第1章 学園長からの試験(脚本)
〇寂れた村
ヴィオラ・コーディエ「とうさん? どこいくの?」
虹を探しに行く
母さんの病気が治るかもしれないんだ
ヴィオラ・コーディエ「あたしもいく!」
おまえはここで母さんを守ってくれ
父さんの代わりに、な
ヴィオラ・コーディエ「・・・ わかった・・・」
ヴィオラ、母さんを頼んだぞ
ヴィオラ・コーディエ「うん!」
〇ファンタジーの教室
バーバラ先生「女神イリデッセンスに反逆した天使は追放され、地底に封じられた」
バーバラ先生「堕天使が最後の力でしたことは? ヴィオラ、答えろ」
ミモザ・クラリティ「ヴィオラ様! 呼ばれてますよ・・・!」
バーバラがヴィオラに歩み寄る。
隣の席のミモザにつつかれてもヴィオラは目覚めない。
ヴィオラの頭上に拳が振り落とされた。
ヴィオラ・コーディエ「いだっ! ・・・あれ、先生?」
ヴィオラ・コーディエ(昔の夢か・・・ 父さんがいなくなったときの・・・)
バーバラ先生「よく眠れたようだな」
ヴィオラ・コーディエ「いやー・・・ 昨日の夜、剣の特訓してたから寝不足で」
バーバラ先生「結構なことだ だがここは魔法学園、本分は魔法なのだぞ」
バーバラ先生「ノエル 代わりに答えなさい」
ノエル・エンジェライト「・・・はい 地上と神界を結ぶ<虹のきざはし>の破壊です」
バーバラ先生「その通り」
バーバラ先生「女神の恩寵を失った地上は衰退しつつある このままでは世界は滅びるだろう」
バーバラ先生「女神が地上を去る際に遺した3つの神器を探し出し、<虹のきざはし>を再び架けることが魔道士の宿命だ」
バーバラ先生「見習いといえど魔道士は魔道士 きみたちも忘れないように」
〇おしゃれな食堂
ヴィオラ・コーディエ「はー まだ頭が痛い」
ヴィオラ・コーディエ「先生って魔道士より武道家のほうが向いてたりしないかな?」
ミモザ・クラリティ「ヴィオラ様ったら・・・」
ミモザ・クラリティ「ヴィオラ様はお父様を捜すために魔道士を目指しているのですよね」
ヴィオラ・コーディエ「ああ 父さんは虹を探しに行くって言っていなくなったんだ」
ヴィオラ・コーディエ「だから魔道士になればきっと会えるって・・・」
レオナ・フォン・プレーン「無駄ですわ」
ミモザ・クラリティ「レオナ様・・・」
ヴィオラ・コーディエ「どういうこと?」
レオナ・フォン・プレーン「神の遺物は学園に所属しない一介の魔道士に探し出せる代物ではありません」
レオナ・フォン・プレーン「とっくの昔に野垂れ死にしているでしょう」
レオナ・フォン・プレーン「おまえの向こう見ずは父上譲りということね」
ミモザ・クラリティ「レオナ様! そのおっしゃりようはあんまりです!」
レオナ・フォン・プレーン「ミモザ、おまえもですよ」
ミモザ・クラリティ「え?」
レオナ・フォン・プレーン「スペサルト姓を名乗るのを許されていないおまえは、ブラッドショット王国の王妃にふさわしくない」
ミモザ・クラリティ「・・・!」
レオナ・フォン・プレーン「卑しい妾の子が 身の程を知るがいい」
振り上げたヴィオラの拳が、紫色の光を帯びる。
──雷精クロッカスの魔力だ。
レオナ・フォン・プレーン「殴るのですか? 常日頃から喧嘩沙汰ばかり起こしているおまえは、今度こそ停学処分でしょうね」
ヴィオラ・コーディエ「だからなに!? このまま黙ってられ・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「失礼」
レオナ・フォン・プレーン「シグバート王子!?」
あいだに割って入ったシグバートの手のひらが、ヴィオラの拳を受け止めていた。
魔法が発動されなかったために、魔力が拡散する。
ヴィオラ・コーディエ「シグバート! なんで止めんだよ!?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ヴィオラ バーバラ先生がお呼びだ」
ヴィオラ・コーディエ「けど!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「早く行け また課題を増やされたいのか」
ミモザ・クラリティ「ヴィオラ様・・・ わたしは平気ですから」
ヴィオラ・コーディエ「・・・」
ヴィオラ・コーディエ「・・・場所は?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「学園長室だ」
ヴィオラ・コーディエ「学園長室!? 行ったことないけど」
シグバート・フォン・ブラッドショット「5階の突き当たりだ 早く行け」
ヴィオラ・コーディエ「・・・わかったよ」
ヴィオラ・コーディエ「ミモザ また後でね」
ミモザ・クラリティ「は、はい・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「レオナ王女 わが婚約者を貶めるのは、オレを貶めることと同じだ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「プレーン王家はブラッドショット王家との関係悪化を望んでいるのか?」
