エピソード1' 日常(脚本)
〇法廷
主文!!
被告人を無期異世界転生に処す!!
乱豪 強「んだよ、たかだか練習中に3人病院送りにしただけじゃねーか!!」
全く反省していない!?
あんな危険な人物なら無期異世界転生になって良かったわ。
乱豪 強(クソッ!!ついてねーぜ)
〇地下の部屋
警官「刑の執行は明日だ!! それまではここで大人しくしておけ!!」
乱豪 強「ヘイヘイ、わかりやしたよ」
伯方 網吉「こんにちわ」
乱豪 強「うおっ!!」
乱豪 強「な、なんだよ、ここ独房じゃねーのかよ!! びっくりしたぜー」
伯方 網吉「あなたプロレスラーの乱豪さんですよね?」
乱豪 強「お!?兄ちゃん!! 俺の事知ってんの!?」
乱豪 強「珍しいねぇ。デカい団体じゃねーから、そんな有名じゃないと思うんだが」
伯方 網吉「あ、プロレスは興味ないです。 以前暴行事件のニュースを見たので知ってるだけです」
乱豪 強(んだよ、いけすかねぇ野郎だ)
伯方 網吉「ここに来たって事はあなたも・・・」
乱豪 強「ああ、無期異世界転生よ!!」
乱豪 強「ま、ムカつく後輩3人の骨折っちまったからなぁ。面白くはねーけど妥当な求刑ってやつかねぇ」
乱豪 強「で、お前さんは何やらかしたんだよ!?」
伯方 網吉「僕はハッカーなんですけど・・・」
伯方 網吉「まあ、ハッカーではあるんですけど、一般的にハッカーでイメージされる行為はクラッカーに該当して僕のはそうじゃなくて・・・」
乱豪 強「ゴニョゴニョうるせーな。 よくわかんねぇけど」
乱豪 強「要はなんかヤバい情報掴んじまったってトコか」
伯方 網吉「まあ、そんなトコです」
乱豪 強「ま、こうして執行前日に相部屋になったのも何かの縁!!向こうの世界でもよろしくな!!」
伯方 網吉「・・・前向きですね。 怖くないんですか!?」
乱豪 強「だってよ、俺らに近い種族が百姓しながら暮らしてるだけなんだろ!?」
乱豪 強「別に怖がる要素なくねぇか!?」
乱豪 強「総理大臣様もそう言ってるじゃねぇか」
〇上官の部屋
熊井総理大臣「国民の皆さん!!」
熊井総理大臣「無期異世界転生は大変人道的な刑です!!」
熊井総理大臣「異世界は豊かな自然の中、温和な種族が農耕を行いながら、暮らしております」
熊井総理大臣「その中で過ごすことで、犯罪を犯してしまった方々は犯した罪を見つめ直し、必ずや善良な精神を取り戻すことでしょう」
熊井総理大臣「それに終身刑ではございません。反省し、贖罪を終えた方については、こちらの世界に戻っていただきます」
熊井総理大臣「繰り返しますが、無期異世界転生は大変人道的でございます」
〇地下の部屋
乱豪 強「総理の熊井は史上最高の支持率とかで今就任8年目なんだろう!!」
乱豪 強「すげーよなぁ」
乱豪 強「だから大丈夫だろう!!」
伯方 網吉「プロパガンダに踊らされる民衆の教科書みたいな人だな」
乱豪 強「あん!?」
伯方 網吉「実情はそんな単純じゃないかもですよ・・・」
伯方 網吉「僕がハッキングして掴んだ情報、それは無期異世界転生に関わる事なんです」
乱豪 強「あん!?なんでまたそんな情報調べようと思ったんだよ!?」
伯方 網吉「おかしいんですよ」
伯方 網吉「無期異世界転生に対しての疑問や批判はネット上にほとんど存在しない」
伯方 網吉「世論もこの短期間で大きく無期異世界転生容認の風潮になった」
伯方 網吉「裁判も簡素化高速化され、2025年以前の年間の死刑と無期懲役の合計より、圧倒的に無期異世界転生が多い状況です」
伯方 網吉「あなたの犯罪も2025年以前なら執行猶予付きの数年の懲役レベルですし」
乱豪 強「ん!?まあ、言われてみればおかしいか!? よくわかんねーけど」
伯方 網吉「だから僕は気になったのと、自分の腕試しも兼ねてハッキングを仕掛けたんですが・・・」
乱豪 強「な、何が分かったんだよ!?」
伯方 網吉「・・・いえ、何も分からなかったんです」
乱豪 強「はぁ!?どういうことなんだぁ!?」
伯方 網吉「セキュリティは2層構造になっていて、1層目は簡単に突破できたんです」
伯方 網吉「ただ、そこには普通に知っているような情報しかなかったんです」
伯方 網吉「なので、僕は意気込んで2層目に挑戦したんですが、」
伯方 網吉「今までに見たこともない厳重なセキュリティ、幾重にも施されたファイアウォール・・・」
伯方 網吉「とても個人レベルでは突破は出来ませんでした」
伯方 網吉「いや、仮に優秀なクラッカーチームが挑んでも無理でしょう」
伯方 網吉「あんな防壁見た事ない・・・ おそらく構築に数千億円はかかっているでしょう」
