最終話 強欲ちゃん(脚本)
〇女の子の一人部屋
ふと、思い出すたび、最悪な気持ちになる
私「・・・」
自分は何者でもない
語れるような生い立ちも、語りたいメッセージもない
平凡な人生を歩んできた、平凡な人間
そんな当たり前の事実を思い出すたび、私は現実を忘れようと空想の世界に入り浸る
〇川沿いの公園
空想の世界なら何者にもなれる
ちょっと変わった設定を加えることで、個性的なキャラクターができあがる
〇車内
尖った思想やユニークな発想を持たせられる
歪だけど、どこか不思議な人間的魅力を加えられる
〇ホストクラブ
出会いや葛藤を演出できる
私の砂漠のような心に感情という名の潤いを与えてくれる
一人一人の私が、様々な感情に生きて、独特な人生観を繰り広げている
〇女の子の部屋
そんな、私の一人舞台
独りよがりな人形劇
その幕は開かれたと同時に閉じてしまう
別の誰かになれても、その先──
〇女の子の一人部屋
人生というものが想像できないから
過去は作れても、未来は作れないから
私という生き物に、ストーリー性なんて存在しないから
平凡な私は平凡な人生しか知らないから
私「だから・・・」
私「私は・・・」
〇テーブル席
村井悠太「平凡平凡うるせーな」
村井悠太「最近の女子は平凡アピールが流行りなのかあ?」
天宮理人「女子はすーぐキャラ作るもんねー」
天宮理人「天然ちゃんみたいに平凡ちゃん的な?」
村井悠太「確かにお前って陰キャとか陽キャとかすぐキャラに例えるもんな」
〇ケーキ屋
加賀美莉奈「もー。すぐそうやって卑屈になる」
加賀美莉奈「キャラが濃いとか薄いとかそんなのどうでもよくない?」
山根翡翠「そうそう! 十人十色って言うしね!」
山根翡翠「○○のそういう謙虚なところも一つの個性じゃん?」
加賀美莉奈「それな」
〇レトロ喫茶
小鳥遊美沙「○○って、私たちのことよく見てるよね」
・・・そうかな?
小鳥遊美沙「うん。○○と話してると、自分の知らない自分を覗かれてる気分」
・・・ごめんね、気持ち悪いよね
小鳥遊美沙「そんなことないよ。私が相談した時も、まるで自分の人生のように一緒に考えてくれたし・・・」
小鳥遊美沙「そういうとこ、好きだよ」
小鳥遊美沙「・・・だから、自分には何もないなんて思わないで」
小鳥遊美沙「私たちがいることを忘れないで・・・」
小鳥遊美沙「もっと・・・」
〇女の子の一人部屋
私「「自分自身を見てあげて」か・・・」
私「私なんて何もないのに。みんなのように面白いエピソードもないし、誰かに話したい悩みもない」
私「何もないんだ、私には」
何もない。だから欲してしまうのかもしれない
「何か」を。可もなく不可もない私に意味を与えてくれる属性、特性、キャラクター性を・・・
私「私は・・・何者かになりたいんだ」
私「だって、それが私の──」
たった一つの、欲望だから・・・
〇ライブハウスのステージ
私「いぇーい!」
私「強欲ちゃんの単独ライブに来てくれてありがと〜!」
私「みんな〜愛してるよ〜!」
私「さて、さっそくですが聴いてください!」
私「私の新曲・・・」
私「『拗らせメンヘラアドベンチャー』」
〇けばけばしい部屋
おういぇい! 私は怠惰な子!
何もしたくない 何かに縋っていたい
悪いことだと分かっていても
刹那の色欲に溺れていたい!
〇ホストクラブ
おーらい! 私は傲慢だから!
何より自分を優先したい!
暴食だって言われても
楽しいを全部独り占めしたい!
〇渋谷のスクランブル交差点
べいびー! 私は嫉妬しちゃう!
ないものねだりが止まらない!
何で? どうして? 意味分からないよ!
この気持ちはきっと 憤怒かな?
〇ライブハウスのステージ
私「罪も罰も 全部背負いたいよ!」
私「だって 十字架は素敵でしょ?」
私「たとえ虚飾だってかまわない」
私「憂鬱さえも 身に付けたい!」
私「怠惰に色欲 傲慢 暴食」
私「嫉妬に憤怒 全部欲しい!」
私「全部集めて 願いを叶えたい!」
私「だって私は・・・強欲だから!」
〇ファミリーレストランの店内
──思い出した
私は、私だった
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最後にみんなあつまってデスゲームすんのかと思いました。
良かった〜
色欲くんと強欲ちゃんが好きです。戸羽様にしか書けない話だと思います。最高でした!
完結お疲れ様です!
7つの大罪を扱った作品は世の中に数多ありますが、かなり斬新な読み味でした!