イケメン地獄

pappo

エピソード2(脚本)

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〇牢屋の扉
日向「えっと、、とりま「天国へ誘え」と心の中で3回唱えれば天国に行けるって2人に言われたんだけど、、、 まさかここが天国?」
日向「ていうか、まず中に入れないってどういうこと?」
日向「天国って、もっと優しくて、あったかいイメージだったんだけど、、、 大体、誰もいないじゃない。 おーーーーい、神様!」
日向「・・・って、ホントに誰もいないの!?」

〇牢屋の扉
日向「大体どうやって中に入れるっつうのよ。 この頑丈なロープ、道具も何もないのにどうやって切れっていうの? ねー、誰か助けてよ」

〇牢屋の扉
日向「もうずっとこの扉の前にいる気がする。 何日間、いや何年間も経った気がする。 一体どうすればいいの? もう耐えられない」
日向「あ、ひょっとして、欲しい物の名前を3回唱えれば手に入るとか? 「斧、斧、斧」 ・・・ ・・・ ・・・」
日向「なんの変化もないわ。 どうすればいいのよーーー。 え、まさか。 だって私は花の乙女よ。 まさか、このか弱い私に」
日向「そんな下品なことやらせるの? それだけは勘弁して。 そんな姿を誰かに見られたら生きていけないって、もう死んでんだっけ」
日向「信じらんない。 でもこうなったらやるしかない。 だってこの先に多分天国があるんだもん。 見なきゃ何も始まらないわ」
日向「ロープを歯で食いちぎるなんて、生前やったことなかったわ。 ていうか、そんな悲惨な女子いる?」
  私は何時間も、ううん、何日間もロープに齧りついて、やっと、ロープを食いちぎることができたの

〇牢屋の扉(鍵無し)
日向「ホホホ。 私に不可能はないのよ。 ついにやったわ」

〇穴の開いた部屋
  ドアを開けると、そこは見たこともないような質素で薄暗い部屋だった。
日向「なにこれ? ここが天国?」

〇穴の開いた部屋
日向「こんな所に一人でいると、気が滅入ってしまいそうよ。 あ、わかった! これも神様の粋な図らいってことね」
日向「こんな所に一人で居れば、人恋しくなって、優しくなれるってことね。 なるほどね。 でも私はそんなにヤワな女じゃないのよ」
日向「あ、それとも、ここで自分を見つめ直せってこと? それも神様的にはアリだわね」
日向「でも自慢じゃないけど、生前一度だって、深く物事を考えたことなんてなかったわ。 ましてや自分を見つめ直すなんてムリ」
日向「今が楽しければいいのよ。 神様はこの私を試すつもりなのね。 ホホホ、こうなったら神様なんかに負けるワケにはいかない」
日向「徹底的に自分を貫き通すわよ。 そのうち神様が根負けして、目の前に天国への階段を用意してくれるはずよ」
  でも、待てど暮らせど天国への階段は現れず・・・・・・
日向「なんでお腹が空かないんだろ? トイレは? あ、そっか、私死んでんだもんね」
日向「でも退屈とかの余計な感情は残ってるんだ。 もうやだ! 退屈でどうかなりそう」
日向「翼・・・ 生前、私に笑いかけてくれた天使のような悪魔。 さんざん貢いで、自分の人生ボロボロだったけど・・・」
日向「幸せな一瞬もあったなー。 その一瞬の幸せのために、全てを投げ打ってたワタシ。 後悔はしてない」
日向「翼・・・ 今、どこで何をしてるの?」

〇スナック
日向「え、翼?」
翼「よぉー」
日向「私よ、日向よ。 覚えてくれてたの? 私が死んだ後、どんな風に暮らしてたの? どんな気持ちでいたのよ。 寂しかった?」
翼「なな、、会いたかったよ やっとお店に来てくれたね、」
なな「今日は翼のバースデーだから。どうしても祝ってあげたくて」
日向「は? アンタ誰? え、ていうか、まさか、私のこと見えてないの?」
  それから私は延々と翼とこの女の薄汚い会話を聞かされるハメに陥った。
  
