読切(脚本)
〇廃墟の廊下
めめ「・・・」
けんた「わっ!」
めめ「きゃっ!」
けんた「へへへ!驚いてやんの〜!」
めめ「もう!けんた!驚かせないで!」
めめ「た、ただでさえ・・・怖いんだから・・・」
けんた「え?なんで?おまえが行きたいって言うから連れてってあげたんだけど」
めめ「そ、そりゃ・・・深夜にこっそりデートしたいって、言ったのは私だけど・・・何もこんな所に行かなくても・・・」
けんた「あっちの方に行ってみようぜ!」
めめ「聞けよ」
けんた「ビューーーン!!」
めめ「え?!あ、ちょ、ちょっと!けんた?!」
めめ「・・・いっちゃった」
めめ「もう!勝手に行くなんて信じられない!」
めめ「・・・でも、そこが可愛いところなんだけどね」
〇荒れた倉庫
けんた「ビューーーン!!」
けんた「あっ!何かある!」
けんた「・・・これ、なに?」
けんた「なんか・・・気持ち悪い」
けんた「・・・あっ!めめは?!」
けんた「さ、探しに行かないと!」
着ぐるみ殺人鬼「けけけ」
けんた「・・・え?」
着ぐるみ殺人鬼「けけけけ・・・」
着ぐるみ殺人鬼「けけけけけけけぇえええええ!!!!」
けんた「しゃ、しゃべったああああああ!!!!」
着ぐるみ殺人鬼「けけけ」
〇廃墟の廊下
めめ「・・・はぁ、どこ行ったんだろ」
???「うわ〜〜〜!!」
めめ「え?!なになになに?!」
けんた「うわ〜〜ん!めめ〜〜!!」
めめ「え?え?」
けんた「着ぐる・・・うっ、着ぐるみがぁ、着ぐるみがね・・・」
めめ「き、着ぐるみがどうしたの?」
けんた「うわ〜〜〜〜ん!!!!!」
めめ「もう、なんなのよ・・・」
めめ(ひゃっほおおおおおおおおお!!!! 超かわいいいいいいいい!!!!)
めめ(今すぐ抱きしめて、頭ナデナデしてあげたい!)
めめ(あぁ、母性がくすぐられる〜〜!)
???「けけけ」
めめ「・・・だ、だれ?!」
着ぐるみ殺人鬼「けけけ」
めめ「きゃあああああああ!!!!」
けんた「うわあああああああああ!!!!」
着ぐるみ殺人鬼「けけけけ!!!!!」
めめ「に、逃げないと!」
めめ「けんた!行こう!」
けんた「あ、あああああ・・・」
めめ「もう!しっかりして!」
着ぐるみ殺人鬼「けけけ!!!!」
めめ「危ない!」
けんた「うわっ!」
めめ「う、うぅ・・・」
けんた「め、めめ!」
めめ「わ、わたしの事はいいから・・・早く行って!」
けんた「で、でも・・・」
めめ「いいから!走って!」
けんた「・・・わ、わかった」
けんた「ごめん!」
めめ「・・・ふぅ、これで、けんたは・・・たすか・・・る」
着ぐるみ殺人鬼「けけけけけけ!!!!」
〇住宅街
けんた「はぁ・・・はぁ・・・」
けんた「・・・ここまで来れば追っかけてこないかな」
けんた「・・・めめ、僕のために・・・」
けんた「・・・よし!助けに行こう!」
けんた「でも、どうしよう?おまわりさんに言ったら、逆に僕が怒られそうだし・・・」
けんた「う〜ん・・・」
けんた「あっ!そうだ!あそこに行こう!」
〇一軒家の玄関扉
けんた「・・・よ、よし!」
ピンポーン!
けんた「・・・寝てるかな?」
???「後ろにいるぞ」
けんた「うわああああああ!!!!」
長男・ビルマ「シッ!近所迷惑だろ」
けんた「ご、ごめんなさい・・・」
長男・ビルマ「それより、こんな遅い時間にどうしたんだ?」
けんた「じ、実は・・・」
長男・ビルマ「・・・なに?それは本当か?」
けんた「え、えぇ・・・」
長男・ビルマ「中に入れ」
けんた「は、はいっ!」
〇シックな玄関
長男・ビルマ「・・・よし、耳を塞げ」
けんた「・・・え?あ、うん・・・」
長男・ビルマ「すぅ・・・」
長男・ビルマ「起きろぉおおおおおおおおお!!!! 緊急事態だぁああああああああ!!!!」
けんた「うわああああ!!!すごい声量だ・・・」
次男・ルシェルフ「どうした、兄貴。こんな真夜中に叫んで」
長男・ビルマ「妹が着ぐるみの怪物に襲われた」
次男・ルシェルフ「・・・なに?」
長男・ビルマ「大至急、兄弟達を招集させてくれ。 もちろん、父上にもな」
次男・ルシェルフ「分かった。3秒だけ時間をくれ」
けんた「き、消えた?!」
ガシャンバタン!ドタドタドタドタ!!!
