Phantom❌Life

CotchTheScotch

怪人生活、始めました!(脚本)

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〇マンション群
  『生きるコスト』が高過ぎる。
  そう思いませんか?
  食費や生活費・・・特に税金──
  何故、人は生きる為に
  これ程お金が必要なのでしょうか?
  あなたは何の為に働いているのですか?
  働かないと生きていけないからですよね?
  もし仮に──
  働かなくても生きていけるとしたら、
  あなたは働きますか?
  ・・・働きませんよね

〇テレビスタジオ
  そこで今回は、働かなくても
  生きていける方法をご紹介します!
司会者「それがこちら!」
司会者「怪人化です」
司会者「怪人になれば──」
司会者「お腹が空かない、睡眠は必要ない 服もいらない──」
司会者「住むところさえ必要ありません」
司会者「生きるコストがかからないんですよ」
司会者「コストがかかる人間、 コストがかからない怪人」
司会者「あなたはどちらを選びますか?」

〇電気屋
山下 漣(やました れん)(生きるのって、 ほんとコストかかり過ぎよな)
山下 漣(やました れん)(コストに見合うだけの価値が 人生にあるとは思えんし・・・)
「コストのない人生への初期投資──」

〇テレビスタジオ
司会者「その怪人化のお値段がなんと・・・」
司会者「1,980,000円でのご提供となっております!」

〇電気屋
山下 漣(やました れん)「たっか!」
山下 漣(やました れん)(結局、低所得者に選ぶ権利なんて無いんだ)
「お客さん、怪人化に興味あるのかな?」
山下 漣(やました れん)「はい?」
店主「熱心にテレビを見られてましたから」
山下 漣(やました れん)「ないわけではないですけど・・・」
山下 漣(やました れん)「手が出ないというか」
店主「あのね、うちにサンプルがあるんだけど誰も欲しがらなくて困ってたんですよ」
山下 漣(やました れん)「サンプル・・・?」
店主「現在販売中の怪人化キットは、運動能力がアップしたり特殊能力がついたりするんだけど」
店主「サンプルの怪人化だと自身の能力は変わらなくてね」
山下 漣(やました れん)「見た目だけ怪人になるって事ですか?」
店主「まぁ、もちろんお腹は空かなくなるし、眠る必要もなくなるんだけど──」
店主「怪人化できるのって人生で一度きりでしょ?」
店主「それなら能力が強化される正規品を選びたいって、誰もサンプル使ってくれなくてね」
山下 漣(やました れん)「それでサンプルが残ってるって事なんですね」
店主「ええ──お客さん、もし良かったら 持っていってくれませんか?」
店主「怪人化キットって場所取るから、 けっこう邪魔で困ってるんですよ」
山下 漣(やました れん)「タダなら貰いますけど・・・いいんですか?」
店主「もちろんです!」
店主「それと、この怪人にも1つ特殊能力があるんですが──」
店主「それは説明書でご確認ください」

〇簡素な一人部屋
  自宅
山下 漣(やました れん)「はぁはぁ・・・重すぎる・・・」
山下 漣(やました れん)「でもこれで働く必要がなくなるんだ」
山下 漣(やました れん)(食費、家賃、生活費・・・税金もなくなる・・・んだよね?)
山下 漣(やました れん)「最高じゃん」
山下 漣(やました れん)「山下──」
山下 漣(やました れん)「いきまーす!!!」

〇黒

〇簡素な一人部屋
山下 漣(やました れん)「成功したのか?」
山下 漣(やました れん)(おお・・・案外かっこいいぞ)

〇簡素な一人部屋
  次の日
山下 漣(やました れん)(お腹も空かないし、眠くもならない)
山下 漣(やました れん)「もうこの部屋も必要ない──」
山下 漣(やました れん)「・・・ついに生きるコストがゼロになったんだ!」
山下 漣(やました れん)「やったぁー!」

〇川に架かる橋
山下 漣(やました れん)(平日の朝から散歩出来るなんて、 贅沢だなぁ~)
山下 漣(やました れん)(見慣れた景色が違って見える)
山下 漣(やました れん)(ん?何か騒がしいな)

〇住宅街の公園
山下 漣(やました れん)「何だこれ・・・」
  そこには多数の怪人が居座っていた
怪人「ちょっと待った!」
怪人「君、サンプルの怪人だよね?」
山下 漣(やました れん)「はい」
怪人「ここは年収2000万以上稼いでた人専用の公園なんだけど、入る勇気はあるかな?」
山下 漣(やました れん)(公園って誰が使ってもいい場所じゃなくなったのか・・・?)
山下 漣(やました れん)「やめときます」

