3.stalk_1(脚本)
〇教室
翌日
綾樫高等学校
カイのクラス
神宮 開 (ジングウ カイ)(よし、もう放課後だ。 入学したばっかりだからだいぶ早いな。)
神宮 開 (ジングウ カイ)(今日は”あの日”だから、あそこへ寄って から帰ろう。)
カイが立ちあがろうとしたとき勢いよく扉が開き、男子生徒の声が響き渡った。
問間 覚 (トイマ サトル)「神宮開くん!!」
神宮 開 (ジングウ カイ)「うわ、お、俺!?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「あ、えーと、昨日の。」
問間 覚 (トイマ サトル)「サトルです。よかった、まだいた。 カイくん、この後時間大丈夫ですか?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「えと、すみません、今日は用事あって……。」
問間 覚 (トイマ サトル)「それは昨日の話に関係することですか?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「え、なんで……。」
問間 覚 (トイマ サトル)「僕も行きます。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「え!?なんで??」
問間 覚 (トイマ サトル)「お悩み相談部として当然のことです。きみの悩みは僕の悩みも同然。 さあ、行きましょうか。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「いや、そんな、そこまで気を使わなくて 大丈夫っていうか……。 あっ、そう、ちょっと遠いし遅くなるかも しれないんで!」
問間 覚 (トイマ サトル)「遠いんですね、では急ぎましょう。」
サトルはカイの手を引っ張り廊下へと連れ出した。
そのままズンズン歩いていく。
クラスや廊下の生徒の視線を感じつつ、
カイは引き続き断る口実を探していた。
神宮 開 (ジングウ カイ)(どうしよう、今日は母さんがいなくなった日だし、ひとりでゆっくり森を探そうと 思ってたのに。)
神宮 開 (ジングウ カイ)(この人森の中まで付いてくる気か? 高校生になったし、今まで行ったことない奥の方まで行こうと思ってたんだけど……。)
問間 覚 (トイマ サトル)「木霊ノ森ですか。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「えっ。」
問間 覚 (トイマ サトル)「今日の用事って、木霊ノ森ですか? 森へ行くこと自体は構いませんが、暗くなる前には引き上げた方がいいですよ。」
問間 覚 (トイマ サトル)「どこだって暗くなったら危ないですし、 ましてあそこは木霊ノ森。きみまで帰って 来れなくなるかもしれません。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「は、はあ……。 相変わらずすごいですね。本当に心の中を全部読まれてるみたいだ。」
問間 覚 (トイマ サトル)「……いえ、それほどでも。」
神宮 開 (ジングウ カイ)(森へ行くってもうバレてるなら、別にいいか。むしろふたりで探した方が効率いいし、なにか見つけてくれるかも。)
神宮 開 (ジングウ カイ)(ていうか早く手離してくれないかな。)
パッ
神宮 開 (ジングウ カイ)「うわ!? ちょ、突然手離さないでくださいよ!」
問間 覚 (トイマ サトル)「すみません、イヤそうだったので。僕もこの年で他人と手を繋ぐのイヤだったし。」
神宮 開 (ジングウ カイ)(じゃあ始めからするなよ!?)
神宮 開 (ジングウ カイ)(この人たまにイラッとすること言うな〜。 ジンゴ先輩がいたら和ませてくれるのかも しれないけど。)
神宮 開 (ジングウ カイ)(いや先輩だしガマンガマン。)
神宮 開 (ジングウ カイ)「あれ、そういえばジンゴ先輩は一緒じゃないんですか? 委員会ですか?」
問間 覚 (トイマ サトル)「いえ、今日は休みです。体調不良で。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「あっそうなんですね。 昨日は元気そうだったのに。」
問間 覚 (トイマ サトル)「……ジンゴさんはちょいちょい体調崩して欠席するので。そう珍しいことではないですよ。」
問間 覚 (トイマ サトル)「実はきみのことも、今朝ジンゴさんに頼まれたんです。」
〇男の子の一人部屋
──回想──
今日の朝
サトルの部屋
問間 覚 (トイマ サトル)(よし、今日もいつも通り。)
問間 覚 (トイマ サトル)(今日から授業始まるし、少し予習してから行こう。)
PIPIPIPIPI……
問間 覚 (トイマ サトル)(あれ、電話。 ──ジンゴさんからだ。)
問間 覚 (トイマ サトル)(どうしたんだろう、こんな朝早くから連絡くるなんて。珍しいな。)
問間 覚 (トイマ サトル)「はい、もしもし。おはようございます。」
「サトルか、ワリぃ、昨日の夜電話したかったんだが、反動ヤバすぎて……。ぉぇ」
問間 覚 (トイマ サトル)「ジンゴさん、”能力”使ったんですか!? なんで、いや、なにが”視えた”んです!?」
「昨日の新入生をな、ちょっと。なんと
なく気になったから”視て”みたんだが、
あいつ、やっべーぞ」
「放課後すぐにあいつのとこ行ってくれ。放っておくとヤバいことになる。この反動の感じだと近日中になにか起こる」
「俺も、行けたら行くから……。ゥッゲエェェェェ……」
問間 覚 (トイマ サトル)「いや休んでください!! 新入生の方は僕がなんとかしますから!」
「ワリ、任せた……。頼んだぜ」
問間 覚 (トイマ サトル)「……やっぱり、すぐ学校行かなくちゃ。」
〇電車の座席
現在
木霊ノ森公園前駅行き
電車内
神宮 開 (ジングウ カイ)「…………。」
問間 覚 (トイマ サトル)「…………。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「………………。」
問間 覚 (トイマ サトル)「………………。」
神宮 開 (ジングウ カイ)(き、気まずい!)