次男・ルシェルフ「終わった」
けんた「はやっ!」
長男・ビルマ「よし、リビングへ行くぞ。家族会議だ」
次男・ルシェルフ「あぁ」
〇おしゃれなリビングダイニング
長男・ビルマ「・・・というわけだ。事情は分かったな?」
八男・バラモンデ「おいおい、兄者!!!!」
長男・ビルマ「どうした、バラモンデ」
八男・バラモンデ「おかしいだろうが!めめたんが夜中に抜け出すなんて!」
十男・バマド「そうだ!そうだ! 誰かが手助けしたとしか思えん!」
八男・バラモンデ「さぁ、誰だ?白状せい!」
十男・バマド「先に言っておくが、俺じゃねぇぞ?」
九男・グランバス「僕でもないです 次回のコミケに出す新作を書くのに忙しかったので」
七男・レドレアイズ「師匠を疑う気か? 今日も地下道場で鍛錬に明け暮れていた」
六男・アーディブレイズ「俺もだ。コイツと一緒に技を磨いていた」
五男・クラシカル「・・・」
十一男・ポーマ「何もやってないって、クラ兄が言ってる」
十一男・ポーマ「あっ、おれもルシ兄に叩き起こされるまで爆睡してたからアリバイありね!」
四男・メタトシア「あたしでもないわぁ〜! めめちゃんとは一緒におふろに入る中だけど、夜遊びの協力はしないわ!」
三男・ドン「・・・俺は一度だけあの子の寝顔を見たっきり会っていない」
三男・ドン「あの子は天使だ。俺達の荒んだ汚ねぇ心を癒やしてくれる」
三男・ドン「それなのに・・・それなのに・・・」
三男・ドン「ちくしょおおおおおおおお!!!! 俺様がいながら夜遊びを許してしまうとは・・・」
三男・ドン「誰だ・・・あの子をたぶらかしたクソ野郎は誰だ!」
八男・バラモンデ「あいつだよ」
けんた「・・・え?」
三男・ドン「てめぇかあああああああああ!!!! ぶち殺してやるぅううううう!!!!」
けんた「うわああああああああ!!!!」
次男・ルシェルフ「よせ。あの子が助けを呼ばなかったら、この事態を知る事はできなかったぞ」
三男・ドン「そこをどけ!俺様にぶっ倒されたくなかったら、大人しくするんだ?」
次男・ルシェルフ「・・・誰に向かって言ってるんだ?」
三男・ドン「ハッ!お前に11回しか負けていないんだぜ?」
次男・ルシェルフ「俺がな。お前は989回も負けただろ」
三男・ドン「うぐぐぐぐぐ・・・黙れ!!」
三男・ドン「そこをどかないと、俺様の爆発能力でこの家を木っ端微塵にするぞ」
次男・ルシェルフ「やれるもんならやってみろ」
三男・ドン「おぉ、いいぜ・・・12回目の勝利はもらった!」
八男・バラモンデ「いいぞ〜!やれやれ!」
十一男・ポーマ「戦いか?いいねぇ!俺も混ぜて混ぜて!」
十男・バマド「お前みたいなクソ雑魚が、まともに戦える訳ないだろ」
十一男・ポーマ「ああああああああ?! じゃあ、お前からやってやるよ!」
十男・バマド「いいぜぇ!本気でこいよ!」
八男・バラモンデ「よーし、加勢してやろう!」
七男・レドレアイズ「なら、私も」
八男・バラモンデ「ゲッ!師匠も・・・?」
六男・アーディブレイズ「俺も参加する。新技ができたんで、試したくてウズウズしてた所なんだ」
八男・バラモンデ「よーーーし、腹を決めたぞ! 師匠ども、かかって来いやああああああ!!!!」
四男・メタトシア「・・・こいつらってなんでこんなに戦闘バカなの」
九男・グランバス「同感です」
五男・クラシカル「・・・」
長男・ビルマ「お前ら、何をしてんだ! そんな事をしてる場合じゃ・・・」
???「静まれ、息子たち」
長男・ビルマ「ち、父上・・・」
父・テンペラ「兄弟喧嘩をしている場合ではないだろ」
父・テンペラ「今、こうしている間にも、めめ──我が娘が、化け物に何かされているかもしれん」
父・テンペラ「あの子は、妻の面影そっくりだ。 今は亡き妻の面影にな・・・」
父・テンペラ「あの子は、お前達の面倒をよく見てくれた」