乱豪 強「ハッ!?とんでもねぇ金額だな!?」
乱豪 強「なんでそんなに金かけてんだよ!! 懲役減って金も節約出来てるみたいな事を総理大臣様も言ってなかったか!?」
伯方 網吉「そうなんです・・・ 明らかに矛盾が生じている」
伯方 網吉「おそらくセキュリティ以外にも世論誘導や情報監視にも多額の投資がされていると思います」
伯方 網吉「僕は怖くなって逃げ出そうとしたんですけど、それより早く警察が来てこのザマです」
伯方 網吉「多分、あのイージーな1層目は罠だったんです・・・僕みたいな人間を捕まえるための」
乱豪 強「そうかよ・・・大変だったな・・・」
乱豪 強「でもよ、結局異世界の事はよくわからねぇって事だろ!!」
乱豪 強「だったら、楽しい世界だって信じようぜ!! 考えてもしょうがねぇよ!!」
伯方 網吉「乱豪さん・・・よく僕の話を聞いてそう思えますね・・・」
伯方 網吉「まあ、でもそうかもしれませんね」
乱豪 強「それにもしやべーやつがいたら、俺が病院送りにしてやるよ!!病院があるかは知らねーけどな!!」
伯方 網吉「ははは・・・ 心強いですね・・・」
〇黒背景
伯方 網吉
乱豪 強
無期異世界転生執行日
乱豪 強(ちっ、一体何時間移動してんだよ。 群馬とかにでも向かってんのか!?)
乱豪 強!!
目隠しをとるぞ!!
乱豪 強「ああん!?やっと着いたか!?」
〇地下室
乱豪 強「ひぇー、こんなもんが本当にあるんだなぁ!?」
さあ、とっととくぐれ!!
乱豪 強「なあ、伯方のあんちゃんはもう入ったんか!?」
質問には答えられない!!
いいから早く行け!!
乱豪 強「わ、わかったよ。 刺股で押すのはやめてくれよ」
乱豪 強「そりゃ」
〇幻想空間
乱豪 強「なんだぁ!?ここが異世界ってやつかぁ!?」
コトワリ「異なる世界に旅立んとする者よ」
乱豪 強「あん!?誰だテメェ!?」
コトワリ「私はコトワリ。 世界の外に漂いし者」
コトワリ「旅人に対して福音を与えし者」
乱豪 強「フクイン!? 何の話だ!?弁当でもくれんのか!?」
コトワリ「一つは言語という縛りからの解放」
コトワリ「そして、もう一つは・・・」
コトワリ「特殊能力の譲渡」
乱豪 強「なんだよ、そんなサービスあるんなら教えとけよな」
コトワリ「旅人よ 其方は異なる世界で何を成したい?」
乱豪 強「あ!?よくわかんねぇけど、やりたいことあるかって話か!?」
乱豪 強「別に思いつかねぇな・・・ やりたくねぇ事なら浮かぶけどよ・・・」
乱豪 強「まぁ、あれだ。 もし異世界によぉ、ムカつくやつがいたら息の根を止めてやりてーかな!!」
コトワリ「その魂の叫び・・・ たしかに受け取った」
コトワリ「其方に授ける能力は、」
コトワリ「『二塞惨悶』(にそくさんもん)」
乱豪 強「なんだぁそりゃぁ!?」
コトワリ「対象の鼻と口を塞ぎ、呼吸を封じる力」
コトワリ「対象は惨めに悶絶し息絶えるだろう」
乱豪 強「えれー物騒な能力だなぁオイ・・・」
コトワリ「使いこなせれば、其方の力となろう」
コトワリ「さて、時間だ旅人よ」
コトワリ「異なる世界で其方の願いが叶わんことを」
乱豪 強「おわぁぁぁぁ」
〇美しい草原
乱豪 強「いてぇ!!」
乱豪 強「さっきのは何だったんだぁ・・・」
乱豪 強「おお!!ここが異世界!!」
乱豪 強「・・・つってもそんな変わんねーな」
乱豪 強「だれかいねーかな・・・ん!?」
乱豪 強「なんか遠くに見えんの・・・ アレ伯方じゃねーか!? あいつ木なんか登ってはしゃいでんな!! 子供かよ!!」
〇草原の道
乱豪 強「よー伯方!!先に来てたんだな!!」
乱豪 強「どうしたんだよ木なんかにぶら下がってよぉ!! 童心に帰ってんの・・・・・・」
乱豪 強「ん!?」
乱豪 強「おいおい!!伯方!! し、死んでんじゃねーか!!」
乱豪 強「だ、誰に・・・誰にやられんだよ!!」
ゴブラダ「んー?」
ゴブラダ「なんだ、今日は2人も来るのか。 それなら先にこいつを運んでおけばよかったな」
乱豪 強「テメェか!?伯方を殺ったのは!!」
ゴブラダ「ん!?ああ、コイツの事!? そうだけど?」
ゴブラダ「手応えが無さすぎて笑ったよ。 ちょっとこづいただけで死ぬんだからな。 使うまでもなか・・・」
ゴブラダ「ぐふっ」
乱豪 強「オラァァァァ」
ゴブラダ「うぐうっ」
乱豪 強「はぁはぁ・・・ ふざけやがってよぉ・・・」
乱豪 強「俺は別にこいつのダチじゃねーけど・・・」
乱豪 強「知り合っちまったからな!! 仇は取るぜ」
ゴブラダ「お前いいじゃん!! こんなパンチもらったの久しぶりだぁ!!」
乱豪 強(な・・・!? 全然応えてねぇだと!!)
