大塚くんの写真館

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大塚くんの写真館(脚本)

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〇体育館の裏
クラスメイトa「あんた最近調子乗ってるわよね」
河西 りさ「え?」
クラスメイトb「見た目も派手だし」
クラスメイトb「クラスの男子だけじゃなくて、大学生にも手を出してるって噂もあるしね」
河西 りさ「誤解だよ」
クラスメイトa「あんま調子乗らない方がいいわよ」
河西 りさ「・・・」
河西 りさ(・・・全部間違った噂)
河西 りさ(ハーフで髪が明るいから、昔から目立つんだ)
河西 りさ(慣れっこだし、今更反論する気もないけど・・・)

〇田んぼ
河西 りさ(こんな田舎じゃ寄り道する場所も無い)
河西 りさ(看板や標識は古臭いし、何もない道路が伸びてるだけ)
河西 りさ(早くここを出たいな・・・)
大塚 結斗「よし!ここの道路は撮れた!次はあそこの看板だ!」
  大塚結斗がカメラで何かを撮っている。
河西 りさ(・・・あの人噂で聞いたことある)
河西 りさ(何もない道路とか看板とかを毎日1人で撮ってる変人だって)
河西 りさ(気づかれてないみたいだし、こっそり・・・)
大塚 結斗「河西さん?何か用でしょうか?」
河西 りさ「いえ、何でもないです」
大塚 結斗「そうですか。いきなり声かけちゃってごめんなさい」
  りさは下を向いて通り過ぎようとした
河西 りさ(・・・あれ、でも噂だけで人を判断するのは自分がされてることと同じじゃ)
河西 りさ(・・・この人も私と似てるのかな)
河西 りさ「あのさ、どうして何もない所の写真撮ってるの?」
大塚 結斗「確かに、何も無いように見えるんですけど、僕には思い入れがあるんです」
大塚 結斗「例えば、この看板とか!」
河西 りさ「ただのボロボロの木の看板にしか見えないけど・・・」
大塚 結斗「ここに小さく印が書いてあるでしょ?昔、弟と一緒に身長を記録してたんです」
河西 りさ「本当だ!丸と星が書いてある」
大塚 結斗「先に看板を越した方が勝ちって勝負をしてたんですけど、結局負けちゃいました」
河西 りさ「へーえ。同じ物でも人によって見え方が違うんだね」
大塚 結斗「そうなんです。きっと何も無い場所なんてなくて、どの場所にも誰かの思い出が生きてるんだと思います」
大塚 結斗「河西さんにはこの辺に何か思い出ありますか?」
河西 りさ「うん!子供の時、ここで野良猫とよく遊んでた!」
河西 りさ「目が青くて毛が白い猫で、ユキって名前付けてたんだ」
河西 りさ「ずっと一人ぼっちだったけど、ユキがいてくれたおかげで寂しくなかった」
河西 りさ「でも、突然いなくなっちゃって会えなくなっちゃったんだけどね」
河西 りさ「ユキにまた会いたいな」
大塚 結斗「そうなんですね。きっとまた会えますよ!」
河西 りさ「ありがとう」
大塚 結斗「なんだか久しぶりに学校の人と話せた気がします!」
大塚 結斗「河西さん・・・ありがとう」
河西 りさ「もしかして泣いてる?」
大塚 結斗「泣いてませんよ!僕は泣かない男です!」
河西 りさ「からかっただけだよ。こちらこそ話してくれてありがと」
河西 りさ「そろそろ帰・・・」
大塚 結斗「よし!僕はそこの道路と、あっちの信号とポストを撮ってきますね!」
河西 りさ(・・・その熱意はどこから)

〇学校の廊下
クラスメイトa「知ってる?昨日、河西と大塚が2人で帰ってたらしいよ」
クラスメイトb「へえ〜変わり者同士気が合うのかしらね」
クラスメイトa「大塚も地味そうに見えて、意外と女好きなんじゃない?」
クラスメイトb「あり得る」
河西 りさ(・・・やっぱりこうなるのか)
大塚 結斗「あ!河西さん!おはようござ・・・」
河西 りさ「・・・」
  私は大塚くんを無視してしまった

〇田んぼ
河西 りさ(大塚くん聞いてたかな?傷ついてたらどうしよう)
河西 りさ(私のせいで彼を傷つけちゃうのは嫌だ)
河西 りさ(本当は私、大塚くんと・・・もっと)
大塚 結斗「河西さーーーん!!大変です!!」
河西 りさ「え!?」
  全身葉っぱまみれの大塚くんが走ってきた
大塚 結斗「早く来てください!!ユキちゃんいました!!」