長男・ビルマ「・・・その通りです。俺達がヒーローを倒しに行く前には必ず人数分の弁当を作ってくれました」
次男・ルシェルフ「休み時間を抜け出して、俺達の活躍をこっそり見に来てくれていたこともあったっけな」
三男・ドン「おやすみのキスもしてくれたっけ・・・」
四男・メタトシア「こんな私を『お姉ちゃん』って言ってくれて嬉しかったなぁ・・・」
五男・クラシカル「・・・スキ」
六男・アーディブレイズ「俺の新技をいつも楽しみにしてくれてたな」
七男・レドレアイズ「疲れた時に温かい蜂蜜入りの紅茶をくれた」
八男・バラモンデ「めめたんのシチュー、俺大好きなんだよ」
九男・グランバス「めめさんのアドバイスのおかげで人気になった作品もありました」
十男・バマド「・・・特に思い出がない」
十一男・ポーマ「うおおおおおおおおお!!!! こうしちゃいらねぇええええ!!!!」
三男・ドン「早く助けに行くぞ!!!!」
一同「うぉおおおおおおおお!!!!」
父・テンペラ「・・・それでこそ、ワシの息子だ」
父・テンペラ「着ぐるみの怪物に、我々の力を思い知らせてやろう!」
一同「うおおおおおおおおおお!!!!」
けんた「・・・僕、圧倒的に影薄くない?」
〇地下の部屋
めめ「う、う〜ん・・・」
めめ「ハッ!・・・ここは?」
???「けけけ」
めめ「ま、まさか・・・」
着ぐるみ殺人鬼「けけけけけけ!!!!」
めめ「いやあああああああ!!!! こないでぇええええ!!!!」
着ぐるみ殺人鬼「けけけけけけけ!!!!」
めめ「う、うぅ・・・誰か、たすけて・・・お兄」
三男・ドン「来たぞ、妹よぉおおおおおおおお!!!!!」
めめ「・・・は?」
着ぐるみ殺人鬼「・・・けけ?」
三男・ドン「お前かあああああ!!! 妹を襲った毛むくじゃらは!!!」
三男・ドン「俺様の爆撃受けてみろ! ドンバディドーーーーーーン!!!!」
着ぐるみ殺人鬼「けけっ!!」
めめ「きゃっ!」
四男・メタトシア「よっ・・・と」
めめ「・・・あっ!メタ姉ちゃん!」
四男・メタトシア「大丈夫?もう怖がらなくていいわ」
三男・ドン「あとは俺達に任せ・・・」
三男・ドン「へぶっ!」
四男・メタトシア「おめぇ、めめちゃんが近くにいるのに爆発使ってんじゃねぇよ!」
四男・メタトシア「当たって怪我でもしたらどうすんだよ! えぇ?!」
三男・ドン「・・・ごめん」
めめ「ちょっと!こんな所で喧嘩しないで! 奴が起きる前に早く抜け出さないと!」
四男・メタトシア「あ、あぁ!ごめんなさい!」
四男・メタトシア「よーーーし!行くわよ! メタワーーーープ!!!!」
三男・ドン「あっ!置いていくなよ!」
〇荒廃したビル
めめ「うわっ!」
四男・メタトシア「だ、大丈夫?ちょっと位置が高かったかな?」
めめ「ううん、久しぶりだったから、ビックリしただけ」
四男・メタトシア「よかったぁ〜! さぁ、家へ帰りましょ!」
着ぐるみ殺人鬼「けけけけ!!!」
めめ「うわっ!追いかけてきた!」
四男・メタトシア「もう!しつこい着ぐるみね!」
四男・メタトシア「よーーーし、みんな、総攻撃よ!!!」
十一男・ポーマ「よっしゃぁ!」
十男・バマド「俺の力を見せつけてやる!!!!」
十一男・ポーマ「ボーマターーーク!!!!」
十男・バマド「バマンドドドド!!!!!」
着ぐるみ殺人鬼「ぐぎゃっ!!」
八男・バラモンデ「背後がガラ空きだ」
着ぐるみ殺人鬼「ぐげっ!」
五男・クラシカル「・・・」
着ぐるみ殺人鬼「ぐぉおお!!!」
八男・バラモンデ「あっぶな!!!! 俺も殺す気か!!!」
五男・クラシカル「・・・」
八男・バラモンデ「まぁ、いいや。師匠方、お願いします!」
六男・アーディブレイズ「いこうか」
七男・レドレアイズ「ああ」
六男・アーディブレイズ「新技のお披露目だ。 ”ウォマッシュ”」
七男・レドレアイズ「羅乱舞(ららんぶ)」
着ぐるみ殺人鬼「ぎゃ・・・」
