怪人にされた元ヒーロー

げしょこ

怪人にされた元ヒーロー(脚本)

怪人にされた元ヒーロー

げしょこ

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怪人にされた元ヒーロー
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〇川沿いの公園
法子「見つけたわよ」
怪人くん「・・・」
法子「あなたをここで倒し、 すべてを終わらせる」
怪人くん「・・・」
法子「あっ、待ちなさい!」
ニゴ・ニコラ「おっと」
法子「──!!」
ニゴ・ニコラ「ごめんねぇ、邪魔しちゃったねぇ」
法子「・・・」
ニゴ・ニコラ「ふーん」
ニゴ・ニコラ「ふーん、ふーんふーん」

〇川沿いの公園
法子「追いついた!!」
怪人くん「・・・!!」
法子「変身!!」
法子「私は悪を裁き正義を貫く!」
怪人くん「・・・」
法子「前と雰囲気が違うようだけど、 まぁいいわ」
法子「ここで終わらせる!」
怪人くん「!!」
法子「くっ」
怪人くん「ふふ──」
法子「お前は怪人で私はヒーロー」
法子「アンタは人々のためにも、 実乃梨のためにもここで倒す!」
法子「己が犯した罪、 そして怪人に生まれたことを、 後悔しなさい!」
怪人くん「──ぁあ」
法子「相変わらず硬い装甲ね」
法子「拳銃も通らないそうだけど、 強化スーツを着込んだ私の一撃なら!」
怪人くん「法子ちゃん──」
法子「アンタ、なんであたしの名前を──」
ニゴ・ニコラ「あーあー」
ニゴ・ニコラ「よくもやってくれたじゃない。 うちの製品を」
法子「あなたはさっきの──」
ニゴ・ニコラ「はーい、そうです ボクは天才美少女二コラちゃんでーす」
法子「こんな所にいると危ないわ! 早く逃げなさい」
ニゴ・ニコラ「あちゃ──。 胴体に四ケ所のヒビ、 角も一本折れてるじゃない」
ニゴ・ニコラ「あ──よくもやってくれたわね。 弁償よ弁償」
法子「はぁ?弁償?」
ニゴ・ニコラ「そう。弁償。 うちの製品を壊した罪。 背負ってもらうかんね」
怪人くん「・・・」
ニゴ・ニコラ「あなたも良かったね 大好きな親友になれるんだから」
怪人くん「──」
ニゴ・ニコラ「あー、もしかしてわざと 攻撃喰らったとか? 親友が好きすぎて親友になりたくて」
怪人くん「・・・」
法子「さっぱり話が見えてこないんだけど。 そこをどいて。 怪人は倒さなきゃならないの」
法子「!?」
ニゴ・ニコラ「ダメだよ」
ニゴ・ニコラ「何度も言ってるよね。 これはうちの製品。 第三者が壊すことはボクが許さない」
ニゴ・ニコラ「完全に破壊すれば終身刑にするよ?」
法子「あの怪人を作ったのはあなただというの?」
ニゴ・ニコラ「そうだよ」
法子「なぜあんな怪人を──」
ニゴ・ニコラ「うるさいなぁ。好きで作っただけなのに どうしてそんなことを赤の他人に 言われなきゃいけないのかな?」
ニゴ・ニコラ「お姉さんと喋るのも飽きたし 弁償タイムに突入しよっか♪」
ニゴ・ニコラ「弁償ターイム☆」
法子「な、なによこれ!?」
怪人くん「・・・」
法子「あ、ああ」
怪人くん「えっ、なにこれ 一体どうなって」
ニゴ・ニコラ「だーいせいこーう!!」
法子「・・・」
怪人くん「なんで私が目の前に それにこの身体、怪人の──」
ニゴ・ニコラ「どう?新しい身体は?」
怪人くん「いやあ!! な、なにこれえぇぇ──」
