ヴィルペイン

ウロジ太郎

Ep.41/ THE ELUSIVE NIGHT WATCH #31(脚本)

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〇電子世界
  僕はスーパー量子コンピュータ・・・いや、ちーちゃんに駆け寄り、拳を叩きつけた。
久常紫雲「うわぁあああああああぁ~~ッ!!」

〇地球を抱くセクメト
智是/セクメト「~~~~~~!?」
  セクメトは声にならない悲鳴をあげると、その機能を停止した。

〇電子世界
  その本体のスーパー量子コンピュータには電撃がはしり、スパークしていた。
  筐体のあちこちがサージ電流でショートして爆発が起こり、炎があがる。
久常紫雲「・・・・・・」
  僕はただ茫然と、それを・・・ちーちゃんが死んでいくのを、見ていることしかできなかった。

〇未来都市
  こうして、事件は終わった。

〇通学路
  雨が降りだしていた。
  僕はとうに限界を超えた身体をひきずって街を歩いていた。
男性「・・・ヒッ! ナ、ナイトウォッチ!」
  男性が僕を発見し、悲鳴をあげた。
  僕のAR端末に仕込まれたプログラムが半自動的に男性の端末をハッキング。
  僕が爆撃にまぎれてゼニスに侵入する姿をとらえたスクープ記事を表示した。
  どうやら、この騒ぎの真犯人はナイトウォッチ、という噂が流れているらしい。
ナイトウォッチ「・・・!」
男性「た、たすけてくれぇっ!!」
  男性が一目散に逃げていく。
  入れ違いに、軍用バイクが走ってきて、僕の前に止まった。
  見覚えのあるバイクだ。そう、確か。
エンフォーサー「・・・・・・」
ナイトウォッチ「・・・エンフォーサー?」
  エンフォーサーは両手に警棒を構えて、僕に殴りかかってきた。
エンフォーサー「ナイトウォッチッ!!」
ナイトウォッチ「・・・!?」
  首筋を狙った打撃を、辛うじてヘルメットで受ける。僕は衝撃でよろけた。
エンフォーサー「街をよくも! 貴様の仕業だろう!?」
ナイトウォッチ「・・・ッ」
エンフォーサー「図星か!? ずいぶんと、人間らしい反応だな! このッ!」
  僕は蹴飛ばされ、地面に転がった。
エンフォーサー「俺の街を! 俺の大切な人たちを! よくも傷つけたな!」
ナイトウォッチ「大切な・・・」
  エンフォーサーの警棒が僕の頭を強打し、地面に叩きつける。
エンフォーサー「お前にはわかるまい! 大切な物も、大切な人もいないお前にはッ!」
ナイトウォッチ「なん、だって・・・」
  エンフォーサーが警棒を振りかぶった。
ナイトウォッチ「そんなわけ、あるかっ!」
  僕の拳が、エンフォーサーの顎をとらえた。よろけて倒れるエンフォーサー。
エンフォーサー「・・・なッ!?」
  僕はエンフォーサーに馬乗りになると、激情に任せて何度も、何度も、何度も殴りつけた。
ナイトウォッチ「失った! 死んだんだ! 一番大切な人が! 絶対! 助けたかった人が! それを! お前に! 何がッ!」
エンフォーサー「・・・な・・・にを・・・!」
ナイトウォッチ「黙れぇえぇぇえっ!!」
  僕の拳が、エンフォーサーの仮面を正面から殴りつけた。
  仮面にヒビが入り、エンフォーサーの身体から力が抜ける。
ナイトウォッチ「ちーちゃんは・・・もう・・・」
  僕は立ちあがり、よろけながらその場を後にした。

〇荒れた公園
  公園の火は消えて、雨に打たれて燻っていた。
ナイトウォッチ「・・・・・・」
  僕はヘルメットを脱いで、あたりを見回した。
久常紫雲「もうどこにも・・・ちーちゃんはいない。だって、僕が・・・僕が・・・」
  そのときAR端末が「録画メッセージ」がある、という通知を表示させた。
久常紫雲「・・・?」
  直後、ウィンドウが開いた。
  そこには、白い独房にいるちーちゃんの姿があった。
久常紫雲「!?」
根須戸智是「しゅーちゃん? 見てる?」
久常紫雲「なんで・・・?」
根須戸智是「驚いたでしょ? いつかね、私に何かあったとき、こうしてメッセージが届くように設定してあった」
久常紫雲「ちーちゃん・・・」
根須戸智是「私ね、どうしてもしゅーちゃんに伝えたいことがあった」
根須戸智是「でも、改まって言うのもあれだから、ずっと言えなくて。笑わないで聞いてくれる?」
久常紫雲「・・・・・・」
根須戸智是「私、ずっと楽しかったよ」
久常紫雲「!?」
根須戸智是「しゅーちゃんと出逢えて、歩くんや美結ちゃんとも出会えた。みんながいつも笑ってて、そこに私がいて」
根須戸智是「ふと思ったの。こういうのを〈かけがえのない〉って言うだろうなって。瞬間なのに、永遠みたいな時間だなって」
  ちーちゃんは涙を堪えてうつむいた。
久常紫雲「・・・僕が殺したんだ」
根須戸智是「だから、ずっとずっと楽しかった」
久常紫雲「君を殺したのは僕なんだ!!」
根須戸智是「ありがとう」
久常紫雲「なんで、ありがとうなんだよ! 責めてよ! 僕を責めて!」
久常紫雲「お前のせいで死んだんだって、お前が、全部お前が悪いんだって! ありがとうなんて、言われる資格・・・!」
根須戸智是「私後悔しないつもり。十分幸せだったと思うから。だから、しゅーちゃんも・・・」
  ちーちゃんは、優しい表情を浮かべた。
根須戸智是「・・・私の一番大好きな人はね」
久常紫雲「・・・・・・」
根須戸智是「失敗ばっかりだけど、何度転んだって、絶対立ち上がる、ヒーローだよ」
久常紫雲「・・・!」
  ウィンドウが薄れはじめた。
久常紫雲「ちーちゃん待って! 僕はまだ・・・!」
  僕は画面の中のちーちゃんに手を伸ばす。でも僕の手は画面をすりぬけ、空を切る。ウィンドウは弾けるように、消滅した。
久常紫雲「ああぁ・・・っ」
  僕は天を仰いで、絶叫した。
久常紫雲「ああぁあああぁぁ~~ッ!!!!」

〇黒
  一ヶ月後

〇屋上の隅
  僕はまだナイトウォッチを続けていた。
  世間では、ナイトウォッチは一ヶ月前の世界的大惨事の元凶だという言説が流布していた。
  そしてそれは事実だ。すべては僕が引き起こしてしまったことなんだ。
  だからこそ、僕には責任がある。
パステト「紫雲、発見しました」
ナイトウォッチ「・・・行こう」

〇殺人現場

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