俺の顔に何かついてる?(脚本)
〇一人部屋
珍しく深酒した翌朝。
目が覚めたのは、いつもより1時間遅れだった。
俺「まずい・・・!」
慌ててベッドから飛び起きる。
15分後の電車が、出社時間に間に合うギリギリの便だ。
顔を洗って歯を磨き、朝食がわりの野菜ジュースを口にする。
スーツに着替えて眼鏡も掛けて、ビジネスバッグ片手に家から飛び出した。
〇ゆるやかな坂道
俺「はあ、はあ・・・」
走り始めた俺の息は荒く、自分自身の呼吸音が、妙に際立って聞こえるくらいだ。
急げば駅まで10分だが、そんなに全力疾走は続けられない。
すぐに走るのを諦めた。
とはいえ、のんびり歩くわけにもいかず、まるで競歩みたいな早足になった。
〇ゆるやかな坂道
通勤時間帯の朝は、せわしないのが普通だ。
それでも、これほど慌ただしい姿は珍しいのだろう。
道ゆく人々が、俺の方を見て、変な表情を浮かべていた。
通行人「・・・」
通行人「・・・」
笑いたければ笑え。
遅刻寸前という危機的状況なのだ。
他人の目を気にする余裕はない!
最初はそう思っていたのだが・・・。
〇ゆるやかな坂道
子供「ママ、あれ・・・」
母親「しっ! 見ちゃいけません!」
俺を指さす子供と、その視界を遮るかのように立ち位置を変える母親。
まるで変質者扱いであり、さすがの俺も気分を害してしまう。
同時に、少し不思議に思った。
傍から見て今の俺は、そこまで言われるほど常軌を逸しているのだろうか?
〇ゆるやかな坂道
そのまま小走りを続けるうちに、ふと気が付いた。
こちらを注視する通行人たちは、歩き方ではなく、顔のあたりに視線を向けている。
通行人「・・・」
通行人「・・・」
ならば、俺の顔に何かついているのだろうか?
気になって頬に手をやり・・・。
ようやく俺も理解する。
今朝の俺は、外出時には必須の、感染症対策のマスクをつけ忘れていた。
(おわり)
なんかこういうのありますよね!
私も忘れてる時とかあって、視線を感じます。笑
でも、コロナが流行ってからほとんど風邪をひいてないんで、マスクって効果があるんだなぁって思いました。
めちゃくちゃリアルな内容で、親近感を抱きました。最近は、猛暑でマスクを付けていられない日々ですが、マスクをしていないと他者からの視線がちょっと痛い…そんな気持ちに共感できる作品でした!
あるあるですね。
私も以前コンビニに入った時に皆んなに凄く見られるなぁと思っていたらマスクをするのを忘れてました…。
急いでる時や車に乗って少しだけ…の油断が危険ですね!