私、メリーさん

あをにまる

読切(脚本)

私、メリーさん

あをにまる

今すぐ読む

私、メリーさん
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇明るいリビング
  ──午後6時。
  とあるマンションの、一室にて。

〇おしゃれなキッチン
龍介「〜〜♪」
  ・・・ヴーッ、ヴーッ!
龍介「・・・ん?」
  ピッ。
龍介「・・・はいもしもし。龍介です」
???「・・・私、メリーさん。 今、東京駅にいるの」
龍介「・・・おや?どちら様かな?」
龍介「あいにく、メリーというお名前は存じ上げないのだけれど、その可愛らしい声には何だか聞き覚えがあるねぇ」
  ──プツッ。
  
  ・・・ツー、ツー、ツー。
龍介「ありゃ。切れちゃった」
龍介「・・・さてと。 それじゃあ、今からもう一品くらい作る時間があるかな?」
龍介「・・・よし。ベーコンがまだ少し、残ってた! なら、前に好評だったベーコンとトマトのチーズ焼きも作ってみるとしよう!」
龍介「〜〜♪」
  ・・・ヴーッ、ヴーッ!
龍介「・・・おっと、また電話かな?」
龍介「はいもしもーし!龍介です!」
???「・・・私、メリーさん。 いま、新宿駅にいるの」
龍介「あっ、メリーさん。 今日は乗り換え、ちゃんと寝過ごさなかったね?偉い偉い!」
  ──プツッ。
  
  ・・・ツー、ツー、ツー。
龍介「・・・よし。 それじゃあ、オーブンの方もそろそろ、ちょうど良い感じかな?」
龍介「おっ、これは我ながら、中々良い出来だね! では、ぼちぼち盛り付けといこうか!」
  ・・・ヴーッ、ヴーッ!
龍介「はいもしもーし! 貴方の龍介が只今、腕によりをかけたお料理を絶賛準備中でーす!」
???「・・・私、メリーさん。 いま、下北沢駅にいるの。 けど雨が降ってて、傘を持って来るのを忘れちゃったの・・・」
龍介「あらら、午後の降水確率60%だったけど、やっぱり降り出しちゃったか・・・」
龍介「ではここで、迷える羊のメリーさんへアドバイス。 君のカバンの中を、もう一度よーく見てごらん?」
???「・・・あっ! いつの間にか、カバンの中に折り畳み傘が入ってる・・・!」
龍介「ふふん。それはきっと、昨日の天気予報を見た妖精さんが、こっそり忍ばせておいたのだと思うよ?」
龍介「・・・今日も遅くまで、お疲れ様でした。 暗いし雨だから足元、気をつけてね」
???「・・・ありがとう」
  ──プツッ。
  
  ・・・ツー、ツー、ツー。
龍介「・・・さて、こちらも最後の仕上げといこう。 今日は特別な日だからね。 とっておきのコイツも開けて、と・・・」
  ──ポンッ!
龍介「うん!良い香り! やっぱり、これは奮発した甲斐があったね!」
  ・・・ヴーッ、ヴーッ!
龍介「はいもしもーし!こちら準備万端の龍介です! ただいま絶賛、恋人の帰りを首を長くして待っておりまーす!」
???「・・・私、メリーさん。 いま、貴方の家の前にいるの」
龍介「・・・いや、それは少し間違ってるよ。メリーさん」
???「えっ?」
龍介「・・・そこはもう、「貴方の家」じゃなくて、「僕たちの家」でしょ?」
???「・・・!!」

〇マンションの共用廊下
龍介「・・・お帰り、メリーさん」
芽衣莉「・・・ただいま。龍介さん」
龍介「今日も遅くまで、お仕事お疲れさま。 それから── ・・・お誕生日、おめでとう。 芽衣莉(めいり)!」

コメント

  • 何回も電話するからしつこいストーカーだろうと思いました。しかし、彼の電話対応が怒るわけでもなく落ち着いた会話だから恋人同士だと推測ができました。

  • 惚気話…にやついてしまいますね笑
    自分の惚気より人の惚気を聞いた方が気持ちって高揚するもんですね〜!
    いつまでもこのイチャイチャが続けばいいなぁ!

  • 初めの電話でメリーさんと名乗る人物からのいたずらかと思っていたら、徐々に彼の返答からわざと知らない人のふりをしていたんだとわかり、最後はとびきり甘い彼の言葉にやられました。

コメントをもっと見る(5件)

ページTOPへ