ニゴ・ニコラ「男性ベースの身体だからね。 女の子には、あるものないものがあるよね」
怪人くん「ちが、それだけじゃない!! なんであたしが怪人なんかに!」
ニゴ・ニコラ「なんでって、傷つけたからじゃん。 弁償として怪人の中の人をやってもらいます」
怪人くん「はぁ!? そんなこと絶対に──」
怪人くん「きゃぁっ!?」
ニゴ・ニコラ「ダメだよボクに逆らっちゃ。 怪人らしからぬことをすると お仕置きの電流が流れるんだから」
怪人くん「くっ」
ニゴ・ニコラ「あは、とりあえず。 その身体でいる間は怪人の身なりが 自然と身につくと思うから安心してね」
怪人くん「そ、そんな、 どうすれば元に戻れるの」
ニゴ・ニコラ「そりゃ君が弁償し終えた後、 君の元の身体の持ち主に協力してもらえばねぇ」
法子「人間に──女に戻れた──」
法子「──」
怪人くん「ねぇ、もしかして実乃梨!? 実乃梨よね!?」
法子「えぇ、私は実乃梨だったわ」
怪人くん「実乃梨の様子がおかしくなって、 心配してたんだから。 まさかこんなことに なってただなんて」
法子「ごめんね法子ちゃん。 心配かけちゃって」
怪人くん「うん、だからさ、あのね──」
法子「──法子ちゃんの身体は 私が一生大切にするから」
怪人くん「え──」
法子「ごめんなさい。 私、その身体には戻りたくない」
怪人くん「み、実乃梨!! これ以上事態をややこしくしないで! 私を元に戻してくれたら、 あなたの身体を取り戻しに行きましょう!」
法子「いやあああああああああああ!!」
怪人くん「そ、そんな、 嘘でしょ!?」
ニゴ・ニコラ「親友に裏切られて怪人に悪堕ち・・・ かわいそうに」
怪人くん「順序が逆でしょうが!」
怪人くん「一体これから私は──」
ニゴ・ニコラ「世界征服目指しちゃう? まずは空港を襲う所から・・・」
怪人くん「私は絶対にそんなことしない!」
ニゴ・ニコラ「そうかなぁ? 君、無自覚かもしれないけど、 怪人らしい「がに股」になってるし、 怪人に向いてると思うなぁ」
怪人くん「!!」
ニゴ・ニコラ「自然に怪人であることを受け入れられると思うから安心してね。 前の子は、なかなか正義の心が邪魔で、 染められなかったけど」
ニゴ・ニコラ「君なら向いてると思うな!」
怪人くん「う」
怪人くん「こんな姿でいたら私──」
ニゴ・ニコラ「人間に戻りたいんだったら、悪事を働いて悪逆ポイントを稼いでね。 えっと君の場合は、 折れた角と破損個所4つだから──」
ニゴ・ニコラ「国家転覆くらいはしてもらわないと!」
怪人くん「ふざけんじゃねぇ!!」
ニゴ・ニコラ「おー、怖い怖い。 その意気だよ、怪人はそうでなくっちゃ」
怪人くん「ちっ、 実乃梨の時はどうだったの」
ニゴ・ニコラ「あの子は、その身体に与えた傷はかすり傷程度だったから、弁償は大したことなくて 万引きだけしてもらったかな!」
怪人くん「万引き・・・」
ニゴ・ニコラ「そう。万引き。 皮肉だよね。 彼女も正義のヒーローだったのに万引きをせざるを得なくなっちゃって」
怪人くん「なんでこんなことするの? あなたの目的は何?」
ニゴ・ニコラ「ボク?怪人が大好きな、 ただの天才美少女だよ。 人間を怪人にするのが趣味なんだぁ♡」
ニゴ・ニコラ「ちなみに今のあなたの身体、 元ボクのクラスメイトで、ボクが 大嫌いだった男を改造したものだよ」
ニゴ・ニコラ「3ヶ月くらい前かな? ビルが倒れた事件あったじゃん? あれは彼の仕業だよ」

