幕間 2(脚本)
〇ファミリーレストランの店内
二人っきりの稽古のあと、ファミレス
山本 朔「そういえば、 龍介さんはSNSやってるんですか?」
西 龍介「あー、一応な でもあんまり更新してなくて」
山本 朔「えーと、ああ、これですね・・・って」
山本 朔「更新が半年前じゃないですか 今回の舞台の告知も何もしてない みたいだし・・・」
西 龍介「い、いや、ほら、フォロワー数も少ないし 何を載せたらいいかも分かんねぇし」
山本 朔「最近はこういったSNSでのファンサも 大事なんですから 若い子たちのアカウントを見てくださいよ」
山本 朔「とりあえず俺と相互になって、 あとでツーショ上げましょう それと一緒に舞台の宣伝もしてください」
山本 朔「カズさんレベルなら、SNSも所属事務所 からの告知だけで大丈夫ですけど、 俺たちはまだまだそうはいかないでしょう」
山本 朔「若い子のSNS更新頻度やフットワークの 軽さは、目を見張るものがありますから あっという間に差をつけられますよ」
西 龍介「・・・・・・」
山本 朔「聞いてますか?」
西 龍介「ひょっとして、焦ってるってそのこと?」
山本 朔「え・・・」
西 龍介「やけに若い子若い子って気にするからさ 若手に追い抜かれることが不安で 焦ってんのかなと」
西 龍介「お前ほど売れてても不安になるんだな 俺には分からん感覚だけど」
山本 朔「・・・・・・ 贅沢な悩みだ、とか言わないんですね」
西 龍介「まさか。お前が八つ当たりするぐらい 真剣に悩んでるのに笑ったりしねぇさ」
西 龍介「お前の悩みを理解はしてやれねぇけど、 話くらいは聞いてやれるからさ 嫌じゃなきゃ、また飯行こうぜ」
山本 朔「・・・・・・ ありがとうございます」
西 龍介「なぁに、これも年上の役目だ ほら、トンカツ一切れ食うか?」
山本 朔「じゃあお言葉に甘えて」
西 龍介「って、真ん中取るのかよ! そこは年下らしく遠慮しろよな!」
山本 朔「ははっ。優しい先輩ならこのくらい 許してくれるかと思いまして」
〇オフィスビル
二人っきりの稽古のあと、帰り道
橋田 玲央「龍介さんと朔さんの言い合いも 慣れてくると兄弟喧嘩みたいですね」
水戸部 和人「なら、玲央くんもいれて男三人兄弟かな」
橋田 玲央「あのお二人が兄なら毎日楽しそうですね!」
水戸部 和人「玲央くん、ひとりっ子なのかい?」
橋田 玲央「いえ、姉がいます。 別に仲が悪いわけじゃないんですけど、 男兄弟に憧れがあって」
橋田 玲央「カズさんはごか・・・ ご兄弟はいるんですか?」
水戸部 和人「いるよ。玲央くんと同じで姉が まぁおれの場合は妹もいるから、 三人兄弟の真ん中なんだけどね」
橋田 玲央「へぇ!あの、もしかしてカズさんも 姉に扱き使われたり・・・します?」
水戸部 和人「ははっ、姉を持つ弟ってのはどこも一緒 なんだね」
水戸部 和人「姉には扱き使われるし、 妹はワガママ放題だし、 喧嘩になれば間に挟まれるし 今思えば中々な日々だったなぁ」
橋田 玲央「た、大変だったんですね」
橋田 玲央「じゃあ、カズさんが優しくてまわりに すごく気を使ってくれるのは、 そのお姉さんたちに揉まれたからかも しれないですね」
水戸部 和人「おや、そう言ってくれると、 あの日々も無駄じゃなかったと思えるね」
橋田 玲央「なら、オレもいつかカズさんみたいに ・・・は流石に無理ですかね」
水戸部 和人「そんなことないよ。玲央くんなら大丈夫さ」
橋田 玲央「えへへ、ありがとうございます」
水戸部 和人(・・・・・・)
水戸部 和人(あの時玲央くんは、 ご家族と言いかけてご兄弟と言い直した)
水戸部 和人(知っていたんだろうな おれが離婚してるってこと)
水戸部 和人(きみは今でも十分、 優しくて気遣いのできる子だよ)
〇行政施設の廊下
朔と龍介の喧嘩中、稽古場外の廊下
「──!」
加藤 稔「・・・ 航、あとよろしく」
加藤 航「おい、稔──」
加藤 稔「・・・・・・ 今日の稽古は中止」
加藤 稔「頭、冷やしてきて」
〇稽古場
四人を帰したあと
加藤 航「稔が役者じゃなくてよかったな」
加藤 稔「あ、やっぱり航にはバレてた? 本気で怒ってないってこと」
加藤 航「分かるさ。稔のことだから」
加藤 稔「流石」
加藤 稔「立場上怒ったけど、 僕があそこで色々言わなくても、 二人に任せたほうがいいかなって」
加藤 稔「明日か、まぁ遅くても明後日には 解決してるでしょ」
加藤 稔「解決してなくても、 航がなんとかしてくれるだろうし」
加藤 航「いいように使ってくれるじゃないか」
加藤 稔「とか言いつつ、ちゃんとサポート してくれること知ってるもんね」
加藤 航「まぁ、演助だからな 稔が舞台制作に専念できるようにするのが 今の俺の仕事だ」
加藤 稔「ありがと。助かる。やっぱり、 航が演出助手の時が一番やりやすいなぁ」
加藤 稔「次に航が演出するときは、助手として こき使われてあげるからね」
加藤 航「その言葉、覚えておけよ 嫌ってくらい使ってやるから」