レオナ・フォン・プレーン「まさか、そのような!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・」
レオナ・フォン・プレーン「・・・」
レオナ・フォン・プレーン「申し訳ありませんでした 言葉が過ぎましたわ」
ミモザ・クラリティ「いえ・・・」
レオナ・フォン・プレーン「・・・失礼いたします」
ミモザ・クラリティ「シグバート様 ヴィオラ様は悪くないのです わたしが・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「オレももう行く 学園長に呼ばれているからな」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ではな、ミモザ」
ミモザ・クラリティ「シグバート様・・・」
〇豪華な部屋
コンコン
ヴィオラ・コーディエ「失礼しまーす」
キープレート学園長「来ましたね ヴィオラくん」
バーバラ先生「呼び出しの心当たりはあるか?」
ヴィオラ・コーディエ「えっと 正直ありすぎます」
ヴィオラ・コーディエ「けどなんで学園長室なんですか?」
ヴィオラ・コーディエ(まさか、マジで停学?)
バーバラ先生「学園長 本当に彼女で良いのですか?」
キープレート学園長「わたしの観察眼は確かです」
バーバラ先生「学園長がそうおっしゃるのでしたら」
ヴィオラ・コーディエ「・・・?」
コンコンコン
シグバート・フォン・ブラッドショット「失礼いたします」
ヴィオラ・コーディエ「シグバート!?」
キープレート学園長「シグバートくんも来ましたね では本題に入りましょう」
キープレート学園長「単刀直入に言いましょう きみたちに特別試験の受験資格を与えます」
ヴィオラ・コーディエ「特別試験って・・・ 学園長が見込んだ優秀な学生に、神の遺物を探させるやつ?」
キープレート学園長「ええ 受験資格を得たのは、きみたちを含め3名です」
ヴィオラ・コーディエ「シグバートはわかるけど あたしも?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ヴィオラが特別試験を受けるに値すると 学園長はそうお考えなのですか」
キープレート学園長「ええ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「わたしはそうは思いません」
シグバート・フォン・ブラッドショット「成績は中の下、授業態度も悪い 取り柄は剣術と少々の雷精術だけ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「それだけならまだしも 喧嘩沙汰が絶えないこの女が・・・」
ヴィオラ・コーディエ「おい・・・」
キープレート学園長「学力や魔力も大切ですが 神の遺物を見つけるためにもっと大切なものがあります」
キープレート学園長「ヴィオラくんはそれを持っている わたしはそう思います」
ヴィオラ・コーディエ「それって?」
キープレート学園長「試験を受ければわかりますよ」
キープレート学園長「ただし試験を受けるかどうかはきみたち自身が決めなさい 試験は危険を伴いますから」
シグバート・フォン・ブラッドショット「考えるまでもありません ブラッドショットの王子として そして魔道士を目指す者として」
シグバート・フォン・ブラッドショット「学園長 わたしは試験に挑みます」
ヴィオラ・コーディエ「あたしも!」
ヴィオラ・コーディエ「学園長があたしを信じてくれたんなら あたしはそれに応えたい」
キープレート学園長「きみたちならそう言ってくれると信じていました」
キープレート学園長「神の遺物を解明し、世界を滅びから救うことがわたしの願い 魔道士になったのもそのためです」
キープレート学園長「ですがわたしももう年です 夢を追うより、若いきみたちに夢を託したい」
ヴィオラ・コーディエ(学園長って何歳なんだろ・・・)
キープレート学園長「出発は5日後 それまでに旅立ちの準備をなさい」
〇華やかな裏庭
ヴィオラ・コーディエ「そういやもう1人って誰なんだろ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ノエルだな」
ヴィオラ・コーディエ「ノエル?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ノエルは学園長をも凌ぐ魔力の持ち主だと言われている 座学もオレには及ばないが優秀だ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ノエルを差し置いておまえが選ばれることはありえない」
ヴィオラ・コーディエ「おまえさ ミモザにもそういうこと言ってんの?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「そんなわけないだろう」
