読切(脚本)
〇実験ルーム
ここはとある組織の研究室。日夜様々な怪人が作られていたが、その日は少々その研究の方向性が違った。
窓山「さぁ出来たぞ」
カルテッティ「これが、俺の体・・・・・・?」
窓山「そうだ、変な気分か?」
カルテッティ「あぁ、そうなのだが・・・初めて人間の体を得たはずなのに何故だか酷く懐かしい気分になるのだ」
窓山「!!!」
窓山「それは・・・いつも人間と対面することが多いからじゃないか? 怪人はあまり数が多くないし」
カルテッティ「そう・・・・・・なんだろうか」
窓山「まぁ深く考えるな その体はもし外で負傷した場合の緊急用だ」
カルテッティ「それもそうか」
窓山((ふぅ、危なかった やはり人間の頃の記憶は完全には消せないか これだから上層部の命令など))
〇荒廃した街
そして次の日
ヒーロー「どうしたカルテッティ 動きが鈍いぞ!」
カルテッティ「がっ!」
カルテッティ((くそ、体が思うように動かん 人間態手術を受けたのせいか?))
ヒーロー「今だ! ビックバンダイナミック!」
カルテッティ「! しまっ・・・」
ヒーロー「お前を倒すのは最後だと思っていたのに こんなにあっさりと倒されてしまうとは、残念だよ・・・」
〇ビルの裏
カルテッティ((通信は無理か しかし、俺としたことがこんな深手を負うとは))
天音「怪人!?」
カルテッティ((しまった!))
天音「待って!」
〇ビルの裏
天音「この辺りに隠れたはず・・・」
天音「え?」
天音「酷い怪我! すぐ病院に──」
カルテッティ「病院は・・・やめろ」
天音「え? なんで?」
カルテッティ((戸籍がない俺は病院に連れていかれたら怪人であるとバレる可能性が))
カルテッティ「・・・・・・」
天音「わかった」
カルテッティ「ありが・・・とう」
〇女の子の一人部屋
カルテッティ「・・・ここは?」
天音「よかった やっと起きたね」
カルテッティ((この女の家か 包帯・・・この女があてたのか まだ体は不完全だが人間の世話になるわけには))
カルテッティ「世話になったな もう行かねば」
天音「ちょっと! 無理だよ、そんな体で」
カルテッティ「この程度の傷で・・・うっ!」
天音「ほら、だから言ったのに 私のことは気にしなくていいから 貴方、名前は?」
カルテッティ「カルテ・・・寛太だ」
天音「寛太ね 私は天音 ご家族も心配してるだろうから連絡しておくよ?」
寛太(カルテッティ)「家族? そんなものはいない」
天音「あ、ゴメン いけないこと聞いちゃったね」
寛太(カルテッティ)「構わん、最初から独り身だからな」
天音「そっか、私と一緒・・・」
寛太(カルテッティ)「あの男は?」
天音「あの写真の? あれは私の彼氏 怪人に連れ去られちゃったけどね」
天音「だけど瞬はね、まだ生きてるって信じてるの」
寛太(カルテッティ)「だからあんな場所に?」
〇ビルの裏
天音「怪人!?」
〇女の子の一人部屋
天音「そう、怪人ボコって居場所を聞き出そうと思ったんだけどね こう見えて空手初段なんだよ、私」
天音「けど見つけたのは傷だらけの寛太君 そういえば寛太君は何であんなところに?」
寛太(カルテッティ)「それは・・・」
天音「ゴメン、踏み入りすぎだよね 忘れて」
天音「何だか寛太君の雰囲気が瞬に似てて色々喋りたくなっちゃって・・・って何言ってんだろ私、ゴメン、重いよね」
寛太(カルテッティ)「いや、気にするな それより俺の方こそ悪かった」
寛太(カルテッティ)((瞬を連れ去ったのはもしかしたら俺の部下の可能性も・・・))
天音「何で寛太君が謝るの 私なんかに気を使わないでいいから ここにも好きなだけいても大丈夫だし」
寛太(カルテッティ)「それは流石に悪い 傷が癒えたらすぐに出ていく」
天音「そっか・・・でも何でも遠慮しないで言ってね」
〇池袋西口公園
寛太(カルテッティ)「天音に助けられ数週間が経った」
寛太(カルテッティ)((体が治った俺はすぐ組織に・・・戻らなかった 理由は自分でも分からない))
寛太(カルテッティ)((だが、天音といると組織にいた頃には感じなかった穏やかな気持ちになれたのは確かだ))
〇カウンター席
寛太(カルテッティ)((天音は俺を色んなところに連れ出してくれた))
〇遊園地の広場
寛太(カルテッティ)((そして天音と過ごす時間が長くなるほど、天音の傍こそ俺のいるべき場所だとすら思えるようになっていた))
〇水中トンネル
寛太(カルテッティ)((いや、違う 初めから俺は天音と一緒にいたようにさえ感じた))
〇川沿いの公園
???「──! こっちこっち!」
〇川沿いの公園
寛太(カルテッティ)((・・・! 今のは?))
