僕たちがつくる七不思議

nagi

エピソード9(脚本)

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〇理科室
小田「中にいない・・・どうしてだ・・・」
井上「佐崎ちゃん・・・まさか幽霊の生け贄に・・・?」
井上「こんなのおかしい。ありえないよ」
  明らかに異常な現象を目の前にして、井上は役目を忘れる事なくシャッター切って自前のデジカメにそっと捉えた。
小田「生け贄?バカ言えよ。 まだ取引は終わってないんだ。俺たちがカメラを入れたら佐崎はきっと帰ってくる。 その約束のはずだ」
  俺は佐崎の帰りを願って空っぽのロッカーにカメラを入れると、静かにロッカーを閉じた。
泉「ねぇ、私にも詳しく状況説明してくれない? あなた達が何故ここにいるのか、ロッカーにいないとか・・・何をしているの?」
小田「先生がいる部に果たし状を持ってきた女子がいませんでしたか?」
泉「ああ、写真部の子?佐崎さんだったわよね」
小田「その子と一緒に心霊写真を撮りに学校まで来ていたんです」
井上「それで降霊術の儀式をしたら、佐崎ちゃんがいなくなって色々と探し回ってたんです!」
泉「ロッカーって騒いでいたのは、佐崎さんが中にいたの?」
小田「はい。確かに物音がしたんです。でも、俺たちが廊下に出て目を離したらいなくなってて・・・」
  説明をしていると、みるみるうちに先生の顔が真っ青に変わっていく。
小田「あの、もしかして怖い話苦手でしたか?」
泉「いえ、大丈夫よ。どうぞ続けて? それでロッカーにカメラを入れた理由は?」
小田「佐崎を解放するにはカメラをよこせと要求されたんです。校庭で不審者を見かけて、あいつが撮影したのを目撃されて・・・」
泉「それで現在に至るわけね」
  先生が少し考え込むように腕組みをした。
  内容が内容なだけに、困らせてしまうのは無理もない。
井上「信じてくれますか?」
泉「幽霊を本当に撮影できてたらね。でも、夜の学校に忍び込むのはいかがなものかしら。あまり褒められた行動じゃないわね」
小田「それはっ、・・・謝ります」
  すみませんでした!
  俺たちが頭を下げると、泉先生がため息をついた。呆れられているのだろうか。
泉「素直でよろしい。今日のところは見逃してあげるけど、今度同じ事やったら・・・わかってるわよね?」
小田「はい・・・今後気を付けます」
  突如俺のスマホが鳴り出した。
  誰からの着信かスマホ画面を確認すると佐崎と表示されており、思わず二度見した。
小田「佐崎!?」
井上「えぇっ!!?」

小田「もしもし、佐崎・・・なのか?」
  小田君・・・たすけて・・・
小田「教えてくれ、今どこにいるんだ!?」
  写真部の、部室・・・
小田「部室だな? わかった。すぐに行くからもう少しの辛抱だぞ」
  俺たちは先生に事情を話すと、理科室を飛び出して一目散に部室へと向かった。

〇学校の部室
  部室に駆け込むと、テーブルに伏して座っている佐崎の姿があった。
  ほっとひと安心したのも束の間、新たな不安要素が込み上げてくる。
小田(まさか亡霊じゃないだろうな・・・?)
  触れると消えてしまいそうな気がして、恐る恐る彼女の肩に触れる。
小田(・・・温かい。ちゃんと体温はある)
  肩を軽く揺さぶってみると、佐崎がむくりと頭を上げた。・・・どこか元気がないように見える。
井上「良かった・・・てっきり、生け贄にされたかと」
佐崎「ちょっと・・・勝手に殺さないでくれる?それよりお水持ってきてくれない?なんだかクラクラするの・・・」
小田「水か? わかった、すぐに持ってくるから少し待ってろ」

〇学校の部室
小田「軽い脱水症状だな」
佐崎「ずっと狭い場所にいたからどうなるかと思ったわよ」
小田「どうであれ無事でよかった。 お前は廃部にならないように全力でやり遂げようとしていたのに、」
小田「俺はお前の意見を聞かずに中止を促した。 責任といっても自分の保身を気にしていたんだ」
小田「危険を承知でぶつかっていくお前には感服したよ。おれはその逆で・・・見捨てるような真似してすまなかった」
  俺は井上に言われた通り、佐崎を前に深く頭を下げた。すると、すぐ頭上から「やめてよ」と声をかけられた。
佐崎「私も、あの時小田君と意見が合わなくてイライラしちゃって・・・やけになって行動したの。 勝手に暴走した私の方が悪かったわ」
井上「佐崎ちゃんはどうやってロッカーから部室まで来れたの?もしかして・・・瞬間移動?」
佐崎「それが私も分からないの。暑さでどうにかなりそうな中で気がついたらここにいたって感じで・・・」
井上「えぇ・・・じゃあ本当に幽霊が条件をのんで佐崎ちゃんを返してくれたのかな・・・」
佐崎「条件をのんだって・・・ もしかして、カメラ渡しちゃったの!?」
小田「それは安心してくれ。カメラは高月先生の物とすり替えたから、お前が最初に持ってた物は先生の机の中にある」
井上「ちなみに俺のアイデアだよ」
佐崎「二人共でかしたわ! じゃあ私の持ってたカメラのデータは守りきったのね!」
佐崎「やったじゃない!私たちの勝ちね!」
小田「それが・・・データは守ったんだが、写真がまだなんだ」
井上「すぐにでもゲームを終わらせたいけど、七不思議を撮るのにあと1枚足りなくてさ・・・」
佐崎「だったら、最後はこの部室で撮影しましょうよ!」
小田「此処でか・・・?」
佐崎「儀式は2時間から3時間の間に終わらせないとならない決まりがあるの。もう時間もない訳だし、」
佐崎「閉じ込められてる間に色々と調べたわ。 10年前の行方不明になった子、写真部だったんでしょ?」
佐崎「ここにいるかも知れないじゃない。部員全員で初めての記念写真になるかもしれないわよ?」
小田「それなら早いとこ撮ろって切り上げようぜ。井上頼んだぞ」
井上「それが~・・・バッテリー切れです」
小田「お前廊下と理科室の2枚しか撮ってなかったのにかぁ? ちゃんと充電してこいよ~・・・」
  俺は仕方なく自分のスマホを取り出すと、カメラを起動させた。
  すると佐崎が立ち上がり隣に並ぶように促してくる。
  タイマーを設定して二人の間に入ると、やがてシャッターが切られた。
  ・・・パシャリ、と音がした一瞬・・・
  閉めきった部室内に心地よい風が俺たちの間を通り抜けた気がした。

〇学校の部室
  写真を撮り終えると、俺はぬいぐるみを取り出し「私の勝ち」と言われた通り3回唱えた。

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