狂愛リフレイン

gaia

1話 はじまり(脚本)

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〇勉強机のある部屋
  ?「...きて...」
  ?「起きて雄太!」
雄太「ん?」
  午前七時半。
  かけておいた、はず、の目覚ましはまた鳴らなかったらしい。
まつり「あー!やっと起きた」
  目を覚ますと、頬をぷくっと膨らませた幼馴染の顔がそこにあった。
まつり「もー!いつまでたっても降りてこないから起こしにきたんだよ!」
  寝ぼけ眼で冷静に考えると、俺は今遅刻一歩手前の危機に直面しているらしい
まつり「早く起きて支度してよね!」
雄太「わかったよ!」
  急いで服を脱ぎ出すと、まつりは驚いて顔を背けた。
まつり「ちょっと!私が出て行ってからにしてよ!」
  ぷんぷんと部屋を出て行ってしまうまつりを尻目に俺は急いで着替えて部屋を飛び出した。
  支度を終えて下に行き、朝ご飯を食べずにまつりの待っている玄関へと向かった。

〇おしゃれな玄関
雄太「いってきます」
みこ「いってらっしゃい!」
弟「いってらっしゃい!」
  家族に挨拶をして、いつものように外に出る。
  変わらない日常。
  当たり前の平和な日々。
  こんな毎日がずっと続くと、この時の馬鹿な俺は信じて疑わなかったんだ。

〇教室
まつり「おはよう!」
  クラスメイト「おはよう!」
  クラスメイト「まつりちゃん!おはよう!」
  まつりは、運動も勉強もできてクラスの人気者だ。
  幼馴染だからって毎日一緒に登校している俺がクラスの男子たちに恨みの視線で見られるくらいには。
  クラスメイト「またまつりちゃん100点!?」
  クラスメイト「テニス部のエースだし、まつりちゃんって完璧だよな」
まつり「みんなやめてよ〜」
  俺とまつりは見るからに釣り合わない。
  そんなことは俺にもわかってるんだ。
  でも、まつりが褒められるともやもやする。

〇図書館
  だから図書館にこうして残って勉強をしているわけなんだけど。
雄太「せめて勉強から、まつりに釣り合う男になるために」
雄太「もっと頑張らないと...」
まつり「なーにしてるの?」
雄太「ま、まつり!?」
まつり「しー!図書館では静かに、でしょ?」
  図書館でぽつり、ぽつりと席に座っている生徒がこちらを見ている。
  俺は急いで口を閉じた。
まつり「図書館で雄太が勉強なんて雨でも降るのかな?」
雄太「うるせーな」
まつり「ふふ」
  ニコニコ俺に話しかけてくるまつりに俺は胸がギュッとなった。
  まつりは、一年生にして生徒会庶務に選ばれた。
  今日は金曜日だから生徒会のはずだ。
まつり「今日の生徒会、先生の都合で早めに解散したの」
まつり「靴があったから探してたんだけど、まさか図書館にいたとはねー」
雄太「先に帰ってもよかったのに」
  カッコ悪いな俺
  こっそり勉強してるところ見られるなんて
まつり「く、靴があったし方向一緒なんだから一緒に帰ろうって思うじゃない」
雄太「なんだそれ」
まつり「なんでこんな図書館の隅っこで勉強してるの?いつから?」
  お前に釣り合う男になるためだよ、なんて言えるわけないだろ。
雄太「ま、前のテストの結果がよくなかったんだよ」
まつり「それなら私に言ってくれれば家でも教えてあげたのに」
まつり「勉強教えてあげるよ、隣座るね?」
  まつりは、俺の隣にすとんと座ると、髪をさらりと耳にかけて俺のノートを覗き込んできた。
  妹みたいに可愛がっていた、守っていたまつりを、今は異性として意識してしまっている。
雄太(まつ毛長いな、そういやまつりの顔を間近でちゃんと見たことなかったな)

〇図書館
まつり「ちょっとー!聞いてる?」
雄太「あ、あぁ!聞いてるよ」
  夢から覚めたように俺は目をしぱたかせた。
  外はいつのまにか真っ暗になっていて雨粒がパラパラ窓を叩く音がし始めた。
まつり「あ、雨降ってきた」
雄太「あ、俺傘持ってきてない」
  思わず声を上げる俺は、そこが図書館であることに気づいて、やべ。と肩をすくめた。
まつり「私、傘持ってるよ」
  ふわりと甘い匂いが鼻口を掠めたと思ったら、まつりが俺にそう耳打ちした。
まつり「もう、一緒に帰ろっか」
雄太「あ、あぁ」
まつり「これ以上勉強したって、何か別のことを考えている雄太の頭には入ってきません」
  意地悪っぽく舌を出すまつりに、何でもお見通しだなと、頭をかいた。

〇学校の校舎
雄太「あ、相合傘なんてしてたら、クラスの奴らに勘違いされるかもしれないぞ」
まつり「そうだね」
雄太「そうだねって、嫌じゃないのかよ」
まつり「...」
まつり「嫌じゃないって、言ってほしい?」
雄太「え?」
  まつりの頬はぽっと赤く染まっていた。
  まさかまつりは、俺のことを...?

