怪人だって料理がしたい!

青猫

料理をしたい怪人と、バイトをしたい大学生(脚本)

怪人だって料理がしたい!

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〇商店街
  もうすぐ夏休みのある日。
寿人「困ったなあ・・・」
  俺、宝田寿人はピンチを迎えていた。
  毎年、長期休暇のときだけ働いていた、
  アルバイト先が無くなりそうなのだ。
寿人(バイトと言うか、お手伝いみたいな もんだけどね)
  それは「宝田食堂」という
  小さな食堂。
  俺の祖母の店だ。
  元々夫婦で経営していたのだが、
  祖父が亡くなってからは
  祖母が一人で切り盛りしていた。
  高校の頃から俺は
  長期休暇のときだけ手伝いをして、
  お小遣いをもらっていた。
  しかし、先日祖母が腰を痛めて
  入院してしまった。
  当然、食堂は休業中だ。
寿人「ばあちゃん・・・大丈夫かなぁ? しかし夏休みのバイト先を どうしたものか・・・」
寿人「なんか騒がしくなってきたな」
「怪人だー!」
寿人「ええっ!」
  そういえばニュースでやっていた。
  「シタデル」という怪人の組織があり、
  人々を襲う事件が多発しているのだと。
寿人「シタデル・・・まさかこんな郊外に 現れるなんて・・・」
「シタデルだ! 逃げろー!!」
アイマ「フフフ・・・ 我らの知名度も浸透してきたようだ」
イパス「それはいいが 目標のものはまだ見つからないのか?」
アイマ「まあ焦るな ライカが今探している」
???「お前たち、そこまでよ!!」
寿人「もしや、彼女は・・・?」
アカツキ「怪人あるところにアカツキあり 明けない夜はありません 必ず来る滅びを受け入れよ!!」
寿人「やっぱり、魔法少女アカツキだ!」
  彼女は正体不明の「魔法少女アカツキ」
  怪人が起こす事件にすぐに駆けつけ、
  不思議な力を使い
  人々を救ってくれるという。
アカツキ「皆さん ここは私に任せて早く逃げて!」
寿人「は、はい!」
  大変なことになってしまった。
  とりあえず店に入って
  避難しておこう・・・

〇シックなカフェ
寿人「やれやれ、ばあちゃんから 鍵を預かっていて助かったよ」
寿人「・・・って なんか厨房から音がするな?」
  祖母がいるはずがない。
  ということは・・・・・・
  まさか、侵入者?
寿人「とにかく確認しないと」

〇広い厨房
ライカ「フンフンフン~♪」
寿人「な、何だお前!」
寿人「っていうか勝手に 厨房に入って何してる!?」
ライカ「うわっ!?」
ライカ「ひぃ~すみません!! 許してください!!」
寿人「なんだ? 怪人にしては思ったより気弱だな」
ライカ「そうです。私はライカと言いまして 実は怪人なんです」
寿人「見ればわかるよ それより、厨房で何してたんだよ」
ライカ「それは料理に決まってるでしょう!」
寿人「料理を? 怪人が?」
ライカ「ああ! もうそうやって人間は すぐ見た目で判断する~」
ライカ「怪人だって料理をしたいやつも いるんですよ!」
ライカ「でも、レストランみたいな店で 雇ってくれる所もないから」
ライカ「しかたなくシタデルみたいな 所で暴力的な仕事を イヤイヤやってるんです!」
寿人「そうだったのか・・・ いや、ごめんな」
寿人「それはそれとして 勝手に入るのは不法侵入だぞ!」
ライカ「本当にすみません 人のいない厨房を見て」
ライカ「思わず料理がしたくなり・・・ 作りたかった料理を試してたんです」
寿人「ふうん・・・」
  それだけ作りたかった料理・・・
  さぞ自信作なのだろう。
  そんな事を考えていると、
  すっかりお腹が空いているのに気づいた。
寿人「わかったよ。 今回のことは許すから」
ライカ「本当ですか!? ありがとうございます!!」
寿人「ああ。その代わり その料理を食べてみたいな」
ライカ「はい! どうぞどうぞ! すぐに作るので ぜひ食べて下さい!」
  やった。
  これでタダでご飯が食べられるぞ。
  しかし怪人の料理・・・一体どんなものだろうか?

