その涙を噛み締めろ(脚本)
〇街中の道路
太一「優香より大事なものなんて他にはないよ! 絶対幸せにするから・・・」
太一「だから、俺と結婚してください!」
優香「・・・はい!」
〇綺麗な教会
あの瞬間、誇張ではなく、私は世界一の幸せ者だと思った
〇結婚式場の廊下
これからは病める時も健やかなる時も、
〇教会の中
悲しみの時も喜びの時も、
〇アパートの台所
貧しい時も富める時も、
〇手術室
彼を愛し、彼を助け、
彼を慰め、彼を敬い、
〇綺麗なリビング
この命のある限り心を尽くすことを誓うんだと
〇黒
そう決意したのに──
〇飾りの多い玄関
太一「じゃあ、最後にこれ。この家の」
優香「はい」
太一「他に渡すの忘れてるもんないよな?」
優香「ない」
太一「・・・健太とは、これから月一で会えるんだよな?」
優香「それは貴方次第。毎月キチンと養育費を振り込んでくれたら、面会の時間を用意するわ」
太一「面会って・・・」
太一「ずいぶん仰々しいんだな。自分の子供に会うだけなのに」
優香「誰のせいでこうなったと思ってるの?」
太一「ったく、いちいち棘あるんだよなぁ・・・」
優香「だから、誰のせいで・・・!」
太一「おーれーのーせーいー」
太一「だろ?」
太一「ほら、これで満足か?」
優香「くっ・・・」
泣くな、泣くな、泣くんじゃない
こんな男の為に、私の貴重な水分と塩分を1ミリたりとも使ってなるものか
太一「おーこわ。般若みたいなツラして」
太一「あーあ。最後くらいはキレイに終わらそうって思ってたのに、その気も削がれたわ」
太一「じゃーな。健太の面倒、ちゃんと見ろよ」
太一「ま、シングルマザーじゃろくな人間に育たないだろうけど・・・」
優香「早く出てって!!」
無理やり閉めたドアに寄りかかり、ばくんばくんと心臓が跳ねるのを抑えるように、息を整える
数回深呼吸を繰り返すと、ようやく気持ちが落ち着いた。
優香「・・・おわった」
優香「・・・やっと、おわったんだ」
そう呟いた瞬間、力がズルズルと抜ける
〇白
〇街中の道路
太一「優香より大事なものなんて他にはないよ! 絶対幸せにするから・・・」
太一「だから、俺と結婚してください!」
優香「・・・はい!」
〇白
〇飾りの多い玄関
優香「なんで今、あの時のこと・・・」
優香「・・・っ、」
思い出した瞬間、流れた涙、一粒
口に入ると、血の味がした
優香「あーくっそ。あの大嘘つき野郎・・・」
優香「見てろよ。お前に幸せにしてもらわなくても、」
優香「ぜってー自分で幸せになってやっから!」
〇街中の道路
鉄くさい涙を噛み締めながら、
私はあの時以上に強く心に誓ったのだった。
とても現実味のあるストーリーですね。私も結婚して長いですので、すんなりうまくいくことばかりではなかったですが、初心やふたりで過ごした時間を思い出すことでとどまっています。彼女のようにお別れして新しいスタートをきるという選択もいいと思います。人間らしい人生模様がよく伝わってきました。
離婚するって、結婚する労力の何倍ものパワーがいるって聞きますけど、まさにその通りって感じですね。事情はどうあれ、お子さんには幸せになってもらいたいです。
恋で泣かした人〜と〜♪プロポーズして、受け入れて、共に暮らして、子供を産んで、育てて…こんなにドラマチックなことがたくさんあっても、一緒にいたくないと感じてしまうのはもはや人生の神秘ですね。そんなつもりはないのに泣いてしまうのと、その後一気に心が強くなるのがリアルに感じました。負けないで!と声をかけてあげたいです。