空から降りてきた彼女は猫でした!?

黒猫千鶴

第1話 バーから降ってきた彼女(猫)!?(脚本)

空から降りてきた彼女は猫でした!?

黒猫千鶴

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〇スペイン坂
  高校を卒業したら、
  地元を離れたら、
  何か変わると思った。
  20歳になれば、
  大人になれると思ってた。
仁(でも、実際は何も変わらない・・・)
仁(どうやったら早く大人になれるのか、方法を考えた──)
仁(そう──”卒業”すればいいんだ・・・!)

〇教室
告白した同級生「え? 仁君って──ちょっとないわ~」

〇空
仁(思い出したくもない昔の言葉・・・ それも全部、今日の授業のせいだ・・・!)
  嫌な気持ちを溜め息と共に吐き出し、空を見上げると──
  目の前に猫の顔があった。
仁「え?」
猫「ぎにゃー!」
  俺は避けることも、顔を庇うことも出来ずに、顔面で猫を受け止める。

〇スペイン坂
  しっとりとした猫の口と俺の唇が触れた──次の瞬間、柔らかい毛が眼球に触れる。
「目が・・・目がぁぁぁぁっ!!」
仁「てか、なんで空から猫が!?」
???「すみませーん、大丈夫ですか!?」
仁「めっちゃ目が痛いけど、大丈夫です・・・」
???「すみません、ウチの子が窓から落ちちゃったみたいで・・・」
仁「・・・気を付けてください。いくら猫でも高いところから落ちたら危な──」
???「おや?」
仁「爪が引っかかって・・・取れない!」
???「その子が離れたくないみたいなので、良かったらウチに寄って行きませんか?」
仁「え・・・」
仁(新手の勧誘!? それともキャッチ!?)
碧斗「ああ、怪しい者では・・・」
碧斗「僕はこのビルの3階にある『猫のねぐら』というバーで、バーテンダーをしてる札岡碧斗(ふだおか あいと)です」
仁「ご丁寧にども。 箱田仁(はこだ じん)です・・・」

〇シックなバー
  怪しいキャッチのような誘いに乗り、碧斗さんのお店に足を運ぶことになった──
仁「バーってこんな風になってるんだ・・・」
  カウンター席に腰を掛けると、
  2匹の猫がカウンターの上で寝ている。
碧斗「バーは初めて?」
仁「去年まで未成年で・・・って、そんなことより、この猫をどうにかしてくださいよ!」
碧斗「ふふ。その子、あまりお客さんに懐かないので・・・珍しいなぁ」
仁(笑い事じゃないんだけど)
碧斗「もしかして、忙しかったりします?」
仁「え、なんで・・・ですか?」
碧斗「先程からスマホを見てるので・・・ 見たところ腕時計はしてない。時間を気にしてるのかな、と」
仁「学校の課題のことを考えてて・・・」
碧斗「課題ってことは・・・学生さん?」
仁「あ、はい。今年から専門学校に・・・」
碧斗「えっ!? 専門学校ってことは・・・未成年!?」
仁「さっき言いましたけど・・・ まあ、早生まれなんでもう20歳です」
碧斗「良かったぁ」
仁「でも、お酒とか詳しくなくて・・・」
碧斗「じゃあ、”今の”仁君に合ったカクテルを作りますね」
仁「”今の俺”に・・・?」
  碧斗さんは、シェーカーを取り出した。
仁(あ、ドラマとかで見たことあるやつ)
  お酒を3種類程入れて、蓋を閉める。
  両手で持ち、リズム良く振り始めた。
仁(この音、ちょっと落ち着くかも・・・)
仁(・・・なんで俺、ここにいるんだ? 猫が降ってきて──いや、その前──)
仁(今日は、入学初日の授業を受けて──)

