女銀(メギ)と火尾(カビ)(脚本)
〇黒背景
・・・
モス「うう・・・頭が割れそうだ」
kabi 「見つけたぞ!」
kabi 「どこへ行く!」
モス「ハアハア・・・」
モス「我が眷属たちよ・・・」
モス「おれを安全な場所へ連れて行ってくれ・・・」
megi「逃げられないわよ!」
megi「あっ、待ちなさい!」
megi「猫!?」
megi「まずいわね・・・」
kabi 「おっと! 危ない」
kabi 「へぇ、この世界にも猫がいるのか・・」
megi「ダメよ!」
megi「こっちの生物に手は出せない」
kabi 「ああ、わかってる」
megi「仕方ない・・・」
megi「一旦引くわよ」
〇アパートのダイニング
みゆき「ただいま~」
みゆきの母「あら、おかえりなさい」
みゆきの母「今日は早いのね」
みゆき「今日は「怪人同盟」の学校合宿だからね。色々と準備があるんだ~」
みゆきの母「あら、今日だったの?お母さん、すっかり忘れてたわ」
みゆき「もう~ 私、これから買い出しに行くからね」
みゆきの母「「怪人同盟」なんて面白いサークルだと思うけど・・・」
みゆきの母「お泊りするのは、さすがにお母さん・・・少し心配だわ」
みゆき「平気よ! 顧問の先生もいっしょなんだから」
みゆきの母「そうね・・・」
みゆき「あれ?」
みゆき「お庭に猫がいるみたい」
みゆき「最近、なんだか野良猫ちゃんが増えたみたいね」
みゆきの母「そう言えばそうね・・・」
みゆき「ねぇ、ウチで引き取ってあげようよ」
みゆきの母「また突然ね」
みゆきの母「きちんとみゆきがお世話するって言うのなら、お母さん別に反対はしないけど・・・」
みゆき「ほんと? じゃ、本気で考えておいて!」
みゆきの母「みゆき、でも・・・」
みゆき「大丈夫、あれから声は聞こえないよ」
みゆきの母「そう・・・」
みゆきの母「ならいいのだけれど・・・」
みゆき「うん、安心して」
みゆきの母「ふふ、怪人に熱中するのもいいけど、猫の方がお母さんは安心かもね」
みゆき「もう~、私は奇怪な話が好きなだけよ」
みゆき「じゃあ、お母さん 行ってくるね」
みゆきの母「はいはい、気を付けてね」
みゆきの母「・・・」
みゆきの母「あなた・・・」
みゆきの母「みゆきを守ってくださいね・・・」
〇スーパーマーケット
みゆき「人数分のお菓子とドリンクくらいでいいよね」
みゆき「買い出し係ってけっこう大変だな~」
〇スーパーの店内
みゆき「ポテチにチョコレート、あとは・・・救急用品なんかも必要よね」
みゆき「いった~い・・・」
メギ「いててて・・・」
みゆき「あっ、大丈夫?」
???「おーい、そいつを捕まえてくれぇ!!」
メギ「まずい!」
みゆき「君、ちょっと待って」
メギ「はなせよ~!」
スーパー店長「ありがとう、お嬢さん」
スーパー店長「捕まえたぞ、この万引き犯め!」
メギ「しつこいな! さっき説明した通りだよ」
メギ「この世界のお金を持っていないんだ」
スーパー店長「またわけのわからんことを・・・」
メギ「仕方ないから、勝手に持っていこうとしただけだ」
スーパー店長「それが万引きなんだよ!」
みゆき「あの・・・」
みゆき「この子、一体何を取ったんですか?」
スーパー店長「ああ、そうだな、 よし、取った物出してみろ」
スーパー店長「なんだ?」
スーパー店長「「猫除けスプレー」「猫ダメシート」に「キャットフード」・・・」
スーパー店長「野良猫退治でもするつもりなのか?」
メギ「そうだよ!」
メギ「早くはなしてよ 急いでいるんだ」
スーパー店長「ダメダメ、とりあえず事務室に来てもらうぞ」
スーパー店長「警察は勘弁してやるが、保護者には来てもらわんとな」
メギ「ちょっと、待ってよ 困るんだってば!」
スーパー店長「うるさい、さっさと来い!」
みゆき「うう、なんか可哀そうなことしちゃったかな・・・」
みゆき「て、いけない! 私も急がなきゃ」
〇住宅街の道
みゆき「だいぶ、遅くなっちゃったな」
や、やめろってばー!!
