読切(脚本)
〇砂漠の基地
ギリークス
地球侵略総本部
〇謎の施設の中枢
ボス・ザイラクス「諸君、良く集まってくれた」
部下たち「イー!」
ボス・ザイラクス「前回も残念ながら 我々はシャカリキマンとの 戦いに敗れ、大事な仲間を失った」
部下たち「イー!」
ボス・ザイラクス「しかし! 我々の辞書に 止まるという文字はないッ!」
部下たち「イイーーーー!!」
ソクラテス将軍(あーあ、あんなに煽っちゃってまあ。 無理なんだよ。無理無理)
ソクラテス将軍(あっちは地球全体で色んな武器を 開発してくるんだぜ)
ソクラテス将軍(こっちは怪人一人につき 一個の固有能力と巨大化とかで 戦ってんのにさぁ)
ソクラテス将軍(『新兵器登場!』とかで毎回全部 ひっくり返されるし・・・ そもそもなんで地球侵略とか 言うのかね)
ソクラテス将軍(すんません、一緒に住ませてください って言ったらいいじゃん)
ソクラテス将軍(あー、ハワイでバカンスしてぇなあ)
ボス・ザイラクス「ソクラテス将軍!」
ソクラテス将軍「え、俺? じゃなくて・・・イ、イーー!」
ソクラテス将軍(次行けとか言うなよ)
ボス・ザイラクス「軍師であるそなたに問いたい 次にシャカリキマンに向かうのは 誰が相応しいと思うか?」
ソクラテス将軍「イー!」
ソクラテス将軍(んなもん誰でもいいだろ じゃあ適当に・・・)
俺は部下の一人を適当に指差した
ボス・ザイラクス「おお! ナージャラムか! 流石はソクラテス将軍 よく状況をわかっておるな」
ボス・ザイラクス「ナージャラムよ! シャカリキマンを内部から かき乱し、基地を崩壊させろ!」
ナージャラム「イーーーー!」
ソクラテス将軍(幹部でよかった・・・)
〇空
〇広い公園
子供1「あははは、待て待てー」
子供2「こっちこっちー」
「あはははは!」
〇公園のベンチ
ソクラテス将軍「長閑だな・・・ 実に心が安らぐ」
ダッダッダッダッ
ソクラテス将軍(なんだ?)
〇空
???「ホワイト企業は許さない! サービス残業喜んで! パワハラ窓際ウェルカム! そう、俺の名は・・・」
〇広い公園
緑沢 シンジ「シャカリキーーーーグリーン!!」
緑沢 シンジ「・・・・・・」
ソクラテス将軍「・・・どうも」
緑沢 シンジ「どうもではないッ! 怪人よ、成敗してくれる!」
ソクラテス将軍「ちょっと待ってくれ。 俺はまだ何にもやってないじゃないか」
ソクラテス将軍「それとも何か? ヒーローってのは 怪人見たらすぐ殺すのか。 それ、コンプラ的にどうよ」
緑沢 シンジ「むう。た、確かにそうだな。 ここで何をしている?」
ソクラテス将軍「(単純でよかった) ひなたぼっこだよ。 怪人だってたまには日に当たりたい」
緑沢 シンジ「そうか。まあ、たまには太陽に 当たらないと健康に悪いよな・・・」
ソクラテス将軍(信じたよ・・・ん? そうだ! こいつを利用しない手はない)
ソクラテス将軍「グリーンとか言ったな。 お前、昼ご飯は食べたのか?」
緑沢 シンジ「ひっ、昼ご飯だと? これからだが」
ソクラテス将軍「良かったら俺の行きつけで 一緒に食べないか? 話がしたい」
緑沢 シンジ(くっ・・・これは罠か? しかし昼飯に誘ってくる怪人など いるわけがない 何か理由があるのか?)