六男・アーディブレイズ「・・・やったか?」
着ぐるみ殺人鬼「ぐ・・・ぐげげげげげげ!!!!」
六男・アーディブレイズ「あらら、完全に怒ってんな」
七男・レドレアイズ「ここは最強の兄ちゃん達にお願いしよう」
次男・ルシェルフ「よし、仕上げといこうか。兄貴」
長男・ビルマ「ああ」
着ぐるみ殺人鬼「げげげげげげげげ!!!!!」
次男・ルシェルフ「っ!」
長男・ビルマ「っ!」
着ぐるみ殺人鬼「げげげ・・・」
着ぐるみ殺人鬼「・・・げ?」
次男・ルシェルフ「なんだ、その攻撃は」
長男・ビルマ「そんなんじゃ、一発も当たらないぞ?」
着ぐるみ殺人鬼「ぎぎぎぎぎ・・・」
次男・ルシェルフ「俺がお手本を見せてやろう」
次男・ルシェルフ「いいか?パンチはこうやって・・・」
着ぐるみ殺人鬼「げぶりばばっ!!!」
長男・ビルマ「傷を負わせたいのならこうやって・・・」
着ぐるみ殺人鬼「ぐ・・・げ・・・」
長男・ビルマ「おいおい、どうした?」
次男・ルシェルフ「そんな簡単にぶっ倒されたら、つまらないだろ?」
長男・ビルマ「もっと楽しみなよ。妹が味わった何億倍もの恐怖を味わいながら・・・」
着ぐるみ殺人鬼「げ・・・」
次男・ルシェルフ「起きたのか、タフだな」
長男・ビルマ「よし、その丈夫な四肢をもいでやろう」
着ぐるみ殺人鬼「げ・・・げ・・・げ・・・」
着ぐるみ殺人鬼「うわあああああああん!!!!! 許してくださああああい!!!!」
長男・ビルマ「なんだ、喋れるのか」
着ぐるみ殺人鬼「もうイジメません!!! 妹さんには一切手出ししないから許してえええええ!!!!」
次男・ルシェルフ「・・・どうする?」
長男・ビルマ「うーん・・・」
???「ワシに任せろ」
次男・ルシェルフ「父上・・・」
父・テンペラ「・・・」
着ぐるみ殺人鬼「ごめんなさい! あなたの娘を傷つけるつもりはなかったんです!l」
着ぐるみ殺人鬼「もう二度と娘さんには近づきません! だから、命・・・命だけはあああああああ!!!!」
着ぐるみ殺人鬼「が・・・な、なぜ・・・?」
父・テンペラ「命乞いをする相手を間違えたな」
父・テンペラ「ワシらは怪人。人助けはせん」
父・テンペラ「特に・・・愛娘を傷つけるような奴にはな」
着ぐるみ殺人鬼「ぞ、ぞんな・・・」
父・テンペラ「” ダブラッグワールド”」
着ぐるみ殺人鬼「げぎゃあああああああ!!!!」
父・テンペラ「お前は亜空間へ送られる」
父・テンペラ「その世界では、ジワジワと生命力を吸い取られながら死ぬ」
父・テンペラ「暇つぶしに爪でも舐めてろ。 自分が犯した罪を後悔しながらな」
めめ「パパ!」
父・テンペラ「めめ!」
めめ「・・・」
めめ「うわーーん!!!!」
父・テンペラ「よしよし・・・」
めめ「ごめんなさい!ごめんなさい・・・」
父・テンペラ「・・・うちへ帰るぞ」
めめ「うん!」
三男・ドン「よーーーし、帰宅ぅううううううう!!!!!」
父・テンペラ「おい。それ、ワシのセリフじゃぞ」
めめ「別にいいじゃない!行こいこ!!!」
けんた「・・・」
けんた「・・・僕も帰ろ」
〜完〜
個人的にはどうしても「怪人と殺人鬼はどちらが怖いのか?」という目線で読んでしまいました。
強いのは圧倒的に怪人ですが、みな妹想い。
着ぐるみ着ている時点で殺人鬼の方が恐怖です。
しかし、一番怖かったのは、ラストで怪人の親父が命乞いに聞く耳持たない非常さを出したシーン。
改めて「あ、怪人だ」と思いました。
めめちゃんの家族は騒がしいですね。全てが怪人だから戦いたくてウズウズしてますよね。そんな家庭のめめちゃんは本当に普通の人間なんでしょうか?
怪人一家の人(?)数とキャラクターの濃さにとにかく圧倒されてしまいました。こんな家族だからこそ、めめちゃんの度胸の座った様子に納得です。こんな家族を持つめめちゃんに好かれているけんた君のこれからに幸あらんことをw