Ep.35/ THE ELUSIVE NIGHT WATCH #25(脚本)
〇倉庫の搬入口
僕の足もとには、バラバラになったNIGHT WATCHが転がっていた。
ナイトウォッチ「はぁ・・・はぁ・・・」
世渡が、額に冷汗を浮かべながら歪んだ笑みを浮かべた。
世渡刃「おいおい。マジかよ。無敵の新兵器、倒しちまったよ・・・でもな」
世渡の背後に控えるゼニス兵たちが一斉に銃を構え、2台の多脚戦車が腕のガトリングガンを僕に向けて構えた。
世渡刃「こいつで、詰みだ」
ナイトウォッチ「・・・どうかな。 バステト。ミサイル発射!」
その瞬間、バックパックが爆発し、無数の小型ミサイルが発射された。
世渡刃「くそ! いい加減にしやがれ!」
世渡はパワードスーツのフェイスシールドをおろして頭を保護すると、腰にマウントしていたパワードスーツ用の刀を構えた。
世渡刃「イヤァッ! ダァアッ!」
そして、飛来した小型ミサイルをことごとく斬りはらった。
ミサイルはすべて、空中で爆散する。
世渡刃「舐めやがって!」
正直驚いた。やっぱりこいつは強い。
でも、世渡以外はほぼ期待通りだった。
背後の2台の多脚戦車は必死にミサイルを撃ち落とそうとガトリングガンを掃射していたが被弾し、片方は爆発炎上。
もう片方は煙をあげて擱座していた。
世渡刃「野郎!」
世渡は、ゼニス兵たちに命じた。
世渡刃「おい、さっさと奴を押さえろ! 奴はもう満足に動け・・・」
しかし、10人いた精鋭のゼニス兵たちは全員、昏倒している。
世渡刃「今度はなんだ!? ・・・ん?」
世渡は、ゼニス兵たちの首筋に機械仕掛けの蜂が針を突き立て、薬剤を注射していることに気がついた。
世渡刃「スタン・ビーだと!?」
ナイトウォッチ「・・・御社の新製品、さ」
世渡刃「軍事用だぞ! くそったれ!」
世渡が刀を一閃する。空中を飛んでいたスタン・ビーの最後の1体が斬られて、床に転がった。
世渡刃「・・・けどな。俺が残ったんなら、やっぱり詰みだ。そうだろう? あ?」
世渡は刀を構え、僕を睨みつけた。
ナイトウォッチ「困ったな・・・さっきので倒せてるはずだったのに・・・くっ・・・」
痛みで、がくりと態勢が崩れる。
武器の類はさっき使い切っている。
ナイトウォッチ「身体が言うこと、きかないや。 ここから白兵戦は辛いな・・・!」
パステト「紫雲、提案があります」
ナイトウォッチ「降伏しろって?」
パステト「いいえ。お勧めしません」
パステト「世渡刃は面子を潰した相手を決して許しません。降伏しても、拷問で情報を聞き出され、殺害されるでしょう」
ナイトウォッチ「泣けてくるね・・・」
パステト「コンバット・ドラッグ(戦闘薬)の使用を提案します。鎮痛効果と向精神作用で、短時間ですが戦闘継続が可能です」
ナイトウォッチ「副作用、とかは?」
パステト「効果が切れたあとは神経が混乱し、短時間ですが、ほぼ動けなくなります」
ナイトウォッチ「・・・やらないよりマシか。 OK。やって」
直後、心臓がドクンッと跳ねた。
痛みやだるさが吹き飛び、むくむくとやる気が湧いてくる。
ナイトウォッチ「!? な、なんだこれ!? なんか、ガツンって来た!」
世渡刃「隙ありだ! 往生しやがれっ!」
ナイトウォッチ「百年後くらいにね!」
僕は世渡に向かって走りこみながら、スライディング。刀の下をかいくぐって回避しながら、反対側に抜ける。
そのとき、地面に落ちていたスタン・ビーの下半身を手に握った。
世渡はたたらを踏み、立ち止まった。
世渡刃「チッ! 小回りが利かねぇ!」
ナイトウォッチ「おそいおそい! ダイエットしたほうが、いいんじゃない!?」
僕は手首からワイヤーを射出した。
先端が、世渡のパワードスーツの背中に貼りつく。
世渡刃「!?」
僕はジャンプし、素早く世渡の背中に飛び乗った。
ナイトウォッチ「ロデオは好きかい!?」
高速振動ナイフを構えて振るう。
ナイトウォッチ「オーレ! ってね!」
パワードスーツの背中の装甲が切り裂かれ、内部の機械がむき出しになった。
世渡刃「やらせるか!」
世渡のパワードスーツがブースターを吹かしてターンした。
僕はたまらず振り落とされて床に転がる。
ナイトウォッチ「・・・オーレはロデオじゃなくて、闘牛・・・だった・・・!?」
そこに、世渡の刀が迫る。
とっさに高速振動ナイフで防御する。
一瞬激しい火花が飛び散り、刀は両断され、高速振動ナイフは砕けた。
ナイトウォッチ「ぎゃ・・・っ!?」
世渡刃「これでお前は丸腰だ!」
パワードスーツの拳が飛んでくる。
なんとか両腕でガードはしたものの、吹っ飛ばされて床に叩きつけられた。
ナイトウォッチ「がぁああぁ・・・ッ!?」
衝撃で、ナイトウォッチのヘルメットが外れて、床に転がった。
僕の素顔が露になる。
世渡刃「! ・・・ガキだと!?」
久常紫雲「・・・しまった・・・!」
世渡はダメージで動けない僕の首根っこを掴んだ。
久常紫雲「ぐぅ・・・っ!?」
世渡刃「こんなガキに俺の庭。いや、俺の帝国がコケにされていたとはな!」
久常紫雲「俺の帝国って。 あんた、社長じゃないよね・・・」
世渡刃「この街は全部、俺で回ってるのさ。 いずれはゼニス本社も俺のもんだ。邪魔する奴は容赦しない・・・と・・・?」
世渡が、僕の顔をまじまじと見つめ、やがて鮫のように歯をむき出して嗤った。
世渡刃「ハハァ! そうか。お前、8年前の、あのときのガキか!」
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