ゴブラダ「今度はこっちの番だな!!」
ゴブラダ「フンッ」
乱豪 強「ガハッ」
乱豪 強(か、完璧にガードしたはずなのに、なんだこいつのパワーは!! もう次は受けられねぇぞ)
ゴブラダ「ほんとお前いいよ!! 俺のパンチで壊れねぇなんて!!」
ゴブラダ「でも、そのままじゃ無理そうだろう!! だから使えよ」
乱豪 強「ハァ、ハァ、な、なんの話だ!?」
ゴブラダ「能力だよ能力!!もらってるよなぁ? 死ぬにしてもせいぜい全力を尽くして死ぬ方が気持ちいいだろ!!」
乱豪 強「うるせぇよ!!言われなくても使ってやらぁ!! テメェが死に晒せ!!」
乱豪 強「『二塞惨悶!!』」
ゴブラダ「む、むぐぅ」
乱豪 強「でゃぁぁぁぁぁぁ!!」
ゴブラダ「む、むぐっむぐっ・・・」
乱豪 強「ゼェ、ゼェ、ど、どうよ」
乱豪 強「ピギャァァ」
ゴブラダ「・・・プハァ ふぅーーーー」
ゴブラダ「対象の呼吸を止める能力か・・・ なかなかヒヤリとして、面白かったよ」
ゴブラダ「ん?ああ、今ので気絶しちゃったか。それで解除されたんだな」
ゴブラダ「まあ、能力のネタも割れたし、こいつももういいか・・・」
ゴブラダ「せーのっ」
〇草原の道
ゴブラダ「ちっ、2人いっぺんだとちょっと重いなぁ」
ゴブラダ「お、ヴィンツじゃねーか!!」
ヴィンツ「ゴブラダ・・・!? おいおい2人も獲物狩ったのかよ!? 反則だろ!!」
ゴブラダ「仕方ねーだろ!!たまたま連続で来ただけだよ」
ヴィンツ「しかもお前、また真正面から戦闘してたのか・・・ 理解出来んな・・・」
ゴブラダ「ガッハッハ 別にいいだろ!? 戯れってやつよ」
ゴブラダ「なぁ、こいつら貯蔵庫に運ぶの手伝ってくれよ」
ヴィンツ「嫌だよ、面倒くさい。 わざわざ洞窟から遠い所で戦闘したお前の責任だ。自分でやれ」
ゴブラダ「ちっ、わーったよ。じゃあな」
ヴィンツ(戦闘狂め・・・ 転生者なんてもっとスマートに楽に狩ればいいのに・・・)
〇上官の部屋
熊井総理大臣「ふぅ・・・」
後藤防衛大臣「総理、女王からの依頼の件ですが・・・」
熊井総理大臣「そうだな」
熊井総理大臣「たしか『20』だったか」
熊井総理大臣「検事総長の野原を呼んでくれ」
後藤防衛大臣「かしこまりました・・・」
熊井総理大臣(・・・ここまでは計画の範囲内)
熊井総理大臣(我が悲願のためにはやむを得ない犠牲だ)
きな臭い…いや元々めちゃくちゃきな臭いですけどね。向こうが元々長閑な農園だったとしても、犯罪者だらけになったらきっと荒れるはずで。
死刑との二択なら、選びますけど…。次も楽しみに読みます。
四字熟語を元にした面白そうな特殊能力。せっかく手に入れても殺されちゃうのでは意味がなーい!と、心で叫んでいました。女王とは…?ワクワク。
善人ではないけど心強い仲間になる?…と思ったら😱
異世界送りは何らかの生贄なのか?何のために…?続きが気になります😆