緑沢 シンジ「そんなことをして俺に 何のメリットがある! 貴様、罠に嵌めようとしているな?」
ソクラテス将軍(変なところ疑り深いな)
ソクラテス将軍「他意はない! 俺はソクラテス将軍。 ギリークスの幹部だ」
ソクラテス将軍「貴様に他のヒーローを出し抜ける 情報を与えることを約束しよう。 無論、昼ご飯も奢りだ!」
緑沢 シンジ(これはチャンスなんじゃないか レッドやブルーをこの機に 出し抜けば・・・)
〇研究施設のオフィス
博士「今回はグリーンの働きで 怪人を倒すことができた。 グリーン、お手柄だったな!」
緑沢 シンジ「シャカリキマンとして当然のことを したまでです!」
柊 碧士「凄いよ、シンジ! やっぱり君は僕の永遠のライバルだ!」
赤峰 ライ「お前には負けだぜ。 シャカリキマンはお前が ナンバーワンだ!」
緑沢 シンジ「何を言う碧士、ライ。 三人が力を合わせたから勝てたのさ。 誰がナンバーワンなんてない」
緑沢 シンジ「俺たち三人が全員で ナンバーワンなのさ!」
柊 碧士「シンジーー!」
赤峰 ライ「コイツ! 言うようになったじゃねぇか!」
緑沢 シンジ「わっはっはっは!」
〇広い公園
緑沢 シンジ「ハッ!」
ソクラテス将軍(おっ、帰ってきた)
緑沢 シンジ「虎穴に入らずんば虎児を得ず! ソクラテス将軍といったな。 昼飯、受けて立とう!」
ソクラテス将軍「よし、こっちだ。 ついてこい」
〇空
〇山中のレストラン
〇大衆居酒屋
ソクラテス将軍「邪魔するよ」
食堂店員「ああ、ソクラテスの旦那! なんだい今日はお友達も一緒かい ゆっくりしていきな!」
ソクラテス将軍(お友達というか敵なんだが まあこの際どうでもいいか)
ソクラテス将軍「鯖味噌定食を二つ頼む」
食堂店員「あいよー!」
緑沢 シンジ「ここは・・・というか あの店員は怪人を気にしないのか」
ソクラテス将軍「ああ、何でも細かいことは 気にしないタチだそうだ」
緑沢 シンジ「細かい・・・?」
〇山中のレストラン
食堂店員「はいよっ! 鯖味噌定食二つ!」
〇大衆居酒屋
食堂店員「うちの看板メニューだよ! 食べとくれ」
ソクラテス将軍「頂こう さあ、グリーン。君も」
緑沢 シンジ「あ、ああ・・・」
緑沢 シンジ「こっ・・・これはッ!」
〇山中のレストラン
うまーーい!
〇大衆居酒屋
緑沢 シンジ「旨い! こんな旨い鯖味噌は 生まれて初めてだっ!」
緑沢 シンジ「ガツガツ。モグモグ」
食堂店員「んまーっ、いい食べっぷりだね! ご飯はおかわり自由だから 遠慮なく言っとくれ!」
緑沢 シンジ「コクコク」
ソクラテス将軍「女将さん、おかわりを頂こう」
緑沢 シンジ「俺も!」
〇山中のレストラン
〇大衆居酒屋
緑沢 シンジ「罠かどうかという判断を忘れて むさぼり食ってしまった・・・」
ソクラテス将軍「ふふ、喜んでいただけてなによりだ さてグリーン。本題だが」
緑沢 シンジ「ああ、こんな旨い鯖味噌を ご馳走する奴に悪人はいねぇ。 話を聞こうじゃないか」
〇空
〇空
〇研究施設のオフィス
緑沢 シンジ「うっす。ただいまー」
赤峰 ライ「シンジ。どこいってたんだ? 探したぜ」
緑沢 シンジ「どうした?」
赤峰 ライ「今日から新しいスタッフが入ってね。 シンジに紹介したくて」
緑沢 シンジ「新しいスタッフか! それは挨拶しないとな」
〇大衆居酒屋
ソクラテス将軍「信頼してもらうために こちらの手の内をまず明かそう」
ソクラテス将軍「近々お前たちのところへ 新しいスタッフが来るはずだ そいつは我々が派遣した怪人だ 名はナージャラム」
