ヴェイン・ケインと魔剣

ゴルゴンゾーラ西山

ヴェイン・ケインと魔剣(脚本)

ヴェイン・ケインと魔剣

ゴルゴンゾーラ西山

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〇岩山の崖
ヴェイン・ケイン「魔炎のヒーロー『サイキュール』! 怨みはないが────」
ヴェイン・ケイン「狩らせてもらう!!」
サイキュール「うぐ!」
ヴェイン・ケイン「魔剣よ!!」
魔剣「アイヨ ヴェイン・ケインのダンナ」
サイキュール「ぐああああ!!」
魔剣「36人目のヒーローのタマシイ タシカにチョウダイしたヨ!」
魔剣「ウヒヒヒヒ!」
魔剣「ダンナはツヨい! モット ツヨくなって ドンナコトもオモイノママだゼ!」
ヴェイン・ケイン「フン」
魔剣「ウヒヒヒヒ!」

〇地球
ヴェイン・ケイン「ヴェイン・ケイン、帰還した」
ドレッドル「お、お許しください! シルエット様!」
シルエット「うふ!」
シルエット「うふふふふふ! 勿論です!」
シルエット「そもそも貴方達怪人は我が魔王リーズレインの産み出した可愛い下僕!」
シルエット「リーズレインも、その代行者たる私も、可愛い貴方達を罰するなど考えたこともございませんよ!」
シルエット「だがらこれは制裁ではない。 帰るべき処に帰るだけです! あるべき場所に!」
ドレッドル「ひぃっ!」
シルエット「ああ、我が友ドレッドル! 安らかに眠れ! 魔王のお役に立てない無能な貴方は!」
シルエット「我が魔王リーズレインの糞に成ることこそ相応しい!」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
シルエット「おお!ヴェイン・ケイン! よくぞ無事に戻ってきました!」
魔剣「36人目のヒーロー、タシカにカってきたヨ」
魔剣「ナァ!ダンナ!」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
シルエット「ああ、見事です! ヴェイン・ケイン! 魔剣!」
シルエット「100のヒーローの命を捧げた時、貴方たちは比類なき力と栄光を手にするでしょう!」
魔剣「ウヒヒヒヒ」
シルエット「ヴェイン・ケイン! 貴方が誰よりも強くなることをリーズレインも私も待ち望んでおりますよ!」
ヴェイン・ケイン「ああ」
シルエット「そして我らの悲願! 世界を! 混沌を愛する我らがリーズレインのものに!」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
ヴェイン・ケイン「ドレッドルは死んだか」
シルエット「何か?」
ヴェイン・ケイン「いや」

〇血しぶき
ヴェイン・ケイン「ヒーロー『クロスカル』 その命、貰い受ける」
クロスカル「この老いぼれをわざわざ狩りに来るか」
クロスカル「まあいい」
クロスカル「我が弟子たちの仇、とらせて貰う!」
クロスカル「ふ!ふふふ!」
クロスカル「見事なものだ」
クロスカル「強さだけはな」
ヴェイン・ケイン「何が言いたい?」
クロスカル「・・・・・・」
魔剣「キにスンなダンナ! どうせミジメなマケオシミだろうヨ!」
魔剣「これで56人目!」
魔剣「ウヒヒヒ! 100人タオせればダンナはもっとツヨクなる!」
魔剣「ナンデモ! オモイノママにナルんだぜ!」
ヴェイン・ケイン「フン」
  そうだ。
  俺は力を得なければならん。
フレイムゴースト「カカカ! 敵討ちは受け付けてるかい!?」
ヴェイン・ケイン「敵討ち?」
フレイムゴースト「"サイキュール"の"フクシュー"に来たぜ!」
フレイムゴースト「アイツはいい奴だった」
フレイムゴースト「いい奴をやられたら! 敵討ちしなくちゃならねぇよな!」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
フレイムゴースト「テメーにやられたアイツの無念! 理解(わか)って死ねや!」
ヴェイン・ケイン「ぐっ!やるっ!」
ヴェイン・ケイン「だが貴様の底は見えた!」
ヴェイン・ケイン「貴様に勝機なし!」
フレイムゴースト「上等! 格上上等! 惨死上等よ!」
フレイムゴースト「ワカっちゃいたが」
フレイムゴースト「すまねぇな、"サイキュール"」
魔剣「ウヒヒヒヒ!」
魔剣「これで86人目! オワリもミエテキタねェ!」
魔剣「ダンナはオモイノママになったらなにしたい? リョコウなんてドウダイ? ウマイもんクッてサ!」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・先に戻るぞ」
魔剣「アレ!? ダンナぁ!」

