怪人怪盗モンストル・ド・フラム

久望 蜜

怪人怪盗、あらわる!(脚本)

怪人怪盗モンストル・ド・フラム

久望 蜜

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〇宮殿の門
警察官「いたぞ! 怪人怪盗モンストル・ド・フラムだ!」
警察官「追え、逃すな!」
フラム「ハーハッハッハ! さらばだ、警察諸君!」
「くっ、またやられたか!」

〇おしゃれな受付
アナウンサー「今夜も厳重な警備のなか、鮮やかに『トレゾール・モディ』を盗んでいきましたね」
コメンテーター「呪われた宝『トレゾール・モディ』──」
コメンテーター「持ち主が死ぬ宝石など、呪いや不思議な力があるとされる曰くつきの秘宝です」
コメンテーター「普通は敬遠される、これらの秘宝ばかりを狙う大怪盗が、皆さんご存知の怪人怪盗モンストル・ド・フラム」
コメンテーター「派手な仮面が特徴的な──」

〇英国風の図書館
フラム「仮面じゃなくて素顔なんだけどねえ、これ」
汐(しお)「無理もないよ、フラム。 普通の人間は、怪人なんか見慣れていないんだから」
汐(しお)「それより、まだその姿ってことは──」
フラム「ああ。今日盗んできたトレゾール・モディでも、人間の姿には戻れなかった」
汐(しお)「持ち主がことごとく失踪する『不幸を呼ぶ指輪(バーグ)』・・・・・・」
汐(しお)「姿が変わってしまったせいで失踪扱いになったのかもと思ったけど、どうやら違ったみたいね」
フラム「今回こそはと、期待していたのだがね・・・・・・」
汐(しお)「仕方ないよ。あ、指輪はわたしが預かるね。 折を見て博物館へ返しておくから」
フラム「ありがとう、汐。 ああ早く、普通の学芸員に戻りたい」

〇地下倉庫
フラム「博物館の収蔵品をチェックをしていて、たまたま触ったサーベルがトレゾール・モディだったばかりに、怪人になって一年」
フラム「もとの姿に戻るには、姿を変えられるトレゾール・モディを手に入れるしかない」

〇英国風の図書館
フラム「泥棒として博物館に通いつめるなんて、もう真っ平だよ」
汐(しお)「まあ学芸員なのに呪われちゃうフラムも、おっちょこちょいだとは思うけど」
フラム「呪いに、学芸員かどうかは関係ないよ・・・・・・」
汐(しお)「とにかく、次のトレゾール・モディを狙うしかないね。今度はこれ!」
フラム「・・・・・・『七変化の腕輪(ブラスレ)』?」
フラム「まさか、とうとう姿を変えられるトレゾール・モディを見つけたのかい!?」
汐(しお)「残念だけど、違うわ。 これにあるのは、五分間だけ別の姿に変装できる力だけ」
フラム「なるほど。でも、これがあれば人間の姿に変装することができそうだね」
フラム「怪盗七つ道具『コレクション・ド・フラム』として、僕が人間に戻れるまで借りておこう」
汐(しお)「もう七つどころじゃないけどね。まあそれでも、巷で噂されているよりは少ないか」
フラム「噂?」
汐(しお)「フラムが、お宝をいっぱい溜めこんでいるっていう噂」
フラム「実際は怪盗に役立ちそうなもの以外は全て、ちゃんと返しているのだけどね」
汐(しお)「保険金目当てに返ってきたことを公表しない連中もいるみたいだし、仕方ないよ」
汐(しお)「それより、わざわざ怪盗として予告状まで出して、目立つ必要はないと思うんだけど?」
フラム「やっぱり、怪人になって身体能力が上がった以上、やってみたいじゃないか。 それにコソコソ盗むなんて、真っ平だよ」
汐(しお)「うーん、何度聞いても理解できない・・・・・・」
フラム「それで、予告状は?」
汐(しお)「下調べは終わっているから、いつでも出せるよ」

〇黒
  明日の夜七時、山際美術館に
  『七変化の腕輪(ブラスレ)』
  をいただきに参上する。
  
  怪人怪盗モンストル・ド・フラム

〇作戦会議室
???「また奴が予告状を出したぞ!」
???「よし、今度こそ奴のシッポを掴んでやる!」
???「奴には影で動いている協力者がいるらしい。 まずは、そいつを押さえろ」
???「それで、一網打尽だ!」