〇おしゃれな教室
同級生「それで、どう進めていくんですか? ちゃんとしてくれません?」

〇シックなバー
仁「はぁ・・・なんで俺が・・・」
  膝の上で丸くなっている猫を見て、優しく背中を撫でる。
碧斗「何か、嫌なことでもあった?」
仁「まあ、そうですね・・・」
碧斗「言いにくいこと?」
仁「言いにくいというか、何と言うか・・・」
仁「・・・俺、ゲームの専門学校に入学したんです・・・」
碧斗「ゲーム好きなんだ?」
仁「・・・好き──じゃないとダメなんですか・・・」
碧斗「そんなことないけど・・・でも、好きだと続かない?」
碧斗「僕はお酒が好きだからバーをやろうと思ったんだ」
仁「へえ・・・」
碧斗「ごめん、興味なかったよね」
仁「あ、興味ないわけでは・・・すみません」
仁「・・・少し、話をしてもいいですか?」
碧斗「いいの? お客さんに学生さんはいないから、嬉しいなぁ」
仁「・・・今日、授業初日で・・・」
仁「早速ゲームを作ることになって、それぞれの専攻が集まってチームに分かれたんですけど・・・」
仁「チームメンバーの中でプランナー専攻が俺しかいなくて・・・」
仁「そしたらメンバーから「プランナーなんだから進行して」って言われて・・・」
仁「でも、俺・・・何も出来ないまま授業が終わったんです・・・」
碧斗「最初はそういうものじゃない?」
仁「でも、他のチームは話し合いが出来てたし・・・」
碧斗「得意不得意があるから。少しずつ慣れていけばいいよ」
仁「そもそも、なんで俺が進行しないといけないんだろうって」
仁「碧斗さんが言ったように得意な人がやればいいと思うんですよ」
碧斗「うーん・・・それも勉強だと思うけど?」
仁「え?」
碧斗「仁君はプランナー専攻なんでしょ? プランナーって、企画立案や仕様書を作成するだけじゃないから・・・」
碧斗「プロジェクト進行やスケジュール管理をするのも仕事の1つだよ」
碧斗「って習ったことを改めて言われても困るよね、ごめん」
仁「いえ、企画書と仕様書を作るってのは授業で聞きましたけど・・・進行と管理についてはまだ・・・」
碧斗「そ、そうなんだ・・・」
仁「だから、アイツ・・・進行してくれって言ってきたのか・・・」
仁「でも、言った人がやればいいんじゃ? 人に指摘するってことは出来るってことでしょ?」
碧斗「うーん・・・その人の専攻は?」
仁「えっと・・・グラフィック」
碧斗「じゃあ、やっぱり仁君にやって欲しかったのかも」
仁「だから俺は──」
碧斗「その人は仁君にプランナーの仕事を求めたんだと思う」
仁「プランナーの、仕事・・・」
碧斗「まあ、何事も挑戦じゃない? 失敗した方が学べるし、むしろ学生の内にしておいた方がいいよ」
仁(何も知らないくせに・・・)
仁「偉そうなこと言って・・・」
ドリー「にゃ~お・・・」
  カウンターの上で寝ていた黒猫が、あくびをした。
碧斗「ごめん。お節介だったね」
仁「・・・いえ・・・」

〇おしゃれな教室
仁(正論で何も言い返せない・・・あの時と同じだ・・・)

〇シックなバー
碧斗「お待たせしました──ブルームーンです」
碧斗「ジンとバイオレット・リキュール、柑橘系・・・今回はレモンジュースを使用しました」
仁「へえ・・・」
碧斗「カクテルにも花言葉みたいなに、カクテル言葉ってのがあって──」
碧斗「ブルームーンには、悪い意味といいい意味があるんです」
碧斗「どっちから聞きたいですか?」
仁「・・・じゃあ、悪い方から」
碧斗「『無理な相談』──君が悩んでいるように見えたので・・・少しでも話すきっかけになれば、と」
仁「それって・・・悪い意味?」
碧斗「昔は中々見ることが出来ない青い月で、不吉とされていたのもあるけど・・・」
碧斗「『無理な相談』ってしにくいじゃない?」
仁「・・・いい意味は?」
碧斗「『奇跡の予感』──今では青い月って珍しくて、めったに起きないことから幸運だと言われています」
仁「・・・奇跡の、予感・・・」
碧斗「これから学べる『奇跡』、 これから新しいことに挑戦する『奇跡』、 学校の始まりの『奇跡』に──」
碧斗「乾杯ってことで」
仁(いつの間に・・・)
  碧斗さんはブルームーンが入ったカクテルグラスを持って、乾杯を待っている。
  俺も差し出されたカクテルグラスを持ち、軽く当てる。
  グラス同士が当たり、
  心地いい音が店内に響いた。
仁(初めての酒・・・)
碧斗「あははっ! ジンベースだからちょっと度数はキツイかもね」
仁「それ、先に言ってもらえます・・・?」
碧斗「ジンの量は減らしたつもりなんだけどなぁ」
仁(俺が大人になれるのは、まだ先な気がする・・・)
キルシュ「にゃ~ん♡」

次のエピソード:第2話 ファーストキスを奪った男の観察

コメント

  • 猫ちゃん!しかもバーにも猫ちゃん!キャッチーで素敵なお話でした!ゲーム業界事情が深堀りされていて、読み応えのある作品でした!!続きが楽しみです!

  • 言葉がすごくきれいで読みやすいです。ゲームの専門学校、バー、黒猫…すごく気になるワードが並んでいるので、これからどう展開していくのか楽しみです。

  • 親方!空から猫が!!


    調べたら猫バーって実在するみたいですね、行ってみたい。




    …俺下戸だけど。

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