Ep.39/ THE ELUSIVE NIGHT WATCH #29(脚本)
〇電子世界
遠くから、爆発音がした。
わずかな振動で部屋が震える。
久常紫雲「な・・・に・・・?」
根須戸智是「ふふ・・・はじまった」
ちーちゃんは歪んだ笑いをうかべて、ウィンドウを表示させた。
〇開けた交差点
路上で数台の多脚戦車が闊歩し、逃げまどうゼニス兵たちに向けてガトリングガンを発砲していた。
多脚戦車「・・・・・・」
「うわあぁあ~~~っ!?」
ゼニス兵たちはなすすべなく、血飛沫と共になぎ倒されていった。
一方的な虐殺だった。
〇未来都市
別のウィンドウでは、この街のゼニスの拠点が垂直離着陸機の爆撃を受けていた。
街の空は、炎で真っ赤に染まっている。
〇電子世界
久常紫雲「ちーちゃん・・・君は、いったい何をして・・・」
根須戸智是「ふふふ。いい気味! ゼニスアメリカ本社、及び全世界の支部にも同時ハッキング開始! 1人も生かしておかないわ!」
〇海
アメリカ
サンフランシスコ沖 9:13分
海上には、ステルスミサイル艦が浮かんでいた。
根須戸智是「無人ステルスミサイル艦、ワーシップ。 システム掌握。ミサイル、発射」
甲板のミサイルサイロがすべて開き、次々に巡航ミサイルが発射された。
〇超高層ビル
サンフランシスコ シリコンバレー
ゼニス アメリカ本社
そして無数のミサイルが、ゼニスの本社を襲った。
周囲はあっと言う間に、阿鼻叫喚の地獄と化した。
〇電子世界
久常紫雲「・・・!?」
根須戸智是「ふふふ。他愛ない。ネストアメリカ本部、地上施設は壊滅。地下施設も、地中貫通爆弾の爆撃で、すぐにおしまい」
ちーちゃんがふと、他のウィンドウに目をやった。
根須戸智是「あら、こっちにも害虫。潰さなきゃ」
〇組織の廊下
3人のゼニス兵たちが震えながら、多脚戦車の前で両手を挙げていた。
ゼニス兵「こ、降伏する! 武器も捨てた!」
ゼニス兵「たたた、助けて! 頼むよぅ!」
ゼニス兵「抵抗しない! だから!」
多脚戦車「・・・・・・」
多脚戦車は躊躇なく、ガトリングガンを発射した。
「ぎゃああああっ!?」
2人のゼニス兵たちが、血しぶきと共になぎ倒された。
最後に残った1人は腰を抜かし、震える手でヘルメットを脱いだ。
表れたのは純朴そうな若い男だった。
彼は恐怖と涙でぐしゃぐしゃの顔で懇願する。
青年「た、助けて! まだ死にたくない! お願いだ! やり残したことがまだ・・・」
その画面の中に、ちーちゃんが現れた。
青年「・・・え? 女の子?」
ちーちゃんは憎しみに燃える瞳で彼を凝視して、叫んだ。
根須戸智是「うるさいッ! 死ね!」
多脚戦車「・・・・・・」
ガトリングガンが吠え、青年の身体が衝撃で小刻みに跳ねる。
青年「・・・ぅ・・・う、た・・・す・・・け・・・」
根須戸智是「あはははっ! どう? 人生を踏みにじられた感想は!? 悔しいでしょ!? 無念でしょ!? じっくり味わ・・・」
青年の瞳から、光が消えている。
根須戸智是「なんだ。もう死んじゃった」
〇電子世界
事切れた青年の映るウィンドウを見て、ちーちゃんが不満そうに鼻を鳴らした。
久常紫雲「ち・・・ちーちゃん! こんなの、良くないよ! いくら、憎くたって!」
ちーちゃんが意外そうに僕を見た。
根須戸智是「・・・? どうして?」
久常紫雲「ゼニスは、確かに悪いよ! 君にひどいことをした! でも、こんなふうに人を! そんなの、だめだよ!」
ちーちゃんが怒りに身体を震わせて、僕を睨みつけた。
根須戸智是「なんでそんなこと言うの!? しゅーちゃんは、私の味方じゃなかったの!?」
久常紫雲「味方だから、止めてるんだよ!」
根須戸智是「なんで、なんで!? なんで復讐がいけないの!? だって、許せないじゃない! だって絶対、許せないじゃない!」
ちーちゃんは、ぼろぼろと涙をこぼし始めた。
根須戸智是「私、死んだのよ! 殺されたのよ!?」
根須戸智是「もうしゅーちゃんの手も握れない! 抱きしめてもらうことも、キスも! 指切りも!」
根須戸智是「そんなの絶対に許せないじゃない! もう、ただのデータでしかないなんて!」
久常紫雲「データでも! 身体がなくても! 僕にとって、ちーちゃんはちーちゃんだよ!」
久常紫雲「ずっと一緒にいる! 今度こそ絶対、約束する! だからこれ以上、こんなこと!」
ちーちゃんは頭を抱え、絶叫した。
根須戸智是「聞きたくないっ! もう、やめて! もう、どうしようもないの! もう、今さら止められないの! だって・・・!」
そのとき、ちーちゃんの身体に激しいノイズがはしった。
根須戸智是「ウウゥゥウuuUUッ!?」
久常紫雲「ちーちゃん!?」
パステト「ゼニスアメリカ本部地下施設、及び残った全支部による逆ハッキングです」
パステト「マシンパワーはあちらが圧倒的に上です。このままでは、押し切られます」
ノイズまみれのちーちゃんが、苦しげにうめいた。
根須戸智是「や、やってくれたわね・・・っ! また、私を殺すつもりなんだ! 二度も、殺すつもりなんだ」
根須戸智是「・・・バステト! 奥の手よ。『セクメト』を使うわ! 奴らを全員、確実に殺してやる・・・っ!」
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