クソゲーよ、世にはばかれ。

いぬごや

「エピソード1 クソゲーは唐突に」(脚本)

クソゲーよ、世にはばかれ。

いぬごや

今すぐ読む

クソゲーよ、世にはばかれ。
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇ストレートグレー
  それは、一人の夢見る青年の物語であった。
  彼の名前は曽根作。
  大学では芸術系の知識を勉強する傍らで
  クリエイターを目指した男だった。
  絵の勉強に励むかたわらで、
  クリエイターになりたいという思いを胸に、
  自分の中の物語を書きだすことに励む日々であった。
  彼は幼いころ、
  あの世界一に輝いた大人気ゲームをプレイして、自分の目の前のテレビの中で動くキャラクターに憧れた。
  テレビの向こうで奏でられる
  独特なリズムに、
  何よりドキドキする未知の世界に
  強いあこがれを抱いた。
  「いつか自分もこんなものを作ってみたい」

〇大学の広場
  そんな思いを抱いて、
  選んだのは芸術科であった。
  彼は偶然にも絵という形で
  世界を表現するのは苦手ではなかった。

〇説明会場(モニター無し)
  大学時代はパソコン研究会に入り、
  そこで初めて、
  ”プログラミング”
  というものに出会った。
  彼はそれがゲームを生み出すために
  必要な言語であると知ってから、
  とにかくそれにのめりこんだ。
  「ゲームが作りたい」
  「自分の中の世界をアウトプットしたい」
  「自分の名前をゲーム界に刻みたい」
  それが彼の抱いていたひたむきかつ、
  私からすれば、
  ある種の皮肉な思いでもあった。
  しかし。そんな私の思いとは反して。
  そんな彼の思いはまるで
  研ぎ澄まされた刃のようにまっすぐに、
  光り輝いていた。
  学べば学ぶほど、
  彼は自分の生み出したいものが
  生み出せると知った。

〇飛空戦艦

〇謁見の間

〇説明会場(モニター無し)
  最低限の単位以外は無視。
  寝ても覚めてもパソコンの前に向かって、
  カタカタとキーを叩く音が響き渡る。
  大学では、深夜も鍵を使って
  部屋に入り込んでパソコンを
  使い続けていたことから、
  ある種の怪奇現象とも噂されたそうな。

〇電脳空間
  彼はそんな熱意と努力のかいもあってか、
  大学のパソコン研究会で作成した
  ゲームで賞を受賞してしまったのだ。
  彼は熱中したものに対しては
  本当に真剣になれる男だったのだ。
  
  何より、周囲も同じ情熱を抱いた
  "子供たち"だった。
  その時のパソコン研究会の会長が
  曽根の所属していた会社の社長で、
  プロジェクトリーダーが曽根であったなら。
  きっと「ゼロ・ファンタジア」は
  生まれなかったのだろうーー。

〇オフィスビル
  そんな甲斐もあってか、
  大学を卒業した彼は
  当時の研究会の先輩にスカウトされる形で、
  ゲームの開発会社に入社した。
  グラフィック、プログラミング。
  2つのスキルを持つ彼を欲したのは
  小さな会社としては、
  必然的なことといえるだろう。
  彼は本当に才気あふれる、
  熱意のある若者であったと
  当時のゼロ・ファンタジア
  開発プロジェクト参加者も語っている。
  プログラミングの技術では
  仲間たちをけん引し、
  グラフィックも斬新なアイディアを
  提案しては、周囲を驚かせたとのことだ。
  限られた容量の世界の中で、
  曽根という男は「表現したい」と
  望まれたならば、
  想定以上の形で表現して見せたという。
  曽根は、プログラマーとして、
  そしてグラフィッカーやデザイナーとして、
  最高にデキる奴だったのだ。
  他作品は、よかった。
  アイディアの提供は惜しまず、
  とにかく先導を切って走る男だった。
  インタビューなどでも
  そう話題に上がっていた。

〇荒廃した街
  「ゼロ・ファンタジア」も唯一
  評価されている点が、
  説明書に記載された世界設定と
  キャラクターデザインだった。
  クソゲーあるある その1
  世界観やパッケージ、
  説明書などのキャラクターデザイン
  "だけは"妙に良い

〇オフィスビル
  そうして彼は評価されて、
  会社の中でも地位は上がっていった。
  多様なスキルにリーダーシップ、
  斬新なアイディア。
  プログラマー、グラフィック、
  その次に会社が曽根に期待したのは、
  言うまでもなく。
  ”クリエイター”としての才能、だった。
  チームのトップとして、
  一つの作品を作り上げる才能。

〇ストレートグレー
  ああ。
  どうして彼に”マネジメントスキル”や
  ”リスク管理能力”がないと、
  誰もこの時まで気づかなかったのだろうか。
  ゲームを作る能力と、
  ゲームを作るために”管理する”
  プロジェクトマネジメント能力は、
  全くもって異なる才能だ。
  この後、広がる
  "null"の世界のことを
  予測できる人物は未だなし――。
  *null プログラミング言語。
  変数の中身が空っぽなことを指す。
  エラーやバグの原因にもなる。
  次回
  「ゼロ・ファンタジア
   プロジェクトスタート」

成分キーワード

ページTOPへ