シグバート・フォン・ブラッドショット「それよりも、だ 3つの神器の名前くらいは覚えているだろうな」
ヴィオラ・コーディエ「え? プリズムソードと、えっと・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・」
ヴィオラ・コーディエ「あ! ノエルも特別試験受けるんだろ?」
ノエル・エンジェライト「・・・はい」
ヴィオラ・コーディエ「あたしたちも試験受けるんだ よろしく!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「そういうことだ よろしく頼む」
ノエル・エンジェライト「そうでしたか ではよろしくお願いします」
ヴィオラ・コーディエ「あ! ちょい待って」
ノエル・エンジェライト「・・・はい」
ヴィオラ・コーディエ「神の遺物ってプリズムソードとあと2つ、なんだっけ?」
ノエル・エンジェライト「・・・ アポロオーラとプルウィルストーンです」
ヴィオラ・コーディエ「そう、それだ! ありがとね」
ノエル・エンジェライト「いえ・・・ では、ぼくはこれで」
ヴィオラ・コーディエ「プリズムソード、アポロオーラ、プルウィルストーン! これが3つの神器だ!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「第一図書館へ行くぞ」
ヴィオラ・コーディエ「え?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「なにも知らないまま挑んで成功するほど特別試験は甘くない」
シグバート・フォン・ブラッドショット「学園が設立されて50年 いまだ誰も目的を達成していないのだからな」
ヴィオラ・コーディエ「それはそうだけどさ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「出発するまでの5日間 その空っぽの頭に中身を詰め込んでやろう 光栄に思え」
ヴィオラ・コーディエ「えーっ!?」
ヴィオラを第一図書館へ引きずっていくシグバートの姿は、多くの学生に目撃された・・・。
〇空
──5日後
〇ファンタジーの学園
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・」
ヴィオラ・コーディエ「おはよー!」
ノエル・エンジェライト「おはようございます」
シグバート・フォン・ブラッドショット「2分43秒遅い」
ヴィオラ・コーディエ「しょうがないじゃん 寮を出ようとしたらさぁ」
ミモザ・クラリティ「・・・シグバート様」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ミモザ、なぜここに? 見送りは不要だと言ったはずだぞ」
ミモザ・クラリティ「実は・・・」
ノエル・エンジェライト「婚約者としてシグバートさんを支えろ お父さんにそう言われたのでしょう」
ヴィオラ・コーディエ「なんでわかったんだ?」
ノエル・エンジェライト「スペサルト家からの休学要請を受理したと 学園長が昨日おっしゃっていましたから」
シグバート・フォン・ブラッドショット「オレは聞いていないぞ」
ミモザ・クラリティ「申し訳ありません シグバート様・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「いや ミモザに言ったわけではない」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ナギット様はなにを考えておられるのだ」
ヴィオラ・コーディエ「ま、いいじゃん! ミモザも一緒に行こうよ」
ヴィオラ・コーディエ「学園長がいいって言ったんだろ? 残っても父親になんか言われるだろうし」
ヴィオラ・コーディエ「それに、ミモザがいてくれれば あたしは嬉しい!」
ミモザ・クラリティ「ヴィオラ様・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「確かにヴィオラの言うとおりだ ミモザ、オレたちと来ると良い」
ノエル・エンジェライト「ぼくもそれでかまいません」
ミモザ・クラリティ「皆様 ありがとうございます」
ヴィオラ・コーディエ「じゃ、しゅっぱーつ!」
〇豪華な部屋
キープレート学園長「・・・旅立ったようだな」
キープレート学園長「ヴィオラ、シグバート、ノエル 彼らはきっと神の遺物を見つけるだろう」
キープレート学園長「これでようやく・・・」
悲しい過去を持ちながらも、天真爛漫なヴィオラが可愛かったです!
個性溢れる3人の旅、これからどうなるのでしょうか?
学園長の意味深なセリフも……続きが楽しみです!
キャラクターが魅力的かつ、謎が深まるストーリーに引き込まれました。一体どういう展開になるのか、続きが楽しみです!
重い話のようですが、ヴィオラさんの明るさがとてもかわいくて救われます。
学園長が考えている事ってなんなんでしょうね?
謎が深まる感じです。