はじめて

萩野 須郷

読切(脚本)

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〇本棚のある部屋
  ジリリリリリ・・・。
「・・・うーん。今何時・・・」
雫「ひゃあ!もうこんな時間!早くお出かけする準備しないと!」
雫「えっとえっと、財布にスマホに・・・。あれ、ハンカチどこ!?」
雫「今日着る服は・・・って、昨日選んだ服じゃ暑すぎ!今日は1日晴れるし、薄着でいいや・・・」
雫「・・・よし。今日はいつものスニーカーじゃなくて、お姉ちゃんのパンプスを履いて・・・」
雫「あれ、ない・・・。お姉ちゃん、あのパンプス履いてもう出かけちゃった・・・?」
雫「もー!今日貸してほしいって言ってあったのにー!まあいいか、早く行こう・・・」
雫「なんてったって、今日は・・・」
雫「人生ではじめてできた彼氏と、はじめてのデートだから・・・」

〇駅前広場
雫「はあ、はあ、ご、ごめん。遅れちゃって・・・」
涼「あ、雫ちゃんおはよう。大丈夫、俺もさっき着いたところだよ」
雫「(そんな嘘言っちゃって・・・。待ち合わせ時間からもう30分以上経ってるじゃない・・・)」
雫「き、今日は映画を観るんだよね?」
涼「うん、今話題の恋愛映画。雫ちゃんと一緒に観たいって思ってたんだ!」
涼「ただ、待ち合わせ時間を映画開始ギリギリにしてたから、もう上映始まっちゃってるんだよね・・・」
雫「ええっ!ご、ごめんなさい・・・」
雫「ええっと、次の上映は・・・」
涼「うーんとね。・・・今から3時間後だね」
雫「さんっ・・・」
雫「(せっかくのデートなのに、初っ端から台無しにしてどうするの私ー!)」
涼「あ、それじゃあさ、ちょっとこの辺散歩しない?近くに湖あるからさ、行ってみようよ」
雫「あ、うん・・・」
雫「(涼くん、優しいなあ・・・)」

〇湖のある公園
涼「・・・うーん。空気がおいしいなあ」
雫「そ、そうだね・・・」
涼「・・・大丈夫?元気なさそうだけど・・・」
雫「あ、ううん。何でもない」
雫「(申し訳ない気持ちでいっぱいで、デートを純粋に楽しめない)」
雫「(涼くんに心配かけさせちゃうし・・・。私、どうしたら・・・)」
涼「・・・雫ちゃん」
雫「・・・な、何?」
涼「好きだよ」
雫「えっ・・・ええっ!き、急にどうしたの?」
涼「俺、今まで女の子と付き合ったことないから、どう接したらいいのかわからなくて・・・」
涼「どうやったら楽しませよう、どうやったら笑顔になってくれるだろうって、さっきからずっと考えてたんだけど」
涼「俺そんなに頭良くないから、うまいこと言えないし。だから、俺の気持ちをぶつけちゃえー!って思ってさ」
涼「雫ちゃんのこと好きだから、ありのままの気持ちをそのまま声に出しちゃった」
雫「涼くん・・・」
雫「(私は自分のことばかり考えてたのに・・・。涼くんは、ずっと私のこと考えてくれてたんだ・・・)」
雫「ご、ごめんね。私、自分が遅刻したことが許せなくて・・・。そのことでずっと、頭がいっぱいだった・・・」
雫「涼くんがそばにいるのに、涼くんのこと全然見えてなかった・・・」
涼「あはは。雫ちゃんって、本当に真面目だよね」
雫「うう・・・ごめんなさい」
涼「なんで謝るの。俺、雫ちゃんのそういう真面目なところ好きだよ」
雫「その、私、小さい頃からずっと真面目だね、って言われてきて・・・」
雫「大体そう言われる時って、「あなたって融通が効かないよね」っていう意味で言われるから」
雫「「真面目だよね」って言われるの、好きじゃないんだ」
涼「そうなの?ご、ごめん」
涼「あ、俺はそういう意味で言ってる訳じゃないから!」
涼「言葉って、不思議だよね。一つの単語なのに、相手への伝わり方は何パターンもあるんだから」
涼「雫ちゃんは、人のことをちゃんと考えて行動してくれる・・・そういうところが真面目だなあって俺は思ったから」
涼「プラスの意味!プラス真面目ってやつだよ!」
雫「・・・ふふっ」
雫「あはははっ、プラス真面目ってなによー!」
涼「いいじゃん、俺の気持ちをストレートに伝える言葉でしょ?」
雫「・・・うん。しっかり伝わったよ。そんな涼くんは、プラス優しいだね」
涼「・・・さすがにそれは違うような・・・。ちょっと意味がわからないし」
雫「ええ・・・。プラス真面目と一体何が違うって言うの・・・」
涼「あははっ、ごめんね。それじゃあ、散歩楽しもっか!」
雫「うん!」
涼「あ、あと、たまには雫ちゃんから俺にも「好き」って言ってほしいな」
涼「雫ちゃんの口からはその言葉、聞いたことないからさ」
雫「そっ・・・それは、いつかね!」
涼「ええー! いつかって、いつなんだよー!1ヶ月後とか?」
雫「・・・今・・・だよ・・・」
涼「えっ?」
雫「好き・・・大好き・・・」
雫「これからも、ずっと私のずっとそばにいてほしい・・・」
涼「・・・あ、うん・・・」
涼「(・・・さ、流石にそれは反則だろー!)」

コメント

  • 初めてのデートで緊張して、相手にどう思われるかとか、自己嫌悪に陥ったりとか、色々な気持ちが伝わってきました!こういう初々しい気持ちも大切ですね!

  • 彼みたいに気持ちをまっすぐに伝えてくれる人が初彼だなんて彼女はなんて幸せなんでしょう。服選びに気合い入っちゃうとことか、気合い入りすぎて遅刻しちゃうとことか、自分にもそんな時代もあったよな〜とか、はるか昔のはじめてを思い出してキュンキュンしながら読みましたよ。

  • 初々しい二人にキュンキュンしました!
    初めてのデートって、うきうきするけどちょっと緊張しちゃいますよね。
    大好きな彼と一緒なら、どこでも楽しいですよ!

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