〇宇宙空間
  兄ぃ!
  ヴェイン・ケインの兄ぃ!
ヴェイン・ケイン「ドレッドル」
ドレッドル「助けてくれ兄ぃ!」
ドレッドル「ここは暗いんだ! 悲しいんだ! 兄ぃ!」
ドレッドル「仇を討ってくれよぉ! 兄ぃ!」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
ヴェイン・ケイン「すまない。 だが、 俺がもっと強くなれば・・・・・・!」
ドレッドル「嘘だ! だって兄ぃは────」
リンドブルム「怪人・・・・・・」
ヴェイン・ケイン「貴様は・・・・・・」
ヴェイン・ケイン「ぐあああ!」
ドレッドル「兄ぃ! ヴェイン・ケインの兄ぃ! 大丈夫かい!?」
ヴェイン・ケイン「ドレッドル・・・・・・」
ドレッドル「兄ぃは強いんだ! 次に戦ったらあんな奴コテンパンにしてくれるんだ!」
ヴェイン・ケイン「すまん・・・・・・」
ドレッドル「俺は弱くて馬鹿だから! 兄ぃと一緒に居りゃ安心だ! だから────」
ドレッドル「仇を討ってくれよぉ! 兄ぃ!」

〇洞窟の深部
魔剣「ダンナ! ダンナ!」
魔剣「ズイブンとウナサレてたけどヨォ!?」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・夢を見ていた」
ヴェイン・ケイン「弟分のこと」
ヴェイン・ケイン「三年前に負けたヒーローのこと」
ヴェイン・ケイン「そうか、 ドレッドルはあの時 俺を助けてくれていたな」
ヴェイン・ケイン「俺は・・・・・・」
魔剣「ダンナ・・・・・・」
魔剣「デモヨ! あとスコシで100人だゼ!」
魔剣「100人タオせば! ダンナはもっとツヨくナレるんダ!」
魔剣「ツヨくなればオモイノママ! ナンデモできるんだゼ!」
魔剣「ドコヘだってイケるゼ! オンセン!メシ!ナンデモ!」
魔剣「ダカラ! ゲンキダセっテ!」
ヴェイン・ケイン「フン」
ヴェイン・ケイン「だが・・・・・・」
ヴェイン・ケイン「強くならねばならん・・・・・・」
ヴェイン・ケイン「もっと強くならなければならん! 誰よりも強くなれば!」
ヴェイン・ケイン「そうすれば、ドレッドル!俺は!」
ドレッドル「(嘘だ!  だって兄ぃは────)」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」