〇開けた交差点
山下 漣(やました れん)(家は要らないけど、生活の拠点となる場所は確保しておきたい──)
山下 漣(やました れん)(・・・ってなると、やっぱり公園だよな)

〇公園の入り口
怪人「もしかしてサンプルの怪人かい?」
山下 漣(やました れん)「はい」
怪人「ここは元公務員専用の公園なんだけど、君はこの輪に入る勇気はあるかな?」
山下 漣(やました れん)(ここもダメなのか・・・)
山下 漣(やました れん)「やめときます」

〇ゆるやかな坂道
山下 漣(やました れん)(怪人になっても肩身の狭い思いをする事になるとはね)
「ねぇ」
怪人「君、サンプルだろ?」
山下 漣(やました れん)「そうだけど」
怪人「行き場がなくて困ってるんじゃないかと思ってさ」
山下 漣(やました れん)「ちょうど困ってました」
怪人「近くにサンプル専用の広場があるんだ! おいでよ」
山下 漣(やました れん)「うん」

〇けもの道
怪人「こっちこっち~」

〇森の中
怪人「ここだよ」
山下 漣(やました れん)(サンプルだと、 こんな場所しか確保出来ないんだ)
「よぉ!同士よ!」
怪人「ヤッホー」
山下 漣(やました れん)「ヤッ・・・」
山下 漣(やました れん)「こんにちは」
怪人「いきなりだけど、ちょっと聞いてもいい?」
山下 漣(やました れん)「なんですか?」
怪人「君もコジヤマ電器でサンプルを貰ったのかい?」
山下 漣(やました れん)「そうですよ」
怪人「やっぱりそうか」
山下 漣(やました れん)「どうかしたんですか?」
怪人「俺が出会ったサンプル怪人は全員、コジヤマ電器で怪人キットをもらってるんだ」
怪人「コジヤマ電器グループは、サンプルを配る仕事を政府から任されたという噂は本当か──」
山下 漣(やました れん)「政府から・・・?」
怪人「あぁ、色々調べて分かったんだが、怪人が増えすぎた事に対して、政府は──」
怪人「怪人に『怪人税』というものを課すらしい」
山下 漣(やました れん)「えっ!?」
怪人「しかも月々約12万円だ」
山下 漣(やました れん)「えっ・・・」
怪人「怪人化キットを購入して怪人になったお金持ちなら余裕だろうが──」
怪人「俺たちみたいなサンプルで怪人になったような貧乏人は働かなければ払えない」
怪人「しかし、こんな体で働ける場所なんて無いから事実上、貧乏怪人への死刑宣告だよ」
怪人「そんな貧乏怪人が行き場を無くした時、何をすると思う?」
山下 漣(やました れん)「・・・!?」
怪人「最後の手段として特殊能力を使うのさ」
山下 漣(やました れん)(特殊能力? そういえば説明書読んでなかったな)
山下 漣(やました れん)「特殊能力って?」
怪人「自爆だよ」
山下 漣(やました れん)「自爆・・・」
怪人「行き場を失ったサンプル怪人は自爆をするしかなくなる──」
怪人「今、この国にサンプル怪人は2万人くらい居るんだ」
怪人「その2万人が自爆をしたら一体この国はどうなると思う?」
山下 漣(やました れん)「何ですかそれ・・・」
怪人「これは全部、杉山さんの作り話だからね」
杉山(すぎやま)「おいっ、佐藤、作り話ってなんだよー! 推理と言ってくれ」
佐藤(さとう)「名探偵杉山さん、乙です!!」
杉山(すぎやま)「オッツー! って、何だよそれ」
山下 漣(やました れん)「えっ?どういう事?さっきの話は一体・・・」
杉山(すぎやま)「ま、自己紹介代わりの挨拶みてぇなもんさ!これからヨロシクな!えっと──」
山下 漣(やました れん)「山下です」
杉山(すぎやま)「山下君か!俺、杉山!山繋がりって事で親友になれそうじゃん!ヨロシコ」
山下 漣(やました れん)「よ・・・よろしく」
佐藤(さとう)「さっきの話さ、怪人に税金をかけるって噂は本当らしいけど」
佐藤(さとう)「有権者の中にも怪人化した人は多くて、そう簡単にいく話でもないみたいだから」
佐藤(さとう)「気にしなくていいと思う」
山下 漣(やました れん)「そうなんだ」
杉山(すぎやま)「なぁ?2人の時は勇気が無くて諦めてた事があってさ──」
杉山(すぎやま)「3人になったら急に勇気が湧いてきたんだよ!ちょっとやってみていいかな?」
山下 漣(やました れん)「えっ・・・」
山下 漣(やました れん)「犯罪じゃないですよね?」
杉山(すぎやま)「ふっふっふ・・・どうかな? それじゃあ作戦会議といこうか」
山下 漣(やました れん)(何する気だろ・・・)

