最終話(脚本)
〇黒
痛い
・・・・・・
痛いなあ
・・・・・・
痛いって言ってるじゃん
・・・・・・
あーあ、やっぱり痛いなあ
・・・・・・
生きてるってことか
・・・・・・
大丈夫かな。
誰かの、本来在るべき運命を捻じ曲げてしまったりしてないかな。
・・・・・・
・・・え?
・・・・・・
・・・今のは、誰?
〇総合病院
後日
〇病室(椅子無し)
青井聖樹(あおい せいじゅ)「藤本さん、調子はどうかしら?」
藤本真(ふじもと まこと)「お陰様で。10日もあれば退院できそうです」
増田朔(ますだ はじめ)「そうか。それは良かった。 退院したら、俺からコーヒーを2杯サービスしようか」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「増田さん、退院したばかりの人にカフェインはよろしくないですよ」
増田朔(ますだ はじめ)「そ、そうか。じゃあ、メロンクリームソーダにしとく?」
藤本真(ふじもと まこと)「間を取ってリンゴジュースにしようと思います」
増田朔(ますだ はじめ)「ははは、良いね。 君、なかなか話が分かる方みたいだ」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「リンゴジュースなら体にも優しそうですね」
飯田に刺されて入院することになった藤本だったが、命に別条は無いようだった。
彼女の意識が戻ったことを聞きつけて、
増田と青井が見舞いに訪れていた。
青井聖樹(あおい せいじゅ)「でも、今回は藤本さんの予知夢日記のお陰で 一気に色々と解決したわ」
藤本真(ふじもと まこと)「本当に、ただの夢なんですけどね」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「いやいや、あなたの予知夢の的中率凄いわよ。 この間もらったノートの内容も、 しっかりコピーを取らせてもらったわ」
藤本真(ふじもと まこと)「ああ・・・」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「確かに、証拠能力は無いけど、 捜査を円滑に進める為の絶大な材料になるの」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「しかも、この情報は私が独占してるから、 周りの男どもを出し抜くことができるわけで・・・」
藤本真(ふじもと まこと)「あの・・・本当にただの夢ですから、 あまり過信しないで下さいね」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「大丈夫。証拠固めをしっかりやるのがこっち仕事だから」
藤本真(ふじもと まこと)「それなら良いですけど」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「そういうわけだから、藤本さん。 いいえ、まことさん」
藤本真(ふじもと まこと)「え?」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「これからも仲良くして、 週一回ぐらいの割合で予知夢日記を見せてよ〜」
藤本真(ふじもと まこと)「ええ・・・」
増田朔(ますだ はじめ)「おい、青井。下心が見え透いてるってレベルを超えてるぞ」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「ちょっと!変な言い方しないで下さいよ」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「予知夢日記は見せてもらいたいですけど、 それ以上にまことさんと仲良しになりたいんですよ、私は!」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「もちろん、予知夢日記はばっちり見せてもらいたいですけども!!」
増田朔(ますだ はじめ)「はあ・・・」
藤本真(ふじもと まこと)「あはは・・・」
藤本真(ふじもと まこと)(偽情報を仕込んでおこうかな)
増田朔(ますだ はじめ)「あの・・・藤本さん」
藤本真(ふじもと まこと)「はい」
増田朔(ますだ はじめ)「その・・・君が渡してくれた夢日記のノートのことなんだけど」
増田朔(ますだ はじめ)「君、自分が刺されることを予知してたのに、 俺たちに何も言わずに出て行ったよね」
藤本真(ふじもと まこと)「ああ・・・」
増田朔(ますだ はじめ)「何で、何も言ってくれなかったの? 俺たち、あの時点でかなり君の予知夢のことを信じてたんだよ」
増田朔(ますだ はじめ)「言ってくれてたら、刺されないように 手を回すことだってできたのに」
藤本真(ふじもと まこと)「それは・・・」
藤本真(ふじもと まこと)「私はあそこで刺されて死ぬのが運命だと思ってたからです」
増田朔(ますだ はじめ)「え!?」
藤本真(ふじもと まこと)「それが在るべき運命なら、 無理に捻じ曲げてはいけないって」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「じゃあ、あなた、自分が殺される覚悟であそこに行ったっていうの!?」