〇渋谷駅前
  なんだあれ・・・・・・
  映画かな?
魔剣「ダンナ! アタックだ!」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
魔剣「コウゲキ! ニンゲンにアてるヒツヨウはナイから!」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
  うわああああ!
  怪人だぁ!
魔剣「そうだ!ニゲロ! ヒーローをヨベ! ダンナの100人目にフサワしいヒーローをサ!」
ヴェイン・ケイン「嫌いなやり方だ」
魔剣「モンクいうなよ! アンタとタタカうヒーローがいないから サクセンをネッたんだロ!」
ヴェイン・ケイン「ここにいる奴らに恨みも興味もない」
ヴェイン・ケイン「恨みも興味もない連中を傷つけるのは ・・・・・・嫌いだ」
魔剣「そりゃワカるケド」
魔剣「デモヨ」
魔剣「デモヨ。 ドッチにしろ マオウサマはコイツラをコロすゼ」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
魔剣「ット! ダンナ! キタようだ!」
リンドブルム「かわしたかい ヒーロー狩り」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・行方不明と聞いたぞ」
ヴェイン・ケイン「いや! 俺は強くなった!あの時とは違う!」
リンドブルム「リンドブルムを覚えているか。 ま、 こちらは忘れたことはないがね──」
ヴェイン・ケイン「効かん!」
リンドブルム「ぐぅっ!」
ヴェイン・ケイン「強い! 俺は既に強くなっている!」
ヴェイン・ケイン「パワー! スピード! 全てに於いて貴様を上回った!」
ヴェイン・ケイン「ははは! はははははは!」
リンドブルム「はっ」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
リンドブルム「悪い悪い あまりに滑稽でね」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
リンドブルム「三年前のアレは妹だよ お前と戦った後に死んだ俺の妹だ」
ヴェイン・ケイン「死んだ?」
ヴェイン・ケイン「ならば────」
リンドブルム「「俺の方が強かった」とか言うなら お前さんは救いようがない馬鹿だな」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
リンドブルム「人々を守るために戦いに赴いて死んだ俺の妹と」
リンドブルム「自分が勝てる奴を探し続けるアンタは違うよ」
ヴェイン・ケイン「な────」
ヴェイン・ケイン「ふざけるな! 俺は強さを極めるために! 力をつけるために────」
リンドブルム「ヒーローを倒せば力を貰えるとでも言われたかい? 自分よりも強い奴に」
リンドブルム「力のあるものにへつらい、 力のないものを虐げることを、 俺たちは強さとは言えんがね」
ヴェイン・ケイン「こ────殺す!」
ヴェイン・ケイン「八つ裂きにしてやる! 貴様!」
ドレッドル「(兄ぃは自分より強い奴とは戦わないじゃないか!)」
ヴェイン・ケイン「(違う!  俺がもっと力をつければ  お前の仇だって討てる!!)」
ドレッドル「(俺はもう死んでいて  俺は兄ぃの妄想なんだ  だから──」
ドレッドル「(見栄なんて張らないで良いんだよ)」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
ヴェイン・ケイン「俺は────」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
ヴェイン・ケイン「お前達は自分より強い奴が怖くないのか?」
ヴェイン・ケイン「自分と格の違う化け物を見た時の、 体の芯にドリルを突っ込まれて氷を流しこまれる感覚を味わったことはないのか?」
リンドブルム「ふっ」
リンドブルム「怖いさ、死ぬのは 妹も怖かったと思う みんな・・・・・・」
リンドブルム「だがそれだけだ」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
ヴェイン・ケイン「────先の一撃は致命傷だった。 とどめは欲しいか?」
リンドブルム「・・・・・・ありがたいが勘弁してくれ このスーツは妹からのカリモノなんだ」
リンドブルム「ああ、それにしても役に立たない兄だった 仇も討ってやれない 駄目な兄だった・・・・・・な・・・」
魔剣「ダンナ」
魔剣「ナァ、ダンナ」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
ヴェイン・ケイン「役立たずの兄?」
ドレッドル「(兄ぃ!仇を討ってくれよぉ!)」
ヴェイン・ケイン「仇も討てない駄目な兄か」