〇街中の公園
怪人「ちょっとお待ちを!」
怪人「あなた方は、もしやサンプル怪人ではありませんか?」
怪人「ここはセレブリティーな人々が集まる公園ですよ?」
杉山(すぎやま)「面白いご冗談をおっしゃいますわね! オーッホッホ」
佐藤(さとう)「ドリチェ&ギャッパーナですわ」
山下 漣(やました れん)「シャネルスからのルイビートゥン。 そしてググッチ、プラーダよ」
怪人「失礼しました!どうぞお通りください」
山下 漣(やました れん)(これで通れるんだ・・・)

〇街中の公園
怪人「あら?新しいセレブリティーな方がお見えになりましたわね」
杉山(すぎやま)「宜しくドンペリーニョ」
怪人「まぁ、ドンペリーニョの愛好家のお方でいらっしゃいましたか」
怪人「気が合いそうですわね」
杉山(すぎやま)(ふっふっふ)

〇街中の公園
怪人「初めましてセニョリータ」
佐藤(さとう)「ポルーシェ、ランボルニーギ、フェレーリ」
怪人「おおっ、マッセラティーニ」
佐藤(さとう)(セレブリティーとは一体・・・)

〇街中の公園
怪人「ようこそ、セレブ公園へ」
山下 漣(やました れん)「ローレックス、オメーガ、ジーショックス」
怪人「ジーショック・・・ス・・・?」
山下 漣(やました れん)(えっ?違うの?!)
山下 漣(やました れん)「ノーノーノー!ウッブーロ!」
怪人「oh!!ウッブーロ!Yes!」
山下 漣(やました れん)(セレブの会話って何・・・)

〇街中の公園
杉山(すぎやま)「よしっ、潜入成功だ」
山下 漣(やました れん)「案外簡単なんですね」
佐藤(さとう)「セレブの集まりって 一番潜入しやすいからね」
杉山(すぎやま)「じゃあ、そろそろやるか」
「おう!」

〇黒背景
「んんんんーっ!!!!!!」

〇街中の公園
  ブリブリブリブリブリブリブリブリィー!
怪人「ん?あの怪人達一体何を・・・」

〇街中の公園
怪人「何あれ・・・」
怪人「ノ・・・ノ・グーソよ!! あそこにノ・グーソがあるわ!!」
怪人「なんだって!?この神聖な地に、 ノ・グーソだと・・・?」
怪人「みんな逃げろ!! ノ・グーソから逃げろー!」
  セレブ怪人達は公園から逃げ出した
杉山(すぎやま)「やったな」
佐藤(さとう)「バカだねぇ~。 怪人は排泄しないのに」
山下 漣(やました れん)「これでこの公園、使えますね」
杉山(すぎやま)「使わないよ!次の公園へ行こう!」
山下 漣(やました れん)「えっ、使わないんですか!?」
杉山(すぎやま)「公園はみんなのモノなんだ。俺はみんなの公園を守りたい。ただそれだけさ」
山下 漣(やました れん)「えっ、かっこいいですね」
佐藤(さとう)「楽しいからもう一回やりたいだけでしょ」
杉山(すぎやま)「そうだよ」
山下 漣(やました れん)(なんだそりゃ)

〇公園の入り口
  そしてサンプル怪人達は、数ある公園の潜入を全て成功させ──
  ”ノ・グーソ作戦”により、
  裕福な怪人達を撤退させ続けた

〇住宅街の公園
杉山(すぎやま)「いやぁ~今日は楽しかったなぁ~」
山下 漣(やました れん)「ですね!また明日も遊びましょう」
杉山(すぎやま)「何言ってんだ?怪人に明日なんてないぜ」
山下 漣(やました れん)「えっ!?」
杉山(すぎやま)「だって寝る必要ないじゃん?一日の区切りなんて付ける必要ないじゃん?」
杉山(すぎやま)「毎日がオールみたいなもんよ!」
佐藤(さとう)「怪人になりたての頃って、人間の時の習慣で夜は帰って休もうとしちゃうよね」
杉山(すぎやま)「初心者怪人あるあるってやつだな」
山下 漣(やました れん)「あっ、そうか!確かにそうですね」
杉山(すぎやま)「って事で、次いってみよ~!」
山下 漣(やました れん)「えっ?!まだ行くんですか~!?」

