ゾンビはぜったい生き延びたい

石倉 晶

第五話 ゾンビはこの先も生き延びたい(脚本)

ゾンビはぜったい生き延びたい

石倉 晶

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〇荒廃したショッピングモールの中
大槻ロメロ「テメェをヤる前に・・・俺を引っ張りだしたんだ。名前だけ聞いといてやる」
ソイソース「・・・僕は、ソイソース」
大槻ロメロ「あ? ふざけてんのか?」
ソイソース「ち、違う! この名前は、今着てるこのTシャツに醤油を・・・」
大槻ロメロ「なっ・・・! お前、それ『ダイニング・オブ・ザ・デッド』の円盤についてる初回限定特典だと!?」
大槻ロメロ「ありえねー、まだそんな貴重なグッズが残ってたなんて・・・」
ソイソース「こ、これの価値がわかるの!?」
大槻ロメロ「当たり前だ、俺を誰だと思ってる。ゾンビ専門家の大槻ロメロだぞ!」
ソイソース「ま、まさか同志だったなんて・・・」
大槻ロメロ「・・・ふっ。お前とは違う形で出会いたかったぜ」
大槻ロメロ「だが・・・」
大槻ロメロ「悪いけど、死んでもらう」
ソイソース「それはできない。僕は、みんなとぜったい生き延びるんだ!」
  二人のゾンビマニア、ソイソースとロメロの戦いは、静かに幕を開けた。
  だが、戦う前から勝敗は明らかだった。
大槻ロメロ「おいおい、まさか策も無しに戦うってのか?」
大槻ロメロ「舐められたもんだなッ!」
ソイソース「うぐあぁ!」
  ゾンビの移動速度は人間の5分の1以下しかない。
  その明らかな速度の差に、ソイソースは一方的に翻弄され続けていた。
大槻ロメロ「おらおら、どうした? 大事なTシャツに穴が空いちまうぞ!」
  だがロメロは気付いていない。マニアの血が騒ぐせいか、無意識にTシャツへの銃撃を避けていることに。
  しかし、果敢にソイソースが飛び込むあまり、Tシャツに穴が空いてしまった。
大槻ロメロ「あぁ!! 初回限定Tシャツが!」
ソイソース「・・・・・・」
  その反応を見たソイソースは、そのTシャツを頭にかぶり、空いた穴からロメロを睨みつけた。
大槻ロメロ「ふ、ふんっ! レアグッズで弱点を守ったところで・・・お、俺は撃つぞ!」
ソイソース「あぁ、撃てよ」
大槻ロメロ「あぁ? テメェ、そのTシャツが大事じゃねぇのか!?」
ソイソース「大事だよ・・・大事だけど・・・」
  ソイソースは、大槻ロメロ目掛けて飛び込んでいった。
ソイソース「それより大事なものが、今の僕にはあるんだぁぁぁぁ!」
  飛び込んでくるソイソースを、ロメロは一心不乱に撃ち続ける。
  一方のソイソースは一歩たりとも引かず、傷つきながら突撃を続けた。
ソイソース「ウガアアアアァァァァッ!」
大槻ロメロ「ぐっ・・・」
  ソイソースの気迫に押されて、ロメロの銃撃が一瞬止む。
  ソイソースはその隙を見逃さなかった。
  がむしゃらにロメロへと襲い掛かり、その喉元へと食らいつく。
ソイソース「グゥウウウウ!」
大槻ロメロ「が、はぁぁっ・・・く、くそが・・・!!」
  ロメロの全身から力が抜けていき、そのまま膝から崩れ落ちていった。
  こうして、ゾンビマニア同士の戦いは幕を下ろした。
ソイソース「はぁ、はぁ・・・。僕、人間を食べた・・・。この僕が・・・」
幼女ゾンビ「わー! お兄ちゃんつよーい!」
ママゾンビ「ふふっ、やったわね」
じいじゾンビ「小僧もなかなかやりおるわい」
ソイソース「みんな・・・無事でよかった」
  仲間達がソイソースを褒めたたえる。そんな中、ステラは喋らないままモジモジとしており、いつもの快活さが無い。
ステラ「・・・おつ。やるじゃん」
ママゾンビ「あらあら。今日のステラちゃんは、いつもより素直じゃないみたいね」
ステラ「そ、そんなことないし! ふつーだし、ふつー! ガチふつー!」
じいじゾンビ「なら言うことがあるじゃろ」
ステラ「わ、わかってるよ・・・。その・・・えっと・・・」
ステラ「・・・ありがと。ウチらを守ってくれて」
ステラ「いつもより、その・・・カ、カッコよかったぞ」
ソイソース「ありがとう・・・。でも、これも全部、君のおかげなんだ」
ステラ「ウチの? どゆこと?」
ソイソース「僕は・・・ゾンビ狩りが怖くて、今まで一人も人間を襲ったことがないんだ」
ソイソース「人間を食べたことも・・・一度もない」
ステラ「それ、マ?」
ソイソース「うん。だから僕は、自分のことを本物のゾンビじゃないと思ってた・・・」
ソイソース「けど、君が僕の背中を押してくれたから、初めて人間を食べることができた。 初めて、本物のゾンビになれたんだ!」
ソイソース「ありがとう、君のおかげだ! ステラと出会えて、本当に良かったよ!」
  ソイソースはステラに向かって手を差し出した。
ステラ「ウ、ウチこそ・・・ソイソースと会えて・・・マジ良かったよ」
  いつも青白い顔を、ほんの少し赤らめながら、ステラは手を握り返そうとする。
大槻ロメロ「テメェ最高のゾンビだな!」
  だが、いきなり出てきたロメロの手が先にソイソースの手を握ってしまった。
ソイソース「え?」
ステラ「ちょ、なんであんた生きてんの!?」
大槻ロメロ「あぁ!? ゾンビに噛まれた人間はゾンビになる! 常識だろうが!」
ステラ「あ、そっか・・・」
ステラ「ってそうじゃねーし!」
大槻ロメロ「いやーまさか俺を越えるゾンビが現れるなんてな! 体が熱くなってきたぜ!」
大槻ロメロ「体温ねーけど!」

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コメント

  • 最後もすごくおもしろかったです。!

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