告白は「壁ドン」の後で

生き馬

告白は「壁ドン」の後で(脚本)

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〇ボロい駄菓子屋
春人「あのさ・・・陽菜ちゃん」
陽菜「ん?」
春人「僕、僕さ・・・」
春人「陽菜ちゃんの事が好き!!」
陽菜「陽菜も春人の事大好きだよ!」
春人「・・・え? ほんと!?」
陽菜「うん!」
陽菜「春人は陽菜の──」
陽菜「・・・大好きなお友達!」
春人「・・・」
春人「・・・そうだよね!」
春人「早く公園行こ!」
陽菜「・・・」

〇電車の中
???「──ぞ」
???「──着くぞ」
春人(はると)「もう駅着くぞ! 陽菜!」
陽菜(ひな)「・・・へ?」
春人(はると)「おはよう寝坊助、もう着くぞ」
陽菜(ひな)「あーごめん。完全に寝てた」
春人(はると)「・・・見りゃ分かるよ。なんか寝言も言ってたし」
陽菜(ひな)「ほんと!?」
陽菜(ひな)「いや、なんかね夢で子供の頃の春人と話しててね」
陽菜(ひな)「懐かしいなぁ」
春人(はると)「・・・」
春人(はると)「よくもまあ、こんな満員電車で立ったまま寝れるよな」
陽菜(ひな)「へへ・・・立ったまま寝れないようでは、まだまだですな」
春人(はると)(ったく・・・押されないように守ってるこっちの身にもなれっての)
陽菜(ひな)「ん? なんか言った?」
春人(はると)「・・・何でもねえよ」
  まもなく〇〇大学前駅に到着します。お出口は左側です
春人(はると)「・・・着いたな。行くぞ」

〇駅のホーム

〇改札口

〇駅前ロータリー(駅名無し)

〇古い大学

〇おしゃれな教室
先生「皆さんおはようございます」
先生「少し早いですが、集まりが良さそうなので一限の講義を始めます」
先生「今日は講義の前半、内閣府からの依頼で試験的に皆さんに「ある事」をしてもらいます」
先生「本日の講義タイトルは「少子化とその解決策」」
先生「昨今、日本では少子化が大きな問題となっています」
先生「生まれてくる子供の数は年々減少し、日本の労働者人口は減る一方」
先生「このままでは、日本の経済は停滞、君達若者の負担もどんどん増加していきます」
先生「では、少子化の原因は一体何なのか?」
先生「じゃあそこの君、答えてみて」
陽菜(ひな)「えっと・・・独身を謳歌したい人が増えているとか?」
先生「正解! つまりは未婚化、他にも晩婚化などが理由に挙げられます」
先生「しかし、それだけではない」
先生「隣に座っている君!」
春人(はると)「えっと・・・」
先生「難しく考える必要はないですよ」
先生「君達若者に足りない「ある物」」
先生「それが何か分かりますか?」
春人(はると)「・・・」
春人(はると)「・・・出会いですか?」
先生「そう! つまり?」
春人(はると)「・・・つまり?」
先生「つまり君達若者には──」
先生「「キュン」が足りないのだ!!」
先生「皆さんお静かに」
先生「確かに皆さんが戸惑う気持ちは分かります」
先生「いきなり「キュン」が足りないなどと言われてもどうすれば良いのか」
先生「しかしながら、我々人類は幸運にも「キュン」を生み出す術(すべ)を持っている」
先生「どう言う事か分かりますか?」
春人(はると)「いえ・・・」
先生「皆さん名前は聞いた事があるでしょう」
先生「「キュン」を生み出す術、それは──」
先生「そう、「壁ドン」です!!」
先生「お静かに!」
先生「──という訳で、本日君達には「壁ドン」の実習をしてもらいます!」

〇おしゃれな教室
春人(はると)「えっと・・・」
春人(はると)「これからはずっと俺が守るよ」
女子生徒①「・・・!」
先生「良いですね」
春人(はると)「・・・もう逃さない」
女子生徒②「・・・!!」
春人(はると)(どうしてこんな事に・・・)