天音「寛太、どうしたの?」
寛太(カルテッティ)「い、いや、なんでもない」
寛太(カルテッティ)((なんだ今のは? 場所はここのようだが・・・))
天音「ふふ、変な寛太 それより見て、この前水族館に行った時の写真」
天音「・・・・・・!」
寛太(カルテッティ)((これは瞬との・・・彼とも水族館に行っていたのか))
天音「ゴ、ゴメン 間違えちゃった」
寛太(カルテッティ)「気にしてないよ」
天音「あ、ありがとう・・・」
天音「う・・・」
天音「うわぁぁぁん! ゴメンなさいっ!」
寛太(カルテッティ)「どうしたんだ天音!?」
天音「私、ずっと貴方を騙してた 寛太を・・・瞬の代わりにしてたの」
寛太(カルテッティ)「どうゆうことだ?」
天音「今まで寛太と一緒に行った場所は、全部、瞬との思い出の場所だったの」
天音「寛太と一緒にいると、何だか瞬と一緒の気分になれて、それで・・・」
天音「こんなの最低だよね 寛太にも、瞬にも・・・」
寛太(カルテッティ)「そんなことはないさ」
天音「でも、私・・・ずっと寛太を見てなかった 寛太の向こう側にいる瞬をずっと見てたの」
寛太(カルテッティ)「そ、それは・・・」
天音「寛太が怪人だったらよかったのに」
寛太(カルテッティ)「えっ?」
天音「怪人だったら絶対好きになることもなかった」
天音「・・・! わ、私、なんてことを・・・」
寛太(カルテッティ)「気にするな天音 気が動転してしまったんだろ?」
寛太(カルテッティ)「・・・」
寛太(カルテッティ)「それに、俺は実は・・・」
天音「きゃぁ!?」
一般人A「怪人だ!」
一般人B「誰か助けて!」
フレアマスター「はっはっはっ! 泣け!喚け!哀れな人間どもよ!」
寛太(カルテッティ)「怪人!?」
〇川沿いの公園
戦闘員「フレアマスター様! 今一瞬この辺りで怪人の反応がありました」
〇川沿いの公園
寛太(カルテッティ)((くそ、俺がさっき変身しかけたから感ずかれてしまったのか すぐにここから逃げないと))
〇川沿いの公園
戦闘員「おいお前 この近くで背中に刀を四本背負った怪人を見なかったか?」
一般人B「ひっ! し、知りません!」
戦闘員「使えない奴め まぁいい、お前は連れ帰って怪人に改造してやる」
一般人B「い、いや! やめて!離して!」
〇川沿いの公園
寛太(カルテッティ)「ここは危ない、逃げよう!」
天音「助けないと・・・」
寛太(カルテッティ)「え?」
寛太(カルテッティ)「お、おい天音! そっちは危ない!」
〇川沿いの公園
一般人B「やめて! 離して!」
戦闘員「くそ! 抵抗するな!」
???「やめろぉぉぉ!」
戦闘員「ぎゃ!」
天音「大丈夫? 怪我はない?」
一般人B「は、はい! ありがとうございます!」
天音「よかった 早く逃げて!」
天音「ふぅ、危なかった」
戦闘員「貴様!」
天音「きゃぁ!」
戦闘員「よくもやってくれたな! 代わりにお前を怪人にしてやる!」
???「それは無理だな」
戦闘員「あぎゃぁぁぁ!?」
寛太(カルテッティ)「無事か?天音」
天音「寛太?」
天音「う、うん・・・ありがと」
寛太(カルテッティ)「ここから逃げるぞ」
フレアマスター「そうはさせん」
寛太(カルテッティ)「フレアマスター・・・」
フレアマスター「ほぉ、俺も中々有名人になったものだな だが・・・」
