エピソード8(脚本)
〇散らかった職員室
小田「お、岡本瑞穂なんて名前そこらじゅうにいそうじゃないか・・・偶然だろ?」
井上「いやいや全然そんな風に思ってないだろ。明らかに動揺してるの見え見えだって」
井上「やっぱり幽・・・」
小田「それ以上言うなよ!」
小田「と、とにかくカメラは手に入れたんだ。 これで理科室に行ける。井上ナイス・・・!」
井上「でもさぁ~・・・小田も信じてるんじゃないの?今のお前見てると情緒ぐっちゃぐちゃだし、顔引きつってるし」
ただでさえ追い込まれてる状況に、新たな信じ難い情報が加わって頭の中はショートしそうになっていた。
こんな所まで来て俺たちは存在しないもののせいで巻き込まれていたなんて、信じたくなかったし、もう耳にも入れたくない。
とにかく今は、今しなければならない目の前の事をこなすしかないんだ。
これ以上邪念を入れたくなかった俺は、先生の机からカメラを持ち出した代わりに、佐崎のカメラ引き出しに入れた。
小田「と、とにかく、理科室に行くぞ!」
それでも信じたくない事実が
本当だと突きつけるような光景が
扉を開けた瞬間・・・目の前の廊下に広がっていた。
〇手
壁には赤い掌、掌、掌・・・
・・・いや、正式には赤い手形がいくつも残されている。
カエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセ
窓、床、壁全体には同じ言葉が赤い文字で無数に書かれている。
〇まっすぐの廊下
小田「・・・っ!!?」
驚きすぎると人は声を出ないらしい。
額や背中から冷や汗が吹き出しては、下へと伝いだし、
体が強ばり全身が総毛立つ。
目に入った異常な光景が、これ以上足をふみいれたら危険だと、頭の中で警鐘を鳴らし始めた。
しかし、逃げ出そうとしても膝が震えて動けない。
隣の井上もあまりの衝撃に腰を抜かして、職員室まで座ったまま後ずさりしていた。
井上「なぁ、俺たちこのまま理科室に行ったらどうなるのかな・・・」
小田「今更何言ってもしょうがないだろ。ここまで来たら行くしかないだろ」
井上「でもさ・・・」
小田「写真もまだ7枚揃っていないだろ」
小田「逃げるなら佐崎を助けてからだって、さっきの言葉は嘘だったのか?」
小田「お前は・・・俺とは違うだろう?」
俺の言葉にハッとした井上がゆっくりと立ち上がった。
異様な赤い廊下を目前に、シャッター音と共に光が放たれる。
その様子を見る限り、恐怖から立ち直ったと見なした俺も前を見据えて一歩を踏み出す。
小田「理科室に行くぞ、井上」
井上「ああ・・・行こう。佐崎ちゃんのためにも」
待ち受けるもの・・・それが人なのか、別の何かなのか定かではない。
どっちみち行かなければならないのだ。
刻々と迫るタイムリミットが恐怖に立ち向かう原動力に変わっていた。
〇まっすぐの廊下
小田「着いた・・・理科室」
井上「入った途端、襲われたりしないよね?」
小田「例え幽霊だとしたら、生きてる人間に触れられない。そう考えとけ」
井上「俺よりポジティブだな・・・!」
井上と顔を見合わせると互いに頷き、それを合図に理科室の扉を開いた。
〇理科室
小田「佐崎!!」
誰もいない理科室に俺だけの声が反響した。窓の外は曇天から晴れに転じる事はなく、気がつけば雨が降り注いでいる。
井上「小田、テーブルに何かあるぞ」
カメラをロッカーに入れろ。
指示に従えば生徒を解放する。
井上「バレないよな・・・佐崎ちゃんのカメラとよく似てるし」
小田「もうこれしか方法はなかった。あとはバレない事を祈るしかないな」
俺はメモに書いてある指示通りに、ロッカーの中にカメラを入れようとした。
その時、
小田「何の音だ・・・?」
目の前から物音がした。辺り周辺を見回してみると、井上が震えた指先で一点を差した。
音は・・・ロッカーの中からだ。
井上「佐崎ちゃん!そこにいるのか!?」
井上がロッカーの扉を叩いた。案の定鍵がかかっており、扉は開かない。
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