〇体育館の裏
大塚 結斗「おかしいなあ、さっきここで見つけたのに」
大塚 結斗「あっちの茂み探してみますね」
河西 りさ「・・・待って」
河西 りさ「一方的に詰め寄るのは嫌」
河西 りさ「こっちから優しく話しかけてみよう」
大塚 結斗「なるほど!良いですね」
  りさが茂みの前にしゃがむ。
河西 りさ「ユキ。私、昔あなたと遊んでたの。あなたのこと大好きでずっと探してた」
河西 りさ「また一緒に遊んでくれないかな?」
河西 りさ「ユキ!!」
大塚 結斗「河西さん凄いなあ!」
河西 りさ「あれ?なんか弱ってる?」
大塚 結斗「あ!それなら、僕ご飯持ってますよ! どのキャットフードが良いですかね?」
河西 りさ「そんなに沢山!?」
大塚 結斗「河西さんの猫を見つけるために買ってきたんです」
大塚 結斗「河西さんの役に立ちたくて」
大塚 結斗「お!元気になってきた!可愛いな」
河西 りさ(大塚くん、ずっとユキのこと考えてくれてたんだ)
河西 りさ(それなのに私・・・ひどいことしちゃった)
河西 りさ「ごめんね」
大塚 結斗「え?」
河西 りさ「私、学校で無視しちゃって」
河西 りさ「噂のせいで大塚くんが傷ついちゃったらどうしようかと思ったら怖くなったんだ」
河西 りさ「だけど、本当は大塚くんともっと一緒に話したい」
大塚 結斗「僕も同じですよ」
大塚 結斗「噂なんて関係ありません。今僕の目の前にいる河西さんが全てですから」
河西 りさ「・・・ありがとう」
大塚 結斗「あ!河西さんとユキちゃんの写真撮らせて下さい!」
河西 りさ「・・・せっかくだし皆んなで撮ろうよ」
大塚 結斗「そうですね!!よし!!いきますよ!!」
大塚 結斗「良い写真が撮れました!!宝物が増えちゃったな〜!」
河西 りさ「本当に写真が好きなんだね」
大塚 結斗「はい!だって、写真は魔法ですから!」
河西 りさ「魔法?」
大塚 結斗「写真を撮れば素敵な瞬間を真空パックみたいに保存できるんです!」
大塚 結斗「時間を止めたくて仕方ない僕にとっては神様のような存在です」
河西 りさ(そんなに好きなのか・・・)
大塚 結斗「河西さんは、このまま時間が止まれば良いなあって思うことありますか?」
河西 りさ「うん!最近思うようになった。例えば・・・」
大塚 結斗「僕は・・・」
「今!」
河西 りさ「あ、あれ??」
大塚 結斗「なんか恥ずかしいですね」
大塚 結斗「そうだ!今度、河西さんの好きな場所に連れて行ってくれませんか?」
河西 りさ「うん!分かった!約束ね!」
大塚 結斗「・・・」
大塚 結斗「うん・・・楽しみにしてます・・・」
河西 りさ「どうかした?」
大塚 結斗「何でもないです」
  大塚くんはいつもと変わらない笑顔でユキを撫でた。

〇教室
河西 りさ(おかしいな・・・今日も大塚くん来てない)
河西 りさ(あれから4日も経つのに・・・)
先生「お前らよく聞け。大事な話だ」
河西 りさ(何だろう?)
先生「実は・・・大塚は転校することになった」
河西 りさ「・・・え」
先生「高2の春から決まっていたことだったんだが、本人の希望で言わないことになっていたんだ」
先生「半年間黙っていて申し訳ない」
河西 りさ「・・・」
クラスメイトa「あの変人くん転校したんだ〜」
クラスメイトb「静かな上に毎日写真ばっかり撮ってて少し気味悪かったよね」
河西 りさ「・・・あんた達に何が分かるのよ」
クラスメイトa「え?何?」
河西 りさ「何も知らないくせに大塚くんのこと悪く言わないで!」
クラスメイトb「え!?」
河西 りさ「大塚くんは転校を知って、自分の思い出を残しておく為に写真を撮ってたの。変人なんかじゃない」
河西 りさ「今度大塚くんや私のことで変な噂流したら先生にも全部話す」
河西 りさ「あんたたちと徹底的に戦うから。覚悟しておいて」
クラスメイトa「・・・」
クラスメイトb「・・・そんなこと言うんだ」
河西 りさ(大塚くんだけじゃなくて、大塚くんが仲良くしてくれた私自身も大事に扱おう)
河西 りさ(そうじゃないと彼に悪い)
河西 りさ(・・・大塚くん、今どうしてるかな)
先生「河西!大塚から電話だ!お前に代わってほしいって」
河西 りさ「もしもし!大塚くん!?」
大塚「もしもし?河西さん?」
  りさは自分を落ち着かせようと深呼吸をした。
河西 りさ「・・・話全部聞いたよ。何も出来なくてごめんね」
大塚「僕の方こそ何も言わず引っ越してしまってごめんなさい」
大塚「河西さんに会ったら辛くなって引っ越せなくなりそうで」
大塚「河西さんの好きな場所に行けなかった・・・」
河西 りさ「・・・ううん」
河西 りさ「私の好きな場所は全部行けたよ」
大塚「え?」
河西 りさ「私の好きな場所は」
河西 りさ「大塚くんがいた場所だから」
河西 りさ「私の大嫌いだったこの場所を大好きに変えてくれてありがとう」
大塚「・・・」
河西 りさ「大塚くん?」
大塚「あり・・・がと・・・」
河西 りさ「・・・」
  笑顔ばかりだった大塚くんが声を枯らして泣いていた

コメント

  • すごくいい話だと思いました。切なくなりました。噂だけで判断したらいじめっ子達と同じと立ち止まれた主人公にハッとしました。最終的に大塚君との出会いが主人公の成長につながってるのがほんと素晴らしいです。

  • 泣いた、泣いてました。有難う。

  • 素敵なストーリーを届けてくださりありがとうございました☺️❤️
    2人ともはっきり気持ちを伝え合っているわけではないけれど、大切にお互いを想い続け、内に秘めた強い情熱を持っているところが刺さりました。
    今後の作品も楽しみにしています!

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