みゆき「え!?」
野良猫「グルルルル」
野良猫「シャー!」
カビ「イテテ・・・ いい加減にしてくれ~」
みゆき「コラー!!」
みゆき「ほらほら! 君たち、あっち行きなさい」
みゆき(良かった・・・)
みゆき(さっきのはあの子たちの声じゃない)
みゆき「君、大丈夫?」
カビ「うん、ありがとうお姉ちゃん 助かったよ」
みゆき「君、あの子たちに何かしたの?」
みゆき「この辺の猫たちが、人に敵意を向けるなんて今までなかったことよ」
カビ「とんでもない!」
カビ「おいらは何もしちゃいないよ」
カビ「あれはモスの仕業さ・・・」
みゆき「もす? なんのこと?」
カビ「い、いや、こっちの話だよ」
みゆき「あっ、ケガしてるわね 手当してあげる」
カビ「い、いいよ こんなのすぐ直るよ」
みゆき「ダメよ、ばい菌入ったら大変よ」
みゆき「よし、 絆創膏も買っておいて良かった~」
カビ「ありがと、お姉ちゃん」
カビ「おいら、カビって言うんだ」
カビ「もう行かなきゃ」
みゆき「うん、気を付けて帰るんだよ」
〇学校の裏門
みゆき「えへへ、夜の学校ってドキドキするな~」
みゆき「皆、もう来てるよね」
カビ「お姉ちゃん!」
みゆき「君・・・カビ君?」
みゆき「どうしたの? 何でこんなところに・・・」
カビ「お姉ちゃん、学校に入っちゃだめだ」
みゆき「どうして?」
カビ「悪いことは言わないから、家に帰ってよ」
みゆき「今日はサークルの皆と朝まで学校で過ごすのよ」
みゆき「他の皆はもう来ているはずだから、私も早く行かなきゃ」
カビ「危ないよ、こんな遅い時間に」
みゆき「ふふ、心配してくれてありがとう」
みゆき「でも、もう遅いから、君の方こそ早く帰らなきゃダメよ」
みゆき「じゃあね」
カビ「あっ・・・お姉ちゃん、ダメだよ!」
〇まっすぐの廊下
みゆき「・・・皆、何処にいるんだろう?」
みゆき「部室にも教室にもいないなんて変だよ・・・」
みゆき「それに、外からは明かりが点いていたように見えたけど・・・」
みゆき「中は真っ暗だ」
みゆき「何か・・嫌な感じがする」
みゆき「誰!?」
みゆき「誰かいるの?」
みゆき「あかねちゃん!」
みゆき「皆はどこ?」
みゆき「何でこんなに真っ暗なの?」
みゆき「ねえ!」
みゆき「あかねちゃんってば!!」
あかね「みゆきちゃん・・・」
あかね「たすけて!!」
みゆき「な、何?」
みゆき「あかねちゃん?」
みゆき「あかねちゃんどこ!?」
みゆき「奥に何かいる・・・」
みゆき「まさか・・・うそでしょ!?」
みゆき「い、息ができない・・・」
〇学校の廊下
モス「・・・」
みゆき(逃げなくちゃ・・・)
モス「み・・・ゆ」
みゆき「え!?」
モス「グゥゥゥ・・・」
みゆき「く、苦し・・」
みゆき(今、たしかに私の事を・・・)
みゆき「も、もう・・・」
みゆき「ダ・・・メ・・」
???「やめろ!!」
みゆき「カビ・・くん?」
カビ「お姉ちゃん 今、助けてあげるからね」
みゆき「ダメ・・・、逃げ・・・て」
カビ「おい!その人を離せ」
モス「グルルルル」
カビ「おいらの言ってることがわからないのか?」
みゆき「カ・・・ビく・・・」
カビ「お姉ちゃん!」
カビ「仕方ない・・・」
カビ「お姉ちゃん、少し熱いけど我慢してね」
モス「ヌウウウ」
カビ「お姉ちゃん!しっかり」
みゆき「カビ君・・・なの?」