〇シックなカフェ
  しばらく待っていると
  店の中にいい匂いが漂ってくる。
ライカ「できました! 名付けて 「黄金のオムライス」です!」
寿人「黄金・・・? 黄色いってことか?」
  オムライスが黄色なのは当たり前では?
  料理も一見普通のオムライスに見えた。
寿人「まあいいや いただきます」
寿人「・・・これは」
寿人「中のライスがカレーピラフだ!」
ライカ「カレーとオムライス どちらも美味しい料理ですからね」
ライカ「二つを合わせれば さらにに美味しくなるに違いない と思って作りました」
ライカ「どうですか?」
寿人「単純な発想だな・・・」
寿人「でもたしかに美味しいよ」
  それは発想というより
  ライカの料理の腕によるものだ。
  卵の火加減も良く、
  カレーピラフの塩加減も丁度良く、
  ソースが絶妙に味を引き立てている。
寿人(一応食堂で働いてたけど 俺にはこんなレベルの料理は作れない)
寿人「そうだ!」
寿人「ライカ、君この店で 料理を作りつづける気はないか?」
ライカ「どういうことですか?」
寿人「いやあ、この店は俺の おばあちゃんが経営してたんだけど 今は入院しているんだ」
寿人「他にまともに料理できる人も いないから休業してたけど・・・」
寿人「その間、君が料理すれば いいんじゃないかって思ってさ」
寿人「おばあちゃんには後で うまく話しておくから。 どうかな?」
ライカ「そう・・・ですね」
ライカ「急に言われても・・・」
寿人「やっぱりダメか。 そういえばシタデルとかいうのに 入ってたんだよな」
ライカ「でも、本当にそれが できるなら・・・やってみたい」
寿人「本当か!? いやあそう言ってくれると 嬉しいな!」
寿人「実は夏休みのバイト先が急になくなって 困ってたんだ」
寿人「これもなにかの縁だ。 一緒に頑張ろうぜ!」
ライカ「はい! まずお店の準備をしないとですね!」
イパス「ライカ!! まだ「例の物」は見つからんのか!?」
アイマ「こっちは魔法少女との戦いで 手一杯なんだ! 早くしろ!」
ライカ「しまった!!」
寿人「あいつら・・・外にいた怪人たちか。 「例の物」って?」
ライカ「はい。 実は今日私たちがここにきたのは・・・」
ライカ「この商店街に、 魔法少女アカツキの正体に関する 証拠があるという 情報提供があったからです」
ライカ「その証拠品を探していたのですが 見つからなくて、すっかり嫌になり 料理に没頭して忘れてました・・・」
寿人「はあ、大変だな・・・」
寿人「でも今回は帰ったほうが良さそうだな。 店の準備についてはまた今度 進めようか」
ライカ「そうですね・・・そうします」
ライカ「寿人さん、絶対にまた 戻ってきますからね!」
寿人「ああ 待ってるからな!」
  そうして、ライカはシタデルの
  仲間のもとに帰っていった。

〇広い厨房
  その後・・・
寿人「うん? ライカの作ったカレーピラフ だいぶ残ってたんだな」
寿人「そうだ! せっかくだからこれで 黄金のオムライスを作っておこう!」
  卵の部分だけなら
  ライカほど上手くはないけど
  作れるはず・・・
  後で見舞いに行く時、
  祖母にも
  食べてもらえるかも・・・
寿人(そしたら店についての説明も しやすいしな!)
???「すいません~」
寿人「えっ! お客さん?」
  さっき入り口を開けたままだったようだ。
  慌てて俺は店内へ向かう。

〇シックなカフェ
明美「あ、寿人くん! 久しぶりだね〜」
寿人「明美さんか。 い、いらっしゃいませ」
  彼女は島田明美。
  この商店街に住んでいる。
  昔から時々この食堂に
  お客さんとしてくるので
  知り合いだった。
明美「おばあさん入院したんですってね。 でもお店が開いてたから 不思議に思って・・・」
寿人「ああ、入院中だよ。 俺だけじゃ この店をどうにも出来なくてね・・・」
寿人「でもさっき店を開きたいっていう料理人と 会ったんだ!」
寿人「もしかしたらその人と なんとかできるかもしれないよ」
明美「本当!?」
寿人「本当だよ。そうだ!」
寿人「その人が作った料理を食べてみてよ 感想を聞かせて!」

〇広い厨房
  俺は早速「黄金のオムライス」を
  出してみることにした。
  卵の部分は、なんとか見まねで作ってみる。

〇シックなカフェ
明美「これがその料理人さんの・・・ 普通のオムライスっぽいけど」
明美「わあ! 中身がカレーピラフ! すごい美味しい!」
寿人「よかった~ 俺以外の人にも美味しいって ことだな!」
明美「こんな美味しい料理が作れる人なら きっと素敵な人に違いないね! どんな人なのかしら?」
寿人「そ・・・それは・・・」
寿人(なんて答えればいいんだ?)
明美「うん? まあいいか ごちそうさま!」
明美「じゃあ、お店の再開、楽しみにしてるね~」
寿人「ああ、またな!」
  なんとか誤魔化せてよかった。
  しかしライカが実際に料理をつくるときは
  どうするか考えなきゃな・・・
寿人「問題は山積みだが 上手く行けば 新しい料理店ができそうだな!」
  そう思うと
  これからの夏休みがちょっとだけ
  楽しく感じられるのだ。

コメント

  • 美味しい料理の前では、人はみな平等に食べる喜びを噛み締めて、味わう。
    怪人さんの料理で、いつかヒーローも怪人も関係なく、笑顔で食事をできる世界になればいいですね!

  • ライカさんのお料理、本当に美味しそうですね。
    私もオムライスが食べたくなってきました。
    怪人の料理人って言うのもいいんじゃないでしょうか。
    腰も低くて接客業に向いてる気がします。

  • 好きなことを自由にやってるとき、また自分の好きなことがたくさんできる未来を夢見ているときというのは、どうしてこんなにもワクワクするのでしょうか。読んでいるだけで、私自身も希望をわけてもらえたような前向きな気持ちになりました。

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