第四話「フシギ」(脚本)
〇放送室
田無智「誰かを殺すつもり、って・・・・・・」
流石の智も、絶句する他ない。実のところ、放送室に飛び込むまでは半信半疑だったのだ。
本当に爆弾が仕掛けられている可能性半分、悪戯半分。どちらかというと後者に傾いていたというのが本音である。
田無智「い、いくらなんでもそこまでは」
神楽璃王「無いとは言い切れないだろ。少なくとも、こんなテープまで用意してたんだから突発的犯行じゃないのは確かだ」
田無智「そりゃそうだけど・・・・・・」
鈴原雅「とにかく、テープを仕掛けた人はまだ校舎内にいる可能性が高いよね」
まだ何かないか。放送室の中をがさごそと探しながら、雅が告げる。
鈴原雅「先生の誰かが犯人だとしたら僕達が自由に動けてるのがバレるのはまずいよ」
鈴原雅「ていうか、犯人じゃなくても教室に戻ってきて大人しくしてろって言われる予感しかしない」
まったくもってその通りである。
確かに、テロリストなんて名乗る奴に、小学生を近づけたくないという大人達の気持ちもわからないではないが。
いずれにせよ、相手の狙いがわからないのではどうしようもないし、少なくとも窓の外に見える範囲で警察が来ている様子はない。
想像以上に、解決には時間がかかりそうだ。
鈴原雅「とりあえず、ざっと不審者がいないか学校の中を確認してみない?犯人が一人とは限らないし」
田無智「それもそうだな」
神楽璃王「・・・・・・・・・・・・」
智と雅が話している間、ずっと璃王は考え込んでいる様子だった。
〇学校のトイレ
田無智「やっぱ、そんな簡単には行かないよなあ」
とりあえず、隠れるのならトイレが一番。
ということで、男子トイレに再び集合した智、璃王、雅である。
田無智「三人で手分けして校舎の中見回ってみたけど、不審者らしき人影はなかったな。まあ、空き教室とか全部見れたわけじゃないけど」
神楽璃王「・・・・・・それなんだけどさ」
璃王が顎に手を当てて話し始める。
神楽璃王「ちょっと引っかかってることがある。最初の放送で、犯人がテープで何て言っていたか覚えてるか?」
〇黒背景
『教室や特別教室、職員室にいる教員や生徒の皆さん。その部屋から出ないでくだサイ。
一人でも出ていこうとした場合は、その場で学校に仕掛けた爆弾を爆破しマス』
〇学校のトイレ
神楽璃王「俺は、不審者が見つかる可能性もそれなりにあると思ってたんだよ。何でかっていうと、犯人がこんな指示を出してるから」
神楽璃王「放送室の使い方を知ってるってことは、この学校の先生か、あるいはこっそり侵入してきた卒業生のセンもあるとは思ってた」
田無智「あー、卒業生なら機械の操作とか、やり方わかっててもおかしくないか」
神楽璃王「ああ。でも、それらしい人影はなかった。俺達が見落としてるんじゃなければな」
神楽璃王「とすると、犯人は在校生か、職員か、先生・・・・・・多分職員か先生だろ」
鈴原雅「うん?」
神楽璃王「でも放送で、犯人は“誰も教室や職員室から出るな”って言ってる」
神楽璃王「ってことは普通に犯人が教室や職員として出勤してきてたら、犯人もその場を動けなくなるってことじゃないか?」
田無智「あ」
言われてみればその通りだ。智と雅は顔を見合わせた。
神楽璃王「だから、主犯は先生とかでも、他に自由に動ける共犯者がいるのかなと思ったんだよ」
神楽璃王「その先生が遠隔操作で爆弾を爆破させるだけならまだしも」
神楽璃王「自分も半ば教室とかに監禁されてるんじゃ、犯行声明出す以上のことはほとんど何もできないだろ」
田無智「それもそうだな・・・・・・」
ということは、やっぱり悪戯なんだろうか。いや、でもここまで手の込んだことをしておいて、ただ悪戯するだけというのも妙だ。
それに、悪戯とて先生がここまでのことをやったのがバレたら、懲戒免職は免れられないような気がするのだが。
神楽璃王「遠隔操作で爆破させるんだとしても。教室や職員室に籠城させられてるんなら、複数人の子供や大人と一緒の部屋にいるわけだろ」
神楽璃王「不審なことしたら、すぐ周りの奴がおかしいと思うような気がする」
神楽璃王「実際、子供や大人の中には、“テロリスト”が学校内部にいると考えてもおかしくないわけだから」
つまり、どういうことなのだ?
残念ながら、智の頭は既にパンク気味である。困ったように雅を見ると、彼は“つまりね”と補足してくれた。
鈴原雅「爆弾はブラフかもしれない。でも、人を殺すつもりはあるのかもしれない。爆弾だとしたら遠隔操作じゃないかもしれない」
鈴原雅「あるいは他に何か目的があるのかもしれないってこと」
鈴原雅「・・・・・・犯人にとっても、僕達が自由に動けるのは想定外だったと思うんだよ」
鈴原雅「だから、やっぱり犯人がこれ以上何かをしてくるよりも前に、僕達がやるしかない」
鈴原雅「本当に、誰かが死んじゃうかもしれないんだから」
だからひとまず、と彼は続けた。
鈴原雅「情報収集しようか。この学校を恨んでいる人・・・・・・学校の裏掲示板には、何か載ってるかもしれないよ」