〇商業ビル
山下 漣(やました れん)「ここは・・・?」
杉山(すぎやま)「今日公園から追い出した、金持ち怪人達が集まってるビルだよ」
杉山(すぎやま)「──山下君、今日は楽しかった」
杉山(すぎやま)「じゃあな」
山下 漣(やました れん)「えっ?杉山さん・・・?」
佐藤(さとう)「杉山さん、ついにやるんだな」
山下 漣(やました れん)「何をやるんですか?」
佐藤(さとう)「『ありふれた人生の中で、 いつかは一花咲かせたい』」
佐藤(さとう)「それが杉山さんの口癖だったな」
山下 漣(やました れん)「一花咲かせる・・・?」

〇森の中
杉山(すぎやま)「サンプル怪人のいいとこってさ、 いつでも死ねるってとこだよなぁ」
杉山(すぎやま)「いつでも好きな時に人生を終わらせられる。って思ったら──」
杉山(すぎやま)「じゃあ今、死ぬ必要はないよなって思うようになって」
杉山(すぎやま)「それで今も生きてるって感じなんだよな」
  いつでも人生は終わらせられる
  それなら今じゃなくていいじゃない
  だっていつでも終わらせられるんだもの
  杉山みつを
杉山(すぎやま)「・・・で、何の話だっけ?」

〇商業ビル
山下 漣(やました れん)(杉山さん・・・)
山下 漣(やました れん)(あれは結局、何の話だったんだ・・・)
山下 漣(やました れん)「って違う、違う!杉山さんを助けないと!」
佐藤(さとう)「助けるって?」
山下 漣(やました れん)「だって、金持ち怪人達を1つの場所に集めたって事は──」
山下 漣(やました れん)「全員を道連れにして自爆しようとしてるんじゃないですか!?」
佐藤(さとう)「あっ、始まるぞ」

〇空

〇商業ビル
山下 漣(やました れん)「花火・・・」
佐藤(さとう)「杉山さん、一花咲かせられたようだね」
山下 漣(やました れん)「それって花火の事だったんですね! 杉山さんって元花火師だったのかな?」
佐藤(さとう)「そうみたいだね。僕も知らなかったけど」
  只今より、セレブリティーな方々への
  花火大会を開始致します!!
山下 漣(やました れん)「あれ?花火大会?」
佐藤(さとう)「って事は、今のは杉山さんじゃないんだ」
佐藤(さとう)「何だこの音・・・」
山下 漣(やました れん)「えっ!?」

〇黒背景
  いつでも人生は終わらせられる
  それなら今じゃなくていいじゃない
  だっていつでも終わらせられるんだもの
山下 漣(やました れん)「杉山さん・・・俺は・・・ 今じゃないんだ・・・」
山下 漣(やました れん)「だって・・・まだ怪人になって 1日目だもの・・・」
  杉山の自爆に巻き込まれた山下だが
  怪人はそれくらいでは死なない
  目が覚めた時、再び怪人としての人生が始まる──
  山下のファントム(怪人)ライフは、まだ始まったばかりなのだ──

コメント

  • 二転三転する話にわくわくしっぱなしでした!!
    杉山さん良い話すると思ったら、やっぱり『アノ人』でしたね!笑
    オマージュたくさん見つけましたよ!!
    最後まで笑って楽しめる時間をありがとうございます(*´`*)

  • 最初は現代の社会問題に焦点を当てた本格社会派作品かと思いましたが…いつもの楽しい作品でした。ラストも意味はよくわかりませんでしたが(笑)、なんかとてもかっこよかったです。

  • 最近私が投稿したモノと似たようなテーマの作品だと感じて驚き、親近感を持ちながら読んでいました。が、公園でのテロの下りで大爆笑し、同時に「この人は天才だ!」と冷や汗もかきました。アレは、最後の杉山さんの選択と表裏一体なんじゃないかと思うのです。あなたは既に、セレブの花火よりも、よっぽど上等な大輪を咲かせてるじゃないですか…。少なくとも私は笑いすぎて幸せになりました。

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