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KAULU

エピソード1(脚本)

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〇オーディション会場
景浦芳樹「もういい! やめろ!!」
女「え?」
久下和馬「カゲさん、もう少し見てやっても・・・」
景浦芳樹「ダメだ、最低だ。」
女「もう一度、もう一度だけチャンスもらえませんか?」
景浦芳樹「とっとと俺の前から消えろ。」
女「せめて・・・どこが駄目だったか教えてください。」
景浦芳樹「顔だよ顔! そんな顔で売れるわきゃねえだろ!!」
女「そんな・・・ひどい・・・・・・」
久下和馬「カゲさ~ん、勘弁してくださいよ~。これで何人目だと思ってるんスかぁ。」
景浦芳樹「あぁ? 仕方ねえだろ、どいつもこいつもカスばっかなんだからよ。」
久下和馬「え~」
景浦芳樹「いいか? 売るためには顔だよ顔! 才能とか演技なんて後付けでどうにでもなんだよ!」
久下和馬「いや、今の子だってかなりレベル高いと思いますよ?」
景浦芳樹「あんだぁ?」
久下和馬「・・・なんでもないっス。」
景浦芳樹「ったく、たまに来てみりゃこのレベルかよ。」
久下和馬「どこ行くんスか?」
景浦芳樹「帰るんだよ!」

〇施設の男子トイレ
久下和馬「はあ~~~~」
須藤「どうしたの久下ちゃん、ため息なんかついちゃって。」
久下和馬「あ、須藤さん。ちわっス。」
須藤「さてはまたまた景浦さんがやらかしたね?」
久下和馬「あ、わかります? オーディション参加者をみんな追い返しちゃって・・・」
須藤「はっはっは、景浦さんらしいや。」
久下和馬「笑いごとじゃないっスよ・・・ オレが入社してから、カゲさんがオーディションで合格させたのゼロですよ、ゼロ!」
久下和馬「カゲさんってこの業界じゃかなりやり手だって聞いてたんスけど、オレあの人がまともに仕事してるとこ見たことないっスよ。」
久下和馬「「顔が悪い」ってそればっかで・・・ハードル高すぎっスよ。」
須藤「久下ちゃんの言うこともわかるけどね、昔はああじゃなかったんだよ。」
久下和馬「はあ・・・」
須藤「以前の景浦さんときたら、そりゃもう次から次へと原石を見出して。」
須藤「「素材だけじゃダメなんだ。宝石と一緒で大事なのは磨き方だ」なんてよく言ってたっけ。」
久下和馬「う~ん・・・想像できないっスね。」
須藤「多少厳しいところはあったけど、可能性を閉ざすようなことはしなかったなぁ。」
久下和馬「じゃあなんで今はあんな風にひねくれちゃったんですかね?」
須藤「はっはっは。 そりゃ本人に聞いてみればいいよ。」
久下和馬「う・・・聞けっかなぁ・・・・・・」

〇渋谷のスクランブル交差点
  会社を出た俺は行くあてもなく、街をぶらついていた。
景浦芳樹(ちっ)
景浦芳樹(どいつもこいつも似たような顔しやがって!)
  街頭のテレビ画面に女優の姿が映し出されていた。
  『本日は演技派で有名な片丘リサさんに起こし頂きました』
  司会者がやたら仰々しく女優のプロフィールを紹介していく。
景浦芳樹「バカが。どーせ見てる奴らに演技なんかわかりゃしねえよ。」
  ザザザ・・・
  テレビの画面にノイズが走る。
  ザザザザザザ!
  ノイズは広がり、あっという間に画面は砂嵐状態になる。
景浦芳樹「なんだぁ?」
  ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ・・・・・・!!
  ・・・ブツン
  俺の意識は、そこで途切れた。

〇ビルの裏
景浦芳樹「う・・・・・・」
  気がつくと、見知らぬ路地で目を覚ました。
景浦芳樹(なんだ・・・どこだここは・・・)
  頭にもやがかかったようで、まだ意識がはっきりしなかった。
見知らぬ女「あ、あの・・・大丈夫ですか?」
景浦芳樹「あ、ああ・・・たぶん。」
見知らぬ女「どこか具合でも悪いんですか?」
景浦芳樹「いや、問題な・・・」
  そう言いかけて、俺は自分の目を疑った。
  飛び起きた俺は彼女の肩を掴んで、顔を近づける。
見知らぬ女「きゃあ!?」
景浦芳樹「そんな・・・み・・・」
見知らぬ女「な、なにするんですか!?」
  女は俺の手を振りほどいて、慌てて逃げていった。
景浦芳樹(見間違い・・・か?)

〇ネオン街
  路地から出た俺は、まだすっきりしない頭で街をぶらついていた。
景浦芳樹(どうやってここまで来たのか全く覚えてねえ。それに・・・・・・)

〇ビルの裏
見知らぬ女「あの・・・大丈夫ですか?」

〇ネオン街
景浦芳樹(相当疲れてるみたいだな・・・・・・)
  ふと、カラオケ店から出てきた女子高生の集団に目がとまった。
景浦芳樹「な・・・・・・」
  あまりの光景に俺は唖然とした。
景浦芳樹「全員・・・同じ顔・・・?」
  ドンっ!
  唖然としていると、すれ違い様に人とぶつかってしまったようだ。
OL「あ、すみません。」
景浦芳樹「・・・・・・」
  俺は慌てて周囲を見渡した。
  どいつもこいつも、同じ顔をしていた。
景浦芳樹「うわぁっ!!」
  俺はその場から逃げるように走り出した。

〇公園のベンチ
景浦芳樹(一体何が起こってんだ・・・)
景浦芳樹「男は普通に見えんのに、女だけがみんな同じ顔に見えやがる・・・」

〇渋谷のスクランブル交差点
景浦芳樹「ちっ」
景浦芳樹「どいつもこいつも似たような顔しやがって!」

〇公園のベンチ
景浦芳樹「天罰ってやつか・・・?」
景浦芳樹「もしそうだとしたら、なんで・・・」

〇海辺
景浦芳樹「お前がいてくれて良かったよ・・・美久。」
雛月美久「ん? なにか言った、芳樹。」
景浦芳樹「いいや。なんでもないさ。」
雛月美久「ふふ・・・ヘンなの。」

〇公園のベンチ
景浦芳樹「なんでよりにもよって・・・」
景浦芳樹「お前の顔なんだ。」

コメント

  • 顔が酷いって、生まれつきだしどうしようもない…。
    そんなことを強いられても困るし…でも何かしら事情があるんですね。
    かといって許されることではありませんが…。

  • みんな同じ顔か〜、好きな人の顔なら嬉しいかもしれないけど…と思った矢先、本当にそうでびっくりしました。実際に好きな人の顔になってしまうと、色々思うことがあるんですね。考えが甘かったな…と、ちょっとカゲさんに申し訳なくなりました。過去の爽やかな姿からこんなに変わってしまうなんて、どんな過去をお持ちなんでしょうか…。

  • 「なんてひどい!」と言うのが読み始めの感想です。ですが読み続けると、主人公の方の影が見え隠れしていて心の闇を感じました。この後がどうなるのか気になります。

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