  なんでこんな仕打ちを、神様は。
  
  これは何かの罰?
日向「死んだ後に、大好きだった、たったひとりの男さえ嫌いになるなんて、これって、なんの罰ゲームよ!!」
日向「2人とも目の前から消えてよ!!」

〇穴の開いた部屋
日向「私にどうしろっていうの? 反省すればいいの? もう死んだのに、反省したら生き返れるの? ひどい、酷すぎるよ」

〇地下の部屋
日向「え? いつのまにかベッドが二つ。 誰かいるの? ね、いるのなら返事してよ」
日向「こんにちは。 私は日陰。 もうひとりのアナタよ」
日向「日陰? もうひとりのワタシ?」
日向「そうよ。ワタシはアナタ、アナタはワタシ。 二人で一つ」
日向「ワタシはずっとアナタと一緒だった。 昼は太陽に照らされ、夜は街灯に映し出され、闇が訪れると共にしばし姿を消す」
日向「つまり、私の影ってこと?」
日向「そう・・・・・・ だから、アナタのことをずっと側で見てきたの。 地面からアナタを見上げていたのよ」
日向「じゃ、ワタシが生まれた後、ずっと一緒にいたってこと?」
日向「そうよ。 ずっとずっと一緒だった」
日向「じゃ、私の全てを知ってるってわけね」
日向「そうよ」
日向「つまり私の不幸を黙って眺めてたわけね」
日向「不幸? アナタのどこが不幸だというの?」
日向「親に捨てられ、周りに信用できる大人もいない子供時代、近寄ってくるやつはどいつもこいつも私を利用することしか考えてない」
日向「最後はホストに金を貢ぎまくって、キャバクラの客に刺されて死んだ、その人生は不幸じゃないっていうの?」
日向「まさか、探せば小さな幸せがあったでしょ、なんて説教垂れるつもりじゃないわよね?」
日向「最初に言っとくけど、私の人生、隅から隅まで不幸のオンパレード、幸せの入り込む隙間なんて1ミリもなかったんだから」
日向「そういえば翼と一緒に居られる時だけ束の間幸せだった気もするけど、過ぎてみればそれも幻だったのよ」
日向「ねえ、日向、アナタ何を言ってるの? 世界的音楽家の一家に生まれ、両親から愛情をたっぷり受け育ち」
日向「最後はアナタ自身も世界的なオーボエ奏者として活躍していたじゃない」
日向「そして今もアナタの遺した音色を懐かしむ人々が世界中にいる。 そのどこが不幸なの?」
日向「は? オーボエなんて知らないわ。 それ楽器? どんな音かも知らない」
日向「私の人生をテキトーにでっち上げて、ホントの人生を無かったことにするつもり? それが天国のやり口? 神様ズルくない?」
日向「やれやれ・・・ たまにアナタみたいなのがいるのよ。 ホントの自分を認めたくなくて、真実をねじ曲げようとするやつ」
日向「だからオーボエとか知らないし」
日向「ホントにそうかしら。 よく考えてみるといいわ」

〇穴の開いた部屋
日向「なんなのアイツ。 それにしても、私が世界的な音楽家だなんて、笑わせるわ。 ドレミさえよくわかんないのに」
日向「それにしても、神様のやることって案外ショボくてビックリしたわ。 憧れの人生やり直せますてか? もう死んでるのに」
日向「それに音楽家になんかならなくていいし。 何が世界的なオーボエ奏者よ。 ワタシはこのワタシのままで十分」
日向「自分の好きなように生きて、最後は殺された。 それが紛れもない私の人生」
  ところが・・・
  
  ここから私の想像を超える出来事が始まったのよ。
日向「さぁ日向、そろそろアナタの本当の人生を受け入れる心の準備はできたかしら?」
日向「こんなところにほったらかしにされてどうせ暇だから、アンタの話に付き合ってあげるわよ」
日向「そぅ、じゃ。 心して聞いてね。 アナタの真実を・・・ 目を背けずに。 これがアナタのホントの人生」
日向「いやいや、私以上の不幸な人生なんてそうそうないから。 どうぞ、その真実とやらをお話し下さい」
日向「ホストに貢いで最後は刺されて死んだ・・・ そんな生半可な人生じゃなかったのよ、アナタ・・・」
  それから私は日陰の話に耳を傾けた。
  
  最初は話半分で。
  
  でも段々、日陰の話に引きごまれていって・・・
日向「嘘よ。 嘘に決まってる。 誰が信じるもんか。 そんなウソみたいな話。 そんなクソみたいな人生・・・」
  私はショックのあまり、しばらく口を開くこともできなかった。
  
  そんなことがホントに私の身にあったのだろうか?
日向「心の整理がつかない・・・」
日向「日陰の話を信じるべきかどうか── 迷ってる。 まだ私は迷ってる──」

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