エピソード1(脚本)
先生お願い
ここから出して!
これでずっと
ずっと一緒にいられる
なぁ・・・?
・・・瑞穂
〇学校の部室
小田「ええーーー!?」
小田「写真部がなくなるってどういうこと!?どこ情報だよ!」
井上「先生に言われたんだよ。あまりにも唐突すぎてこっちもめちゃくちゃ驚いたさ」
小田「・・・にしてはお前わりと冷静に見えるぞ」
井上「いやぁ~それもしょうがないって心のどこかで思ってたからさぁ」
井上「なんというか、こうなる日がいずれきてもおかしくないと思ってたし、諦めも心のどこかにあったからかな~」
小田「お前・・・平然とそういうこと言うなよぉ~」
小田「学校が創設されてからずっとこの写真部はあるんだぞ?それに俺もまだ新しい1年の勧誘し続けてるってのに・・・」
小田「そんな軽く諦めるなんて言うなって」
小田「廃部になったら俺たちどうするんだよー・・・」
井上「俺はもう目星つけてるよ」
小田「はぁっ??」
井上「映え部」
小田「・・・・・・」
小田「・・・今なんて?」
井上「だーかーらー」
井上「映え部だって」
小田「・・・なにそれ」
井上「新しい写真部」
小田「・・・」
小田「・・・はぁ!?」
小田「な、なんだよそれ!新しい写真部?聞いてないぞそんなふざけた名前の部活!」
井上「小田は情報に疎いなぁ。女子の間では有名になってる部活だぞ?」
井上「なんでもSNSにアップするのを目的として、いかに映える写真が撮れるかを研究する部活なんだって」
井上「はじめは同好会からスタートするつもりだったんだけど、部員数が予想以上にあったから正式な部活として活動が認められたんだとよ」
小田「マジで?部員そんなにいるのかよ・・・今何人?」
井上「20名くらいはいるかなぁ」
小田「嘘だろ・・・うちより16人も多いのかよ」
井上「時代は映え部なんだって。見学しに行ってみたら向こうはきゃっきゃ言ってて楽しそうだったし、お前も行ってみたら?」
小田「お前っ!早々と写真部裏切ってるじゃねーか!」
井上「まぁまぁ、人生諦めも肝心だよ」
小田「少なくともその台詞だけは写真部のために努力してないお前に一番言われたくない言葉だわ」
井上「まぁ廃部というか、新しい写真部ができた訳だし、リニューアルとでも捉えたら俺は別に良いかなって思うけど」
小田「お前さぁ・・・愛着ってものがあるだろうよ」
井上「廃部は免れない訳だしさ、お互い前向いていこうよ。映え部の女の子たちと活動する方が今よりも楽しいって」
「ちょっと、それってどういう意味!?」
井上「あれっ、聞こえてた?」
振り返ると、妙な笑みを浮かべた女子部員が入ってきていた。
佐崎「まるで私と一緒にいても楽しくないって言ってるように聞こえたけど?」
井上「佐崎ちゃん笑顔で怒らないで・・・今のは軽い冗談だから」
だから軽々しく発言するものじゃないって言ったんだ。井上はばつが悪そうに俺の後ろに隠れた。
小田「佐崎、部員の勧誘状況はどう?」
佐崎「今日もだめね。みんな見向きもしてくれないし、これじゃさっき井上君が言ってた通り廃部まっしぐらになりそうね」
井上「・・・最初から聞いてたんだね」
佐崎「部室の外からしっかりとね」
佐崎「でもね、廃部を決めるにはまだ早いわよ!」
佐崎「廃部を通達されてから、先生になんとかならないかって相談したの」
佐崎「そしたら、映え部よりもインパクトのある写真を撮ってきたら廃部の意向を考え直してくれると条件が提案されたわ」
佐崎「負けたらうちは廃部。勝ったら映え部の部員がうちに吸収される。締め切りは明日までよ」
小田「相手はその果たし状を、受け取ったのか?」
佐崎「相当な自信があるのね。すぐ受理してくれたわ。だからこれは、」
佐崎「写真部vs映え部の・・・」
佐崎「全面戦争よ!!」
佐崎「SNSだけに生きてる浮かれた連中なんて絶対に負かしてやるんだから!」
〇学校の部室
小田「それで、写真部は何を題材にするんだ?」
佐崎「何がいい?」
小田「おいおい、もしかして何も決めないで大口たたいてきたのか!?」
佐崎「大丈夫よ!私たちは何を題材にしても勝てる」
佐崎「約2年半の活動は決して無駄じゃないってところ、見せてやるのよ」
小田「見切り発車かよー・・・」
井上「じゃあさ、学園七不思議ってのはどう?」
小田「うちにそんなもんあったか?」
井上「無いから作るんだよ。俺たちの力で」
佐崎「七不思議・・・そうね!もう夏だし季節的に涼しくなりそうで良さそうじゃない」
井上「おっ、佐崎ちゃんは乗り気だな。なっ?小田も面白そうだと思うだろ?」
