コドモタチノテキ

はじめアキラ

第十七話「ミライ」(脚本)

コドモタチノテキ

はじめアキラ

今すぐ読む

コドモタチノテキ
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒背景
  【シノノメイチイチ】雑談掲示板 part50【ショウガッコウ】
  515:名無しのスクールライフ
  この間の爆弾騒ぎ、ニュースになってたね
  516:名無しのスクールライフ
  新聞にも載ってた。
  マジかーってかんじ
  517:名無しのスクールライフ
  あの辻本先生が、ってのはびっくりしたよね
  518:名無しのスクールライフ
  人は見かけによらないね。先生ってどうなるの?
  519:名無しのスクールライフ
  警察に連れて行かれたみたいだけどね、その、緒方サンって子と一緒に
  520:名無しのスクールライフ
  ニュースでは脅迫とか殺人教唆とか?かなんかで逮捕って
  521:名無しのスクールライフ
  やっぱ逮捕になっちゃうんか
  522:名無しのスクールライフ
  そりゃそうだろ、怪我人出てるんだし
  523:名無しのスクールライフ
  怪我した女の子のやったこと考えるとあんま同情できないけどね
  524:名無しのスクールライフ
  ボーガン撃ったОさんも連れていかれたんでしょ?どうなるの?
  525:名無しのスクールライフ
  >>524
  校正施設送りじゃないか?逮捕できる年じゃないし
  526:名無しのスクールライフ
  厳しい先生だったけどさ、辻本先生いなくなるのショックだな
  527:名無しのスクールライフ
  >>526
  え、お前辻本先生好きだったの?嫌われ者だと思ってた
  528:名無しのスクールライフ
  >>526
  厳しかったけど、相談とかすごく熱心に乗ってくれる先生だったよ
  だから俺は好きだったし、これで解雇なんて悲しいよ
  そんな人だから、あんな事件起こしちゃったんだろうけど
  529:名無しのスクールライフ
  事件が最後まで成功しようがしまいが、逮捕はわかりきってたのにな
  それでもやろうと思う理由が、辻本先生にはあったんだろうか
  530:名無しのスクールライフ
  私聞いたことあるよ。辻本先生も、昔苛められっこだったって
  だから、学校を変えたくて教師になったって
  531:名無しのスクールライフ
  そうなんだ・・・・・・
  532:名無しのスクールライフ
  教師生命投げ捨ててでも、守りたいものがあったのかな、先生にも
  533:名無しのスクールライフ
  だからって女の子の顔に怪我させるとか、爆弾騒ぎ起こすなんて
  534:名無しのスクールライフ
  >>533
  俺らは巻き込まれた側だしな。でも、わかる気はするよ
  535:名無しのスクールライフ
  加害者を隔離してくれって校長に頼んでもどうにもならなかったみたいだしな
  536:名無しのスクールライフ
  いじめ被害者が不登校にならなきゃいけないの、やっぱおかしいよね
  537:名無しのスクールライフ
  やり方は間違ってたけど、じゃあ他にどうすればよかったのかは今でもわからないよ
  538:名無しのスクールライフ
  あんたらなんで緒方辻本にそんな同情的なの?
  いじめったって大したことしてないのに、逸見さんは顔に怪我までさせられたんだよ
  そっちのが可哀想だと思わないわけ?
  539:名無しのスクールライフ
  >>538
  お前本人?それともHのシンパ?
  540:名無しのスクールライフ
  >>538
  うっわー露骨すぎ
  541:名無しのスクールライフ
  辻本先生達のやり方が正しかったなんで誰も言ってねえだろ
  それでも、Hさんが苛めなんかしなきゃこんなことになってないんだよ
  542:名無しのスクールライフ
  >>541
  は?意味わかんない
  人殺ししようとした方が悪いに決まってんじゃん
  緒方のやつが大人しい顔してクズだったってことでしょ
  543:名無しのスクールライフ
  >>542
  そういう結論しか出せない奴は、一生わかんないだろうな
  ・・・・・・お前三組だろ。ワルガキどもの話聞いてて何も思わなかったのかよ
  544:名無しのスクールライフ
  まさかTが主導して事件を解決させるとは思わなかったしね
  545:名無しのスクールライフ
  ちょっと見直したかもね、あいつのこと
  546:名無しのスクールライフ
  そうだよな。世界を変えるなら正面から堂々と、胸張れるやり方で変えろ、か。
  547:名無しのスクールライフ
  やり方はアレだったけど、少なくともこれで学校側も対応を考えざるをえなくはなるだろうな
  いじめに関しても、それ以外のことに関しても
  548:名無しのスクールライフ
  まあ、Hさんもやらかした事がこれだけ学校中に広まっちゃね
  怪我治っても、今まで通り優等生っていうのは無理でしょ
  549:名無しのスクールライフ
  Hさんだって、気に食わないことがあるなら真正面からOさんと対決すればよかったのにね
  550:名無しのスクールライフ
  >>549
  かもな
  551:名無しのスクールライフ
  セカイを変えるなら、手段は選ぶからこそ意味がある。
  俺達も考えていかなくちゃいけないことなんだろうな、コドモのうちからさ

