怪人アグリ

るか

怪人アグリ(脚本)

怪人アグリ

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怪人アグリ
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〇渋谷のスクランブル交差点
  ニュースです
  先日の小学生誘拐事件は
  怪人の可能性──
怪人アグリ「なんだそれ!? 怪人のせいだ? ああ!! 腹も減るし、イライラする この廃ビル、ぶっ壊してやる!!」
怪人アグリ「ハハッ 壊れろ!!」
怪人アグリ「もっと見晴らしよくしてやるよ」
怪人アグリ「燃えろ!!」
怪人アグリ「なんだ!?」
警官「いたぞ、怪人アグリだ!! 撃て!!」
怪人アグリ「お? 効かねーぞ オラオラオラ──!!」
警官「うわーっ」
警察官「うっ・・・」
怪人アグリ「はあ・・・なんか 余計に腹減っちまったな・・・」
救急「た、大変だ!! 複数名負傷!!」
怪人アグリ「ちょっと遊んでやっただけだ!! ケガも大した事ねぇーって!!」
警察官「動くな!!」
警察官「大人しくしろ」
怪人アグリ(あーもう面倒だ 逃げるぞ!!)
警察官「追え!!」

〇ビルの裏通り
怪人アグリ「あいつらの慌てた顔、スゲ〜笑える 腹へった・・・」
怪人アグリ「ん? なんだ?」
いじめっ子「お前、目障りだ!! 学校に来んな!!」
凛「ううっ・・・」
怪人アグリ「・・・」
いじめっ子「毎日同じボロ服ヤロウ!! 父親いなくてビンボーなんだろーけど」
怪人アグリ「!!!!」

〇学校の昇降口
  ──昔を思い出した
いじめっ子「お前の父ちゃん 嘘つきだから死んだんだ」
いじめっ子「やーい、嘘つきヤロウ!!」
アグリ「嘘つきじゃない!!」
いじめっ子「嘘つきだ!! 周りの大人たちも、みんなそう言ってる!!」
アグリ「違う!!!! 父ちゃんは正しい事しただけだ!!」
いじめっ子「うるせぇ!! 嘘つきヤロウの子どもは嘘つきだ!!!!」
いじめっ子「やっちまえ!!」

〇ビルの裏通り
凛「ふえっ・・・」
いじめっ子「すぐ泣く!! お前なんて、こうしてやる!!」
いじめっ子「俺も!!」
アグリ「お前ら!! ここで何してやがる!!」
いじめっ子「わああ!!」
怪人アグリ「まだ何もしてないのに逃げるとは・・・ お? まだ1人いやがった」
凛「・・・」
怪人アグリ「逃げないと食っちまうぞ!! こっちは腹減ってんだ!!」
怪人アグリ「ハハハッ 怖くて動けないのか」
凛「・・・うん」
怪人アグリ「ハハハッ 気分いいな 俺が退散してやる 今回だけだぞ」
凛「ねえ、待って!!!! なんでそんなに強いの?」
怪人アグリ「は? 知るかよ、んなもん」
凛「お願い!! 教えて!! ボク・・・強くなりたいんだ!!」
怪人アグリ「・・・教えるったってな、別になんもねぇ!! やられたら、やりかえすそれだけだ!! じゃあな」

〇山道
  ──数時間後
怪人アグリ「全く・・・変なことに首突っ込んじまったぜお前!! いつまでついてくるんだ?」
凛「・・・ねえ怪人さん、ボクは凛!!」
怪人アグリ「・・・はぁ 凛、早く家帰れ!!」
凛「家帰っても誰もいないよ・・・」
怪人アグリ「母ちゃんがいるだろ?」
凛「母ちゃんは・・・ 朝も昼も夜も働いてて家にいないんだ・・・」
怪人アグリ「じゃあ、友達のとこに行け!!」
凛「いないよ!! いつもひとり・・・ ねえ、怪人さんは友達とかいる?」
怪人アグリ「いるわけねーだろ 俺は一匹狼ってヤツなんだ カッコいいだろ?」
凛「うん、カッコイイ!! ボクも怪人さんみたいになりたい!! だから一緒にいてもいいでしょ?」
怪人アグリ「それとこれとは別だ!! 帰れ!!」
凛「やだ!! 怪人さんと一緒にいる!!」
怪人アグリ「コラッ!! つかむな!! あ!? お前、臭うぞ!!」
凛「ううっ・・・」
怪人アグリ「凛、泣くな!! こっちこい!!!!」

