幕間 1(脚本)
〇街中の道路
玲央、龍介、和人の三人で食事に行った帰り道
西 龍介「いやー、流石カズさんオススメの店 美味かったなー」
橋田 玲央「あんな美味しいお肉初めて食べました!」
西 龍介「今日は大変だったもんな、玲央 どうだ?稽古には慣れたか?」
西 龍介「舞台稽古なんて生まれて初めてだもんな カズさんはすげぇ優しいけど、 アイツは嫌味なヤツだし」
橋田 玲央「ありがとうございます 毎日緊張はしますけど、大丈夫です 龍介さんもいてくれますし」
西 龍介「俺?」
橋田 玲央「龍介さん、顔合わせの時 オレに声かけてくれたじゃないですか あれ、すごく嬉しかったんです」
橋田 玲央「右も左も分からない中で、 一緒に頑張ろうって言ってもらえて それに今もこうして、 気にかけてくれてますし」
橋田 玲央「龍介さんがいてくれて良かったです」
西 龍介「何だよ嬉しいこと言ってくれるじゃん! ・・・ありがとな」
西 龍介「照れるから俺の話はやめやめ! カズさんの方が何倍もすげぇし、 マジ演技上手いよな」
橋田 玲央「そうですね。あんなに演技が上手くて 有名な人なのに、オレみたいな新人にも 真剣に向き合ってくれます」
橋田 玲央「山本さんもカッコいいですよね きっと、自分にも人にも厳しいストイックな人なんでしょうね」
西 龍介「アイツかー どうにも馬が合わないんだよなぁ・・・」
橋田 玲央「あの、オレが言うのもあれですけど、 あんまり喧嘩しないでくださいね」
西 龍介「どうだかなー・・・」
西 龍介「ま、なるようになるだろ」
西 龍介「なあ、舞台はどんなの見るんだ? 映画とか小説も、玲央の好み教えてくれよ」
橋田 玲央「えーと、オレが好きなのは──」
〇オフィスビル
ある日、稽古前の午前中
水戸部 和人「おや、おれが一番乗りかと思ったのに」
山本 朔「カズさん。おはようございます お早いですね」
水戸部 和人「きみもね。おれは前の仕事が終わって そのまま来ただけだから」
水戸部 和人「あ、ちょっと待ってて」
水戸部 和人「はい」
山本 朔「このココア・・・ 俺が前に好きだって言ったの、 覚えててくれたんですね」
水戸部 和人「ああ。稽古終わりによく飲んでただろう? もう何年前だっけ」
山本 朔「6年前の舞台ですね そのあとも何度かお会いしましたけど 一緒に舞台に立つのはあの時ぶりです」
山本 朔「配役を聞いたときから楽しみにしてました ずっと出たかった稔さんの舞台で、 カズさんとも共演できるなんて」
水戸部 和人「嬉しいこと言ってくれるね おれもきみと会えるのを楽しみにしてたよ」
水戸部 和人「随分と活躍してるって聞いたし あの時からどれだけ上手くなったのか、 とかね」
山本 朔「昔の俺よりは演技も上手くなったと 自負してますが カズさんのお眼鏡にかなうかどうか・・・」
山本 朔「いや、貴方に認めてもらえるような演技を してみせます」
水戸部 和人「認めるだなんて大げさだな おれはただ一介の役者でしかないよ」
水戸部 和人「でも、きみのその向上心は6年前から 変わってないようで嬉しいね」
水戸部 和人「朔くんのそんなところが好きだなと、 昔から思ってたんだ きっと良い役者になると思ってたけど、 予想は当たったみたいだね」
山本 朔「そんな風に思っててくれたんですか!?」
山本 朔「あ、ありがとうございます!」
水戸部 和人「おれは思ってたことを言っただけだよ」
水戸部 和人「さ、いつまでもビルの前で立ち話も なんだし、そろそろ中に入ろうか」