神宮 開 (ジングウ カイ)(先輩全然喋らないじゃん! 木霊ノ森まで まだまだあるのに、ずっとこの沈黙はきつい! とりあえず趣味とか聞くか。)
神宮 開 (ジングウ カイ)「……先輩、趣味とかって」
問間 覚 (トイマ サトル)「カイくん。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「あっハイ!!」
問間 覚 (トイマ サトル)「言える範囲で、でいいんですが……昨日の話、もう少し聞かせてもらえませんか?」
問間 覚 (トイマ サトル)「特にお母さんとストーカーの関係とか。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「母さんとストーカーの関係……。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「ストーカーの川島は、もともと父さんと 同じ職場だったそうです。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「結婚式とか会社の集まりで母さんを見て、それで徐々に粘着するようになったって。母さんと直接話したことはほぼないらしいです。」
問間 覚 (トイマ サトル)「お父さんのご職業は?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「銀行員でした。引っ越しを機に退職して、今は投資家です。」
問間 覚 (トイマ サトル)「投資家。へえ、珍しいですね。投資家のことはよく知らないですが……日中はずっと家にいるんですか?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「いや全然。講演とか他所へのアドバイスとかで、しょっちゅう出かけてます。さすがに母さんがいた頃はもっと家にいただろうけど。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「じいちゃんばあちゃんはとっくに死んだし、なんかもうほぼ一人暮らしですよ。 生活費はくれるからお金には困ってないけど。」
問間 覚 (トイマ サトル)「なかなか大変ですね。ご飯とかどうしてるんですか?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「基本自炊です。小さい頃からずっと俺が 作ってたんで、家庭料理ならひと通り作れますよ。」
問間 覚 (トイマ サトル)「それはすごい。僕が料理するのなんて家庭科の授業くらいですよ。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「たしかにトイマ先輩、料理とかしなさそうな雰囲気ですよね。」
問間 覚 (トイマ サトル)「サトルでいいです。 基本誰もいないならみんなで泊まったり できそうですね。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「いいですよ、全然。今までもしょっちゅう 友達来てたし、サトルもぜひ!」
問間 覚 (トイマ サトル)「サトルでいいとは言いましたが「先輩」はつけてください僕はきみの友達ではありません。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「アッ、スミマセン……。」
神宮 開 (ジングウ カイ)(そんな怒んなくても。)
問間 覚 (トイマ サトル)「話を戻しますが……。きみのお父さんとお母さんの馴れ初めなんかは、聞いていますか?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「はあ、馴れ初め……。2人は大学が同じで、サークルで出会ったらしいですよ? それ以上は知らないけど。」
問間 覚 (トイマ サトル)「なにサークルですか?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「オカルト研究会です。」
問間 覚 (トイマ サトル)「オカルト研究会……。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「あ、それでですね、俺も高校で作ろうと 思うんですよ!オカルト研究会!」
問間 覚 (トイマ サトル)「それは勝手にどうぞ。 ……しかし、きみの妖怪好きはご両親から だったんですね。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「あはは、そうかもですね。 小さい頃からいろんな妖怪伝説聞かされたし、そういう本もウチにいっぱいありますよ。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「そうそう、なんでも母さんの家には代々 妖怪伝説が伝わってて、それで母さんも オカルト研究会に入ったって。」
問間 覚 (トイマ サトル)「へえ、どんな伝説なんですか?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「先輩、妖怪は信じてないんじゃなかったん ですか? でも内容までは……うーん、すぐには思い出せないですね。」
問間 覚 (トイマ サトル)「そうですか……。妖怪はいませんが、その伝説はなにかヒントになるかもしれません。思い出したら教えてください。」
問間 覚 (トイマ サトル)「──そういえば、お母さんの名前はなんと いうんです?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「ああ、母さんの名前はサヨコです。小さい夜の子どもで小夜子。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「んん〜〜、妖怪伝説、どんなだったかな。昔はよく聞いてたんだけど……。」
問間 覚 (トイマ サトル)「まあ10年以上前のことですからね。思い出せなくても仕方ないですよ。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「あ、そうだ、それとは関係ないけど、父さんが昔よく言ってたんですよ。最近は言わなくなっちゃったけど。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「母さんは幸運の女神だ、だからきっと帰ってくる、って。」
三人のキャラクターが立っていて、会話が面白いです!
主人公の母親が失踪した、というメインストーリーの謎も早い段階で提示されており、興味をひかれます。
キャラクターの表示を一人にしてセリフを際立たせたりと、機能の使い方もお上手ですね!
この先、ややダークな雰囲気も出て来そうで、期待して続き待ってます!
キャラが非常に魅力的で、彼らの掛け合いの会話が楽しく、ストーリーも引きがあり面白いです。立ち絵やアイテムの表示など様々な演出により、物語がより印象深いものになっていて、それも読んでいて楽しかったです!