ゴースト・ライター〜幽霊作家は憑かれてる〜

らららコーポレーション

2【兄妹? 姉弟? 祭の上京物語】(脚本)

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〇田園風景
田村祭「それでね 今、ライトノベルの新人賞に原稿を送っててね」
田村祭「なんと! 編集さんに声をかけられたんだ! 僕の小説が本になるかもしれないんだって!」
柳「きゅう・・・」
  驚いた
  夜な夜な原稿用紙に向かってカリカリとやっていたあれが、本になるというのか
「きゅう!  きゅうきゅう、こ〜ん!」
  これには素直に喜ぶ柳
  自分のことのように嬉しい
「きゅ?」
  ここで、はたと気づく
  これだけ条件が揃っているのだ
  なぜあそこまで、祭は悩んでいたのか?
  編集部と繋がりができて
  作品が本になるかもしれなくて
  もう東京のアパートは決まっていて
  新幹線の切符まで持っている
  何も、悩むことなどないのではないか?
田村祭「みんなには、黙って行くことにしたんだ」
「きゅーーー!!!?」
田村祭「だって、家族の誰も 小説家になるために東京に行くなんて 許してくれないんだよ・・・」
「こん・・・」
  確かに田村家は
  イタコの血を繋ぐことに並々ならぬ執着がある家だ
  祭は一人っ子であったし
  彼のイタコとしての才能は
  一族始まって以来と言われるほどに卓越していたのだ
  確かに、家族が上京を許してくれるはずがない
柳「きゅう・・・!」
  わかった・・・! 
  私も一緒に行くよ!
  というように決意を籠めた眼差しを送り
  強く頷く
田村祭「あと・・・」
  なに? 
  と、首を傾げる柳
田村祭「東京のアパート、ペット禁止なんだよ」
柳「きゅ?」
田村祭「だから、柳は連れて行けないんだ!」
柳「え、ちょ、ま・・・!」
  もう言葉など気にしてられない柳と
  相変わらず
  夢以外なにも見えていない祭
田村祭「とっても悩んだんだ 僕、柳には今までたくさん助けてもらったし、離れたくなんてない・・・!」
田村祭「妹みたいに思ってる!」
  なぜか感極まって
  なんだか涙を流している祭に、柳がツッコむ
柳「いや私がお姉ちゃんで、あんたが弟だろ!」
柳「いっつも突っ走りやがって、この暴走特急!」
田村祭「でも!!」
  もはや祭の目には輝かしい未来しか写っておらず、耳には新たな門出を祝福する歌声しか聞こえていなかった!
田村祭「やっぱり、大家さんのいうことは絶対に聞かなくちゃだから! ペットは禁止だから!」
  その辺りはちゃんとしている祭である
田村祭「でも、柳はここに残って、僕の事を応援してくれるって言ってくれて・・・!」
柳「そんな事言ってないよ! あと、ペットじゃねえよ!!」
  もう彼の耳はまともに機能してはいない
  そして
  涙腺もブチ壊れてしまったのか
  目からは涙をダバダバと流している
柳「えええええ・・・」
田村祭「きっと、メールとかLINEとか送るから! 元気でね、柳!」
柳「私、スマホ持ってないし!」
田村祭「ダメだ! 一緒にはいられないんだ! 柳は動物だから!」
柳「聞けやコラ」
田村祭「じゃ、いってきます!」
  大きく手を振りながら
  土煙をあげて走り去っていく祭
柳「きゅう・・・」
  茫然と、十八年間
  片時も離れることなく一緒にいた弟同然の
  いや、実はそれ以上の感情が
  柳の胸には秘められているのだが・・・
  祭の小さくなっていく背中を見送る
  哀れなクダギツネ

〇田園風景
柳「私が・・・」
  ポツリと、寂しげなつぶやきが漏れる
柳「私がクダギツネだから悪いのかああああああ!!」
  はあ、はあ、と息を切らしていると
  田村家のお向かいで飼われている
  散歩中の
  ペットの犬と目があった
ムク「わん!」
柳「この、畜生が!」
柳「いや、私もか・・・」
ムク「わふん」
柳「ちっくしょおおおおお!!」
  柳の心の底から溢れた魂の叫びに応えるのは
  ペット仲間の忠犬
  ムク(八歳 ♂)だけなのであった・・・

次のエピソード:3【柳の上京物語】

コメント

  • ペット禁止のアパートで、クダギツネと暮らすことは可能か、、、ちょっと考えてしまいましたが問題はそこじゃないですよね!w この2人(?)の会話が親愛の情がたっぷりで楽しです!

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