ソクラテス将軍「内部で悪さをする前に 出会い頭に必殺技でも決める ことをお勧めする」
緑沢 シンジ「おいおい。その怪人は人に 化けてるんだろ?」
緑沢 シンジ「流石に出会い頭に必殺技なんて ぶつけられないぞ。 せいぜい監視を強めるくらいだな」
ソクラテス将軍「そうか・・・ナージャラムは 変装しているときが 一番無防備なんだがな・・・」
緑沢 シンジ「ヒーローとして・・・ いや、人として 人間の姿をした相手に攻撃なんて 出来るものか!」
〇研究施設のオフィス
赤峰 ライ「今、碧士がちょうど案内して いるところなんだが・・・ あ、いたいた」
赤峰 ライ「おーい、碧士! 名舎さーん」
柊 碧士「シンジ! 帰ってきてたのか ちょうど良かった。 こちら名舎 羅梦(ナジャ ラム)さん」
名舎 羅梦「オー、あなたがミスターグリーン! ワタシ、あなたの大ファンです!」
名舎 羅梦「ずっと会いたい・・・ そう思ってイマシタ。 夢が叶いました!」
緑沢 シンジ「シャカリキーーグリーン──」
名舎 羅梦「えっ!?」
緑沢 シンジ「スーパートルネード・ハイキッーーク!!」
名舎 羅梦「ギャアアアーーー!!」
柊 碧士「何やってんだ、シンジ!!」
赤峰 ライ「シンジ、お前・・・ついに 気でも狂ったか!」
緑沢 シンジ「残業のタイムカードは 誤魔化せても! 俺の目は騙されない!」
緑沢 シンジ「怪人よ! 素直に正体を現せ!」
ナージャラム「な、何故わかったの?」
柊 碧士「あっ、こいつは!」
赤峰 ライ「ギリークスの怪人! 人間に化けることが出来る個体か!」
ナージャラム「ググッ・・・かくなる上は!」
〇お台場
ナージャラム「イーーーー!」
男性A「うわー! 巨大怪人だ!」
女性A「きゃあー。誰か助けてー!」
〇研究施設のオフィス
赤峰 ライ「あいつ・・・巨大化しやがった」
緑沢 シンジ「巨大化は奴らの最終手段。 それ程やつは追い詰められている。 そういうことさ」
柊 碧士「なんかいつものシンジらしくないな まさか偽物・・・?」
緑沢 シンジ「ばっ、馬鹿なこと言うな! いくぞ二人とも」
赤峰 ライ「フッ、まあいいさ。 どのみち俺たちがやることに変わりはない」
緑沢 シンジ「そうとも! 碧士、ライ! 行くぞ!」
「カモン! ワーカーホリックロボ!」
〇空
説明しよう!
ワーカーホリックロボとは
ライ、碧士、シンジの勤務意欲が
最高潮に高まることで乗れる
巨大ロボである!
〇コックピット
緑沢 シンジ「どうだ! これで偽物じゃないって わかったか!」
赤峰 ライ「フッ・・・俺は最初から疑ってなかったがな」
柊 碧士「ぼ、僕も信じてたよ~」
緑沢 シンジ「嘘つけ! ・・・まあいい 奴の弱点は背中だ。 回り込んで攻撃するぞ」
赤峰 ライ「シンジ・・・ 何故お前にそんなことがわかる」
緑沢 シンジ「えっ?」
赤峰 ライ「俺たちにとって、 あの怪人は初めてのはずだ。 なのに何故弱点がわかると聞いている!」
緑沢 シンジ「そ、それは」
緑沢 シンジ(しまった、ソクラテス将軍から 聞いたなんて こいつらに言えるわけない)
緑沢 シンジ「それは・・・勘だ!」
「か、勘・・・!?」
赤峰 ライ「シンジ、お前まさか・・・ 目覚めたのか!?」
緑沢 シンジ「えっ!?」
赤峰 ライ「ブラック企業で働き続けた人間が 最後に到達するという悟りの境地 『AKIRAME』に!」
柊 碧士「あ・・・『AKIRAME』?」
〇オフィスのフロア
そう。ブラック企業で働く人間は
いつしか仕事が永遠に終わらないことに