〇地球
ヴェイン・ケイン「100人目のヒーローを倒してきたぞ」
シルエット「素晴らしい! さすが希代の英雄ヴェイン・ケイン!」
シルエット「貴方の英名は あまねく宇宙中に届くでしょう!」
ヴェイン・ケイン「そうか」
シルエット「さあ魔剣をお渡しください!」
シルエット「それで貴方は怪人として新たな改造手術を受け! 更なる高みへと昇るのです!」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・魔剣は コイツはどうなる?」
シルエット「魔剣は昇華されリーズレインの力になります ヒーローの力は我が魔王の血肉となる!」
魔剣「・・・・・・」
ヴェイン・ケイン「コイツはどうなる?」
シルエット「・・・・・・」
シルエット「まさかその魔剣に愛着がわいたとでも?」
シルエット「気にすることなどございませんよ!」
シルエット「貴方はこれからも我が魔王リーズレインのために戦い続ける! それだけを考えれば良いのです」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
魔剣「ダンナ!?」
シルエット「き、貴様!」
シルエット「力をつけて増長したか!? 私やリーズレインの力を知らないわけでは──」
ヴェイン・ケイン「復讐だ」
シルエット「・・・・・・復讐?」
ヴェイン・ケイン「そして友を守るためでもある」
シルエット「何の・・・・・・ことだ!?」
シルエット「舐めるなよ!? リーズレインの代行者たるこの俺を!」
ヴェイン・ケイン「ぐ!」
シルエット「・・・・・・」
ヴェイン・ケイン「・・・・・・」
ヴェイン・ケイン「ぬぅ!」
シルエット「ふっ!」
シルエット「ふひゃははは!」
シルエット「ヒーローを100人殺して調子にのったか!?」
シルエット「貴様など我が魔王リーズレインの足元にも及ばぬ!」
シルエット「見えるぞ! 貴様が我が魔王リーズレインに食われてバラバラにされる様が!」
シルエット「あの世で楽しみにしているぞ! 貴様の無様な死に顔をな!」
ヴェイン・ケイン「ぐぅ!」
魔剣「ダンナ!? ダイジョウブかい!?」
ヴェイン・ケイン「フン」
魔剣「ドウシテ!? ヤバいよ!コンナのゼッタイ!」
ヴェイン・ケイン「腹が立った それだけだ」
魔剣「ああムチャクチャだ! ヤバいヨ!ゼッタイ!」
ヴェイン・ケイン「お前と一緒に戦ってきて 強くなった」
ヴェイン・ケイン「強くなったら オモイノママ だったな?」
魔剣「ああ、モウ!」
魔剣「ワカった! ワカったヨ!ダンナ!」
魔剣「コウなったら! サイゴまでゴイッショするヨ!」
ヴェイン・ケイン「さあ行くか。 これだけヒーローを倒してきたんだ」
ヴェイン・ケイン「気に入らない魔王とやらも倒していいだろう」
魔剣「ウヒ! ウヒヒヒヒ!」
ヴェイン・ケイン「はははは!」
  その後ヴェイン・ケインと魔剣の姿を見た者はいない。
  そして魔王リーズレインの姿も。

〇渋谷のスクランブル交差点
  1年後────
  ────地球のどこか
「バケモノだぁ!」
深海主「ぐへへへへ! 怪人もヒーローは共倒れしたか!」
深海主「ならば世界は 我らモンスターが支配する!」
深海主「我こそは最強! 最強の存在『深海主』なり!」
  最強────?
深海主「え?」
深海主「あれ」
???「・・・・・・」
???「もうタタカイはやめたんじゃなかったノ? ダンナ?」
???「フン」
  そして彼らは今日も何処かへ旅を続けている・・・・・・

コメント

  • 怪人同志ですら相手の本質を見抜くことができるということですね。人間の私達は、そこを曖昧にすることも少なくないから、こういう強いつながりも生まれにくい、そんなことを感じました。

  • おもしろくてグイグイ読んでしまいました。
    自分が弱い敵としか戦ってないことに、本人も気づいてたんだと思います。それからの彼は本当にかっこよくて!
    最後の二人よかったです!
    魔剣が女の子だったのにはびっくりしました。笑

  • 今まで読んだ怪人物で最高に面白かった。
    次回作も期待!

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