苦笑いするしかなかった。つーん、と高く立った角、さながら黒系に金色をあしらった鎧系のシルエット。
確かに似てる。現在放送中の子供向け特撮番組、“宇宙人ライダー・ゼロ”の主人公に。
フレイミー「残念ながら、キャラ被りってのは宇宙のどこでもあるんだよ。俺も自分のキャラが誰かと被ってねえかいつも心配だもん」
フレイミー「いつも頑張って焔吹き上げて、俺らしさアピールしてるけどさあ」
はあ、とため息をつく俺。
フレイミー「完全に同じなわけじゃないし、テレビ局訴えてもお前が惨めになるだけだからやめとこうぜ」
フレイミー「あと、そんなこと言うならその微妙にお人よしな性格をなんとかした方がいいと思う・・・悪役が子供と遊んでやるなって。はい次」
誰も彼も地球、特にこの日本では本当に苦労しているようだった。
さて、次のお便りは。
フレイミー「なになに?ハンドルネームは・・・・・・“ツートンカラーもイカすんじゃね?”さんからだな」
〇雪洞
ツートンカラーな怪人「フレイミーさん、こんにちは。私は十年前から、この惑星で虎視眈々と地球侵略の機会をうかがっている者です」
ツートンカラーな怪人「十年前にはまず真っ先に東京タワーによじ登り、同じ年にはハワイの海も満喫いたしました」
ツートンカラーな怪人「富士山からエベレストまで、私の強靭で屈強な体格ならば冬の雪山も全然へっちゃらです」
ツートンカラーな怪人「特に富士山は冬には人間達には閉鎖されているので一人でエンジョイしまくりです」
ツートンカラーな怪人「最近は宇宙人専用のエステに行って、体の半分を素敵なピンクに塗って貰いました。写真を添付しますね」
ぴらり、とテーブルに落ちるオレンジとピンクに塗り分けられた怪人の写真。
〇遊園地の全景
ツートンカラーな怪人「悩みといえばひとつです。私、人間に変身できないんです」
ツートンカラーな怪人「だから、遊園地の乗り物は大抵サイズオーバーで乗ることができません」
ツートンカラーな怪人「ディズニーランドもユニバーサルスタジオジャパンも乗り物全制覇するのが夢なのに・・・・・・」
ツートンカラーな怪人「なんとかフレイミーさんの権限で、3メートル級の怪人も乗りものに乗れるように交渉してもらえませんか?お返事待ってます」
〇ラジオの収録ブース
その言葉に。俺は思わずツッコミを入れた。
フレイミー「いや、無理だよ!?俺ただのDJだよ、権限ってナニ!?」
一体此の人、俺をなんだと思ってるんだ。いや、それ以前の問題で。
フレイミー「これは地球侵略ラジオだっつってんじゃん!侵略する気もなく地球生活エンジョイしてる奴は御帰りくださいー!!」
フレイミー「地球の生活にどっぷり浸かりまくってて、宇宙人として恥ずかしくないの、ねえ!?」
まあ。
俺もユニバとかの乗り物は超乗るので、人のこと言えないんですが。
フレイミー「・・・・・・どうしても乗りたいなら、頑張って人間に変身する方法覚えて」
フレイミー「ていうかその姿で夢の王国に行って、警察呼ばれなかったの逆にすごいよ。キャストさんたちに感謝してね・・・・・・」
なんだろう、すんごい脱力感。
今日も今日とて、地球侵略ラジオの夜はふけていくのだった。
脱力するくらい、自由な怪人達ですね(笑)
怪人のみんなに耳寄りな情報!
地球人は笑顔で悪魔の計略を練る生き物だから、みんな背後には気を付けようね!
平和が叫ばれる時代は平和でなくなっているというように、この「地球侵略ラジオ」にたくさんの相談が届いて、放送が続いている限り地球は平和なのかもしれないと思いました。
とんでもない設定なのにナチュラルな空気感で楽しくなってきますね。それにしても、怪人さん方が地球の環境に馴染みすぎで、ラジオ文化にもフィットしすぎですね!