気が付くんだ
一生このまま会社の歯車として
生きていく・・・そう思ったとき
目の前の仕事だけじゃなく
これから無限に続く仕事すら
見えるようになるんだ
柊 碧士「そ、それが『AKIRAME』・・・」
〇コックピット
柊 碧士「そうだったのか! シンジ、疑って悪かった。 お前を信じるよ!」
赤峰 ライ「弱点は背中だな。 ならばやることは一つ。 シンジ、頼めるか?」
緑沢 シンジ「おうよ! シャカリキーー 有給休暇返上ビームッ!!!」
〇お台場
ナージャラム「ザイラクス様ーーー!!!」
緑沢 シンジ「やった! 怪人を倒したぞ!」
〇空
それから緑沢シンジは
ソクラテス将軍の助言に従い
次々と怪人を倒していった
〇お台場
この俺、ソクラテスが表に出る
場面もあったが、緑沢に頼んで
峰打ちにしてもらった
〇謎の施設の中枢
ソクラテス将軍「す、すみません ザイラクス様・・・ こんな傷、医療ポッドに二日も入れば 回復するはずです!」
ボス・ザイラクス「もう我慢ならん! 我々に居住権を認めん愚かな人類よ! 私自ら粛正してくれる!」
ソクラテス将軍(あれ? 居住権って話だっけ。 侵略って言ってたよね。 逆恨みもいいとこだよね)
ボス・ザイラクス「ウオオオオッ」
〇お台場
当然緑沢にはザイラクスの弱点は
伝えており、難なく撃破した
ボス・ザイラクス「つ・・・強い! これがブラック企業の・・・力」
ボス・ザイラクス「グアァッ!」
〇空
そして、シャカリキマンの勝利で
世界が平和になり、俺は満を持して
ハワイへ向かうことにした
〇空港の待合室
ソクラテス将軍「アロハ~♪ アロハ~オエ~♪」
ピンポンパンポーン♪
お客様にお知らせいたします。
ハワイ行きTNV059便は
先ほど発生しましたテロ行為により
全便欠航となりました
繰り返し、お知らせいたします・・・
ソクラテス将軍「ウオオオオッ!! 誰だ! 俺のハワイ行きを 邪魔するやつは!」
ソクラテス将軍「・・・むっ、ニュースか!」
〇海辺
アナウンサー「こちら、ハワイ沖海上です! シャカリキマンの一派と思われる軍隊が ハワイ周囲を包囲しています!」
緑沢 シンジ「ふはははは! 世界は俺たちのものだ! ワイハは頂いたぜー!」
快進撃をさせ続けた
緑沢シンジはシャカリキマンの
トップとなり、すっかり天狗に
なってしまっていた
その軍備を用いて私利私欲に
まみれた行動を始めたのである
〇空港の待合室
ソクラテス将軍「グヌヌヌヌ・・・」
???「ソ、ソクラテス将軍ではありませんか! ご無事だったのですね」
ソクラテス将軍「あ、いや・・・」
残党怪人「ご覧になりましたか! シャカリキマンの横暴を! 今こそ我らギリークスが 立ち上がらねば!」
ソクラテス将軍(ええー・・・)
ソクラテス将軍はシャカリキマンに勝ち
無事ハワイの地を踏むことはできるのか
勝敗は神のみぞ知る!
ソクラテス将軍「付き合いきれんわ・・・ グアム行こ」
残党怪人「ああー、お待ちください ソクラテス将軍ーー!!」
社畜戦隊!
シャカリキマン
〈完〉
オチがひどい(笑)(褒め言葉です)
ヒーロー達は『堕落論』を読みましょうね!
ソクラテス将軍の方が「AKIRAME」の境地に達してて笑いました😂真の悪はいつも人間側なんだ…社畜のある世界の方なんだ…
情報のリークによって破滅に向かう企業の裏側を彷彿とさせられる作品でした。
怪人とヒーローが出ている手前、どこかコミカルですが、見方を変えれば、裏切り、功名心、私利私欲といった企業の闇を描いた怖い話のようでもありました。