出雲の神迎祭(脚本)
〇雲の上
〇神社の本殿
〇神社の本殿
旧暦の十月。出雲大社の摂社に神様たちがお集りになりました。
〇幻想
オオクニヌシノ神を中心に、諏訪の神や宗像の神。
日本各地を守護されている産土の神様たちが、ひさしぶりの歓談を楽しんでおられます。
〇幻想2
そのようすを、アマテラス様が母のようなまなざしで見守っておられました。
〇幻想
オオクニヌシノ神は、鳥の声を合図に、ようやく会議をはじめることにしました。
大国主大神「さてさて、雑談、和歌はそのくらいにして本題にはいりましょう」
大国主大神「昨今の日本はたいへん乱れて騒がしくなり、人々の悲痛なる声が絶えません」
大国主大神「来年にむけて、我々もなにか考えなくてはいけないと思うのですが」
鹿島の神「おっしゃるとおりなのだが、人々が神をないがしろにして、神社は荒れほうだい」
鹿島の神「禍津神や邪霊どもがたむろしておる」
鹿島の神「神たちが降りてくることができなくなり、ほうぼうの社から離れているのはオオクニヌシノ神もご承知であろう!!」
鹿島の神が眉間に皺をよせて、うなるように言った。
大国主大神「はい、承知しています」
鹿島の神「たまの参拝にきても、十円玉ひとつで、一億円の宝くじを当選させたうえ、絶世の美人と結婚させろなどと願う不届き者もおったわ」
鹿島の神「願いをかなえてもお礼にも来ぬ。わしだけではなく、どの神もあきれておるわい」
じっと聞いていた塩竈の神が、
塩竃の神「まあまあ、鹿島の神。そなたの気持ちもわかる。しかし、なかには世のため人のために尽くしている者もおおぜいおるぞ」
塩竃の神「ここはひとつ、みなでいい知恵をだして、明るい新年を迎えようではないか、のお、オオクニヌシノ神よ」
と、子をあやすように言った。
大国主大神「魂を成長させるために、禍津神たちがおるのだが、このままでは日本は立ち直れないかもしれない」
大国主大神「さて、神様たちよ。なにかよいお知恵はないだろうか?」
〇幻想2
〇幻想2
しばらく重い沈黙があったが、やがて神様たちの周囲を、アマテラス様が放たれる、オ-ロラのように麗しい光が包みはじめた。
天照大御神「わらわがスサノオのことで心が伏して、世界が暗くなったことがあったのう。今の人々もおなじなのであろう」
天照大御神「さまざまなことで心が病んでおる。そのために生きる力もわいてこないのじゃ」
天照大御神「わらわのときのように、アメノウズメノ命と弁財天、にぎやかな神たちにお働きになっていただいてはどうじゃ」
〇幻想
大国主大神「ああ、ありがたき慈悲深きお言葉。眷属も総動員して、人々の心の岩戸をひらくための祭りを、元日に高天原で催しましょう」
〇街の全景
〇街の全景
元旦の夜明け頃。空から長鳴鳥の鳴き声が聞こえてきた。
祓いたまへ
清めたまえ
祓いたまへ
清めたまえ
〇洞窟の深部
祓戸の神が清廉な風雨で地を祓い清めたあと、日の光がいつになく燦々と地上を照らし、禍津神や邪霊たちは地下に隠れ潜んだ。
〇街の全景
それからまもなく芸術、芸能が盛んになり、テレビや舞台で喜劇が数多く上演された。
漫才ブ-ムも復活し、老いも若きも踊りにあけくれ、景気もしだいに上向いていった。
〇雲の上
地上をしばらくながめておられたオオクニヌシノ神が、安堵のため息をひとつつき、
大国主大神「これがホントの、心の岩戸があけましておめでとうだな」
と、言うと、アメノウズメが、
アマノウズメ「座布団をありったけ!」
と、茶化す。どっと神様たちが大笑い。神々の世界にもおめでたいお正月がやってきたようです。
〇祈祷場
FIN
日本には様々な神様がいますよね。
地方地域、あらゆるところに小さいものから大きなものまで。
言い伝えられるということは、やはり何かしらはあるんだろうなぁとは思いますが、確かにお礼をしてない気がしますので、気をつけようと思います…。
日本神話を下敷きにしていて、とても入りやすいですね。神々⇔人間の相互交流が無くなったことによる社会の乱れ、とも現代社会は見えますよね。無茶な神頼みと成就後の報告なし、これは確かに嘆かわしいです。
世の憂いを人間だけでなく、神も天空から憂いていられる。そして、ひそかに会議をしていられる…
良い世の中にするには?と、案を出していてくださる。