エピソード2(脚本)
〇まっすぐの廊下
小田「なんだよその話・・・本当なのか?」
嘘言ってどうするんだよ。
行方不明者ってのは、恐らくこの学校に通ってた生徒だろうな。
佐崎「じゃあ、さっき私たちが見たのって・・・」
小田「マジでやばいかもな」
小田「・・・あれ?」
小田「そういえば・・・足音がしない」
なんだ?何かそっちであったのか?
いつしか俺たちに近寄るような足音が聞こえなくなっていた。
しばらく待ってみると、時間差で昇降口の方向からわずかに扉の開いた音が聞こえた。
小田「ふぅ、どうにか撒いたみたいだな」
一時はどうなる事かと思ったが、やり過ごせた緊張感から解放され胸を撫で下ろした。
佐崎「一応一段落ね。じゃっ、企画の準備のためにこのまま部室に行きましょうか」
小田「えっ、部室に行くのか?」
佐崎「心霊写真は撮ろうと思っても簡単には撮れないものよ。まずは下準備が大事なの。ほら、行きま・・・!?」
背後から足音が近づいてきた。
佐崎「何か来る・・・どっか行ったはずじゃ・・・」
佐崎「どんどん近くなってるわよ・・・」
小田「どこか、」
小田「どこか、隠れる場所はっ・・・!!」
・・・田、小田ってば
小田「え・・・?」
二人して遅刻したこと怒ってるのか?
そっぽ向いてないで振り向いてくれよ。
スマホ越しに聴こえる声と背後から聞こえる声がシンクロしている。という事は・・・
振り向いてみると、
そこには、俺を10分待たせたのに平然とした顔の男が立っていた。
井上「お待たせ~♪」
〇まっすぐの廊下
小田「・・・・・・お、」
小田「お前かよっ!!」
井上「いやー、来るなって言われたけどせっかく学校に着いた所だったから」
井上「来ちゃいました♪」
小田「お前なぁ・・・」
小田「来ちゃいました♪」
小田「じゃねーんだよ! ヒヤヒヤさせやがって!」
佐崎「なーんだ、井上君だったのね。 じゃあこれで全員集合ねっ!」
井上「それじゃあ始めよっかー」
小田「遅れたお前が仕切るなよ。 それに、もういいから通話切れ」
井上「はいはい切りましたよー」
佐崎「それじゃ、みんな揃ったところだし、部室に行きましょ。やらなきゃならない事があるの」
小田「そのやらなきゃならない事って、さっきからずっと気になってたんだけど何すんの?」
佐崎「今回心霊写真を撮るにあたって、まず幽霊を呼び出す必要があると思って、部室で色々と儀式をしたいと思います」
小田「儀式って・・・なんか怖そうだな」
佐崎「まっ、それは着いてからのお楽しみね」
〇学校の部室
部室に入ると、テーブルの上に見慣れないぬいぐるみが置かれていた。そして傍らにカッターがある。
小田(置かれてるものが穏やかじゃないな。何をする気だ?)
佐崎「ねぇ、二人とも」
佐崎「ひとりかくれんぼって知ってる?」
小田「なんだそれ? 井上知ってる?」
井上「うん、俺は知ってるよ。降霊術の一種だよね」
佐崎「井上君ご名答! 今からこの部室で小田君には代表で、降霊術の儀式をやってもらいま~す!」
小田「俺が!?」
佐崎「心霊写真なんて撮ろうと思って撮れるようなものでもないでしょう?」
佐崎「小田君から噂を聞いて少し考えてみたんだけど、単に写真でっちあげるのも芸がないから、まずは霊を降ろしてみようかなーって」
佐崎「まぁ、撮れたらラッキー感覚で、一応試してみようと思って、事前に用意してみました」
小田「何するの・・・?」
佐崎「とっても簡単よ!オバケから逃げてかくれんぼをするの」
佐崎「小田君は撮影しなくていいから、ただ隠れているだけで十分よ」
佐崎からざっくりと儀式の手順を聞いた。
なんでも午前3時になったら始める儀式のため、こんな夜遅くの集合だったらしい。
俺が一連の手順を記憶し確認すると、二人は儀式の前に部室から出ていき、それぞれ別の場所で待機するという。
一人は少し心細いが、俺が隠れている間に他二人が幽霊の撮影に臨むらしい。
ゲームの終わり方は、隠したぬいぐるみを見つけだし「私の勝ち」と3回唱える。ただそれだけだ。
一通りの手順を終えると、あとは俺がぬいぐるみを隠す行程だけが残された。
〇学校の部室
こいつを隠して俺が逃げればゲームが始まる。
棚にぬいぐるみを隠す・・・
これで幽霊なんて現れるのだろうか・・・
半信半疑の中、俺は写真部の部室を後にした。
〇まっすぐの廊下
小田「隠れるといっても、どこに隠れたらいいんだ?」
昇降口の扉が開いた音がした。佐崎の事前の知らせでは、校舎の外に出るのはルール違反のはず。
小田(さては井上、ビビって逃げたか・・・)
・・・違う。
昇降口から出たのなら、足音は遠退くはず。これは・・・
小田(逆だ・・・!!)
さっきの校庭の人物が俺の頭の中で、フラッシュバックした。
何処かに逃げれる場所はないか・・・見回し探すも教室の扉ばかりだ。
小田(仕方ない・・・ひとまずはここで凌ごう)
〇散らかった職員室
佐崎「ちょっと!何しに来たのよっ!」
職員室に入ったや否や、机の下に隠れていた佐崎が顔を出し声をあげた。
小田「悪い。少しの間ここに隠れさせてくれ」
佐崎が何かを言う前に、俺は黙って向かい側の机の下に押し入った。
佐崎「なんでここに来たのよ! 一緒にいてもしょうがないじゃないっ!」
小田「予想外の事態が起こってる。さっき外で見た奴が校舎の中に入ってきた音が聞こえた」
佐崎「そんなっ・・・」
小田「なぁ、このままだと俺らが危ないんじゃないか?企画はやっぱり中止にした方が・・・」
俺たちが隠れている部屋に誰かが入ってきた。
咄嗟に佐崎が懐中電灯を消し、二人で息を潜める。
コツッ、コツッ、コツッ・・・という足音が机を隔てた一枚裏側で鳴り響く。
小田「・・・ごくっ」
思わず息を飲み込んだ。
向かい側で隠れる佐崎も小さく身を縮こませながら息を殺している。
・・・・・・
流れる時間が異常に長く感じる。
・・・・・・
小田「・・・行ったか?」
佐崎「今のは中々にスリリングだったわね」
小田「なぁ、もう止めにしないか・・・?」
佐崎「何言ってるのよ、まだ一枚も撮ってないじゃない!」
小田「これ以上の踏み込みは部員に危険が及ぶ。何かあったら責任は部長に降りかかってくるのをお前も分かってるだろ?」
佐崎「こういう時だけ部長ぶるのはやめて。廃部がかかってるの!今日しか撮影の猶予は残されてないの!」
カタンッ!
興奮した佐崎が手に持っていた懐中電灯を滑らせ、床に落とした。
その音は、廊下の向こうまで響き渡り・・・足音が再び近づいてきた。