寛太(カルテッティ)「がぁ!?」
天音「寛太!」
フレアマスター「我が部下を倒されたのにおめおめと生きて帰すわけがなかろう」
天音「寛太! 大丈夫?」
寛太(カルテッティ)「大丈夫だ 下がってろ」
天音「ダメだよ、寛太の方がボロボロなのに」
フレアマスター「美しい恋愛模様だな ならば二人一緒に地獄に送ってやる」
寛太(カルテッティ)((まずい、このままでは天音が))
フレアマスター「死ねぇ!」
フレアマスター「ぐわぁ!?」
天音「え?」
天音「かん・・・た?」
フレアマスター「き、貴様・・・カルテッティ!!!」
天音「カルテッ・・・ティ?」
カルテッティ「そうだ、俺は寛太なんて名前の人間じゃない これが本当の姿だ」
天音「そんな・・・ずっと私を騙してたの? 瞬が、怪人にさらわれたって知ってたのに・・・」
カルテッティ「そうだ 俺は血も涙もない怪人だからな」
天音「酷い・・・」
カルテッティ「天音・・・」
天音「私の名前を呼ばないで!怪人!」
フレアマスター「ふ・・・ふっひゃひゃひゃ! あの女を騙してたのか! 俺に勝るとも劣らない悪魔だな!お前も!」
カルテッティ「そう、おれは悪魔・・・人間の女性と恋に落ちるなど許されることじゃなかったんだ」
フレアマスター「だが、俺に歯向かった事実は変わらん! お前はもう組織の敵だ!」
フレアマスター「死ねぇ!」
カルテッティ「遅い・・・」
フレアマスター「なん・・・だと?」
カルテッティ「雑魚が・・・」
〇川沿いの公園
天音「はぁはぁはぁ・・・」
天音「(まさか寛太が怪人だったなんて 私はずっと怪人と一緒に暮らしてた上、好意まで持ってたってこと?)」
天音「ごめん、瞬 私、憎んでたはずの怪人なんかを・・・」
???「お嬢さん、大丈夫かい?」
天音「貴方は」
ヒーロー「怪我はないようだな よかった しかし、街がメチャクチャだ」
天音「どうしてこんなところにいるの?」
ヒーロー「ん?」
天音「あっちに怪人がいるんです! 2人も! こんなところに突っ立ってないで倒しに行ってください!」
ヒーロー「その必要はない」
天音「どうゆう・・・こと?」
ヒーロー「君が逃げてきた方を見てみるといい」
〇川沿いの公園
戦闘員「くぅぅ痛ってぇ」
戦闘員2「う・・・動けねぇ」
天音「皆やられてる」
ヒーロー「そしてこれをやったのは俺じゃない」
「く・・・そぉがぁ」
天音「あ、あの怪人・・・」
フレアマスター「カルテッティの野郎・・・組織に歯向かってただで済むと思ってるのか」
天音「まさか寛・・・あの怪人が!?」
ヒーロー「そうだ、俺がきたときにはすでにこいつも他の戦闘員も皆倒れていたからね」
ヒーロー「君、カルテッティと親しかったんだろ?」
天音「怪人と親しかったなんて・・・何で私とアイツのことを?」
ヒーロー「さっきの君とカルテッティのやり取りを見ていたんだ」
天音「見てたんですか? ならどうして入ってこなかったんですか!?」
ヒーロー「カルテッティは民間人を傷つけるような怪人じゃない アイツは武人の誇りを持っている奴だったからな」
天音「ヒーローの癖にそんな無責任な・・・!」
ヒーロー「でも君も本当は気づいているんだろ? アイツが悪人じゃないって」
天音「例え悪人じゃなかろうと、アイツは怪人なんですよ!?」