〇大きな木のある校舎
  事件が解決しても、それで全てが終わりとはいかなかった。
  辻本先生は逮捕されてしまったし、緒方五月ももう教室には戻ってこれないかもしれない。
  逸見真友の怪我は大したことはなかったが、顔に傷が残るかもしれず、
  そして本人はこのまま転校するかもしれないという噂が出ている。
  そのまま真友が逃げることに成功してしまえば、
  彼女は恨みを募らせることはあっても自らの行いを心から反省するようなことにはならないだろう。
  転校先で、同じことを繰り返すかもしれないと思うと智は複雑な気持ちである。
  ただ、少なくともあれから真友の取り巻きだった少女達は大人しくなっているし、
  学校側と生徒達の意識も変わってきてはいるとは感じる。
  やり方は間違っていたが。それでも、まったく無駄ではなかった、と信じたい気持ちも智にはあるのだ。
  辻本先生が教師生命を擲ってまで、一人の少女の無念を晴らし、世界を変えようとしたのだから。
  彼女は、警察に連れて行かれる直前に、雅に言ったという。
辻本先生「子供達の本当の敵は、結局誰だったのかしらね。貴方は、どう思う?」
  それはとてもシンプルでいて、難しい答え。
  未だに、智には答えが出ていない。子供の敵は大人であり社会である――なんて言い切れてしまうほど、世界は簡単ではない。
  少なくともすべての元凶は子供達の中から始まったことに変わりはないのだから。
  確かなことはひとつ。
  青空の色は、彼女達がいてもいなくても変わらないということだけである。

〇学校の屋上
田無智「・・・・・・はあ」
鈴原雅「智、またため息ついてる。何回目?」
田無智「だってさあ・・・・・・」
  あれから、三日後。再び屋上でサボタージュを決め込みながら、智は璃王と雅とともに寝っころがっていた。
  子供達の敵は誰か?
  自分達の取るべき最善手とはなんだったのか?
  三日間考え抜いたが、未だに答えは出ずにいるのだ。
田無智「逸見のやつ、結局言い訳ばっかりしてるつーじゃん?受験のストレスがたまってたから仕方なかった、とか」
田無智「そもそも自分はクラスの平和のためにやったことだ、とか」
田無智「・・・・・・いじめっ子ってそういうもんなのかもな。自分がいじめてる自覚はないつーか」
神楽璃王「そうだな。でも言い訳してるってことは、自分は悪くないって言い聞かせてるってことだろ」
田無智「そりゃそうだけど」
神楽璃王「確かに、人間はそう簡単には変わらないだろうさ。逸見も、学校もな」
神楽璃王「だからちょっとずつ積み上げていくしかないんだよ。みんなも、俺達も、世界もさ」
鈴原雅「うん・・・・・・」
  本当は間違ったことをしている。辻本先生もわかっていたのではないか、と後で智は気づいた。
  というのも、自分達三人が自由に動ける状態であるということを、辻本先生だけは知っていたはずだからだ。
  それでも放送を流す前に自分達を呼び戻しに来なかった。
  それは心のどこかで、自分達に止めて貰うことを期待していたからではないのだろうか?
  ――なんて、そう思うのは考えすぎかもしれないけど。
田無智「はー!立派な大人になるってむずかしー」
  思わずぼやくと。璃王と雅が顔を見合わせて、噴出すのが見えた。
神楽璃王「むりむりむり!智は立派な大人になんかなれないって」
鈴原雅「そーそー!なる必要ないって」
田無智「ちょ、それどういう意味だよ!」
鈴原雅「そのまんまの意味だってば。僕達は褒めてるの」
神楽璃王「だな」
  彼等の意図がわからず困惑する智に。璃王が笑いながら言った。
神楽璃王「お前はこれからも、お前のままで世界を救ってればいいんだよ」
神楽璃王「俺達はそんなお前が好きなんだから」
田無智「んなっ」
  クールな顔で、何やらこっぱずかしいことを言われた気がする。恥ずかしくなって、思わず璃王の後頭部にチョップを決めていた。
  軽い音と智達のが、青い空にどこまでも響き渡っていった――。

〇空
  『コドモタチノテキ』
  シナリオ:はじめアキラ
  表紙イラスト:はじめアキラ
  執筆ツール:メモ帳(テキストファイル)
  執筆&製作期間:十日
  Thank you for reading!

コメント

  • ゲーム小説としての完成度が高すぎて、ノベルゲーの一つのシナリオをクリアしたような気持ちになりました。コドモタチノテキとは一体何なのか。答えの出せない問いに悩みながらも、いつもの日常に戻っていく。エンディングも演出が光っていて、本当に余韻がすごいです。連載お疲れ様でした!

成分キーワード

ページTOPへ