メギ「カビ!」
メギ「ここはあたしに任せて その子を早く安全な所に連れて行きなさい」
みゆき「あなた・・・!? あのときの万引き少女」
メギ「誰が万引き少女よ」
メギ「あたしはメギ さ、早く行って」
カビ「お姉ちゃん 歩けるかい?」
〇学校の廊下
みゆき「あなたたちは一体?」
カビ「あいつはおいら達の仲間なんだ」
みゆき「仲間?」
カビ「色々事情があってね。 おいら達はあいつを連れ戻しに来たんだよ」
カビ「追いつかれたか・・・」
カビ「さあ、早く外へ出よう」
みゆき「待って! メギちゃんを放っておけない」
みゆき「このままじゃ、あの子が殺されちゃうよ」
みゆき「カビ君、私はいいから早くメギちゃんを助けてあげて!」
カビ「心配いらないよ」
みゆき「え!?」
カビ「メギはおいらなんかよりずっと強いから」
メギ「いいかげんにしなさいモス! さっさと帰るわよ」
モス「ムオオオ」
メギ「やれやれ」
メギ「どうやらこの世界の毒気に充てられて、すっかり我を失ってしまったようね」
モス「グガアア」
メギ「たっく、だらしないわね」
メギ「悪いけど」
メギ「あたしもこの世界じゃ上手く手加減できないからね」
モス「グウウゥ」
モス「オオオオオオ!」
メギ「さっさと目を覚ませ!」
モス「グアアアア」
みゆき「す、すごい・・・」
カビ「ね?」
みゆき「あっ!」
モス「・・・」
モス「イッタ~・・・」
みゆき「猫になった!?」
メギ「力を使い果たしたのよ」
メギ「あの姿なら、もうこの世界からの干渉を受けなくて済むわ」
メギ「もう安心よ」
カビ「さて・・・」
カビ「おいら達も、そろそろ限界だ・・・」
カビ「へへ、一件落着だな」
〇田舎の空き地
みゆき「もうすぐ夜が明ける・・・」
みゆき「なんだか夢でも見ていたみたい・・・」
カビ「お姉ちゃんの友達は、全員保健室に運んでおいたよ」
カビ「朝までグッスリだ」
メギ「記憶も消しといたわ」
モス「これで安心して帰れるニャ~」
カビ「あのな・・・」
メギ「全部あんたのせいなんだけど・・・」
カビ「おいら達はともかく、お姉ちゃんには何か言う事があるんじゃないか?」
モス「ご、ごめんニャさい」
モス「おれ・・・どうしても人間の世界を見て見たかったニャ」
モス「二人が止めるのも聞かないで・・・」
みゆき「ううん、結局みんな無事だったんだし、気にしないでモス君」
モス「あ、ありがとニャ~」
みゆき「それよりも、聞きたいことが・・・」
メギ「さて、そろそろ行くわよ」
みゆき「行くって、どこに?」
メギ「決まってるじゃない、帰るのよ 自分の世界に」
カビ「これでお別れだ、お姉ちゃん 色々ありがとう」
みゆき「カビ君・・・」
メギ「行くわよ」
みゆき「メギちゃん! ちょ、ちょっと待って」
みゆき「そんなに急いで帰ることないじゃない」
みゆき「私、まだ二人に何のお礼もしてないよ」
みゆき「そうだ、家に来て! お母さんと私の二人だけだから気兼ねいらないし・・・」
みゆき「ほ、本当のお姉ちゃんだと思って気軽に・・・」
みゆき「ね?」
メギ「・・・」
メギ「あなた、本当に変わってるのね 異形のものが怖くないの?」
みゆき「ちっとも怖くないよ!」
みゆき「月に照らされた銀色の怪人・・・」
みゆき「とってもキレイだった・・・」
メギ「な、なに言ってるのよ・・・」
メギ「ばっかじゃない?」