〇黒

〇おしゃれな教室
先生「素晴らしい!」
先生「生徒一人一人に「キュン」の感情が生まれているのが良く分かります」
先生「男性役に君を選んだのは間違いでは無かったようですね」
春人(はると)「はぁ・・・」
先生「では、最後の一人ですね。お願いします」
春人(はると)「陽菜・・・」
陽菜(ひな)「春人・・・」
春人(はると)「陽菜・・・俺は──」
春人(はると)「俺は・・・陽菜の事が──」
陽菜(ひな)「あはは! いいよ、そんなに真面目にやらなくても」
陽菜(ひな)「こんなバカバカしい実習、適当で良いんだよ!」
春人(はると)「そうか・・・」
春人(はると)「・・・先生すみません。体調が悪いので早退します」
先生「え?」
先生「本当に体調が優れないなら、私に止める権利は無いが・・・」
春人(はると)「・・・失礼します」
陽菜(ひな)「春人・・・!」
陽菜(ひな)「体調悪いってホント? 大丈夫!?」
春人(はると)「・・・」
先生「ま、まあ「壁ドン」実習はこれくらいにして、座学へとまいりましょう」

〇女の子の一人部屋

〇改札口

〇駅のホーム

〇電車の中

〇駅前ロータリー(駅名無し)

〇おしゃれな教室

〇女の子の一人部屋
陽菜(ひな)(毎日、家の近くの駅で待ち合わせしてたのに)
陽菜(ひな)(あの日以来、春人は私の事を待たなくなった)
陽菜(ひな)(駅のホーム、大学の教室で姿を見かけても)
陽菜(ひな)(私を見るとサッと距離を取る)
陽菜(ひな)(私は、春人に避けられている──いや)
陽菜(ひな)「・・・嫌われたかな」
陽菜(ひな)(嫌われた理由について、何度も考えた)
陽菜(ひな)(何度も、何度も考え直して、ようやく嫌われた理由に思い至った)
陽菜(ひな)(考え直す度にすぐ切り捨ていたその答え)
陽菜(ひな)「・・・行こう」

〇電車の中
春人(はると)「・・・」
陽菜(ひな)「はぁ・・・はぁ・・・」
陽菜(ひな)「春人、あのさ・・・」
春人(はると)「・・・」
陽菜(ひな)「春人って」
陽菜(ひな)「春人って私の事好きだったの?」
春人(はると)「・・・違うよ」
陽菜(ひな)「え?」
春人(はると)「陽菜ってさ、ずるいよね」
春人(はると)「こっちが何度告白しても、いつも躱して──いや、逃げていく」
春人(はると)「陽菜にとっては単なる一言だったかもしれないけど」
春人(はると)「俺にとっては全力だったんだよ」
春人(はると)「その一言の為に、毎回勇気を振り絞ってた」
陽菜(ひな)「・・・」
春人(はると)「ごめんね、陽菜」
春人(はると)「どう考えても悪いのは俺だよ」
春人(はると)「ここ数週間、陽菜の事無視してごめん」
春人(はると)「でもさ、それは陽菜の事を嫌いになったんじゃなくて」
春人(はると)「最後にもう一度だけ、会って伝える勇気が出なかったんだ」
春人(はると)「陽菜・・・」
春人(はると)「俺は陽菜の事が──」
  急停車します。おつかまり下さい。
  早朝の満員電車が、急停止する
陽菜(ひな)「・・・!」
  慣性に流された私は、右側のドアに押し付けられる
  一拍遅れて、人波が私の下に押し寄せ──
春人(はると)「大丈夫か?」
  私を抱き寄せるような形で、ドアに手を突いた春人が人波を堰き止めた
陽菜(ひな)「春人・・・」
  互いの吐息が掛かる距離に、春人の顔があった
春人(はると)「陽菜──俺は陽菜の事が好きだ」
春人(はると)「好き「だった」じゃない、今でも陽菜の事を愛してる」
春人(はると)「俺と付き合ってくれないか」
陽菜(ひな)「ごめん・・・逃げてばっかで」
陽菜(ひな)「私も春人のこと大好きだよ。友達じゃなくて、恋人として」
  急停車した電車は、再びゆっくりと動き始める
  押し寄せた人波が引いても、お互いの距離は変わらない
  次は──、──です。お出口は左側です
  もたれかかったこのドアは、三駅先まで開かない

コメント

  • 最初と最後を電車という同じシチュエーションにすることによって、「壁ドン」に至るまでの時間の中で二人の心の距離も物理的な距離も縮まったことがより一層際立つ構成に唸りました。ラストは「壁ドン」史上に残る名シーンの誕生ですね。

  • 少子化対策…まぁ全体を通して言えばあながち間違いではないのかもしれません…。
    それにこの作品のように直接話せればいいのですが、SNSの発展も原因の一つなのかな?なんて思うこともあったり。

  • 講義で先生がキュンが足りないとおっしゃっていたのが、はじめはふざけてるなあと思ったんですが、なかなか的を得てるかも。携帯で話すことから、メッセージやSNSと交際手段が増えて、直に人の熱を感じることが減ってきてる傾向があるのは、少子化につながっているのかもしれません。

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