昔からの想い(脚本)
〇雲の上
――誰かと繋がりたい。ただ、それだけ。
〇雲の上
さびしさが足元から生えて来て私を動けなくしてしまう。そんな気がしていた。
誰でも良いわけではなかった。しかし、本当は誰でも良いのかもしれなかった。
〇雲の上
日常を共にする誰かがほしい。
今日のご飯の話、明日の天気の話、他愛ない話。そういうものが気軽に出来る、誰か。
誰か誰か誰か。
スマホに入っている通話アプリやSNSで、私は誰かを探していた。探し続けていた。
それは足りない何かを補いたくて続けている、一人きりの旅のようでもあった。
あるいは、ボトル・メッセージをネットの海に流し続ける行為だった。
何の意味もないようにも思えたし、いつか実るような気もしていた。
いつか誰かが私のSOSに気付いてくれる。大変だったね、大丈夫? と。そんな風に声を掛けてくれる。
私はそう、思っていた。
〇ファンシーな部屋
日常というものは穏やかに過ぎて行くけれど、退屈でもあった。
学生という時間を抜け出した私は、職場と家の往復になっている日常時間に飽き飽きしていた。
無意味に時間を過ごしている。そんな風に思っていた。
ある日、同窓会の開催を知らせるハガキが届いた。興味はあった。
けれど、どうせ表面だけ取り繕って会話し、さしておいしくもない料理を食べるのだろうと思った。
私は、ハガキを読んでそのまま丸めてゴミ箱へと捨てた。
〇マンション群
その夜、高校の時の友人から久しぶりにメッセージが届いた。
「同窓会、行く?」とだけ書かれたそれに「行かない」と私が返すと、電話が掛かって来た。
「「もしもし」」
「「もしもし、優?」」
「「うん」」
「「同窓会、優なら行かないって言うと思ったんだよねー。それでね、一人ね、優の連絡先を知りたいって言ってる人がいるの」」
「「その人、優はたぶん同窓会に来ないだろうから会えないしって言っててね。ちょっと話したいんだって」」
私は内心で首を傾げた。
「「私の知ってる人?」」
「「たぶん? 高校で同じクラスだった、樫森怜君。覚えてる?」」
「「ああ、名前は覚えてるけど。あまり話した記憶はないな」」
「「私は結構、仲良かったんだ。今度の同窓会のことでこの間に話したんだけど、優が来るか気にしててね」」
「「たぶん来なさそうって答えたら、元気かどうか話したいんだよねって。了承貰えたら連絡先教えてって言われてるの。どうする?」」
高校の時の記憶に濃く残っているわけではない樫森怜という人間に私は思いを馳せてみたが、やはりあまり思い出せなかった。
それでも私が彼に自分の連絡先を教えて良いと答えたのは、単なる暇潰しに過ぎなかった。
「「おっけー、じゃあ教えておくね。また会おうねー」」
「「うん、またね」」