断罪の塔~罪人の少女~(脚本)
〇地下室
ラナ「──神は四つお持ちだった。人は二つを持つ。四つを持つ人はいない。其を望むのは──」
罪。施錠された薄暗い居室で少女はつぶやく。
腕には枷。格子のはまった窓からは虚空しか見えない。
少女は幽閉されていた。
少女は手の甲を見る。掻きむしった傷には血がにじんでいるが、そこにあるあざのような印は消えてはいない。
━━片翼の印。
それこそが彼女の罪の証。
無感情に少女が窓の外に目を向けたそのときだった。
ラナ「!?」
〇宇宙空間
ヒュルルッ。
格子にカギのついたひもが巻きついた。
ガキン!
次の瞬間、格子は大きな音をたててはずれた。
少女が目を丸くしている間に、窓の外にまたひもが飛んでいくのが見えた。
カキン!上の方で音がすると、地上から声がきこえた。
シャン「離れてて~!」
ラナ「!?」
ほんの瞬きの間に、窓から青年が現れた。月あかりに笑みが浮かぶ。
シャン「かっわいい~! 小さいのね~? 名前は? 私、シャン! ほんとはシャンイズールなんだけど~かわいくないでしょ?だっ!?」
ドシャッ!
青年・・・シャンは少女の目の前につんのめって倒れる。そしてその上に、女性がのっていた。
〇宇宙空間
キィ「私はキィという。この馬鹿が無礼をしなかったか?」
シャン「ちょっとお。ひどくない? というかまずどいてくれない?美青年を踏みつけすぎよぉ・・・」
ラナ「・・・・・・」
女言葉の青年と、その背から足を(ゆっくりと)どけようとしている女性を、少女はただみることしかできなかった。
シャン「ほらー。びっくりするだろうからほぐしてあげようとしてるのにキィがそんなお堅いから固まってるじゃない? ねえ?」
キィ「お前が考えなしに飛び込むからだろう?ゆっくり登って、まず窓の外から様子をうかがうとかいろいろ方法はあったはずだ!」
シャン「だってドロボウじゃないしい・・・」
キィ「ああ・・・もういい。 それで君、逃げる気はあるか?」
ラナ「に、げる・・・?」
〇カラフルな宇宙空間
思いもよらない言葉に少女は戸惑う。
ここは断罪の塔。罪を背負う少女は、裁かれる日までここからでられないはずだった。
キィ「君の自由だよ。でも我々と逃げなかった場合の君の断罪の日は、明日だ。 我々は、それを知っている」
シャン「そうよ。だから、逃げるなら今」
少女はへらっと笑うシャンと、仏頂面でたたずむキィを交互にみて、それから枷をみた。
シャン「あっ、枷のことは考えなくていいよ~。大事なのはアナタのキモチ!ただ、この塔にいた他のコたちがどうなったか・・・しってる?」
ラナ「・・・・・・・・・しりません。神官様が連れて行って・・・もうそれも何年も前であまり覚えてない。私はずっと・・・ひとりで」
シャンとキィは顔を見合わせた。
キィが少女の頭にぽん、と手を置く。
キィ「よく耐えたな。でもこのままここにいたら、 それも意味がなくなってしまう。私たちと一緒にこないか?」
シャン「ていうか~、もう強制的に連れてくべきかも?」
口を開きかけたキィと少女の耳に、ダダダダ、とかすかな足音が聞こえてきた。
〇地球
シャン「意外と早いわ・・・」
キィ「感心してる場合か!」
シャン「そーね!じゃっ下で~♪」
いうと、シャンはひらりと窓の外に飛び出した。
あいつもう本当に嫌だ・・・とぶつぶついいながら、キィはスラリと細身の剣を抜いた。階下からの足音はだんだん迫ってきている。
〇地球
怒号や武器のガチャガチャいう音も迫っていた。
少女は震えだしながら、頭の中で必死に考えていた。(にげて、どうするの?
)
(でも、明日、私は断罪される)
何年も前、連れていかれた別の少女。
『──生きているのが、罪なのだ』
神官様のことば。
そのことばの意味。
(生きているのが罪だとしても・・・)
(まだ、しにたくない)
少女の瞳に強い光がともった。
ラナ「お願いします。連れて行ってください」
キィは微笑むと、剣先でキィの枷の鎖を壊した。剣をしまうと、ひょいと少女を抱えて、窓をくぐる。とほぼ同時に、兵が現れた。
―――じゃあな。
兵を尻目に、キィと少女は虚空へと消えた。
少女はギュッと目をつぶり、風とキィの足音だけをきいていた。
ストーリーのテンポが良く、夢中でタップしてました!続きが楽しみです!
あの二人と少女の関係は?とか続きが気になりました。
運命が決まっているものなら、それに逆らうのもいいと思うんですよ。
特に断罪されるならば、逃げるのもありです。
一体この2人は何者なのだろうか…。
これくらいスッと、今まで悩み苦しんできたことから解放させてくれる人が現れたのなら、どれだけ嬉しいだろうか…。