〇山中の川
怪人アグリ「いいな、覚えておけよ ここは露天風呂だ」
凛「川なのに?」
怪人アグリ「この川が温泉そのものみたいなもんだ だからこうして石で囲えば ほら、露天風呂の出来上がり」
凛「すごーい!! 怪人さんて物知りなんだね」
怪人アグリ「一人で生きるには知恵がいるんだよ ほら、入れ!!」
凛「うわーっ、気持ちいい!!」
怪人アグリ「こんなのがタダだからな いくらでも入り放題 ヨイショっと」
凛「わっ!! 顔にかかったよ」
怪人アグリ「ぐだぐだ言うな、そんくらい しっかし、狭いなぁ・・・一人増えると」
凛「お湯のかさもふえたから 一石二鳥でしょ?」
怪人アグリ「こういうのはな のんびり一人で大の字で入るのがいいんだ!!」
凛「そんな事ない ボク、楽しいもん・・・」
怪人アグリ「そ、そうか・・・ ・・・ふぅ」
凛「怪人さんは、はじめから怪人さんだったの?」
怪人アグリ「ん?」
凛「生まれた時から怪人さん?」
怪人アグリ「そんなわけ・・・」
  無いといいかけたがやめた
怪人アグリ(肯定しないと・・・ 自分も怪人になる!! 一緒に修行する とか言いはじめるぞコイツ)
怪人アグリ「当たり前だ 生まれた時から怪人だ!! 俺は選ばれし怪人アグリ様だからな!! ハーッハハハ!!!!!!」
凛「いいな・・・ ボクも怪人に生まれたかった」

〇工事現場
凛「ボクの父ちゃんは大きくて強い建築家だった」
凛「嵐の日、現場が心配になって 父ちゃんは家を飛び出した」
凛「その途中・・・」

〇血しぶき
「風で大きなトタンが飛んできて 父ちゃんは潰されて死んだ・・・」

〇山中の川
凛「母ちゃんはずっと泣いてた あの時、行かないでって言ったのに 父ちゃんが行ったから・・・」
怪人アグリ「・・・」
凛「ボク、母ちゃん守れるくらい 父ちゃんよりもっと強くなりたい!!」
凛「でも・・・どうすればいいか わかんない・・・ 未来が見えたらいいのに・・・」
怪人アグリ「バーカ、未来なんて知ってどうする? 分からないほうがいいに決まってら!!」
凛「怪人さんは強いからそんな事いえるんだよ!!」
怪人アグリ「未来がわかってたら その通りに生きるしかない 自分が思うように、好きなように生きられないだろ?」
凛「でも、わかってたら・・・ボクだって父ちゃん行かせなかった!!!!」
怪人アグリ「・・・ったく、コイツは嫌なことばかり思い出させやがる」

〇実家の居間
  ──30年前
父「アグリ、父ちゃんな・・・」
アグリ「どうしたの?」
父「実は・・・」
  父は会社で不正を見つけたこと
  それを正すために
  告発をしたいと言っていた
アグリ「ふせい・・・?」
父「そうだ そうしないと、もっともっと苦しい人たちがたくさん出てくる」
アグリ「その こくはつ ってヤツが みんなを助けるのか?」
父「そうなるはずだ」
アグリ「スゲ〜よ!! 父ちゃん!! こくはつしたら みんなのヒーローだな!!!!」
父「そうなれるかな?」
アグリ「俺の父ちゃんは、世界一のヒーローだ!! みんなに自慢してやるよ!!!!」
父「俺もアグリに勇気もらった 頑張るからな しっかり俺を見ておけよ!!」

〇黒
  不正の犯人は父にされ
  数えきれない誹謗中傷により自殺──
  母は毎日嘆き悲しみ
  父の後を追った──
  誰も信じられなくなった
  ひとりぼっちの俺は──
  
  怪人になるしかなかった

〇公園の入り口
怪人アグリ「さっぱりしただろ? いいな、今日はとりあえず帰れ」
凛「また、明日会ってくれる?」
怪人アグリ「だーかーら、俺は1人がいいって 言ってんだろ?」