〇荒廃したハチ公前
怪人くん「ハハハハハハハハ──!!!!」
女性「いやああああああ──!!」
女性「──ぐふっ」
怪人くん「消えろ消えろ消えろ消えろ!! フハハハハハハハハハ!!!!」
ニゴ・ニコラ「あははっ、いいねいいね、 昂って来たよ!」
怪人くん「ハハハハハ!!!」
男性「いぎぃっ!?」
男性「ウボァッ!!」
怪人くん「ハハハハハハ――――」

〇川沿いの公園
ニゴ・ニコラ「──という感じでね 前まで正義正義とうるさかった奴が、 ビルを破壊して人をたくさん殺めている様子は面白かったなぁ」
怪人くん「狂ってる・・・」
ニゴ・ニコラ「お姉さんも、他人事じゃないよ? 時間が経てばたつほど、 精神が怪人に適した形に変貌するからね」
怪人くん「・・・」
ニゴ・ニコラ「初代は知的さがたりなかったからなぁ。 それから色々あって5代目がお姉さん。 お姉さんには期待してるよ」
怪人くん「──」
怪人くん「(実乃梨に話を聞いてもらうためにも、まずは実乃梨の前の身体を確保しよう)」

〇マンションの共用廊下
怪人くん「見つけた!!」
実乃梨「あ?」
怪人くん「あなたを誘拐します! いいですね?」
実乃梨「──警察を呼びますよ」
怪人くん「それはちょっと困ります」
ニゴ・ニコラ「警察なんて片手でひねりつぶせるのに」
実乃梨「──なるほど代替わりしてたのか。 だが、俺を巻き込むなよ」
怪人くん「それはあなたの身体じゃないでしょう! 実乃梨に返してください!」
実乃梨「えー、やだよ。 女って楽しいし、戻る気なんかない」
怪人くん「そんな・・・」
ニゴ・ニコラ「無理矢理誘拐すればいいのに」
実乃梨「アンタも変わっちゃいねぇな 怪人イカレ女」
ニゴ・ニコラ「えへへ♡ ボクは君が怪人に 戻ってくれても歓迎するよぉ」
実乃梨「遠慮しとくぜ。 その肉体、たまに気持ち悪い感覚がするんだよ。 今思うと、アレは正気じゃない」
怪人くん「何なのそれ・・・」
実乃梨「心がどんどん怪人に変わっていくんだ。 自分が自分でなくなっていく上に、吐き気まで催してきやがる」
実乃梨「たまにあるんだよそういうのが」
怪人くん「・・・」
実乃梨「先輩の俺からアドバイスだ。 早く人間に戻りたいならば、さっさと悪事を済ましてしまえ」
実乃梨「長い間その身体でいると、取り返しがつかなくなる。 俺はそう思うね」
怪人くん「・・・」
実乃梨「とにかく俺に構う暇があったら、 悪事を済ませて新しい身体を探せ」
怪人くん「万引き・・・」
ニゴ・ニコラ「君には国家転覆をしてもらうって言ったじゃん」
実乃梨「俺にできることはないが、 ──まぁがんばれよ」
怪人くん「・・・」
実乃梨「あ?」
怪人くん「──」
怪人くん「ああああああああああ──!!」
実乃梨「そうだよそれが──」
ニゴ・ニコラ「ありゃ、やっちゃったねぇ」
怪人くん「ぅぐぁああおぉ────────!!」
ニゴ・ニコラ「初めてにしては上出来じゃない♪」
怪人くん「どうして──なんで」
ニゴ・ニコラ「あはっ、怪人らしくて最高だよ。 君は本能のままに暴れるタイプかな?」
ニゴ・ニコラ「さっきまで正義のヒーローだったのに 人を殺しちゃったね♡ あははっ!!」
怪人くん「殺し──お前も殺してや──」
怪人くん「ぐわあ──っ!!」
ニゴ・ニコラ「学習しなよ。バカなの君?」
ニゴ・ニコラ「ふふっ、ここから先は任せちゃおっと☆」
怪人くん「うぐぁ──あぐ!! 私が・・・殺した、私が──!!」
  もう引き返せない。
  ここから、私は悪の手先として
  働くことになった。