〇住宅地の坂道
  いやいや自惚れるな俺。
  まつりが俺のことを好き?
  俺とまつりが一緒に帰っているのは、前にまつりにストーカーがいたからだ。
  家の中を盗撮してきたり、死ねって書いた手紙を送りつけてきたり。
  最近は平気な様子だったし、まつりもその話を出したがらないから、その流れでずっと一緒に帰っていたけれど。
  まつりにとって、俺はただの幼馴染。
雄太「俺は...」
まつり「ごめんね、困らせちゃった...よね」
雄太「そんなことないよ」
まつり「雄太、あのさ...」
まつり「前に私の靴箱に盗撮写真が入ってたり、死ねって書かれた手紙がポストに入っていたことあったよね」
雄太「あ、あぁ...どうした急に」
まつり「犯人を、許してあげてほしいの」
雄太「はぁ!?」
まつり「私も...気持ちわかる気がするから」
雄太「意味わかんねえよ...」
雄太「家の中のお前を盗撮して黒塗りして送りつけてきたり、下着をズタズタにしたり、明らかに悪質だった!」
雄太「お前と俺が一緒に帰ってるのは、ストーカーから守るためだったはずだろ?」
まつり「...」
まつり「...」
まつり「雄太の馬鹿...」

〇二階建てアパート
  いつのまにか俺たちは家に着いていた。
  まつりは俺に傘を押し付けると、カバンから折り畳みを取り出して走り出した。
雄太「どこいくんだよ!」
まつり「これから会う約束をしてる人がいるの!」
雄太「はぁ!?誰だよそれ!」
まつり「すぐ帰るから!ついてこないで!」
  俺が追いかけるより先に、まつりは走っていってしまった。
  最近は前みたいにストーカー被害がないとはいえ、本来ならついていくはずだったんだ。
  どうして俺はこの時追いかけなかったのだろう
  
  1.追いかける
  2.追いかけない←

〇黒
雄太「死んだ......?」
  潤間高校じゅんかんこうこう)1年生。
  荒巻まつりさん15歳が、潤間市の番幅(はんぷく)神社で遺体で発見されました。
  遺体には無数の刺し傷があり、通り魔の犯行として...
  嘘だ
  嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
みこ「お兄ちゃん...大丈夫?」
  俺は、膝から崩れ落ちてミキサーにかかったような脳みそで吐瀉物を吐き散らした。
  なんで俺は...
雄太「あの時...どうして俺は追いかけなかった!?」

〇学校の下駄箱
  その後警察が事情聴取にきた。
  空っぽの頭で何を答えたのか、覚えていないが、あの時俺があんなことを言わなければ
雄太「まつりは、死なずに済んだのか...」
  外は雨が降っていた。
  あの時と一緒だった。
  俺はその日は妹に注意されて、折り畳みを持ってきていた。
雄太「あれ?」
雄太「カバンの奥の方に、なんだこれ...手紙?」
  荒巻まつりの死の真相が知りたければ、1人で番幅神社裏まで来い。
  番幅神社は、この町で有名な縁結びの神社だ。
  まつりが殺されていたのも、番幅神社...
雄太「そういえば、まつりあの時...」
雄太「誰かに会うって言ってたな...」
  俺は、傘なんかささずに手紙を握りしめて神社へと向かった。

〇古びた神社
  雨が強すぎるからか、警察の人たちはその場にいなくて、黄色と黒のテープだけ張り巡らされていた。
雄太「おい!誰だよ!あんな手紙を置きやがって!」
雄太「まつりのこと、何か知ってるのか!?」
雄太「それとも手紙を書いたお前が犯人か!?」

〇黒
  ガンッ
雄太「うっ...!!」
  その直後、脳天を揺さぶるような衝撃と共に、俺の顔面は地面に突っ伏していた。
雄太「クソッ...誰だ...」
  俺は、犯人の顔を見ることはできなかったが、薄れゆく意識の中。
  犯人は確かに言っていた。
「繰り返すから大丈夫...」
「ゲームのように...あはは...あはははは!!!」
  その後悪魔のような笑い声が響いたが、その声に聞き覚えがあると気づく前に。
  ドガッ!
  ガンッ!!
  俺の意識は、強制的にシャットダウンした。
雄太「まつ...り...」

次のエピソード:2話 ループ❷ 前編

コメント

  • ストーリの中にとても強い明暗があって刺激的でした。人生には沢山の選択肢がありますが、どんなささやかなことでも少し慎重に決めていこうと思いました。続きを楽しみに待っています。

  • 犯人の言葉の意味がとても気になります。いったいどういうことなのでしょう。彼はどうなってしまうのか、まつりが殺された理由も、まつりの言葉の意味もまだわからないので、続きを楽しみにしています。ふたりの仲良しな様子が前半で描かれていたのがより強くコントラストになって、その後の突然の展開の恐怖感を増幅していました。

  • この凄惨な世界を繰り返す、、、恐ろしい設定ですね。ゲームのように、選択肢によっては別のルートに進むことができるのか、そして繰り返す理由とは、、、続きが気になりますね。

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