エピソード1(脚本)
〇繁華街の大通り
織田信長、伊達政宗、真田幸村が興奮した様子で、晴海通りを東銀座から築地の方へ歩いている。
伊達政宗「面白かったなあ!歌舞伎!」
真田幸村「今日の、三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)の、あのお嬢吉三の名台詞」
織田信長「月もおぼろに 白魚の」
伊達政宗「いよっ、待ってました!」
真田幸村「たっぷり!」
織田信長「かがりもかすむ 春の空 冷てえ風に ほろ酔いの 心持よく うかうかと」
真田幸村「おとわやあ!」
織田信長「浮かれからすの ただ一羽 ねぐらへ帰る 川端で さおのしずくか ぬれ手であわ 思いがけなく 手にいる百両」
伊達政宗「おとわやっ!」
真田幸村「うおとぉうわいやああああ(笑)」
織田信長「ほんに今夜は 節分か 西の海より 川の中 落ちたよたかは 厄落としいい おとわやあ!」
伊達政宗「豆だくさんに 一文の ぜにと違って 金包み こいつあ春から 縁起がいいわえ」
織田信長「うおとぉうわいやああああ!」
真田幸村「おとわやあ!」
伊達政宗「ああ、気持ちいい!」
真田幸村「さっきまで可憐な乙女だと思っておったのに男の地声で、こいつあ春から 縁起がいいわえ~って(笑)」
織田信長「あの落差がたまらぬな」
伊達政宗「この戯作者の河竹黙阿弥の見事な七五調。歌でも詠じているかのようではないか」
真田幸村「おもだかや!も覚えました」
伊達政宗「この掛け声、大向う(おおむこう)というらしいのだが、なかなか、声を掛けるタイミングが難しいと思わぬか」
織田信長「声を掛ける事ができるというのは、通な感じがしていいのお」
真田幸村「やはり、修練が必要なのでしょうね」
伊達政宗「場違いというのは、恥ずかしいしのお」
〇繁華街の大通り
織田信長「あの、掛け合いの、さあ・・・」
伊達政宗「さあ!」
織田信長「さあ!」
伊達政宗「さあ!」
織田信長「さあ!」
伊達政宗「さあ!」
織田信長「さあ!」
伊達政宗「さあ!」
織田信長「・・・どうなんだい!・・・も良かったなあ」
真田幸村「あれ、半沢直樹の再放送見ていたら、ドラマでもやっておりましたね」
伊達政宗「ググったら、半沢直樹2は、片岡愛之助、市川中車、市川猿之助、尾上松也と4人も歌舞伎役者が出ておったのだな」
織田信長「顔芸がすごかったのお(笑)」
伊達政宗「歌舞伎役者は、片方の眉だけ吊り上げたり、片目だけ見開いたりいたしまするからなあ」
真田幸村「あの見得を切る時なんぞ、目玉が落ちてしまうのではないかと心配になりまする」
伊達政宗「おお、信長殿の話が歌舞伎になっておるようですな」
織田信長「なに?どんな話じゃ?」
伊達政宗「うーむ。話の筋までは分かりませぬが、小田春永(おだはるなが)などと名前を変えられて上演されておるようでございますな」
織田信長「はるなが~?な~んか、どうせ、悪口言われておるのであろう。よいよい。政宗殿の話はないのか?」
伊達政宗「私の話は、おそらく、「伽蘿先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」ではないかと思うのだが」
真田幸村「仙台と先代を掛けておるのでしょうか?」
伊達政宗「私が死んだ後の御家騒動の話ではないかと」
織田信長「まあ、後世の作り話であるからな」
真田幸村「笛や鼓は知っておりまするが、あの、じゃかじゃか鳴っておった楽器が気になりまする」
伊達政宗「三味線(しゃみせん)というらしい。あの細い首の所に糸を張り、手に持っていた三角形のバチというもので糸をはじくのだそうだ」
織田信長「今日は、男が大勢でがしゃがしゃ鳴らしておったが、わしは、おなご1人にぽつんぽつんと鳴らしてもらいたいのお」
真田幸村「酒と魚が必要になりまするなあ」
伊達政宗「うーむ、そういうお姉さんがおる街が、ここを右に曲がった辺りにあるようじゃが、飛び込みで相手してくれるかどうか(笑)」
織田信長「今日はよいわ。政宗殿と一緒に行ったら、おいしい所は全部政宗殿に持っていかれてしまう(笑)」
真田幸村「あっ、目の前の川に遊覧船があるようですよ。乗り場はこちらとなっておりまする」
伊達政宗「隅田川ですね。先程の歌舞伎で大川と言っておった川がこれのようです」
織田信長「おお!こいつあ春から 縁起がいいわえ」
真田幸村「おとわやあ!」
毎度のことながら、その発想力には感服です。3人からしたら、歌舞伎は年代的に近未来のエンターテインメントですので、むしろ現代人よりも楽しめそうですよね!
戦国武将のシェアハウスってどんなものだろう?と思いながら読み進めていくと,案の定お互い良い意味で譲らない展開で面白かったです!私もシェアハウスの一員になってみたい(笑)
時代設定がいいですね(笑)会話の中の言葉がなんか心くすぐられました。歌舞伎については知識がないのですが、3人の会話から少し学べた気がします。