〇公園の入り口
怪人ユウガイ「アグリ、お前もとうとうこっち側か? やっぱり金だよな、金 人間を売るのは儲かるだろ?」
怪人アグリ「何言ってんだ!! 俺は絶対そんなはしねーよ!! 飯くらい山行けばいくらでも食えるんだよ!!」
怪人ユウガイ「なんだ、じゃあ コイツは俺がもらうぜ!!」
怪人アグリ「馬鹿な事言うな!!」
凛「怪人さん?」
怪人アグリ「凛、逃げろ!!!!」

〇公園の入り口
怪人ユウガイ「お前はとんだ甘ちゃんだな 1人の人間も殺せない、売らない」
怪人アグリ「・・・」
怪人ユウガイ「人間が嫌いなくせして俺たちに楯突く」
怪人アグリ「黙れ!! 俺は、俺のしたいようにするだけだ!!」
怪人ユウガイ「死ね、アグリ」
怪人アグリ「グハッ・・・」
怪人ユウガイ「雑魚が」

〇川に架かる橋
怪人ユウガイ「捕まえた」
凛「わああ!!」
怪人アグリ「凛を・・・は・・・なせ」
怪人ユウガイ「ほう、まだ動けるのか」
警察官「今すぐその子を離せ!!」
怪人ユウガイ「バカどもが」

〇川に架かる橋
警察官「うあぁ!!」

〇川に架かる橋
怪人アグリ「オラッ!!」

〇川に架かる橋
軍隊「助けられたのか?」
警察官「勘違いするな!! 怪人は悪だ!!」
軍隊「・・・」
怪人ユウガイ「許さん、アグリ!!」
怪人ユウガイ「全員死ね!!!!」
怪人アグリ「凛!!」
怪人ユウガイ「どこだ!?」
怪人アグリ「上だっ!!」
怪人ユウガイ「グハッ・・・」
怪人アグリ「凛!!」
凛「怪人さん!!」
怪人アグリ「もう大丈夫だ」
凛「ありがとう、怪人さん」

〇川に架かる橋
警察官「怪人め!! こうなったら」
警察官「対怪人用ビーム砲!!」
軍隊「射撃準備!!」
軍隊「了解!!」
軍隊「ターゲットロック!!」
凛「怪人さん逃げて!!」
  凛が俺の前に立ちはだかった!!
軍隊「今だ!!」
凛「今度は僕が守る!!」
怪人アグリ「やめろ、凛!!」
凛「へへっ、怖くないぞ!!」
凛「怖くない!!」

〇白
  怖いはずなのに笑顔だった──
怪人アグリ「子供がいる!! 撃つな!!」
軍隊「撃て!!」

〇白
怪人アグリ「ウグゥ・・・」
怪人アグリ「り・・・ん・・・」

〇川に架かる橋
凛「怪人さん!!どうして」
怪人アグリ「無事か?凛 お前は強い・・・だから、生きろ!!」
凛「ダメだよ!! 死んじゃやだ!!」
軍隊「怪人、排除!!」
警察官「子供1名、保護!!」
凛「怪人さん!!」
警察官「さ、乗って」
凛「やだ!!」
軍隊「もう安心だ 怪人はいないよ」
凛「やだ!! うわぁぁん!!」

〇白

〇病室のベッド
凛「だましたの!?」
怪人アグリ「人間が怪人化することもあるのさ」
凛「でも、よかった 怪人さんが死ななくて・・・」
怪人アグリ「まさかな・・・怪人専用武器が人間には無害だったとは」
凛「怪人じゃなくなって寂しい?」
怪人アグリ「どうかな それより、凛・・・ありがとな」
凛「何?」
怪人アグリ「ハハッ」
凛「何? もう一回!!」
  お前の勇気で俺も強くなれそうさ、凛

コメント

  • 子供には大人の本質を見抜く独特の鋭い勘がありますよね。人間に戻ったアグリが意外にも爽やかイケメンで、幸せな人間生活を送れそうでホッとしました。

  • アグリは凛に初めて会ったとき、昔の自分をみているようで突き放したかったのでしょうね。凛はそれでもアグリの本質をしっかり見抜いていたようで、こんなにも強い結束が生まれるとは想像しなかっただけに嬉しくなりました。

  • 昔いじめられていた子供が将来は強くなりたいと思う事は必然ですね。凛は怪人を守るために強くなりました。アグリは人間に戻って幸せでしょう。

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