藤本真(ふじもと まこと)「はい。結果はこのザマですが」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「このザマって何よ! 何で自分から殺されに行ってんのよ!」
藤本真(ふじもと まこと)「だから、それが運命なら仕方ないかな、て」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「抗いなさいよ、そんな運命なんか!!!!」
藤本真(ふじもと まこと)「そんなわけにいかないんです」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「はあ!?」
藤本真(ふじもと まこと)「昔・・・子供の頃のことなんですけど、 私にも仲の良い友達がいたんです」
藤本真(ふじもと まこと)「でも、ある日その子が事故に遭って亡くなる夢を見てしまいまして・・・」
藤本真(ふじもと まこと)「友達を助けたい一心で、 その子が事故に遭わないように ありとあらゆる対策を取りました」
藤本真(ふじもと まこと)「結果的に、その子は事故には遭いませんでした」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「良かったじゃない」
藤本真(ふじもと まこと)「ですが、その日の晩、その子の家で火事が起きました。友達を含めて家族4人全員が亡くなりました」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「え・・・」
藤本真(ふじもと まこと)「その時に思ったんです。 本来在るべき運命を、自分の感情で捻じ曲げてはいけないんだって」
藤本真(ふじもと まこと)「私がおかしなことをしたせいで、 本来なら死ぬはずじゃなかった人たちも、 亡くなるハメになったんじゃないか・・・て」
藤本真(ふじもと まこと)「だから、あの場面で私が刺されて死ぬのも、 運命なら仕方ないかなって思って放っておいたんです」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「・・・・・・」
増田朔(ますだ はじめ)「あー・・・藤本さん。君の考えはよく分かった」
増田朔(ますだ はじめ)「でも、今回の件は結果的に誰も死なずに済んだだろう?」
増田朔(ますだ はじめ)「まあ、さっさと死んだ方が良いゲス野郎の存在も炙り出されたけど、 お陰で複数の未解決事件の解決にも繋がったわけで・・・」
藤本真(ふじもと まこと)「ええ、そう・・・・・・なりますかね」
増田朔(ますだ はじめ)「嫌な運命なら、とことん抗ってみても・・・ 悪いことばかりではないと思うんだがね」
藤本真(ふじもと まこと)「でも、もう既にどこかに歪みができてるかも・・・・・・」
増田朔(ますだ はじめ)「じゃあ、それも含めてどこかの誰かの、 本人自身の運命ってことだ。 君が悪いわけじゃない」
藤本真(ふじもと まこと)「・・・・・・」
増田朔(ますだ はじめ)「少なくとも、俺も青井も結構しぶといから。 ちゃっかり元気に生きてるよ」
増田朔(ますだ はじめ)「ついでに原も」
藤本真(ふじもと まこと)「誰でしたっけ、それ」
増田朔(ますだ はじめ)「ははは」
増田朔(ますだ はじめ)「まあ、なんだ。どうしても気になるってことなら、体が良くなったら毎日ウチの店に来てくれたら良いよ」
藤本真(ふじもと まこと)「はい?」
増田朔(ますだ はじめ)「運命とやらに負けずに、俺や青井が元気にやってることを自分の目で確認してくれれば良い」
藤本真(ふじもと まこと)「はあ・・・」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「増田さん。 良いこと言ってる風に見せかけて、 ちゃっかりお店の売り上げを確保しようとしてるじゃないですか」
藤本真(ふじもと まこと)「え、そういうことだったんですか?」
増田朔(ますだ はじめ)「いやいやいやいや、 俺は本当に誠実な気持ちで言ってるんだぞ」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「あはは、どうだか」
藤本真(ふじもと まこと)「でも、下手な綺麗事を言われるよりも、 下心丸出しの打算的な言葉の方が、 ずっと信用できるし安心します」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「ええ・・・・・・変わった子ねえ」
増田朔(ますだ はじめ)「いや、なかなか良い反応だ。 こいつは見どころがあるぞ」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「ええ・・・」
少し先の未来のことを話しながら、笑い合う。
〇レトロ喫茶
立ってる場所が全く異なるこの3人が
喫茶「隠れ家」にて再開する時、
また新しい物語が展開するのかもしれない。