小田「・・・ちょっと待ってくれよ、本気か?」
井上「どうした小田。もしかして怖いのか?」
佐崎「噂がないならこの学校に幽霊なんていないのよ。いわくつきの噂なんて入学して1度も耳にした覚えはないし」
小田「怖いとか、そういう訳じゃないんだ。ただ・・・俺・・・聞いたことあるんだよ」
小田「この学校で昔行方不明になった生徒がいるって話・・・」
小田「むやみに茶化すのはどうかと思う」
佐崎「え・・・」
佐崎「そんな・・・そんな事があったなんて・・・」
佐崎「すっごく撮りがいがあるじゃなーーーい!!」
小田「おい待ってくれよ、今俺の話聞いてたか!? 真剣に言ったんだぞ!?」
佐崎「俄然やる気に燃えてきたわ!映え映え心霊写真作戦、決行するわよ!」
井上「アイアイサー!」
小田(マジかよ・・・)
こうして廃部の窮地を救うべく、俺たち写真部は学園七不思議を自ら作り出すという罰当たりのような自作自演撮影に躍り出た。
〇大きな木のある校舎
深夜──
小田「井上遅いな・・・」
佐崎「電話してみる。まだ寝てるのかも」
時刻は深夜2時。
曇天の空の下で俺たちは10分近く待っていた。
Prrrrr・・・・・・
佐崎「ダメ。全然出ないわ」
佐崎「仕方ないわね、井上君はほっといて私たちだけで先に行きましょ」
〇学校の下駄箱
暗闇の広がる校舎内。賑やかな声が溢れる日中とのギャップがまた不気味さを漂わせていた。
周囲が静かな分、虫たちの鳴き声がやけに響いて聞こえる。
〇まっすぐの廊下
小田「なんか、雰囲気あるな・・・」
佐崎「ほら!びびってないで先進むわよ」
二の足を踏んでいると、俺から懐中電灯を取り上げた佐崎が先に歩き出したため渋々後を追いかける。
昇降口の扉が閉められた空間はより密閉され外部の音は遮られ、静けさが増す廊下に二人だけの足音が響く。
小田「で、七不思議を作るんだよな?何から始めるんだ?」
佐崎「そうね・・・まずは」
そう言いかけたかと思うと、佐崎が突然歩みを止めた。
小田「どうした?」
佐崎「ねぇ、何か物音聞こえない?」
佐崎に促され、耳を澄ましてみると遠くの方でざくっ・・・ざくっ・・・という物音が聞こえてきた。
小田「確かに。外から聞こえる気がする」
窓ガラスに近寄り校庭を見回してみる。すると何か黒いものが動いているのが確認できた。
振りかざしては下ろす動きに見えるが
その動作と聞こえる音は一定のリズムを絶やすことなく繰り返されている。
あれは・・・人だろうか
佐崎「あれ何かしら?分からないけど、シャッターチャンス!」
何を言い出したかと思えば、佐崎が窓を開けてカメラを構えながら身を乗り出した。
小田「おい!やめろって!」
・・・パシャパシャッ
カメラのフラッシュがたかれ、一瞬の光が連続して暗闇の向こうを照らした。すると、先程までの物音が止んだ。
その黒い何かの動きは音と共に止まり、ゆっくりとこちらを向いた。
佐崎「暗くてよくわからないわね」
小田「なんかヤバイ気がする・・・佐崎逃げるぞ」
ブーッ
小田「こんな時に・・・井上からだ」
タイミング悪く俺のスマホが鳴り出した。仕方なく今いる場所からできるだけ遠くを目指しながら電話に出る。
わりぃ、こんな時間だとは思わなくてさ。もう始めちゃってる?
遠くから勢いよく昇降口の扉が開く音が聞こえてきた。
小田「お前はもう来なくていい。つーか来るな!」
その口調なんか怒ってる?悪い悪い、でも寝坊とかそんなふざけた理由じゃないんだ
小田が言ってた行方不明事件についてSNSで少し調べてたら、いつの間にかこんな時間になっててさ
これって、触れて良いものか分からないけどよ・・・
気になる投稿があったんだよ
小田「どんな投稿だよ」
それが・・・
後ろから足音が近づいてくる。
小田「こっちは気が気でない状況なんだ。頼む、早く言ってくれ」
じゃあ驚かず聞いてくれよ?
この学校で昔、
生徒が教師に殺された書き込みを見つけたんだ。
いいですね、登場人物がみなエネルギーが無駄に溢れている学生特有の空気感いっぱいで!冒頭のシーンが、物語とどのように繋がっていくのか続きが楽しみです。
写真部と映え部はなんだかんだで相性良さそうですが…。
とんでもない事件をそんな深夜帯に言わなくても…。
続きが気になって眠れないかもです汗
サウンドありは特にこのような作品にはいいですね〜。電話のタイミングでドキッとして緊張感が一気に増しました。前半の部活への思い入れやの主人公らのやりとりだったりで、青春時代の懐かしさもわいてきて、怖い要素だけでなくたくさん楽しめる要素がありました。