〇立派な洋館
汐(しお)「いい? 目的の展示室は三階。 屋根から窓を伝って侵入するほうが早いよ」
フラム「しかし、どうやって屋根まで行くつもりだい?」
汐(しお)「これ!」
フラム「風船で浮くには、わたしは重すぎると思うのだが・・・・・・」
汐(しお)「と、これ!」
フラム「『神象の像の重さ(ポワ)』か・・・・・・」
汐(しお)「そう。このトレゾール・モディなら、対象の重さを変えることができる」
フラム「像を持ったときに、予想より重いと思えば身体が重く、軽いと思えば身体が軽くなるのだったね」
汐(しお)「そ。だから、これで屋根まで行ってみよー!」
フラム「多少無茶な感じはするが、仕方ないか・・・・・・」
汐(しお)(いってらっしゃい。 どうか、無事に帰ってきてね)

〇体育館の屋上
フラム「おおおおっ! か、風が強い!」
フラム(まずい、このままでは流される・・・・・・)
フラム「ハッ!」
フラム(ふう、何とか剣圧でうち消せた・・・・・・)
フラム「よっと!」

〇要塞の廊下
フラム「さて、何とか無事に潜入できたが・・・・・・。おっと」
警察官「おい、異常はないか?」
警察官「ありません!」
警察官「そろそろ、予告時間だ。気をひき締めろよ」
フラム(ふむ。騒がれても厄介だ。こいつの出番だな)
警察官「あれ? おかしいな・・・・・・」
警察官「何だか、眠く──」
フラム(『悪夢を抱く天使(アンジュ)』――これは、近づいた人間を眠らせる呪いがかかっている)
フラム(しかも、怪人である僕には効かないから、とても便利だ)
フラム「さて、展示室は・・・・・・」
フラム「今度は、赤外線防犯装置か。 普通、人間の目には見えないものだが、怪人の目にはしっかりと見えるね」
フラム「突破するには、これがてっとり早いかな」
フラム(『破滅の首飾り(コリエ)』――これを身につけたものは、死んで幽霊になるといわれている)
フラム(だが、実際は擬似幽霊体験ができる優れものだ)

〇美術館
フラム「赤外線も壁もすり抜けられるし、人からも見えない。まあ、たまに──」
???「ギシャア!」
フラム「人には見えないお化けの類には襲われるが、怪人のこの身体ならば引けをとらない!」
???「グアア・・・・・・」
???「アアア・・・・・・」
フラム「おいおい、数が多くないかい?」
フラム(まあ、今の幽霊化した状態なら、暴れても周りに被害は出ないけれど・・・・・・)
フラム「しかし、予告時間まで間がないのでね。 手加減はしないよ?」
フラム「あと、三十秒!」
フラム「ハア・・・・・・ハア・・・・・・あらかた片付いたか・・・・・・」
フラム(さて──)
フラム「ハーハッハッハ! 『七変化の腕輪(ブラスレ)』は頂戴した!」
警察官「なっ! どこからあらわれた!?」
警察官「つ、捕まえろ!」
フラム(フフ、驚いているな。 これだから、怪盗はやめられないんだ)
フラム「では、これで失礼させてもらう!」
フラム(三階から窓を破って飛びだしても、これくらいの高さならこの身体で十分耐えられる)
フラム(警察も追いつけまい)
フラム「今日の仕事も、大成功だ!」

