僕たちがつくる七不思議

nagi

エピソード5(脚本)

僕たちがつくる七不思議

nagi

今すぐ読む

僕たちがつくる七不思議
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇学校の下駄箱
井上「これを見てくれ」
  井上から渡されたスマホ画面を覗きこむと、ツブッターのあるコメントが目に飛び込んできた。
  お前は教師として教える資格はない。
  10年前瑞穂を殺した罪は重い。
  カメラを渡すまでこの投稿は消えない。
小田「この書き込みを調べていたのか?」
井上「ああ。プロフィール欄にうちの学園が書かれてあるから、多分事情を知ってる現役生か、OBが書き込んだものだと思う」
井上「しかも同じ文面が特定の人に当てて何度も送られているんだ」
井上「毎日、毎日飽きずに同じ文面をね。でも、それがある日を境にしてプツッと途切れてるんだ」
井上「きっと、両者の間で何かがあったんだよ」
小田「送りつけられてる方のプロフィールも確認したのか?」
井上「確認したけど、投稿されてる写真も何もかも消されてる状況だから調べようもなかった」
小田「そうか・・・10年前って、うちの学校が開校した年じゃないか?」
井上「そうなんだよ。でも、10年前のニュース記事を色々と漁ってみても、それらしい情報が見当たらないんだ。これっておかしいよな?」
小田「それもまた不気味だな・・・」
井上「でもさ、出ないってことはまだ未解決なんだよ。だからさっき小田から聞いた話で確信が持てたんだ」
小田「俺と佐崎が見たあの校庭にいた人影か?」
井上「きっと投稿者の死体を隠していたに違いないよ。それで佐崎ちゃんは目撃したから口止めとして犠牲者に・・・」
井上「俺らも校舎から出られないし、ここにいたら危ないかもしれない」
小田「そんな大事な話をどうして先に言わなかったんだよ」
井上「それはっ・・・!」
井上「お、俺の提案に乗ってくれた佐崎ちゃんのためにも、なんとかして写真撮影を続行させたい気持ちがあったからだよ」
小田(あぁ。こいつ佐崎のことが・・・)
井上「こ、これ以上野暮なこと聞くなよ!」
小田「わかったよ聞かないよ。それなら優先順位ってものがあるだろ?佐崎が心配だったらまずはやっぱり警察を・・・」
井上「俺の心配してる佐崎ちゃんは写真部が大切なんだ。だから意地でも今夜完成させて写真部を守りたがってる」
井上「俺はずっと近くで見てきたんだ。佐崎ちゃんだったらきっと自分よりも写真部を優先するよ」
小田「井上・・・」
  一年からの長い付き合いだが、こんなに真面目に喋る井上を見たのは初めてかもしれない。
  井上の必死な訴えは俺の心を突き動かし揺さぶり、これ以上の説得は口から出なかった。
小田「・・・わかったよ。お前の意見を尊重する。撮影をこのまま続けよう」
井上「わかってくれたのか?」
小田「その代わり本当にヤバイ状況だと判断したら、儀式を終わらして即行で警察呼ぶからな」
井上「わかった・・・ありがとう。やっぱり持つべきものは友達だね」
  俺の同意に安心した井上の表情が、ようやくいつも通りに戻った。
小田(正直、さっき佐崎を見捨てた行動になんとか落とし前をつけたくて意見にのったんだが・・・怒られそうだからこの話は黙っておこう)

〇学校の下駄箱
  事件の話について井上の見解が正しければ、ここから先はもっと慎重に進まなければならない。
小田「犯人がまだ校舎の中にいるかもしれない。さっき佐崎が撮った写真が気になっているはずだし、必ず俺らを狙ってくる時がくる」
小田「佐崎は自らの保身でわざとカメラを落としていったに違いない」
井上「成し遂げられなかった七不思議の写真は必ずおさめるからな。頼むから佐崎ちゃん無事でいてくれよ・・・」
小田「・・・佐崎はまだ生かされてる可能性が高いと思う」
井上「どうしてそんな風にはっきりと言えるんだ?気休めだったら別にいらないからな」
小田「いいや、カメラを持っているのは俺たちだ。そのうちカメラ欲しさに交換条件を求めてくるかもしれないだろう?」
小田「だから生かしておく必要があるってわけ」
井上「さっすが名探偵。だったら早いとこ佐崎ちゃん見つけないとな」
井上「なぁ、10年前の事件について小田はどう思う?生徒を殺した教師がもしうちにいたら、誰なんだろうね」
井上「もしかしたらうちの顧問の高月先生だったりして」
小田「ありえない、ありえない! 縁起でもない事言うなよな?」
井上「冗談だって言いたいけど、前にSNSでちらっと見かけた噂があるんだよ。 夜中の校庭でスコップ待ってる先生の目撃情報・・・」
小田「はぁ?そんなのデマだろ? そんな事するはずないって・・・少しよそよそしさはあるけど良い先生だよ」
小田「なんだ?こんな時間にチャイム?」
  深夜の校舎にチャイムを鳴らしている何者かがいる。何か合図か・・・俺たちを呼び出すためか・・・それとも本当の怪奇現象か
  思惑が絡んでいそうで素直に行動に移せない。井上の情報がさらに謎を深めた。考えてると訳がわからなくなってくる
井上「放送室からだ。次の写真撮りに行くぞ!」
小田「ああ・・・」

〇放送室
  もしかしたら俺たちを誘き出すための罠かもしれない・・・立て続けに起こる不思議な現象にわずかな疑念を抱き始めていた。
小田「誰もいないな」
井上「誰もいない放送室から鳴り出すチャイム・・・ここも何か撮れるかも・・・!」
  ・・・パシャッ
小田「なぁ、おかしくないか? あまりにも色々と起きすぎな気がするんだが」
井上「幽霊の入れ食い状態だね うちの学校心霊現象のデパードで有名になるよ」
小田「それで有名になっても全く嬉しくないな」
井上「あれ、なんだこれ?」
  放送室の音響機材の上に一枚の紙が置かれていた。
  取引しよう。
  明け方までにカメラを理科室に持ってこい。言う通りにすれば女子生徒と交換してやる。
  紙には交換条件と思わしき内容が書かれていた。
小田「やっぱりな・・・予想的中だ」
井上「取引って・・・佐崎ちゃん生きてるの!?」
井上「良かったー・・・!!」
小田「ひとまず良かったがここからどうする? お前はさっき言ってたよな?佐崎なら写真部を守るために撮影を優先するって」
井上「あ、ああ・・・?」
小田「写真はまだ3枚しか撮れてないが・・・条件をのむか?今のお前の意見を聞きたいんだ」
井上「えぇ・・・?そんなの、すぐに決められる訳がないって・・・」
  井上の表情が曇る。佐崎が無事だとわかった途端さっきの意志がぐらついているのだろう。
小田(自分が決められないからって他人に生き死にの重い選択を押し付けて俺もズルいもんだ。井上、すまんな)
  しばらくの沈黙を破るかのように井上のスマホが鳴り出した。
井上「さっ・・・佐崎ちゃんからだ・・・!」
小田「佐崎って・・・それ本当か!?」
  まるで自らの意思を伝えるために名乗り出てくるようなすごいタイミングだ。
  井上のスマホを見ると、着信名には間違いなく佐崎の名前が表示されていた。

次のエピソード:エピソード6

成分キーワード

ページTOPへ