モス「メギ照れてるのか?・・・」
メギ「うるさい!」
みゆき「正直言うとね」
みゆき「私、小さい時にけっこう不思議な体験をすることが多かったの・・・」
みゆき「猫や鳥の言葉がわかることもあった」
メギ「・・・」
みゆき「私とお友達になってくれないかな?」
カビ「お姉ちゃん、気持ちは嬉しいんだけど、それは無理なんだ」
みゆき「どうして?」
カビ「この世界は、おいら達には合わないんだよ」
カビ「半日も経たないうちに身体もどんどん縮んで子供みたいになっちゃうし・・・」
メギ「正直、明日まで正気を保っていられるのかさえ怪しいものよ」
メギ「あたし達もさっきのモスみたいにいつ暴れ出してもおかしくないのよ」
みゆき「そんな・・・」
メギ「行くわよ」
カビ「さようなら、お姉ちゃん 楽しかったよ・・・」
みゆき「そんな!待ってよ」
みゆき「せっかく出会えたのに・・・」
〇屋上の端
???「行かないでー!!」
〇田舎の空き地
みゆき「つっ・・・?」
メギ「ねぇ・・・」
メギ「ちょっと、大丈夫?」
みゆき「え?」
みゆき「あっ、うん、ごめんなさい・・・」
モス「・・・」
カビ「モス、どうした?」
メギ「行くよ! 名残を惜しんだって仕方ないんだから・・・」
モス「おれ、帰りたくないニャ」
カビ「い!?」
メギ「おい!」
モス「メギ」
モス「カビ」
モス「猫はいいぞ~」
「・・・」
〇月夜
〇アパートのダイニング
みゆき「お母さん、ただいま!」
みゆきの母「おかえりなさい 楽しかった?」
みゆき「うん、色々あって楽しかったよ」
みゆき「そんなことより、お母さん」
みゆきの母「なぁに?」
みゆき「飼いたい猫が、見つかったの!」
みゆきの母「え!? みゆきは本当にいつも突然ね」
みゆき「へへへ、順番に紹介するね」
みゆき「モス!」
みゆき「カビ!」
みゆき「メギだよ!」
みゆきの母「ちょっと!一度に3匹も?」
みゆきの母「それに、もう名前まで決めて・・・」
みゆき「ちゃんとお世話するから お願い、お母さん!」
みゆきの母「もぅ・・・ しょうがないわね」
みゆき「やったー! ありがとうお母さん」
みゆきの母「ふふ、なんだか家族が一度に増えたみたいね」
みゆき「そうだよ!」
みゆき「それに、なんだか懐かしい感じがするの、あの子たち・・・」
みゆきの母「・・・」
みゆき「今度「家族写真」撮ろうよ!」
みゆき「ね?」
みゆきの母「そうね」
カビ(・・・どうするメギ?)
メギ(いいんじゃない?しばらくは・・・)
メギ(猫でいる限り、この世界に順応できてるわけだし)
モス「もんだいニャイ!」
メギ「・・・今はね」
今回の体験を経て、みゆきちゃんは倶楽部の面々にとっておきの話を提供できるようになった反面、新しい家族の正体を明かす訳にもいかず、悶々としてしまうのではないでしょうか。
個人的に怪奇譚に興味があるので、個性的な倶楽部の人々の語りも見てみたいと思いました。
ネコは正義!
(ちなみに作者様、大変余計なお世話ですが、カビとメビが「ネコはいい」と勧誘を受けているシーンで、メビ2人がイラストで出ているシーンがありました…)
女の子にキッズに猫ちゃん!な世界観に出てくるスラッとした怪人のビジュアル、とても映えるなぁと思いました!
なんだかんだネコ生活を楽しむ日常パートやシリアスパート、いろいろと覗きたくなる設定で楽しかったです✨