00(脚本)
〇華やかな広場
ルーイ「だめだよ、レイ。やっぱり君と僕とでは身分が違い過ぎる・・・─」
レイノルド「そんな言葉は聞き飽きた。俺にはお前しかいない、どうして伝わらないんだ・・・!」
(ああ、ここは『愛園』のクライマックスシーンだ。王子様と庶民っていう王道の身分違いの恋の話・・・)
ルーイ「・・・僕と一緒にいたら、君がダメになってしまう。僕には何も無いんだ。君を守る後ろ盾も、地位も、何もかも」
ルーイ「そんな人間を、この国は受け入れない。君が良くても、君の周りがそれを受け入れない」
ルーイ「僕は、君をそんな状況にさせたくない。・・・・・・わかってよ」
レイノルド「・・・」
レイノルド「・・・なら、俺はこの地位を捨てよう」
ルーイ「レイ!?何を言ってるんだ!!そんなのダメに決まって」
レイノルド「ルーイ、お前しかいらないんだ」
ルーイ「──ッ」
レイノルド「お前がそばにいられないというなら、俺は全てを捨てる」
レイノルド「それ程までに、お前を愛しているんだ。だからどうか」
レイノルド「────俺から離れようとしないでくれ」
(キタキタキタ!冷酷無慈悲な『氷の貴公子』ことレイノルドの愛の告白シーン・・・!)
(結構無感情なキャラだったのに、このシーンだけすげえ畳み掛けてくるんだよな)
(この後ルーイも逃げるのをやめてくっつくんだけど、ここからもまた面白いんだよなー)
(・・・あれ、)
(俺、どうしてこのシーンを思い出しているんだっけ・・・)
〇オフィスのフロア
カタカタカタカタ・・・
22時を回ろうとしている室内にタイピングの音が響く。他に聞こえる音と言えばPCからのよくわからん起動音と、
窓の外から聞こえる車の音。それと何だか楽しそうな人の声
???「ふぅー・・・」
背伸びをした拍子に古くなった椅子のギィっというなんとも耳障りな音が俺1人しかいないデスクに響いた。
???「世間は華金だもんなぁ。そりゃ外から酔っ払いの声も聞こえてくるって訳だ」
あー、羨ましい。そんな俺の恨言は誰に拾われる訳でもなく虚しく響いた。
華の金曜日、明日は休日だというのに俺は絶賛残業中だ
???「まーでも、これでおしまいっと・・・」
カタカタカタ、タン
キーボードを叩く小気味のいい音が響いて、なんとかその日の業務を終えた。
???「よし、帰ろ。これも残業代とか出ねえんだろうなー・・・。ほんとクソだわ、クソ」
ぶつくさと恨言を言いながら、俺はさっさと家に帰るべく荷物を持って会社を後にした。
──────
〇繁華街の大通り
夜の22時を過ぎた頃、明日が休日ということもあり街は賑わい道路にも車が多く走っていた。
車の音と、すれ違う人々の賑やかな声をBGMに俺は1人とぼとぼと家への道を歩いていた。
???「疲れたわー。でも明日明後日休みだし、今日は帰ったらさっさと風呂入ってビール飲んで・・・」
???「はッ!!」
その時俺は思い出した。家に帰ったら”楽しみ”が待っているということを
???「(帰ったら『愛園』の新刊が待ってるんだった・・・!)」
『愛滴る花園〜ラヴ・フラワー〜』略して『愛園』は身分差の恋を描いたBL小説だ。
庶民と王子との身分差の恋、題材としてはありきたりだがキャラクターの丁寧な心理描写が非常に俺好みな作品で
今日は先日最終巻を出したばかりの『愛園』の番外編が家に届く予定なのだ。
???「こうしちゃいられねえ!早く帰ろ!」
テンションが上がった俺は早く家に帰るべく横断歩道を渡ろうと足を踏み出した。
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現実逃避ってある意味かえって来れる余地があるからいいのであって、その世界に転生してしまうということは身を置き換えるということなので、楽しさ半分不安半分ですね。せっかくだから、主人公には大好きな世界を楽しんでほしいです。
心の支えとも言えそうな大好きなゲーム世界への転生、、、なかなか複雑な心境になりそうですね。特に傍観者ポジションならいいのですが、ストーリーへの関わりを持ってしまうと……
みんな推しのために働いてると思うオタクです。笑
好きなゲームの中に転生してしまうって、自分の立ち位置も気になりますよね。
彼は推しに転生したわけではなさそうなんで、どうなるのかな?