〇立派な洋館
フラム「汐、お待たせ」
汐(しお)「フラム! よかった、終わったのね──」
窃盗団「おっと! 動かないでもらおうか。 こんな子どもに怪我はさせたくないだろう?」
フラム「やめろ、その子を離せ! そんなことをしたら、ただではすまないぞ!」
窃盗団「ふん、脅しのつもりか! そんな仮面を被っているからって、俺たちはビビらないからな!」
汐(しお)「フラム・・・・・・」
フラム「汐、大人しくしているんだ!」
窃盗団「この子どもはお前の仲間だな? 無事に返してほしければ、『コレクション・ド・フラム』をよこせ!」
フラム「なるほど。お宝を溜めこんでいるという、例の噂に踊らされた窃盗団か」
フラム「悪いことはいわない。その子を人質にするのだけは、やめたほうがいい・・・・・・」
窃盗団「いいから、大人しく渡せ! 少しでも不審な動きをしてみろ、こいつの命はないからな!」
フラム(やれやれ、この状況では『悪夢を抱く天使(アンジュ)』は使えないな)
フラム「あれらは望むお宝ではなかったが、これでも学芸員の端くれだ」
フラム「君たちに、大事なトレゾール・モディを渡すわけにはいかない!」
汐(しお)「そうよ、諦めなさい! こんなことをしても、無駄なんだから!」
フラム「汐、仮にも人質なのだから、そんなにジタバタしないでくれ・・・・・・」
汐(しお)「わたしなら、へっちゃらよ! さっさと離しなさい! この、おたんこなす! すっとこどっこい!!」
窃盗団「ここまで舐められて、引きさがれるか! 交渉に応じなかったこと、後悔しろ!」
フラム「汐!」
汐(しお)「フラム! 何で・・・・・・」
フラム「君を傷つけるわけには、いかない。 汐は、大事な存在なのだから・・・・・・」
フラム「いいかい? それより、冷静に──」
窃盗団「ちっ、まさか飛びだしてくるとは・・・・・・」
窃盗団「バカ、こいつに万が一のことがあったら、お宝の在り処を聞きだせなくなるだろ!」
汐(しお)「よくも・・・・・・」
フラム「こら、汐! 落ちついて!」
「ひっ!」
アルミュール「わたしは、トレゾール・モディ『無敵の鎧(アルミュール)』!」
窃盗団「ど、どういうことだ!?」
窃盗団「人間じゃなかったのか・・・・・・?」
アルミュール「フラムの仇よ!」
「うわあ!!」
フラム「あーあ、だからその子を人質にするのはやめろと忠告したのに・・・・・・」
汐(しお)「フラム、大丈夫!?」
フラム「大丈夫だよ。全く、せっかく穏便にすませようと思ったのに・・・・・・」
汐(しお)「わたしは、主を守る自律型の鎧。 フラムが傷つけられて、黙っていられるわけがないでしょ!」
フラム「この怪人の身体では、大した怪我にはならないよ。むしろ、君が傷つかなくてよかった」
汐(しお)「わたしの誇りが傷ついたわよ!」
汐(しお)「トレゾール・モディは、製作者の強い想いによって、不思議な力が宿ったもの」
汐(しお)「主を守るのが、わたしの存在意義なんだから!」
フラム「それでも、君には危ない目にあってほしくない」
汐(しお)「でも・・・・・・」
警察官「こっちから声がしたぞ!」
警察官「まだ近くにいるかもしれない、探せ!」
フラム「ああ、警察に追いつかれたね。 早く退散しよう」
汐(しお)「そうね・・・・・・あ!」
汐(しお)「『不幸を呼ぶ指輪(バーグ)』! うっかり、まだ服に入れたままだった・・・・・・」
フラム「まさか、今襲われたのは・・・・・・」
汐(しお)「持ち主は、何らかの事件に巻きこまれていたみたいね」
フラム「その指輪は、早く返したほうがいいね・・・・・・」
汐(しお)「うん・・・・・・あ、いいこと思いついた」
汐(しお)「気絶しているこいつらの手に、指輪を握らせておけば・・・・・・よし」
汐(しお)「これで指輪は返されるし、こいつらは窃盗容疑で捕まるし、一石二鳥でしょ」
フラム「はあ、君を怒らせると怖いね・・・・・・」
汐(しお)「今さら気づいた?」
汐(しお)(フラムが人間に戻ったら、他のトレゾール・モディと一緒に、わたしもお払い箱にされちゃうかも)
汐(しお)(でも、それまでは・・・・・・)
汐(しお)「『コレクション・ド・フラム』として、フラムはわたしがしっかり守るからね!」

コメント

  • 怪盗モノでオバケが出てくるのは初めてでビックリしました!チートすぎ🤣

  • 華麗な盗みで惚れ惚れしました! 怪人の隣に小さな女の子が並んでいるの、いいですね! 最強の2人には今後も活躍してほしいところです!

  • 盗みの手段がプロフェッショナルで華麗さがありますねえ。なんだか窃盗団がちんけに感じてしまいます。汐も強い怪人だったとはびっくりですが、2人に怖いものなしですね!

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