ヒーロー「そう簡単には受け入れられないか・・・」
〇公園通り
それから数日後
レポーター「またも正義の怪人の速報です!」
レポーター「正義の怪人カルテッティがまたもや他怪人の被害から市民を守った模様です」
レポーター「最近はヒーローよりカルテッティが街を守っている回数の方が多いかもしれませんね」
〇綺麗なダイニング
「それではカルテッティに助けられた方からお話を──」
ピッ
天音「どこでもカルテッティカルテッティって・・・」
天音「何をしようがアイツは怪人なんだよ?」
〇川沿いの公園
ヒーロー「でも君も本当は気づいているんだろ? アイツが悪人じゃないって」
〇綺麗なダイニング
天音「・・・! でも、もしかしたらアイツが瞬をさらったかもしれないのに」
天音「どうしてこんな気持ちになるの 怪人なんて、皆悪党なのに・・・」
〇センター街
天音((もうあんな奴のこと忘れよう 私は寛太なんて男と一緒には暮らしてなかった))
天音「!?」
ローンウルフ「無力な人間ども 今日こそは我が軍がこの地を支配してみせよう」
「それは無理だな」
天音「この声・・・!」
ローンウルフ「もう嗅ぎつけたか」
カルテッティ「ローンウルフか」
カルテッティ「流石幹部クラス 簡単にはいかなそうだな」
ローンウルフ「簡単? いや、貴様が私に勝つのは不可能だ」
カルテッティ「お前と俺の力の差はそこまでない 強がりはよせ」
ローンウルフ「強がり? 果たしてそうかな」
天音「あっ!」
天音((怪人がこんなに・・・!))
ローンウルフ「この数が相手では流石の貴様も勝ち目がないだろう」
天音((そうだよ、こんな数流石に勝てっこない))
カルテッティ「ふん、一々怪人を探す手間が省けた」
天音「もうやめて!」
カルテッティ「! 天音・・・」
天音「怪人の貴方がいくら頑張っても私の心はもう貴方に戻らない」
カルテッティ「いいさ、それでも 少しでも天音の住む世界が平和になるなら」
ローンウルフ「辞世の句は終わったか?」
カルテッティ「ああ、いくぞ」
〇池袋西口公園
寛太(カルテッティ)((実は俺は思い出したんだ 天音と一緒にいて懐かしく感じた理由))
((それは))
〇カウンター席
???((俺自身が))
〇遊園地の広場
瞬((記憶を失う前、瞬という人間だったと))
〇センター街
カルテッティ((だが、それを教えても君を傷つけるだけだ))
カルテッティ((ならば 俺は潔く散るのみ))
天音「あっ」
天音「ごめんなさい、私・・・本当は怪人でも寛太のこと・・・」
カルテッティ((天音、俺は幸せ者だよ 君に二度も愛してもらえた))
カルテッティ((それだけで))
バーンナックル「朽ち果てろ!」
カルテッティ((怪人になっても生き続けた意味があった))
カルテッティ「ありがとう」
ミッドナイトサン「終わったか 手こずらせやがって」
カルテッティ「さよなら、あま・・・ね」
ようやく自分の気持ちに気づいた彼女でしたが…彼はどうなってしまうのか。戦闘シーンも臨場感があってよかったです。
切ない恋物語。感動しました。
瞬だったことを明かさず天音を守り散ろうという苦悩。天音をこれ以上困らせたくないという想い。カルテッティの優しさが心に沁みました。本当のヒーローはカルテッティなのかもしれませんね。素敵な物語でした!