〇温泉の湧いた渋谷
  もうどうしようもない。
  実乃梨が戻る体は存在しない。
  実乃梨を味方につけることも
  難しいだろう。
  ・・・う。
  私は、ヒーローなのに。
  なんで、なんでなんでなんでなんで
  なんでなんでなんでなんでなんで
怪人くん「ぐおおおおおおっ────!!」
女性「いやあああああ──!! 死にたくないっ!!」
男「怪人だ!!逃げろ──!!」
怪人くん「違う違う違う違う!!!!!! 私ハ怪人じゃない!!」
女「その見た目で怪人じゃないなんて嘘よ!」
男「くそ、ヒーローはまだか!」
女「助けて──誰か」
「──そこまでよ!」
怪人くん「!!」
法子「悪い怪人は許さない!」
怪人くん「実乃梨・・・!!」
法子「皆さん安心してください! この怪人は私が倒します!」
女「ヒーローだわ!助かった!」
男「がんばれ! あんな怪人やっつけちまえ!」
怪人くん「違う、あれは私で──」
法子「変身!!」
法子「怪人、覚悟しなさい!」
怪人くん「実乃梨!!」
法子「苦しいんでしょ。 今、楽にしてあげるから」
怪人くん「違う、実乃梨はそんなこと言わない──」
法子「ふふっ、そうかしら? でも今の私は法子よ」
法子「そう、私はヒーローに返り咲いたの。 うふふっ」
法子「あなたのこの身体、すごく動きやすいわ。 ありがとう、いい身体をくれて」
怪人くん「くっ、どうして」
法子「私は変わったのよ。 正義なんていう馬鹿なことにうつつを抜かしてた前の私とは違う」
法子「この身体で新しい人生を歩む! その為にあなたは邪魔な存在。 故に消す!!それだけよ!」
怪人くん「堕ちたわね、実乃梨!!」
怪人くん「──ちょっと苦しいけど、 私の身体を取り返すためにはこの身体の力を使って戦わなくちゃ」
怪人くん「──自分の技に、 ここまで苦しめられるなんて」
怪人くん「実乃梨、しっかりして!! 正義を志していた時のあなたはどこに行ったの!?」
法子「そんなことどうでもいい。 怪人として生きるのは嫌だ。 あなただってそうでしょ?」
怪人くん「・・・」
法子「ここで私があなたを倒せば。 あなたの名前は英雄として語り継がれる。 悪くない話でしょ」
怪人くん「違う、私はそんなこと望んでいない! 私は──」
法子「あなたがその肉体でいる限り、 平和なんてものは訪れない」
怪人くん「ぐっ」
怪人くん「弁償だ! この身体に傷がついた!弁償だ!!」
法子「まだノルマを達成してもいないのに そんなこと言えると思って?」
怪人くん「きゃぁぁぁっ!!」
法子「あの二コラって子を満足させない限り、あなたはその運命から逃れられない」
法子「そして何よりも悪を嫌うあなたを 悪の手に染めたくない」
法子「あなたは私のヒーローだった。 だから、私はあなたをきれいなままにしておきたいの!」
怪人くん「・・・」

〇崩壊した道
実乃梨「アンタも性格悪いなぁ」
ニゴ・ニコラ「こうした方が面白いでしょ☆」
  とりあえず
  ー完ー

コメント

  • 常に正しいつもりでも、いざ自身に害が及んだら、最後までその正義を貫けるか、深く考えさせられた作品。
    今まで人のために闘ってきたヒーローであっても「死にたくない」という行動に徐々に揺り動かされていく姿は怖いくらいのリアルを感じました。

  • 二コラはよほど人間に恨みがあるのでしょうね。怪人の姿の鎧を着せ、次々と人間を悪の道に導いていくことをまるでゲーム感覚でやっている。元ヒーローであり怪人の法子に是非、この悪い連鎖を断ち切ってほしいです。

  • ニコラさんの狂気がすごいですね。
    知力だけあって、感情を持たない人間は無敵です。
    どんなひどいことも平気で出来ますし、どんなに誹謗されても何とも思わないですから。

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